〜NIGHTMARE5〜




雑魚ばかりであった。
キャリコはイライラしながら敵を蹴散らしていく。

「(こんな弱い連中に邪魔されるとは・・・それにしても)」

チラッ・・とスペクトラの小隊へ目を向ける。
だが探している機体は見つからない。
もう一度、今度は自分の小隊へ目を向けた。
・・・だがアインの機体は見つからない。

「(・・アイン?一緒に格納庫へ到着したというのに・・なぜ出てきていない?)」






戦闘を終え、機体を格納し終えると真っ直ぐにその人物のところへ向った。

「メム!」
「・・・ギメル?」

胸ぐらを掴むと、メムに詰め寄った。

「アインは?」
「は?アイン???」
「とぼける気か??」
「・・・どうして俺がとぼける必要が?本当に知らねーよ!」

キャリコの手をなぎ払い、
メムは仮面の下でクス・・と笑うと、

「アイツと最後まで一緒にいたのはお前だろ?
 ・・・俺はスッキリさせてもらってから一度も会ってない」
「・・・お前」

ギリ・・・と歯をかみ締めるキャリコ。
仮面の下からのぞいている口元が切れてしまいそうなくらい歯を食いしばる。
『スッキリさせてもらってから』という言葉に怒りを感じたのだろう。

「ま、いないのは心配だよな・・俺もさがすよ」
「・・・必要ない!・・・どうせ彼等に捕まったんだろう」
「彼等?・・・あぁ・・・」

ポンッと手を叩くと、

「あいつ等ね・・・あのチーフ・・アインがお気に入りらしかったからなぁ・・」
「そういうことだ」

キャリコは急ぎ研究室へ足を向ける。

「(どいつもこいつも変態で腹の立つ・・・!アイン・・平気だろうか?)」

急ぎ足で向うが、研究室までは格納庫からは遠かった。
格納庫が南にあるなら、研究室は北・・・そういう位置関係なのである。





「・・キャ・・ギメルです・」

やっと研究室まで到着し、少しだけあがった息を整えると
コンコンとドアを叩いた。
しばらくしてドアが開かれる。

「・・・なんだ?」

出てきたのは珍しくもバルシェム開発チームのチーフと呼ばれる男であった。
いつもならばもっと下っ端の連中がドアを開けるというのに。

「お前達は戦闘中のはずだろう?」
「・・・終わりました」
「そうか・・・それで?なんの用だ?」
「・・・アインはココでしょうか?」
「アイン?」

アインの居場所を尋ねてくるキャリコをうっとうしげに手で追いやろうとする。

「アインは今ある実験に協力してもらっている!お前は邪魔だ」
「・・・実験?」
「・・・新薬の実験だ」
「新薬・・・?」

一向に帰ろうとしないキャリコに腹がたったのか、
チーフはフンッと鼻で笑うと・・・

「ギメル・・・お前も飲むか?」
「・・・は?」

ポケットからカプセルを一つ取り出しキャリコに手渡した。

「・・・これは?」
「新薬だ・・・毒ではない・・・お前達にも1回は効くはずだ・・
 効き目は飲んでからおよそ30分後に現れる・・・」
「30分・・・」
「どんな結果になったかは後でレポートにまとめて提出するように・・
 わかったら今すぐ部屋に戻ってそれを飲め!」

・・・これ以上ここにいてもアインは連れ戻せない。
キャリコは諦めてその場を後にするしかなかった。

「・・・了解」


乱暴に研究室のドアが閉められる。

「・・・・?」

何故あのチーフはあんなにイライラしていたのだろうか?
研究員はいけ好かない連中ばかりだが、
あのチーフはどちらかというと穏やかな部類であったはずだ。

「(考えてもどうにもならないか・・・)」

キャリコは薬を握り締め、自分の部屋へと戻っていった。















「・・・ぅ・・・ぁぁ」


白いシーツの上で苦しそうに悶える白く小さな身体。
しなやかに身体をしのらせ、物欲しげに傍に座る人物を見ていた。


「・・・最近開発がおろそかになっていると思っていたらこんなことになっていたとは」

長い銀の髪がパサッ・・・と悶えている人物の頬にかかる。

「閣下・・!閣下・・どうぞお許しを!!」

白衣を纏った男達が土下座をしてその男に許しを請うていた。

「・・・小さなバルシェムだ・・なぜこのような少年を?」
「・・・小さき身体はなにかと便利かと・・・」
「・・・確かに姿が子供だと油断する・・それが人間だが・・・」

