注意ですが・・・、イタチ兄さんの性格は、ほとんどが「オリジナル」でございます。それを踏まえて見てくださる方は、下へどうぞ。








成功、失敗、成功、失敗、成功、失敗、成功、失敗失敗失敗・・・。
失敗、すなわち死を意味する。

「・・・成功・・・」
ぽつりと呟いて、ロック・リーは手に持っていた花から、一枚、花弁をちぎった。目下の小川には、花弁が何枚も浮かび、ゆるい流れに乗って動いている。
深夜の木ノ葉。人通りは無く、リーが立っている小さな橋には、猫さえも通らない。静かだ。静かだからこそ、色々なことを考えては押し潰されそうになる。
「・・・失敗・・・」
花弁をちぎり、小川へ落とす。少年は、松葉杖を持ち、左半身が痛むのか、時折かばうように右手でさすっていた。
(生きているだけでも、感謝しなければいけないのに、どうしてこんなに心が真っ暗なのでしょうか・・・)
頼るべき師匠は遠い場所に任務に行っている。班員のネジとテンテンには、あの宣告がなされてからは、意識的に接触を避けていた。
(中忍試験であんな不様な姿を見せたのに、これ以上、二人にこんなぼくの姿を見られたくありません・・・)
充分に力を蓄えて挑んだはずの中忍試験。だが、死の森と我愛羅という少年との戦いで重傷を負った。けれど、リーは忍びを諦めたくなかった。どんなに時間がかかろうとも、夢の端を、指で掴んでいたかった。
なのに、
『忍びは諦めたほうがいい』
五代目火影に就任するという女性、ツナデに言われた時、なにかに亀裂が走ったのを感じた。さらに、
『手術の成功率はよくて五十パーセント、失敗すれば死ぬ』
成功した後の長いリハビリは予想していたにしても、死という要素が加わると、人間はこんなにも弱くなるのか。いや、たった十数年しか生きていない少年には、宣告そのものが死に等しかった。
(どうして・・・、いいえ、なぜぼくは悩まなくてはいけないのでしょうか・・・?)
師匠であるマイト・ガイには、力を与えてもらった。けれど、今はすがる腕さえ残っていない気がしている。
気づけば道端で摘んだ花の花弁を全てちぎってしまい、手に残っているのは、茎と葉だけになっていた。無造作に小川に投げ込む。それは、ゆっくりと流れ出す。今の心境と同じく、ただゆっくりと。
天を仰げば、少しだけ欠けた月が出ていた。
少しだけ、その光に心が落ち着いた気がした。
(・・・そろそろ、帰りましょうか・・・)
現実に戻ると、急に夜風が冷たく感じられて、リーは体勢を整えようと足に力を入れた。が、左半身はあまり言うことを聞いてくれず、動いてくれない。無理をすれば、すぐに痛み出す。
「・・・なにをしている・・・」
不意に、闇から声が聞こえてきて、一瞬、心臓と肺が凍りついた。がくり、と体の力が抜けて、松葉杖ではなく、欄干にしがみつく。
「・・・大丈夫か・・・」
耳元で声がした。慌てて声の方へ首を動かす。
そこには、見たことの無い人間が立っていた。





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