それは春真が夏樹に引き取られた年の暮れのことだった。
 外出から戻った夏樹が玄関先で肩のあたりをはたいている。珍しくきちんと襦袢まで着ている様子なのはやはり外に行ったせいか。あるいは寒さのせいかもしれない。
「おかえり」
 台所にでも立っていたのだろう、濡れた手を拭きながら真人が顔を出す。
「あれ、雪降ってたの」
「ちらちらだけどな」
「寒かったでしょう」
 それに生返事をし、夏樹はさっさと寝室に入っては着ているものを脱いでいく。人嫌いの彼のこと、外出から帰ったあとはたいていそうだった。疲れて返事もしたくないのだ。
 真人は慣れたものでそんな彼のそばに黙って正座したまま脱いだ着物を畳んでいく。少し考えて羽織と襦袢だけは風を通そうと衣紋掛にかけた。
「そうだ。ついでに冬樹のところに寄ってきた」
 思い出したように夏樹が言う。元々は原稿を届けに行ったのだった。彼がもっとも嫌うのは編集者が自宅に入り浸ることで、だからどれほど苦しんでも締め切りだけはきちんと守るし、郵便を使っても間に合わないときには面倒でも自分で原稿を届けもする。
「どう、志津ちゃんは」
 彼の弟の娘であった。その春真の姉が患いついていて、それで春真は伯父の家に預けられているのだ。
「一進一退みたいだな。長くかかりそうだ」
「まだ小さいのに、かわいそうに……。春樹君も大変だね」
「まあ両親のそばにいられるだけいいんじゃないのか。春真はもっと寂しいだろうさ」
「あの子は頑張り屋さんだからね。泣き言ひとつ言わないから。もっと甘えてくれてもいいんだけどな」
 思わず真人の方が泣き言めいたことを言ってしまう。まだ小学校にも上がらない幼い者があれほど一生懸命に耐えている姿というのは、見ている大人のほうがつらいものだ。
「時間がかかるんだろうよ。それで、冬樹から預かり物だ」
 と、携えてきたものを真人に渡す。
「これは、なに」
「叔母から送ってきたって言ってた」
「開けていいの」
 そうしろと、手振りで示し夏樹は居間に戻って座り込む。とりあえず真人は先に二人分、茶を淹れることにして袋を後回しにした。
 程なく自分には熱い茶を、彼にはぬるい茶を淹れて戻った真人は彼の前に座って再び袋を手に取った。
「叔母様って……」
「話しただろう」
「あの、ドイツにお嫁に行ったって言う叔母様でしょう」
「そう、それだ」
「ドイツは遠いよねぇ」
 言わずもがなのことを言いつつ笑ってしまう。真人にとって外国人と結婚するなどということは想像の外なのだった。もっとも、自分だとて男と同棲しているのだから、それはそれで「想像の外」ではあったが。
「わぁ」
 袋から出てきたのは色とりどりのもの。一見して間違いなく春真への贈り物だとわかるのだけれど、知らず真人も歓声を上げてしまっていた。
「好きだろう、そういうの」
「うん、大好き」
 ぬるくうめた茶を、それでもまだ熱そうに飲みつつ夏樹が笑う。
 中に入っていたのは、不思議なカレンダーだった。それから絵本と。絵本はもちろんドイツ語で、幼い子供向けなのだろう、綺麗な絵ばかりで、言葉は一言二言が添えられているに過ぎない。これならば言葉がわからなくとも楽しめるに違いなかった。
「これはなんだろう」
 真人が手に取ったのはカレンダーの方だった。暦のくせに数字がきちんと並んでいない。しかも一月分に欠けるほどしか数字がないのだ。それがカレンダーだとわかったのは絵柄がクリスマスの模様だからで、そうでなかったきっとなんだかさっぱりわからなかったことだろう。
