40代のサラリーマンA氏の話 〜NIGHT IN T国一夜の夢 その1
マスター:T国には何年いらっしゃったのですか? A氏 :約3年だね。日本の戦後よりひどいんじゃないか。混乱しているね。やりたい放題だ。常に命の危険と背中合わせ。 マスター:それじゃあ、苦労なさったんでしょう。 A氏 :まあ、喜んで行くヤツは少ないやね。命令とあればってところか。ただね、いいこともある。 マスター:どんなことです? A氏 :例えば、そうだな。物価が安い。しがないサラリーマンも、金持ち気分だ。もっとも、大して金を使うところもないんだが。そんなことより、俺たちにとっちゃオイシイ話がある。日本じゃとても考えられない。 マスター:どうやら、面白いお話のようで。 A氏 :そうともさ。つまりね、法律のタテマエなんか通用しない。インモラルな商売も何でもありさ。政府も、国の懐が潤うことなら大抵目をつぶる。よそにも国をあげて麻薬を売ってるところもあるくらいだしね。泣かされるのはいつも弱い立場の人間さ。 T国では売春に人身売買さ。まあ、どっかの金持ち国のオジサン連中が買春ツアーに出かける国もあるが、俺にとってこの国がありがたいのが、子供の売春、それも男の子の売春が日常茶飯事だってことだね。ヨーロッパの金持ち連中もけっこう来てるぜ。気取り屋にも好き者は多いってことなのさ。 3年間で沢山子供を抱いたが、やっぱり一番印象に残ってるのは初めての時だね。日本では抱けても高校生だ。俺はイマイチ燃えないね。日本人のガキが抱ければ一番いいが、手が後ろにまわっちまう。T国なら東洋系だから、結構燃えるぜ。上玉がいっぱいいたなあ。 初めての時は、現地の社員に聞いたんだ。日本語が話せるヤツを捕まえてよ、誘導尋問で、ポン引きやってるヤツを見つけるんだ。向こうも日本人は金持ってるって思ってるからな。渡りに船ってヤツだ。すぐに、少年専門の売春宿に案内してもらうことになった。 日が暮れてからダウンタウンを歩くとよ、けっこう恐ろしい。麻薬中毒で目がイッてるヤツもいるしな。そのうち、そういう地域に着いた。男娼がいっぱい立ってるんだ。十歳以下の子供もいるぜ、もっとも数は少ないがね。声をかけてくるのもいた。俺の横にポン引き親父がいるのに気がつくとすぐにひっこんだがね。結構インパクトがあったのは道路端の空き地で、おっさんのをくわえている坊やがいたことかな。寝るのの四分の一ぐらいお手軽に稼げるんだって親父が言ってた。金に困ると親が「出稼ぎ」に送り出すこともあるんだと。 さて、やがて3階建てのぼろアパートに着いた。今にも壊れそうなお化け屋敷だったね。中へ入ると異常に暗い。明かりが少ないんだ。おっかなびっくり親父について階段を上った。踊り場について、俺は驚いたね。まあ、あんなに驚いたことはない。何を見たと思う?」 マスター:じらすじゃありませんか。 A氏 :ふふふ。そこには男の子がしゃがんでいた。それも全裸だぜ。何と首輪をつけて、鎖で繋がれてんのさ。俺たちが上がってきたのに、うつむいたままぴくりともしない。俺は立ち止まってしげしげ観察してしまったぜ。ほっぺたこそ少年らしく肉がついていたが、栄養不良らしくやせっぽちだった。髪の毛はバサバサ、垢だらけでさ、首の周りなんかひびが入ってたくらいさ。よく見ると、痣と生傷が全身にある。新しいのやら、古いのやら。横には金属製のボウルが置いてあって、水が半分ほど入っていた。 俺は親父に聞いてみたんだが、「さあ」と首を振るだけさ。こともなげによ。こっちがこんなに興奮してるのに、って思ったなあ。とりあえず、名残惜しいが俺は親父について階段を上った。上ってすぐの部屋に入ると、妙にけばけばしい内装だった。奥におっさんが一人偉そうに座っていた。茶色いグラスをかけて、派手なシャツを着て、見るからに怪しげな野郎だったな。茶色眼鏡は俺に商品を見せるという。それで隣の部屋に行くと、狭い部屋に十人くらい男の子がいた。まあ、平均年齢12歳ってとこか。上は十五、六。一番年下のは、多分8歳くらいだぜ。まあ、その時の俺は目が肥えてないから、よくわからなかったがね。一番年下のは、粗末な白いシャツと半ズボンで、細い足は小刻みに震えていたっけ。まあ、それでも、こぎれいにしてある方だと後で思ったな。やっぱり商品だからだな。栄養状態もそう悪くないみたいだった。だけど、かなり躾というか、厳しくされてるようで、見るからにおびえていた。年上の子なんかは、こっちに笑いかけてるんだが、そうするように指示されてるんだろうな。引きつってた。俺は、内緒で親父に聞いてみた。こういう子供はどうやって「調達」するんだってな。たいがいは、親が売り飛ばすらしい。その他、町のストリートチルドレンとやらの中で良さそうなのを引っ張ってくることもあるらしい。自分から来るヤツはまずいないってさ。そりゃそうだろう。 |