花火 P6
ドォーン!
一際大きな花火が上がり、光の漏れる窓から、人々の歓声が聞こえてきた。
ホテルの真下はきっとものすごい人だかりができていて、その全員が夜空を見上げているのだろう。
そんな下界とはかけ離れたようなホテルの一室で、恭平はバスルームからなかなか出てこない父を待っていた。
股間の奥がムズムズして、どうしようもない。
早くどうにかしてほしい…!
「うっ。う…あ…っはぁぁんん…ッ」
薄く開いたままの恭平の唇から弱々しい吐息が漏れる。
枕に顔を埋めたままでは苦しいので、どうにか体を反転させて仰向けになった。
花火が始まってから15分は経っている。
恭平は、これまでにないほど窮地に陥っていた。
初めて孝平に抱かれた夜に彼から教えられたことといえば、セックスの仕方と、股間でのイき方。
そして、自慰の禁止。
恭平だけが気持ちいいことをするのは反則だと、自分で自分のものを扱くことを禁止した。
恭平は初めから自慰をするのが上手くなかったし、孝平が欲求不満になるスキを与えないほどこまめに手入れをしていたので、そのことで困ったことはほとんど無かった。
でも、今は、なんだか自分でしなきゃいけないような気がする。
イきたくても、この弱すぎる刺激じゃとてもイけそうにない。
かといってすぐにでも父さんが出てきてくれないと、どうにかなってしまいそうだ。
でも…
ドドーン!
「ん…ッ!!んん…っ」
容赦なく花火は上がる。
すでに浴衣はほとんど肌蹴け、辛うじて帯の部分で止まっているような格好だ。
父さん…!早く…っ!!
「あ…あぁぁ…っ!と…さぁん…っ!!」
恭平はシーツを固く握り締めて、腰を上手く揺らしてできるだけの刺激を得ようとした。
今の恭平の頭には、理性の一片たりとも残る余裕はなかった。
実は、一度だけ、したことがある。
高校三年生の冬だ。受験を控えていた。いろいろストレスもあった。
そんな時に、孝平が出張で何日も家を留守にした。
一度だけならバレないだろうと思った。それが誤算だったのだ。
未だに何故だかわからないのだが、それが孝平にバレた。
孝介との関係には気付かない癖に…。
その時受けたお仕置きに怯えて、恭平はそれ以降自慰を一度もやらなくなった。
どんなにたまってきても、孝平が抱いてくれるまで待った。
孝平も無理に我慢させるようなことは決してしなかったので、待つことができた。
「っ早く…っ!!父さんっ!」
恭平が半ば叫ぶようにして助けを求めると、丁度タイミングよくバスルームのドアが開かれた。
最後の悲鳴に驚いて急いで出てきたのか、腰にタオルを巻いたまま、体もまだ半分濡れている。
「恭平?」
「と…父さぁん…っ!」
薄暗い部屋の中で、恭平の姿を勘と手探りで探し当てた時、また大きな花火が窓の外で咲いた。
外からの一瞬の眩い光で、恭平の半裸の体が浮き彫りになる。
滲んだ汗が表面で光る、その白い体に孝平の目が釘付けになった。
次いで、いつものように音がする。
ドォン!
「んあっ!あぁ…っ!」
恭平は、腰を中心にビクンと跳ねると、夢中になって孝平の体にしがみついた。
その指の力にはっとして、孝平が恭平の顔を見下ろす。
「恭平。大丈夫か。どうしたんだ。」
「知らない…っ!でも、なんだか…っ、花火の音が…っ。」
恭平の途切れ途切れの言葉を聞き取っている間に、またもや花火が上がった。
光に映し出された恭平の肌蹴た足にまたもや視線が釘付けになるが、次に聞こえた音でに対する恭平の反応で、どうにか事態を飲み込む。
「あ…っ!いやぁぁぁっ!あの、音、止めて…っ!!」
「おい、無茶言うなよ。」
「でも、俺、なんか、おかしい…!」
「何が?」
「…っ!下の…」
ドォン!
「ふぅあぁ…ッッ!!あ、あ…。」
「…確かに、スゴい音だな。相当近いのか…。」
音が鳴るたびに、肌が震撼するかのようだ。
迫力があることこの上ない。
だがその花火を見る余裕がない恭平よりもさらに、それに喘ぐ彼に見とれる孝平のほうが、花火を見る余裕を持っていないかのように見えた。
こんな痴態を見せられたら、我慢しろという方が無理だ。
我慢させるほうが犯罪だ。
勝手にそう決め込んで、孝平は恭平の上に覆いかぶさった。