「そういえば、お父さんは元気かい?」
佐久間の母親は、3年前くらいに亡くなったと聞いたことがある。
彼の父親はなんとかっていう会社の社長で、一人で家計を切り盛りしているのだとか。
確か兄弟は佐久間自身をあわせて4人ぐらいいたはずだ。
佐久間は一瞬ドキリとしたような顔をして、それでも俺の目を見て答えた。
「はあ…元気ですよ。相変わらず仕事ばかりしてますけど。」
佐久間がやっと、重たい口を開いてくれた。
どうやら効果があったらしいが、すぐにまた黙ってしまう。
本当に今日はどうしたのだろう。
俺が困っていると、佐久間は電車の窓から外を見たまま、こんなことを聞いてきた。
「先生は…お父さんのこと、好きでしたか。」
…佐久間が言うと、なんだかシビアな質問に聞こえた。
*嫌いだったなあ。
*どうしてそんなことを?
*好きだったよもちろん。