明美 P3



その夜、まだ良平が帰ってくる前に、恭平は自分の部屋に入って電話を手にした。
聡平と明美は、リビングで一緒にお笑い番組を見ている。
呼び出し画面から父、孝平の名前を探し出し、通話ボタンを押す。
夜十一時から一時間程度なら時間があると、前の晩に言っていた。

三回目の呼び出し音で、受話器が取られた。
『もしもし。私だ。』
「あ、父さん?俺だけど。恭平。」
『ああ。どうした?』
「うん、ちょっと話があって。ゴメンネ、寝てた?」
孝平の声はなんだかダルそうで、眠たげだった。
『少し仮眠をとってた。まだ仕事が残っているから、起こしてくれて助かったよ。』
そう言う彼の声は矢張り疲れている。
「ごめん。別に急いではないんだ。明美のことで、ちょっと。」
『ああ…。いや、聞こう。不必要に嫌われたくはないからな。』
恭平は手早く用事を済ませるために、短めに言葉を選んで明美のことを伝えた。

『美容師か…。彼女の考えそうなことだな。』
恭平や聡平の時と同じく、孝平もまたあまり驚きもせずに答えた。
「真剣みたいなんだ。専門学校に行かせてやってくれないかな。」
『まあ…やりたいならやってみるといい。お金の心配はするなと言っておきなさい。』
「ああ…!ありがとう、父さん。」

恭平は、孝平の頼もしい言葉に少し上ずった声で答えた。
孝平が沈黙する。
「それじゃあ、さっそく明美に言っておくよ。忙しいとこごめんね。」
『待て。』
恭平が電話を切ろうとした時に、ふいに孝平が呼び止めた。
「…?何?」
『今、どこにいるんだ?』
「え、部屋だけど。」
『自分のか?』
「うん。」
『一人だな?』
「…うん。」
恭平は、少し緊張気味に答えた。
なぜ父はこんなことを聞くのだろうか。…ちょっとだけ予想が出来た。

『さっき、夢を見たんだ。』
「夢?」
『ああ。お前を…お前の服を、一枚一枚剥いでいく夢だ。』
「な、なんだそれ…。」
『お前、今何を着ている?』
「え…。んと、部屋着のTシャツに…半袖のパーカー。下は普通にジーンズ。」
『そうか…夢では茶色のベルトをつけていたのだけど。』
「今日は、黒いのだよ。」

『そのベルトの穴は6つだ。そのうちの奥から2番目の穴が、ちょうどお前のウエストだね。』
「うん…。」
『それを外すと…ボタンがある。それも外してチャックをおろすと…。』
「は、恥ずかしいこと言うのやめてよ…。」
『トランクスの柄はなんだ?』
「…っ。青と…白の細かいチェックの柄…。」
『その上には白い肌が見える。チラリと見えたへそが俺を誘ってくるんだ…。もっと見たくて、Tシャツを捲ってみる。』
「ん…っ」
恭平の手が、意思と無関係に動いているかのように操られて、Tシャツを腹の上まで捲り上げた。
まるで電話越しから孝平が捲くっているみたいな感覚に陥る。

『お前は恥ずかしそうに身を捩って…。それでこう言うんだ…。』
「と、父さん…やめて…っ。」
『でも私はやめない。お前の必死の声に煽られて…Tシャツの下から手を入れて、お前の、胸にある紅い突起をそっと掴むんだ。』
「あぁ…っ!」

恭平は、フラフラと足元をふらつかせて、ベッドの上に倒れこんだ。
耳元で囁く孝平の声は、恭平の脳に直接語りかけて、感覚を麻痺させる。
触られもしない乳首が、ぷっくりと膨れ上がるのがわかった。

仰向けに寝て、Tシャツを胸が見えるところまで捲り上げる。パーカーが乱れて肩が肌蹴ていた。

「う…。ふぅ…っ。」
恭平は声を聞かれないように、必死に耐えた。
しかし、高ぶった呼吸から漏れる微かな音を耳を澄ましていた孝平は捕らえた。

『恭平。随分と興奮してるじゃないか。』
「い…言わないでっ。」
『そんなに乳首の刺激がいい?もっと揉んであげるよ…お前は人差し指と中指で突起を挟むようにしてやると、全身が震えてしまうよね…。』
「あ…!は…あぁぁん…や、やぁぁ…っ」
『緩急をつけて押したり引いたりすると…』
「やぁんっ」
『その刺激のあまり、お前の両足は自然に左右に開いてくる…。』

その通り過ぎて反論もできない。
乳首を揉まれているという妄想で興奮してしまっている恭平は、無意識のうちに両足を大きく開いていた。触れてもいない乳首が、快感を得て震えている。
耳元で聞こえる孝平の言葉に、腰が跳ねた。

『恭平…お前は乳首の刺激じゃイけないんだ。夢だからね。イきたくてもイけない。』
「ふあぁぁぁ…っ。あっ、あんっ。」
恭平は、今や孝平の姿泣き手や息遣いに翻弄されて、何もないところで誰にでもなく腰を浮かせている。
なんて艶かしい姿。


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+表紙+