なぁ、カイル。
 俺、お前が思ってるよりずっと、お前のこと知ってる。
 お前が俺のことわかってないのと同じくらいには。
 だって。

 俺のそばに誰か他のやつがいる時だって、お前が誰かの所に行くのいやだった。
 知らなかっただろ。
 学生の時だって、大人になってからだって、誰かがお前にちょっかい出すのがいやでいやでしょうがなかったんだぜ、俺。



 どこかでずっと。
 お前のこと、好きだったのかな。
 なんて、思う。



 お前がいるのが当たり前で、当然みたいな顔してずっと横にいたけど。
 お前が高校卒業する少し前、本当は取り乱してた。
 帰っちゃうと、思ってた。
 だからそのまま大学行ったとき、どんなに嬉しかったか、わかんないよな。

 俺、そんなそぶり見せなかったから。

 わがままで強情で意地っ張り。
 誰に言われなくってもわかってる。
 素直になれなくって、言わなくていいことばかり言って、言わなきゃならないことがどうしても言えない。
 馬鹿、だよな。

 でも言わなくてもわかってくれる。
 そう思うから、つい。
 これも甘えだよな。

 いつか。
 俺にとってはなんのしがらみもない、枷もないお前の故国に。
 行こうよ。
 そう言ったらさ、お前また俺のわがまま聞いちゃってさ。
 ……嬉しかった。すごく。
 実現なんてできない、当分。ずっと無理かもしれない。
 でもそうやって一緒に、二人だけで暮らそうって。
 言ってくれたのが、嬉しかった。
 甘ったるいこと言ってるな、俺。



 こんなにお前のこと、好きで。
 人を好きだって、こういうことだったんだって。
 初めてわかった気がする。



 今まで俺どんな風になに考えて生きてきてたんだろう。
 こんなことさえ知らなかった。
 ガキ、だったよ。

 やっぱり俺のほうがお前のことわかってないかな。
 自分の事さえ、あやしいから、さ。
 でも、お前のことこんな大事なんだって、わかってるからそれで。
 いいかな、なんて、さ。
 カイルの声も仕種も俺のこと甘やかしすぎる馬鹿さ加減も。
 ぜんぶ。



 全部。



 ぜんぶ、すきだ。



 こうやって頭の中で考えてること、そのまま。
 言えたらいいのに。
 そう思わないではないけど、でも。



 わかってるだろ?
 俺の、だもんな。




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