シヴァーは少年の頬をゆっくりと手袋をはめた指でなぞった。
するとビクンッと身体は痙攣し、物欲しげにシヴァーを見つめ返す。

「何故、こんなに熱くなっているのか・・」
「・・・し、新薬のテスト・・を・・」
「ほぉ・・?新薬?」
「び、媚薬でございます。閣下。媚薬で相手をかどわかす作戦に使用しようかと・・」
「・・・媚薬・・だがこのバルシェムは苦しんでいるように見えるが?」
「・・・効きすぎたのでしょう。バルシェムに効かず、人間にはよく効く媚薬の開発中です」
「・・・フフ・・そういうことにしておこう・・久々にいいものが見れたことだからな」
「・・・いいもの・・?」
「・・そちらの趣味はなかったが・・・この老いた体に再び熱が灯るとは思わなかった」
「・・・閣下?」
「バルシェムならば問題なかろう?」
「閣下・・まさか・・」

研究員は青ざめながら、シヴァーに詰問しようとした。
だが、シヴァーは仮面を外し冷たく一瞥すると、

「・・・今から私が良いというまで、誰もこの部屋に入れてはならない」
「か、閣下・・・」
「わかったなら出て行け!」

一括されると、研究員達は竦みあがりその部屋を後にした。
部屋に誰もいなくなると、悶える少年を見下ろした。

「・・・16号・・アイン、か」

手袋を取り外しアインの身体に触れる、小さな身体は細かく痙攣した。

熱い身体に冷たい手が這い、
上着のボタンを外され、突起を転がされた。

「・・・ぅ・・・ぁ・・?」

媚薬に犯されたアインの目には、目の前の人物がぼやけて見える。



『・・アイン・・アイン・・・お前を・・抱きたい』



だが数時間前の会話が脳裏を霞め、
自分に触っている人物は彼に違いないと錯覚をした。


「キャ・・キャリ・・・コ?」

弱弱しく腕を伸ばし、目の前の人物の首にまわす。
シヴァーは面白そうに口端を歪ませると・・・

「・・・キャリコ・・?ギメルか・・・フフフフ・・」
「キャリコ・・!・・キャリコ・・・」

アインの服を全て剥ぎ取り、自身の熱い昂ぶりを外界へ出す。

「・・・愛しいものに抱かれる幻想か・・・それが夢とわかった時・・
 心はどう崩れていくのか・・・フフフ・・ハザルの件もあることだしな・・
 このバルシェムは使える・・・」
「・・・あっ・・キャリコ・・?」
「・・・アイン・・・」
「キャリ・・・あぁぁぁぁ!!」

穢れのなかった蕾に、雄が埋め込まれていく。
シヴァーは眉を寄せながら着実に自身を埋めていった。

「・・・なんときついことか・・なるほど・・まだ穢れのない身体だったのか・・
 クククク・・・ますます面白くなるかもしれぬ・・・!」



「・・ぁぁ・・キャリコ・・・?キャリ・・んぅ・・」


シヴァーの背に腕をまわし、『キャリコ』と叫び続けるアイン。

「・・・アイン」
「・・・キャリ・・・あぁっ・・っ・・ふ・・」














身体が重かった。
瞼をゆっくりと開けるとシーツが酷く乱れているのが映った。

「・・・・・?」

見覚えのない部屋だった。
更に下のほうへ視線を向けると、赤黒い斑点がシーツにところどころついている。
自分の足に目をやると、血液が拭われたような跡が残っていた。

「・・・・?」


とにかく寝台から起きようと身体を動かそうとしたが、
激痛が走りぬけ再び寝台に崩れ落ちていく。






「・・・初めてにしてはなかなかの抱き心地であった」
「・・・え?」

突然背後から聞こえてきた聞き覚えのある声に体が竦む。
バルシェムにとって「あの方」は絶対的な存在である。
アインはまだ数えるほどしか謁見したことがないが、
「声」だけでそれが誰だか悟った。