 クリスマス自体、それほど一般的ではない。が、近い親類がドイツにいる、と言うこともあって水野本家では祝うのだそうだ。その話を聞いているので真人もそれと知っていたのだった。
「アドベントカレンダーというんだ」
「アド……なんですって」
「日本語では待降節と訳すのかな。キリスト教の風習のひとつで、クリスマスイブの四週間前から始まるらしい。よくは知らんよ」
「それ用の暦なの」
「そうらしいな。毎日ひとつずつその数字の書いてあるところを開けていくんだ。全部開けるとクリスマス」
「なるほどねぇ。子供が喜びそうだよ」
 子供よりも自分が開けてみたくてたまらない、といった顔をして真人がうなずくのを夏樹は横目で見ては口元が弛む。
「しかも、それはチョコレート入りだ」
 だから、余計喜ばせてみたくなる。
「え、本当」
「本当、本当。あとで春真が帰ってきたら一緒に開けるといい。少し遅くなったから、四日分ほど今日開けてしまえるだろう」
 そう言っては再び笑った。なにしろ真人の満面の笑みがそこにあったのだから。

 午後も遅くになってそっと玄関が開いた。
「ただいま帰りました」
 小さな声がする。
 夏樹と話しこんでいた真人はあわてて玄関に春真を迎えにいった。
「おかえり」
 微笑めば、こくりとうなずく。決して嫌われているわけではないのだが、まだ照れくさいのだろう、中々馴染んでくれないでいる。
「伯父様がお父様から預かり物してきたって言ってるよ」
「え、なんだろう」
「行ってごらん」
「はい」
 幼い顔が喜びに弾むのが少しばかり痛々しい。まだ親が恋しいだろうに、そんなことをつい思ってしまう真人だった。
 ひとつ頭を振ってそんな思いを振り払う。春真が頑張っているのに自分が嘆いていたら笑われてしまう、と。居間で二人の話し声が聞こえていた。
「ねぇ、真人さん。これ読める」
 嬉々とした春真の声。こんな声を聞くと本当は明るい子なのだとつくづく思う。春真は絵本を広げてすっかりそれに見入っていた。
「さぁ、僕もドイツ語はわからないな」
「そうなんだ。残念」
「ハルはなんて書いてあると思うのかな」
 柔らかく、彼の愛称を呼んでみた。春真と、親元にいる兄の春樹は双子だった。紛らわしい名前をつけたものだと思うが、名づけた本人によれば「兄さんと真人さんから一字ずつ頂いたんですよ」とのこと。
 そんな紛らわしい名前だから、双子の兄弟たちは自分たちの間だけでは互いを「ハル」と呼び合っている。確かにそれで通じるし問題はないのだろう。
 だから、真人はいままで一度もその愛称で彼を呼んだことはなかった。嫌がられるかもしれない、そう顔をうかがったのだが、案外平気なもので少しばかり照れた顔をして真人を見上げただけだった。
「なんだろう。ごちそうの準備かな」
「あぁ、そうみたいだ。これはなんだろう」
「きっとチキンじゃないかな」
 目をきらめかせて笑う。そんな春真を見ていると、いままで大人二人でクリスマスなど祝ったことはなかったけれど、今年はなにかおいしいものでも用意してあげたい、と思ってしまう。
 とは言え、さすがに家事に長けた真人でもクリスマスのご馳走など、なにをどう用意したものか悩む。この家でご馳走、といえば正月のお節料理くらいなもので、あとはそうそう祝い事などあるわけでもないのだから。
「こっちはなんとかカレンダーって伯父様が言ってたよ」
「アドベントカレンダー」
 二人を黙って見ていた夏樹が口を挟む。それから湯飲みを持ち上げてふと止まり、また下ろす。
「あ、ごめん。お茶なかったね」
「いい、自分で……」
「あなたにやらせたら僕の用が増えるだけだから」
 そう言って笑った。
