愛している。
 なんて無駄な言葉だろう。
 そんな言葉じゃ表せない。
 もっと、もっと。
 あなた以外に誰も要らない。あなたでないなら欲しくない。
 どんなに耐え難い欲求であったとしてもあなたでなければ反応しない。
 誰かがこれほどの想いを自分にかけてくれたとしてもあなたでないならば要らない。
 あなただけしか欲しくない。

 手に入れたから。
 あの日。
 俺はあなたを手に入れて、あなたは俺を手に入れた。
 だから。
 他には誰も要らない。
 互いが唯一の存在なら他には何も要らない。
 それは当然。
 違いますか。
 「かけがえのない」美しい言葉ですね。
 他のものと変えられないたったひとつの掛け軸をさす言葉だと聞いています。
 ただひとつ。
 ただ、あなただけ。
 あなたの笑顔を安堵を保てるならば俺はきっとなんでもするでしょうね。
 たぶんきっと、あなたもそうしてくれるのでしょうね。

 愛している。
 この感情になんて貧相な言葉しか思い浮かばないのだろう。
 この国の言葉でも俺の母語でも。
 どう言ったら、なんて表現したらわかってもらえますか。
 いえ、きっとあなたはわかっているのでしょう。
 それでもこの口で言いたいのです。
 あなたが好きだと言ってくれたこの声で、言いたいのです。
 なんて言ったら、いいのでしょう。

 あなたが幸せならばそれでいい。
 そうも思っていた。
 あなたが他の誰かと幸せならば自分は身を引こう。
 そうも思っていた。
 でももうできない。
 あなたを手に入れたから。
 あなたが俺を愛してくれたから。
 他の誰かに渡すくらいなら、いっそこの手にかけてしまうかもしれない。
 あなたの冷たい体を抱いて自分も死んでいく。
 甘美、かも知れない。
 でも。
 生きていたいと思う。
 あなたと二人で、生きていたいと思う。
 あなたしか見えないどうしょうもない俺をあなたが受け止めてくれたから。
 だから二人で生きていたいと思う。
 あなたがただ俺をだけを見てくれるから。
 だから生きていたいと思う。

 一緒に生きていこう。
 あなたは笑ったね。
 いつか早いところ引退してお前の国に行こうって、笑ったね。
 誰にも煩わされないで、ふたり。
 命尽きるまで一緒に暮らそうって。
 夢。
 夢かもしれない。
 でも実現できない夢じゃない。
 だからこの国で暮らして行くのに面倒でも俺はずっと母国の籍を持ち続けていよう。
 あなたといつかあの森の国で暮らせる日を楽しみに待ちながら。
 
 愛している。
 この想いを表すには足らな過ぎるこんな言葉でもないよりはずっといい。
 百億も。千億も。
 あなたが眠れない晩を過ごすたび。
 あなたが目覚めるたび。
 あなたがさみしがる夜に。
 うれしい事のあった午後に。
 何度でも言おう。
 あなたが好きだと言ってくれたこの声で。
 愛している、そう言おう。

 何度でも、何度でも。




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