〜スペクトラの観察日記〜
最初は特に眼中になかったのよね・・・。
でもあの人の話を聞いているうちにだんだん目で追うようになっていて・・・。
食堂ではアインがまるで子犬のようにある一点を見つめていた。
一体何をそんなに悲しげに見ているのか?
気になって視線をテーブルに移したら、そこには一つのケーキ。
どうやら「忍耐力」の訓練らしいけど・・・キャリコ・・・貴方・・・。
アインは主人(キャリコ)の「よし」という言葉を必死に待っているみたいだった。
テーブルの下から見えている手は、グーのままプルプル震えている。
そういえば以前キャリコが言っていたわね。
アインは甘いものが大好きらしくことあるごとにソレで躾けている、と。
・・・・それって餌付け?
・・・・そんなんでいい子・・・もとい使える人形に育つのかしら??
甚だ疑問だけれど今のところアインは順調だし口は挟まないけどね。
私が入り口でそんな様子を伺っていたら、急にアインの顔が輝いた。
普段は無表情だけれどそれが嘘みたいに輝いているわ。
そういえばさっきの「待て」の顔も無表情からは想像が出来ないわよね。
アインはというと耳につけていたイヤホンから、
どうやら主人の「よし」という言葉が聞こえてきたみたい。
フォークを手に取り・・・・上品にケーキを食べ始めたわ。
ええ、文句がないくらいテーブルマナーも身についている・・・・。
・・・凄いわ・・・餌付けであそこまで完璧に・・・。
アインがケーキを食べ終わる頃、
私がいる出入り口とは反対側からキャリコが現れたわ。
アインは食べ終わったお皿をあの人に見せると、頭を撫でてもらっていた・・、
・・・・嬉しそうね・・・アイン・・・、それに・・・・、
それにキャリコも幸せそうに笑っている・・・。
初め、あの子を押し付けられた時は迷惑そうに
チョコチョコついてくるのを邪険にしていたのに。
いつのまにあんな顔を向けるようになったのかしら?
なんにせよいい方向に向かっていることは確かだわ・・・多分。
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