 真人にはいまだにわからない。いったいどうやったらすでに急須に茶っ葉まで入っているのに、それをこぼして畳に茶殻をぶちまけるなんてことができるのか、理解に苦しむのだ。
 夏樹はそんな真人の心無い言葉に渋面を造り、それでも言われた通り湯飲みを差し出した。そんな夏樹と真人のやり取りを聞いていた春真が耐え切れなくなったように吹き出した。
「笑うな」
「ごめんなさい」
「ひどいぞ、春真」
「だって」
 言いつつ衝動が増してしまったのか、畳に突っ伏して笑っている。
「ハルもお茶飲むかい」
「うん、欲しい」
 苦しげな息をつきながら言うのに答えて三人分の茶を淹れた。
「さぁ、ハル。あんまり笑ってると伯父様のご機嫌が悪くなるからね。こっちも見てごらん」
 言ってちらり、夏樹をうかがえばすでに目元が険悪だ。なにを子供相手にむきになって、とも思うがそんなところもまた愛おしくなってしまう。
「真人さん」
 不審げな春真の声にふと心付き、知らず上気していた頬を手でこすった。それを見た夏樹が春真の目に入らないよう、にやり真人にだけ笑って見せる。
「なんでもないよ」
 春真に笑いかけ、目の端で夏樹を睨みつけるという器用なことをやってのければ、今度は夏樹がこらえきれなくなって笑い出す。
「伯父様は放っておこうね」
 驚いて振り返った春真に肩に手をかけてこちらを向かせ、そう言ってはアドベントカレンダーを彼の前に置いた。なんだか誤魔化すようで心苦しいのだが、幼い子供相手に真実を話すわけにもいかない。
「うん……。これ、さ」
「うん」
「いつから開けていいの」
「さっき伯父様が四日分は開けていいって言ってたよ」
「わ、本当」
「夏樹、いいんでしょう」
「あぁ、大丈夫だ」
「やった」
 そう言って春真は開けていい、と真人の顔をうかがい、真人がうなずくと喜んで数字を探し始めた。どうやら彼にとってこれははじめて見るものではないらしい。去年のクリスマスには志津と春樹と三人で開けたのかもしれない。
 不憫だ。一瞬、真人もそう思った。が、いま春真はここでこうして楽しげにしている。可哀想かわいそうと思っているばかりが子供のためになることでもないのかもしれない。彼はここにいるしかない。ならば今こうしていることが今後の彼の人生において楽しい思い出になるように精一杯尽くしたい。真人は心を決めた。
 ――大人になったら忘れちゃうかもしれないけどね。
 内心で苦笑いしつつ。そうして思う。思いのほか、春真が可愛くなってしまっている自分に驚いているのだ、と。春真が馴染んでくれなかったのは、きっと自分の戸惑いを子供なりに察していたからなのだろうとも思う。ならばこれから変わって行くかもしれない。そう思えば心が弾む。
「ねぇ、真人さん」
「ん、なに」
「半分こ、しようよ」
 いつの間にか春真はすっかり四日分の数字を探し出し、中のチョコレートを取り出していた。
「嬉しいな、くれるの」
「うん」
 弾む声。ちょっとしたきっかけで、春真の警戒は解けてしまったようだった。まるで生まれたときから一緒いるような顔をして笑っている。
「僕だけじゃ伯父様が拗ねるよ」
 だから、そんな軽口を言ってからかってみる。四つのチョコレートをどうやって分けようとするか、見ものだった。
「うーん」
 畳の上に置いて真剣な顔をして悩んでいた。まだ幼い春真には酷な質問だったかもしれない。笑って真人は彼の頭を撫で
「いいよ、ハル。僕が伯父様と半分こしよう」
 言ってくしゃり、髪をかき混ぜた。子供の髪は驚くほど柔らかかった。

 台所でぱたぱたと真人が働いている。それはいつものことではあったけれど、今日は普段より少しばかり忙しい。
