嫉妬心 P2



「はっ。はっ…あ、はあぁ…っ。」

完全に服を脱がされた恭平は、布団に隠された中で孝平と繋がって、律動に振り解かれないように彼の体にしがみついていた。
初めは昨夜までの体の痛みが響いたのに、火照ってくるとそれすら忘れる。

奥の奥まで突かれると、意識が朦朧として理性が飛んだ。

「恭平、きついよ。」
「んっ!や…。」
「ココだろう。」

「アアッ。」

恭平の小さな悲鳴が室内に響き、ベッドがギシッと軋んだ。
毎晩のように与えられているのに、何度与えられても新鮮に思えるほどの快感が全身を駆け巡る。
目の前の相手の首筋に顔を埋めて、恭平は荒い呼吸を繰り返した。

「恭平は貪欲だな。日に日にココの締め付ける力が強くなってる気がする。」
「そっ、そんなこと…な、ぃあッ!」
「そうかな?」
「や…やぁ…っも、やめ……っ!!」
余韻に浸る間も与えずに、孝平が連続的に攻め立てる。
孝平にしがみつく力も失ってベッドの上で仰け反った恭平が、悲痛な悲鳴を上げて痙攣した。
「あぁっ。だめ…!あ!」
孝平の動きに合わせてベッドが軋む。
持ち上げられた腰の結合部から流れ出た液体が律動に合わせて卑猥な音をたてている。
それが耳に纏わりついて、恭平は意識が遠くなるのを感じた。

だめ…もう…っ

「あああああぁぁ!!」
ガクガクと最後に何度も突かれ、我慢できずに射精してしまったような気がしたのを最後に、恭平は完全に意識を手放した。

動かなくなった恭平を抱きしめて、孝平はしばらく沈黙した。
切れた息を整えて、再び下にいる恭平のことを見た。
ぐったりと力をなくした恭平はうっすらと涙を浮かべている。
その涙を指でそっと拭ってやって、孝平は恭平から抜け出て体を拭いた。

最近は自分でもどうかしていると思う。
年甲斐もなく、毎日セックスを求めたりして。

最近恭平は無理をしていても疲れた顔をしているから、毎晩の逢瀬がかなり体調に不備をきたしているのだろう。
でも決して、恭平から100%拒絶を示すことはこの先もない。
それは今までの経験からわかっている。

孝平は溜息をついて、眠る恭平の横顔をいつまでも見つめていた。


次の日。
いつも一人で起きる聡平は、この日も自分の目覚まし時計で目覚め、同じ部屋の向こう側で眠っている良平を起こさないように着替え、あくびをしながら部屋の外へ出た。
階段を降りるといつも兄の恭平が起きていて、朝食を用意する包丁とまな板の音が聞こえてくる。

…それが、その日はその音はおろか電気すらついていなかった。
不思議に思ったが、聡平は少し寝ぼけていたのでまず洗面所へ入り、冷たい水で顔を洗った。
蛇口を捻って飛び出した水の流れ出る音で目が覚める。
濡れた顔をタオルで拭いていると、兄の部屋から微かな電子音が鳴り続けている音が聞こえてきた。

ピピピ……

他の人を起こさないように最小の音量にセットしてある、恭平の目覚まし時計であることは明らかだった。
こんな小さな音でよく毎日起きていられる、と思いつつ、聡平は兄の部屋の前でノックをして中へ入った。
扉を開けると少し音が大きくなっって聞こえたが、それは予想通り恭平の枕元にある目覚まし時計から鳴っていた。

その横で恭平が、仰向けのまま微動だにせずに眠り続けている。
聡平は近付いて時計の音を止め、兄の顔を覗き込んだ。
その寝顔には表情がない。
寝息もほとんど聞こえないような気がした。

聡平にある、昔の記憶が甦る。
自分が中学生だった頃、高校生だった恭平は突然、誰もいない家の中で倒れていたことがある。
あの時の真っ青な顔に、少しだけ似ているような気がした。

「…兄貴。あにき!」

そう考えるととてつもない不安が襲ってきて、聡平は恭平の肩に触れてその体を揺さぶった。
大きな声で何度か呼ぶと、恭平がうっすらと目を開けた。

「兄貴!!」
「…んー…聡平…?どうしたの…。」

眠たそうに目をこすり、何を勘違いしたのか恭平は21歳にもなった弟の頭をポンポンと撫でた。
「…。」
その手を思わず振り解いて、聡平は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
な…、寝ぼけてる……?

「兄貴、起きないの?さっきから目覚ましがずっと鳴ってたけど。」
「うん…。」
恭平は目を閉じたまま頷いて、そしてすぐにパチっと大きく目を見開いた。
ガバリと勢いよく身を起こし、時計を見て口を開ける。

「うわあっ!寝坊!寝坊だ!!ご飯作ってない!」
「…いいよご飯は。なんとかなるから。それより疲れてるんだったら寝…」
「ううん、だめだめ。良平も起こさなくちゃ。父さんも。…あああ〜!」
一人で頭を抱えてブツブツ言って、恭平はパジャマのまま慌てて部屋を出て行った。

起きたばかりだからか、それとも疲れているからか。
聡平の目には、恭平の足取りがいつもよりも頼りなさげに見えた。


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