若手フリーライターN氏の体験 〜H国現代奴隷品評会見聞録 その2
マスター:先をうかがってもいいですか?
N氏 :ああ、そうだった。最初の少年が幕の奥に引っ込んで、「味見」候補者もずらずらと消えていった。奥の部屋でのお楽しみを見物というわけにはいかなくて、僕はそのまま次の商品が連れてこられるのを待っていた。次に連れてこられたのはあまりにも幼くて、僕はそれに驚いた。せいぜい十歳位じゃないか。もちろん毛は生えていないし、性器の形が、なんだ、つぼみのような、未成熟なかんじだったからね。その子の顔は紅潮していて、泣きべそをかいていた。まあ、そんな感情が表に出るくらいなら、まだそうひどい目にはあっていないっていうことだ。僕はその子が欲しいと思ったけど、買えたとして、置いておく場所もないわな。やっぱりこれは金持ち向けの商品だ。その子の品定めは胸が高鳴ったよ。反応が新鮮でね。前や後ろをいじられるたびに、細い声を上げて反応するからな。
マスター:そういえば、その「商品」というのはいくらぐらいするものなんです?
N氏 :それも聞いた。少年一人、数十万から上は数百万だと。ぴんきりだが、人間一人が車と同じレベルだなんてね。犯罪としては、ハイリスク、ローリターンだね。それでも商売として成り立つから不思議だ。人間、金に替えられるものは何でも替えてしまおうって言う業を背負っているんだな。
さて、僕がもっともインパクトを受けたのが、五番目の少年だった。彼は、荷物を運ぶ台車に載せられてステージに現れたよ。なぜなら、その少年は自分で歩くことができなかったからだ。
マスター:ひょっとすると・・・
N氏 :そうだ。彼の両足は付け根から先がなかった。肩から先の両腕も無かった。切断された四肢の断面は、皮膚が寄せられて、かなり雑に縫い合わされていた。僕はあまりの衝撃に言葉を失って、心臓の鼓動の高鳴りを感じていた。
少年はやはりタグのかけられた首をわずかに揺さぶって、観客たちの無遠慮な視線に目を向けた。その目に感情は乏しくて、すでに喜びも悲しみも忘れたかのようだった。少年は脇をかかえられてステージにあげられた。