「お前ばかりに苦労させるつもりはなかったんだが」
 真人の背後で夏樹が困ったような声を出している。その指は不器用な手つきで絹さやの筋を取っていた。
「なにをいまさら」
 真人は笑う。
「俺は子供とどうやって接したらいいもんか、わからん」
「そのままでいいと思うけど」
「だから、お前ばかり……」
「夏樹。僕はね、自分で思ってたより子供が好きみたいだ。と、言うよりハルが好きなのかな」
 振り返ってもう一度笑みを見せた。その飛び切りの笑顔を見ることが出来る相手の顔と言えばこちらはなんとも苦々しい。
「おや。妬いてる」
 椎茸を切っていた包丁を持ったまま、口元に手を当てて笑みを隠そうとすれば、包丁が目の前に来て我ながら驚く。
「危ないぞ」
 さらにいっそう嫌な顔をする夏樹に向かって真人は言う。
「少し、あなたに似てるせいかな。すごく可愛いと思うよ」
「言ってろ」
 ぷい、とそっぽを向いて夏樹は絹さやの筋取りに戻る。真人だけが見つけた。その耳がしっかり赤くなってることを。
「できたぞ」
 ぶっきらぼうに言って、夏樹は絹さやを真人に寄越した。
「買物、行ってくるからな」
「うん、頼みます」
 それに返事もせず、軽く手を上げただけでふらりと出かけてしまう。その後姿を見送って
「充分、優しいよ」
 真人はそうひとりごちた。
 夏樹が珍しく買物に行った先は鶏肉屋だった。最初は、自分でするつもりだったのだが
「せっかくだからそっちにしろ」
 そう夏樹が言うのでそういうことになったのだった。
 せっかく、と夏樹が言ったもの。それは春真を喜ばせるためのクリスマスのご馳走だった。

 春真が帰ってきたとき、食卓の上にはすでにご馳走が並んでいた。目をまん丸にしている春真に真人は微笑んで
「手を洗っておいで」
 そう促すのだった。
 大急ぎで戻った春真が見出したものは大きなもも肉のスモークチキンに綺麗なちらし寿司、それにうっとりするようなバタークリームのケーキ。
「すごい」
 春真が真人を見上げて嬉しそうな笑う。
「良かった、頑張ったかいがあったよ」
「これ、みんな真人さんが」
「鶏は伯父様が買ってきたくれたんだよ。それからケーキもね」
「すごい」
 再び言ってはケーキを見る。
 艶々のバタークリームの上にはチョコレートの人形が飾られている。それから薄いピンク色をしたバラの花がクリームで形作られてもいる。
「絹さやの筋も取ったぞ」
 笑いながら夏樹が言う。
「そうそう、海老の尻尾も取ってくれたね」
 真人も笑って答える。
 ちらし寿司は真人の労作だった。酢飯の上には海老に穴子、漬けの鮪が乗った豪華版。それを椎茸の含め煮の茶色、絹さやの緑、桜でんぶが飾り、さらにさらに錦糸卵が金色に輝いている。
「おいしそう」
 今度は夏樹を見て春真が笑った。
「さぁ、いただこうね」
「伯父さん」
「ん」
「ありがとう」
 夏樹は答えず。ただ黙って伸ばした手で春真の髪をくしゃくしゃにするだけだった。

 春真はすっかり騒ぎ疲れて眠っている。それを起こさないよう真人はそっと抱き上げて、布団に寝かしに行った。
 微笑んでは静かに指を伸ばして口元を拭う。春真の唇の端にはまだチョコレートが残っていた。
 興奮しすぎて疲れたものか、歯磨きもせずに眠ってしまったのだ。年に一度のことだから
「そのまま寝かしてやれ」
 そう夏樹が言うので今こうしているのだった。立ち去り際にもう一度布団を春真の肩まで引き上げる。あどけない寝顔だった。
「起きなかったか」
 居間には夏樹が一人、定位置に座って庭を眺めていた。
「うん、よく寝てる」