「・・・シヴァー・・さま?」

シヴァーは仮面を外しており少しだけ乱れた衣服、飲み物グラスを片手に
椅子に腰を下ろしながらアインを見つめていた。




・・・乱れた衣服・・・裸の自分・・・激痛が走る体・・・




みるみるうちに青い顔になっていく少年を面白そうに見ながら、
シヴァーは言葉を続けた。

「・・・16号、アイン」
「・・・・っ」
「・・・このシヴァー・ゴッツォに呼ばれて返事をしないのか?」
「・・・は」

目線を反らし弱々しく返事をした。
咽で笑いながらもう一度、番号を呼ぶ。

「・・・16号」
「・・・はい」
「その寝台の上で今しがた何が起こったかわかるか?」
「・・・・・」
「アイン・・?」
「・・・それ、は」

ふぃっ・・と顔を背けアインは何も言えなかった。
だがそんな態度が気に食わないのか、シヴァーは静かに語っていく。

「お前は私の背中や首に自ら腕をまわし、よがり狂っていた」
「・・・!?」
「そう、『キャリコ・・キャリコ』と叫びながら」

衝撃に目を大きく見開く・・・けれども言葉を発することは出来なかった。
震える指でシーツを握り、溢れ出そうになる涙を必死で堪えた。
そんな様子が面白くないのか、シヴァーは更に冷たい声で言葉を続けた。

「人形の心はこの程度ではまだ壊れないのか・・?」
「・・・え?」
「・・・私は壊れゆく人形が見たいというのに・・・
 壊れてくれなければ『実験』が続けられない・・・」
「・・・『実験』?」

シヴァーが何を言っているのか全く理解できずアインは呟くように言葉を復唱した。

「ハザルでは試せないのでな・・・人形の代わりはいくらでも造れるとはいえ、
 あそこまで私に従順な人形を直ぐに壊すのは惜しい・・・
 だからお前で試そうと思ったのだが・・・・」
「・・・ハザル指令?」

何故そこで『ハザル』が出てくるのか・・・・
アインはますます意味がわからなくなっていく・・・。

「・・正気の時でなければ意味がないということであろうか」
「・・・・?」

獣を捕らえたような視線に捕まる。
その目は『彼等』と同じ目であった。
身体中に悪寒が走り、アインはジリジリと寝台の端へよっていく。

クッ・・と咽で笑いながらシヴァーはゆっくりと寝台へ近づいてきた。
逃げるアインの足首を捕らえると、

「・・・安心するがいい・・
 年老いた身体ではこれ以上肌を重ねるのはキツイものがある」

『肌を重ねる気はない』と言う言葉に、胸を撫で下ろしながら息をつく。
だが『次の言葉』で『安心』が打ちのめされた。

「私は無理だから代わりの者を用意しよう・・・エイス!」

パンパンッとシヴァーが手を鳴らすと、
何処に控えていたのかエイスが姿を現した。

「・・・アイン、この者とは顔見知りだな?」

無意識に小さく頷くアイン。
シヴァーほどではないが、アインはエイスが苦手だった。
ほとんど喋らないし、どこか得体のしれない『人間』だからだ。

「エイス、アインを好きにしてよい」
「・・・・・」
「!?」
「・・・この薬を渡しておこう、エイス。
 まがりなりにもアインはバルシェム・・
 2回目はほとんど効き目はないだろうが・・」
「・・・・・・」
「・・1回目は私が誰かわからなくなるほど効果があった・・
 2度目もそれほど効果はなくとも効き目は出るだろう」
「・・・・・・」

エイスは薬を受け取ると、仮面の口の部分だけを外した。
キャリコやスペクトラのように口元だけが空気に触れる。

「アイン、エイスは訳ありでなかなか誰かと交じり合うことが難しい」
「・・・・・?」
「エイスはその素顔を晒すを私が禁止しているからだ」

その時、以前キャリコが言っていた言葉を思い出した。
確か幼い頃事故で・・・

「素顔を晒せぬエイスは誰かを抱くことが難しい・・
 だがバルシェムならば別だ・・エイス!」
「・・・御・・意」
「!!?」


纏っている衣服を脱ぎながら、寝台へ近づいてくるエイス。
口の中に受け取った薬を放り投げ、アインの顎を捉えた。

「・・・ぁ・・ぁぁぁ・・」

乱暴に寝台に押し付けられ、唇が塞がれた。
舌を橋に薬が押し込められる。
何とか吐き出そうと頭を振り、エイスを押しのけようとするが出来ない。
終いには鼻を摘まれ、息苦しさに薬を飲み込んでしまった。

