笑顔の裏側 P8



ピリリリリリリリリ

電話が室内に鳴り響く。

恭平が身体を強張らせて孝介に言った。
「あ…!電話…!」
「放っておけばいいよ。留守電になっているんだろう?」
「でも…っ、あ、ああっ…!」
構わず孝介が恭平の中に侵入してくる。
何度も突かれてほぐされた恭平の穴は、いともすんなりと孝介を受け入れる。

恭平がその感触に嬌声を上げて孝介の首に腕を回してしがみついた時に、留守電に繋がった。
孝介が恭平の真っ赤な乳首を口に含む。

ただいま留守にしております──

「あ、んああ…っ」
無機質に応答メッセージを流す、電話機。
その横で、二人の男が立ったまま交わっている。

ご用件の方はピーッという発信音の後にメッセージをお願いいたします──

「はぁん…っあぁん…っ、ぁっ!ぁっ!」
恭平は最奥の最も感じる所を何度も突かれて、掠れた声を惜しげもなく発していた。
我慢することなど、できない。

応答メッセージが終わり、ピーッと発信音が鳴った。
受話器の向こうのざわついた音が流れてくる。

『もしもし、私だが。孝平だ。』

ビクン!!
絶頂へ向けてまっしぐらだった恭平の身体が、硬直して止まった。
それは孝介とて同じだった。

『恭平、帰ってないのか?携帯でも繋がらんしな…』

父さん!父さん…っ!
恭平が必死になって受話器に手を伸ばす。
今の自分の状況など、忘れてしまったかのようだ。

「…あっ!」
孝介がその手を捕らえて引き寄せ、恭平の中を奥深くまで貫いた。
その瞬間に現実を思い出し、恭平がビクリと腰を震わせる。

孝介はそのまま乳首を舐める行為を再開した。

「あ、やめ、あぁ…!」

『仕事が思ったより早く片付いたから、今さっき飛行機から降りて空港に着いたところなんだ。』

父さんが、帰ってきた……?それも、今日?
恭平の頭が、快楽と理性の間で行ったり来たりを繰り返した。
予定より、早い…

『あと1時間もしたら家に帰る。それだけだ。』

孝介が恭平の前立腺をピンポイントで突いてきた。
やめて、やめて…!
父さんが電話の向こうにいるのに……!

「ぁぁっ。はぁ…あぁんッ!いぁ…っ!」
そう思えば思うほど、何故か尚更興奮した。

助けて、父さん、助けて……!

無情にも、恭平の心の悲鳴も空しく孝平は電話を切ってしまった。
一緒に聞こえていた雑音も消え去り、後には穴を強く突かれて不意に上がってしまう恭平のうわずった声が残るのみ。
孝介は執拗に激しく恭平の中を掻き乱した。

「興奮したのか?兄さんの声を聞いて…。」
「…っ。あ、ふ…っ!」
「今は俺のものだ。君は俺のものだ…!」
「んんんん…っ!!」

孝介があまりに激しく突くので、恭平はあっけなく絶頂を迎えてしまった。
そして簡単に射精してしまう。
余韻に浸ることも許さないスピードで、孝介は攻めることをやめなかった。
恭平が必死に孝介にしがみつく。

「あ…っああっ。あ…ハァ…ッ!はぁぁっ」
エスカレートする孝介の腰の動き。
その動きにあわせて恭平の誘うような嬌声が絶え間なく室内に響く。
いつしか気にならなくなっていた粘着質の結合部の音も、今までよりも大きく聞こえるようだった。

「こ、孝介さ…っ!」
「恭平くん!イイよ…!」
「あ、あ、あ…っ!ごめん、はぁあ、なさい…っ!!」

無意識のうちに出た、謝罪の言葉。
貴方の気持ちには応えられない。
いくら身体を自由にできても、気持ちだけは、渡さない。

恭平の小さな決意が、そこにはあった。
どんなに快楽を与えられようとも、貴方はあの人には叶わない。
絶対に…!

「あ…ああ……ッ!!」
孝介もそれくらいわかっている。
史上最高に満たされた気持ちになっていた今のこの瞬間が、急に虚しいものに思えた。


恭平は一瞬気を失っていた。
孝介とともに果てる直前までの記憶はあるが、気がついた時にはソファで眠っていた。
床の汚れはきれいに拭き取られていて、ソファのシーツは代えてあった。

ただ、恭平の股間には孝介の液体が残っている感触がある。
夢ではなかったのだと思い知らされた。

恭平ははっきりしない頭で時計を見て、時間を確認した。
どのくらい眠っていたのだろう…そろそろ父さんが…

父さんが……


恭平はっと息を止めて口元を押さえた。
まだ股間に孝介の体液が残っているし、何より体中についたこのキスマーク…。
きっと、セックスしないとつかないようなところにも、ついているに違いない。

どうしよう。

どうしよう…っ。

恭平の瞳から、止まっていた涙が再び溢れ出した。


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