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報道写真家F氏の話〜隻腕の少年 その1

[マスター]:はじめてのお客さんですね。……失礼ながら、日本の方でしょうか?
[F氏]:ははは、れっきとした日本人ですよ。でも、ここ数年は東南アジアにいる期間の方が長い。ほら、TVなんかで海外特派員なんかを見ると、どう見てもその国の人にしか見えない日本人がよくいるでしょう。その国の暮らしに馴染めば馴染むほど、風貌も変わってくるものらしいですよ。自分では気付かないんですが。
[マスター]:これは失礼しました。東南アジアですか。あのあたりには比較的たやすく少年を買える場所がいくつかあるそうですね。
[F氏]:ええ、いくら批判されても、性風俗産業抜きにしては国が立ちゆかない。かてて加えて人権意識が低い。日本も人のことは言えないんですがね。「おしん」じゃないが、子どもの人身売買は日常的に行われていたし、女工哀史の歴史に見るまでもなく、無力な人間の命すら踏み台にして富を得て肥え太った人間もいた。
 ごく限られた大都市に富が集中する中で、人身売買ブローカーは地方を歩いて、貧しい村の貧しい家庭から子どもを買い、あるいは労働力として、あるいは性の商品として、都市部の人間に売るのですな。不衛生な工場に鎖でつないで、二十時間近い労働を子どもに強いていた例もあった。個人経営の織物工場の女主人ですが、働きが悪かったり体を壊して寝床から出てこられなかったりするのを棒材で殴るんで、度が過ぎて子どもを病院に運ばざるを得なくなり、それがきっかけで多くの子どもがNGOの協力のもと救出され、そのケースは手柄顔のNGOのホームページに載っています。極度の栄養失調から視力を失ったり、殴られどころが悪くて、下半身が不自由になった子ども、十二歳にも満たない少女が、顔面に大火傷で、女だからというわけじゃないが、もう元の顔には戻らない悲劇。周囲に住んでる人間もある程度わかってたはずなんだが、地方から出てきた人間は、それだけ差別され黙殺されているのか、あるいは、日本の都市部と同じで、誰もが無関心なのか、「救われない」子は無数にいるでしょう。この女主人は欲の皮が突っ張ってる上にあまりに愚かでした。もう少し「加減」というものを知っていれば子どもの血を吸い続けて太り続けることもできたでしょう。

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