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チビ玉とジョージ 1

 オープンテラスのビアバーで、三木はライオン印のぬるいビールをラッパ飲みしていた。
 ライオン印はドイツを中心とする欧州以外ではわりと評判のいい国産酒類メーカーである。多様な混ぜもので矯味してあって肝心の麦の品質はあやしげだが、頃合いの値段と「くせになる味」で子ども舌の酒飲みを惹きつける。本場では鼻にもかけられないのは言うまでもない。
 きんと冷やしたのをグラスに注ぐと値段が五倍になる。だから三木はぬるくても瓶を注文するのだ。ママに「ドケチ」呼ばわりされてももう気にならない。

  奥の暗がりではアラブ系と見える暗がりでは目も鼻も見えず口髭だけが見える巨漢のでっぷりと太った男の膝に、チビ玉がのっかってコーラを飲んでいた。瓶を置くとちょろちょろ動き回って横にぴったりとくっつき、男の襟首から小さな手をつっこんで乳首をまさぐったりしている。酔っているらしい石油成金デブ(と、三木が仮に呼ぶことにした男)はチビ玉のズボンの中に手を突っ込もうとして手をひっぱたかれていた。そしていくらかを懐から出し、チビ玉に握らせる。チビ玉は金を半ズボンのポケットにつっこむと、ひょいと腰を上げ男の黒い顔に軽くキスをする。満面の笑顔だ。

 再び、男の横にぴったりとくっつく。そしてまた股間に這ってきた手をつねるのだ。

 二度目のチップをもぎ取るところを見て、三木はふっと失笑を漏らした。たくましくなったもんだ。いい意味でも悪い意味でも。
 チビ玉はポケットから手を出し、ソファにだらんともたれた。男の手がズボンに入る。入る前から小さいのを勃起させているだろう。芝居というか、もう条件反射みたいなもんだ。いやもはや習性というべきかな、ここに生きる子たちの。
 男の興奮が闇にも窺える。チビ玉は男の空いた手を引っぱって、自分の一枚きりのシャツをまくって下から入れさせ柔らかな腹部にこすりつける。
 そして男がチビ玉の唇を奪おうとすると、さっと彼は身をかわす。

 かけひきは続き、チビ玉は値段をつり上げるだろう。親方が仲介に入り、親方にもチップが入る。
 チビ玉は誰かツレを引き込んで複数でショートか、あのターバンならかなりの金持ちだろうから泊まりコースに持ち込む。
 ターバンの石油成金が、チビ玉をいたく気に入って、彼が連れてきた邪魔者を追い出したいなら、彼らにもオフ代を仕事無しでも払うことになる。
 こうやってチビ玉は、自分の味方を同輩先輩後輩に、常に一定数作っている。時には彼らを使って、自分のライバルになりそうな少年をいじめるとも聞いた。

 やがて石油成金が席を立ち、十分後にはチビ玉がコーラの残りを誰かにやってソファから腰を上げた。
 よい金づるがいるときは、チビ玉は三木などいないかのようにふるまう。もちろんいるのを知らないはずはない。

 あの小さなからだと愛くるしい顔立ち、むき出しの愛嬌。しかし十歳にも達していないように見える体格ながら、実際は十二歳くらいらしく、最近だが精通したそうだ。それを聞くと三木はもう一度抱きたいような気が少ししたが、何やら口惜しいのでそれは求めない。
 日本がクソ暑い欧州のバカンスシーズン、彼はその気なら二十四時間休みなく客がつくほどのもてようだ。一ヶ月別荘に囲いたいという外国人もいるが、彼はそれには乗らない。外国人達のつばぜり合いを楽しんでいるのだろうと三木は考えている。

 チビ玉は誰かのスクーターの背に乗って、おそらくあの「石油成金デブ」が待つホテルに向かった。

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