「・・ん・・ごくん」

裸の身体にまだ衣服を纏ったままのエイスの体が押し付けられる。

「・・・ひっ」

太股に擦り付けられたエイスの身体の一部はすでに硬く成長をしていた。

「・・ぃ・・ゃ・・・っ」

か細い悲鳴をあげ、アインは暴れる。
だがガッシリとした身体に押さえつけられ身体は少しも動かすことが出来なかった。

「・・・ア、イ、ン」

暴れるせいか、薬が早くまわり始めた。
頭がボー・・としだし、アインは再び自分に触っているのが
誰だかわからなくなっていく・・・。

「・・・ほぉ?やはり強い薬らしいな・・バルシェムに2回も効くとは・・」
「・・・その・・ようで」
「・・・は・・あっ・・ぅっ」
「エイス・・思う存分楽しむがいい・・くくくく」
「・・了、解」












自室に着くと、渡された薬を飲み込んだ。

「(・・・今回は何の薬の実験だ?)」

はぁ・・・とため息をつきながらベッドの上で静かに目を閉じる。

「(・・・アイン・・早く・・この腕に・・・)」

アインを思いながらキャリコは薬の効果が出るのを待った。
その時ドアのノックの音が聞こえてきた。

「キャリコ?いる?」
「・・・スペクトラか?あぁ・・」
「・・・入るわよ」

書類を片手に部屋に入ってくるスペクトラをキャリコは気だるそうに迎え入れた。














「あっ・・・あぁぁ」
「・・・・・ぅ」



シヴァーは冷たく笑いながら軋むベッドの音と、2人分の吐息、
密着部分の卑猥な音を目を閉じながら聞いていた。

アインはもうすでに何もわからなくなっていた。
エイスは仮面を全て取り払うと、後から激しくアインを突いた。

「・・・ぅぅんっ・・・あっ・・・ぃっ・・」
「・・・・・っ」
「・・・っと・・もっと・・・キャ・・リ・・っ」
「・・・・アイ、ン」


「・・・エイス」
「・・・・?」

久々の獲物に夢中になって貪りついていると、主から声がかかった。

「そろそろ薬の効き目も切れる頃だろう・・仮面を」
「・・・御意」

仮面を再び身につけ、腰を揺さぶった。

「・・・あぁぁ・・ん」
「・・・さて、今度こそ人形の心は壊れるだろうか?」
「・・・・・・」









どこか遠くへ行っていた意識が次第に戻ってきた。

下肢に感じる圧迫感。
誰かの荒い吐息と・・・汗の臭い。
自由に動かぬ体・・・・

気だるい瞼をゆっくりと開けると、信じられない光景が目に飛び込んできた。


「あぁぁぁぁぁ!!」

寝台に押さえつけられ、『彼』以外の人間を受け入れていた。

「いやっ・・いやだぁぁぁ!!」

叫ぶアインを尻目に、腰をしっかりと押さえつけエイスは欲望を打ち付けていく。

「ひっ・・・んぅっ・・・あっ・・・痛っ」
「・・・おとなしく・・しろ」
「やっ・・・何故・・こんな・・・うっ」

目を大きく開き、寝台の横に視線を移す。
そこではシヴァーが面白そうに交じり合う自分たちを見ていた。

「(・・シヴァー様?!・・あっ・・そうだ・・オレは・・)んぅっ・・ひぁっ」









「んぅっ!!」


何度も犯された蕾から雄が引き抜かれた。
正気に戻ってからどれ位経ったのか、アインはやっと開放してもらうことが出来た。
エイスの欲望が、白く濁った液体が最後に身体中に振りかけられる。

「・・・やっ」

ニヤッ・・と笑ったかと思うと素早く衣服を纏い、
シヴァーの前に跪くエイス。

「・・・ご苦労、下がってよい」
「御意」

寝台に目線を戻すとアインは下に落ちている衣服を拾い上げ、
その身に羽織っていく。
上手く動かぬ身体を動かし、その部屋から逃げ出そうとしているようだ。

本来なら、バルシェムの親であるシヴァーに一言の挨拶もなく
後にすることは許されない行為だが、
今のアインにそんな事は考えられなかった。
シヴァーも特にそのことに関して咎めることはしない
・・・むしろ面白そうに顔を歪ませていた。


「・・・さて、どう楽しませてくれるのか・・16号よ」


もう部屋にいない存在に向って、シヴァーは愉快気に呟いた。





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