〜イングラムの愛〜
思いもよらない突然のセリフに2人は言葉を失った。
そんな2人の顔をクォヴレーは交互に見る。
「・・・だってこの前カフェテラスでデートしていたし・・・
家にも遊びに来ていたし・・・オレはてっきり・・・」
衝撃を受けたような顔をしてエクセレンは
イングラムの肩越しに顔を出しているクォヴレーに詰め寄る。
「ち、ちがうわよ!!誤解よ!!
確かに私のダーリンは少佐みたいに無口で無愛想だけど!!」
「(・・無口で無愛想・・俺が??)」
「少佐じゃないわよ!!私の彼はキョウスケ・ナンブっていうのよ!!
まちがってもこの独占欲の塊のような体力バカじゃないわ!!」
「(独占欲の塊のような体力バカ・・・俺が??)」
「なんでそんな考えになったの??」
「(まったくだ)」
「・・・この前会った時『悔しい』とか『彼はタフ』とか言っていたから・・
てっきりイングラムと・・・その・・寝たことがあるのかと・・・」
「(そういえば言ったわねん)・・あれは、私のダーリンが淡白な性格だから
少佐のような独占欲かたまりの人に独占されて羨ましいと言う意味で
『悔しい』と言ったのよ!『タフ』は少佐いつも体力テストぶっちぎりだから・・」
「・・・そうなんだ・・・(あれ??じゃあ、ヴィレッタが言っていた
『もう決まったの?』ってどういう意味だ??)」
腕の中でなにやら考え込んでいるクォヴレーの顎を指で持ち上げ自分と視線を合わせさせると
「お前・・そんな風に俺達のこと誤解していたのか??」
「・・・だって・・・楽しそうにテラスで話していたし・・
家にも来ていたし・・・家??じゃあ付き合っていないのならなんで家に??」
再びエクセレンに視線を戻すと彼女は優しく微笑みながら、
「それは少佐に直接ききなさいな、私は下に報告に行ってくるから」
エクセレンが出て行くと部屋には重たい沈黙が訪れる。
なんとなくイングラムと視線が合わせられなくて下を向いていると
「・・・お前、だから俺に結婚しないのか?と聞いてきたのか?」
「・・・ああ」
「ではなぜ施設に行く、だなどと言ったんだ??
例え俺が結婚してもお前の保護者は俺なのだから・・」
「・・・・った」
「??」
「邪魔してはいけないと思った・・」
「・・・邪魔??」
「イングラムは・・ずっとオレの面倒をみてくれた・・・
オレがいるから彼女を家に連れてくることも出来なくて
結婚できないのだと・・・だからせっかく彼女が出来たのなら
オレは施設に行き・・幸せになってもらおうと・・」
「・・・・・」
「イングラムに幸せになってもらいたかった・・・オレ・・オレは」
「・・・『オレは』?」
クォヴレーは顔を上げ、真っ直ぐにイングラムを見つめると
「イングラムが・・好きだから」
無表情にクォヴレーの告白を聞くイングラム。
「・・・最初は家族として好きなんだと思っていた・・
でもイングラムが結婚するとわかった時心臓が苦しかった・・」
「・・・・・」
「あの男に・・襲われている時もずっとイングラムが・・
イングラムが浮かんできて・・」
「・・・・・」
「どんなにひどいコトされても・・オレは・・」
「・・・・・」
「嫌われているとわかっているけど・・でもオレ、
オレは・・・イングラムが好きなんだ!」
イングラムは一瞬大きく目を見開いたがやがてすぐに無表情に戻る。
そして静かに語りかけてきた。
「家族として、好きなのか?」
ブンブンと頭を横に振ると
「・・・家族ではなく・・多分・・恋愛感情として・・」
「・・・!」
「オレは・・まだ恋とかよくわからないけど・・
イングラムが結婚するとわかったときモヤモヤしたり
どんなに痛いことされても嫌いになれないのは・・・それ、は」
その先の言葉を遮るようにイングラムは小さな身体を力強く抱きしめ始めた。
セミロングの髪が頬に辺り顔が近づいてくる。
「・・!イングラム??」
唇と唇が一瞬触れたかと思うと
クォヴレーは力の限りで抱きしめてくる相手をなぎ払う。
「クォヴレー??」
「・・あ・・ダメだ・・」
「何故だ?」
