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ガイドの三木 4

 ベッドの上から首をあげて男の様子を見ると、自分の小さなナップサックの中から、何か出そうとしているようだった。ナイロンの巾着袋がつまみ出され、そこから、歯磨きのような金属製のチューブが引っ張り出される。袋をぞんざいに投げ出した男は、チューブを持って戻って来た。
 ジェスチャーが、うつ伏せになるようタケオに命じている。タケオはためらったが、西洋人の男の目つきは、すわり気味のように見え、有無を言わせない感じがした。タケオは全裸の体を回し、尻を客に向ける。
 ひやり、とした感触があった。あのチューブの中身が、尻の間に流され、男の指が尻の割れ目の間に、それを塗り伸ばしたのだ。
 「No...」
 体格や「ベッドの外」の印象に合わない、弱々しい声が、ますます男を興奮させたようだ。中指が、指の腹を上に、押し込まれた。たまりかねてタケオは片足を思い切り突っ張って叫んだ。
 「No,No fuck!」
 だがその足を男の膝で押さえられ、体を返そうと上げた肩を、手で押さえられた。その押さえる手の力の込め方が、これ以上抗った場合の男の暴力を予感させ、タケオは、力を抜いた。
 尻の双丘の間を指が往復し、液が足され、また指が入り込む。タケオはすすり泣いた。
 タケオの体の下に、男のローションまみれの手が入り、何か言っている。腰を上げろということらしい。タケオは素直に四つん這いになった。膝を突いた足の間から手が入ってきて、タケオの性器を、ローションまみれの手でいじり始めた。
 (あ、あ……)
 快感がタケオを襲う。特に通常、痛いはずの、露出されられた未熟な亀頭への、親指による強めの愛撫。ローションがからめられていると、時折強烈な快感が脳天を突き抜けた。声が漏れそうになるのを、タケオは枕に口を押しつけ、こらえていた。あっという間にタケオの性器は限界まで勃起した。快楽に耐え身を捩りくぐもった声を枕の間から漏らし尻を揺らす自分の姿が、後ろの外国人をどれほど欲情させているかなど、十二歳の、ゲイ的自覚も何もないタケオにはわかるはずもない。
 また指が入ってきた。からだを固くして、足をばたつかせるくらいしか、抗議の手段はない。もうノーと言っても無駄だ。むしろ逆効果かもしれない。
 背中や肩、足などを触られ、引っぱられるままに、ポーズを変えると、枕に顔をうずめ、頭は下げて、足はそろえ、尻を高く上げるポーズをとらされた。
 そして、男が一度、ベッドを離れ、また背後に戻ってくる。体温とベッドの揺れ方でわかる。目はかたく閉じたまま。男が背中や肩を愛撫していた。抱きすくめられ、背中に舌を這わせられながら、性器をいじられた。しぼみ加減でも、またすぐに戻る。そして指が、また穴に入っては抜ける。割れ目の上の方から、股のあいだまでローションでじゅくじゅくのところに、男が腰を最初押しつけ、そして何度も、ぶつけはじめた。弾力のある指より太いものが、押し込まれ、抜かれ、出入りして、お尻の前で時々踊っているのがわかった。タケオは、ファックされている、と思った。

 意思の疎通が不自由な不幸で、お互い行き違いがあった。
 スペンサーは途中で、ものすごく力んでいるタケオの様子から、バックは難しいと考えた。ショートタイムだというのに、入れようとがんばってる間にこっちの元気がなくなるかもしれない。また泣きそうなタケオの様子に、少し気が引けたのもある。
 そこで少年の負担は軽く、快楽は十分なスマタで楽しもうとしたわけだ。スペンサーのペニスはぴったり合わされた、ローションでずくずくに濡れた、タケオの健康な太ももに挟まれて、快楽をむさぼっていたのに過ぎない。
 一方愛想が悪く、外人受けもよくなく、無論ゲイ的性質もなく、客にとってサービス下手のタケオは、アナルセックスの何たるかも知らず、てっきり自分はお尻を犯されたと思い込んで、三木のフォローが入るまで落ち込み、スペンサーを恨み、かつこわがっていたようである。

 スペンサーは激しく腰を使い、強烈な頂点の感覚を味わうと、タケオの尻や背中に、飛沫をたっぷりと飛ばした。しばらく、白い粘つく飛沫とローションにまみれたタケオの背中と尻を、荒い息で見下ろしていたが、からだを固くして、すすり泣きをも漏らしているようなタケオの様子に、罪悪感を覚え、穏やかに促して、タケオをバスルームに導いた。

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