 言いながら二人分の茶を淹れた。
「はい」
「ん。……お疲れさん」
「あなたも」
 目を見合わせては笑み交わす。
「あ。雪」
「本当だ」
 庭を見れば、いつの間にかちらちらと白いものが落ちてきている。真人はつ、と立ち上がり寝室から丹前を手に下げ戻ってくる。それを夏樹の肩に羽織らせれば、黙ったまま彼は真人の手を取り自分の隣に腰下ろさせる。
「もう少し早かったら、ハルが喜んだろうにね」
 肩越しに、廊下を挟んだ向こう側、春真の眠るほうを見返っては真人が言う。
「そうだな」
 言いつつも手を伸ばしては真人の肩を抱いた。
「上の空だ」
 それを見ては真人が笑う。
「そりゃあ、な」
 真人の頭上で苦笑いの気配。
 おかしい、とも思う。まるで子供の両親のような互いの振る舞いが、おかしいとも思う。一人息子を寝かしつけたあと、こうしてほっと一息ついている。そんなのは自分たちの間では間違っている。
 けれど、理性のその声が真人はちっとも変だと思えない。別段、子供がいなければ会話がないなどと言うこともなかったし、いままで二人、仲良くやってきた。それは春真がいようといまいと変わらない。
「真人」
 呼び声に愛しい人の顔を振り仰ぐ。何度してもいつも新鮮な甘いくちづけ。普段着の、着慣れた紬に頬を埋めれば夏樹の体温が温かい。
「楽しいものだね」
「なにがだ」
「あなたと二人でいるのはいつも楽しいよ。でもハルと一緒に三人であんな風に食事をするの、すごく楽しい」
「まったくだ」
「……あなたも」
「まぁ、子供は苦手だがな。楽しかったさ」
 そうして夏樹は春真にしたように真人の髪をくしゃくしゃにした。
 照れているのかもしれない。自分の言ったことに。真人はふと思う。あるいは夏樹にとって「家族」とした食事と言うものはこれが最初だったのかもしれない、と。
 夏樹と自分と春真と。これが束の間の幻想に過ぎなくとも。夏樹にとっての初めての「自分の家族」ならば。
「……大切にしよう」
 知らず声に出して呟いた。
「なにがだ」
「ううん。なんでもない」
 微笑んで夏樹の腕を抜け出した。そうして真人が持ってきたのは。
「なんだ、取っておいたのか」
「うん、一緒にと思ってね」
 あの春真と半分ずつに分け合ったチョコレート。掌に乗る二つの銀紙に包まれたそれがことの外大切なものに思える。
 破いてばらばらにしてしまわないよう、そっと銀紙をはがす。
「はい」
 笑って夏樹に差し出した。
「俺は、いいよ」
 苦笑して断ろうとする夏樹に真人はまた笑って見せる。それか自分の唇の間に、それを。
 そしてそのまま彼の唇に自分の唇を寄せ。体温に溶けたチョコレートが、甘かった。
「珍しい」
 ぼそり、夏樹が呟く。
「なにが」
「お前がこんなことするなんて、な」
「おや。お嫌でしたかね」
「誰もそんなことは言ってない」
 言って夏樹はまだ真人の唇に残るチョコレートを舌先で拭い取る。
「ただ、珍しいなと思っただけさ」
「だって、クリスマスでしょう」
「だからなんだ」
「贈り物がつきものだって、言うじゃない」
 今度は真人が彼の唇をそっと舐めてはにやり、笑う。
「……ずいぶん、豪勢な贈り物もあったもんだ」
 真人の髪に手を差し入れ、夏樹がその目を見る。夏樹の目はかすかに蒼味を帯びていた。
「夏樹」
 真人の呼び声は言葉になる前にかき消え。
 深々と降る雪が、知らず庭に降り積もる。二人が身を起こした頃には、あたりは一面の銀世界となっていたのだった。




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