「・・イングラム、はオレが嫌いなんだろ?」
「どうしてそう思う?」
「・・閉じ込めるし」
「・・・・」
「痛いこと・・するし・・」
「・・・・」
「・・・でもたまに優しかったり・・・あれ??」
不思議に思いイングラムを見上げる。
「どうして嫌いなのに・・優しくしてくれるんだ??」
「・・・わからないか?」
真っ直ぐに見つめながら聞いてくるイングラムにコクンと小さく頷くと
「わからない・・特にここ最近のイングラムは・・わからない」
「そうか・・わからないのか」
「どうして・・あんなことしたんだ?」
クォヴレーの頬に両手を添え、真っ直ぐにその瞳を見つめる。
そしてポツリ、と話し始めた。
「お前が、施設に行くと言った時行かせたくなかった」
「え?」
「・・・確かにあそこにはお前と同じような境遇の子がたくさんるから
『気を使わなくてすむ』のだろうが・・俺にはその言葉は
地獄行きを宣言されているのと同じだった」
「・・・なぜだ?」
「お前が好きだから」
「!」
「俺はもうずっと・・お前が好きだった。もちろん恋愛対象として」
「・・・うそだ」
「嘘じゃない。俺のために俺と一緒に泣いてくれた幼子に俺は心を持っていかれた・・・」
「・・・・・」
「多分、気になり始めたのはあの時だ・・・」
「・・・・」
「自覚し始めたのは一緒に暮らし始めてからだが」
「じゃあなんでひどいことしたんだ?」
「俺から離れていこうとするお前をどうにかして繋ぎとめたかった。
・・・結果あんなひどいことをしてしまったが・・・。」
「・・・・」
「お前を俺のもとに留めるために必死だった。気がついたらお前を押し倒し・・犯していた」
相変わらずイングラムは真っ直ぐに見つめてくる。
気恥ずかしくなったクォヴレーは視線を逸らそうとするが
力強く両手で頬を押さえられているため逸らすことが出来ない。
「酷いことをした・・・ひどい暴言を吐いた・・
『養育費を身体で払え』などと・・・
お前は自分のお金で学校へいっているのに、だ」
「え?」
「お前のパパとママが残してくれたお金だ・・軍からの見舞金」
その言葉にクォヴレーはあの男が言っていたセリフを思い出す。
「あ!・・イングラムにお礼を言わなくてはいけない」
「礼??」
「パパの濡れ衣をはらしてくれた・・・」
「!?」
「だからそのお金はイングラムのおかげでオレに送られたものだ。
つまりイングラムがオレを育ててくれたということだ」
「クォヴレー」
イングラムは優しく微笑みながら唇を近づけていく・・・。
唇と唇が一瞬触れたかと思うと
クォヴレーは力の限りで抱きしめてくる相手をなぎ払う。
「クォヴレー??」
「・・あ・・ダメだ・・」
「今度はなんだ?なぜダメなんだ?」
「だって・・・」
「だって?」
「オレ・・あの男の・・・性器・・咥えて・・・飲んだ・・」
「・・・!?」
驚いたようにクォヴレーを覗き込むと酷く傷ついた顔をする。
「すまない・・・もう少し早くきていれば・・・」
「いいんだ。イングラムたちは来てくれた・・・
でもオレはお前とキスする資格がない・・・」
「資格??」
「オレは汚れている」
「そんな事はない」
イングラムは強引にキスを交わそうとする。
しかしクォヴレーはその口に手をあてそれを遮る。
「ダメだ!!オレの口、アイツの精液で・・・」
「だまれ・・!」
「・・・・イングラム」
「・・・俺を好きなら・・おとなしくキスさせろ・・!」
「イン・・・んっ・・・」
それはあの男としたキスとは全く違うものだった。
熱い唇で上唇と下唇を甘噛みされ、熱い舌で上顎と舌の下部分を舐められ
互いの舌を絡ませる。
イングラムの舌が彼の口の中へ戻っていくと今度はクォヴレーの舌が
彼の舌を追いかけるようにイングラムの口の中へ進入していく。
歯列にあわせ舌を動かすとイングラムの熱い舌が再び絡まってくる。
甘い痺れが2人の身体を支配していった・・・。
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