挑戦 P13
「はぁ…あ…ああ…ッ。」
恭平は自分の体内を駆け巡る興奮の波を抑えるのに必死で気づいていなかった。
足音に、孝平が顔を上げて恭平の口を汚れていない方の手で押さえた。
恭平の熱い吐息が手の平にかかる。
孝平は恭平の耳元で、静かに、と囁いた。
足音が扉の前で止まり、ノックが2回。
「なんだ。」
孝平が抑揚のない声で答えた。
その声調は、まるでいつもどおりにデスクに座って書類を眺めているような感じである。
扉の向こうの人物は、まさか彼が裸の息子を組み敷いて堂々とセックスをしているなどとは思うまい。
恭平は不安になって、孝平の方に身を寄せた。
「社長?あの…鍵がかかっているのですが。」
扉の向こうの声は、秘書のものだった。
孝平は半ば予想していたので、驚きもせずに答えた。
「…竹本か。用事はなんだい。」
「はい。阿久津建設の幹部の方々が、明日以降時間の開いた時にお会いしたいと電話がありました。」
「そうか。」
事務的な会話。
恭平にはわからないことなので、必死になって身体を落ち着けようとしていた。
しかしいくら呼吸を整えても、さっきまでえぐられていた股間の中の疼きが消えない。
考えれば考えるほど、身体の奥から熱がこみ上げてきた。
「……っ」
こんな、興奮しやすい身体に嫌気がさす。
それでもこみ上げる感情には逆らえず、恭平は孝平の下で腰をくねらせた。
股間が疼く。
焦らされた身体にこもった熱は、何もせずともどんどん大きくなっていく。
一度落ち着いた呼吸が上がり、長い腕や脚が時折ピクッと痙攣した。
竹本さん、早くどこかへ行って…!
声が出ちゃう…ッ
「…竹本。もう下がっていいよ。目の前のことが片付いたら、もう一度話を聞きに行く。」
恭平が自分の下で興奮に身を捩る姿を目にして、孝平は竹本に言った。
先ほどの寸止めがよほど体にきてるらしい。
一人で腰をくねらせながら、必死に声を我慢している恭平の姿は淫らで妖艶だ。
こんな光景を見ながら竹本と会話をしていたら、うっかりボロを出しかねない。
しかし竹本は、鍵がかかっていることと、中から聞こえてくる様子から社長以外の誰かがいることをとっくに察していた。
よく考えればこういうことは初めてではない。
今までだって何度か不審な点があったのに、その都度ごまかされて確かめられずにいたのだ。
「目の前のこと、ですか。」
「ああ。これからイイところなんだ。一件落着したらそちらに行くから、今は下がれ。」
「…イイところ?」
「ああ。パズルゲームみたいなものだ。」
「遊び、ですか。」
「遊びだよ。何か問題あるかな。」
だめだ。
竹本は唇を噛んで黙った。
自分の話術では、この状況から孝平を問いただすのは無理だった。
孝平の姿はおろか、誰といるかもわからない。
いや、誰かといることすら証明できない。
「…わかりました。くれぐれも遊びに真剣になることだけは避けてくださいね。」
竹本なりに精一杯の皮肉を述べて、彼は扉の前から立ち去った。
その足音を聞いて安心したのか、恭平が止めていた息を吐き出した。
「…はぁ…。」
孝平が慌てて、初めと同じ手で塞いだ。
「んっ?!」
恭平が驚いて眉を寄せた。
孝平の危惧とは裏腹に、足音は止まることなく遠ざかっていく。
完全に聞こえなくなるまで待ってから、孝平は手を離した。
「恭平、竹本には気をつけろよ。勘が鋭いからな。」
「勘…?」
恭平はよくわからずに首を傾げた。
遊びに真剣にならないように。
この一言で、孝平には竹本が何かを察していることを感じた。
おそらく遠ざかったと見せかけて、しばらくしたら足音をさせずに戻ってくるに違いない。
聞き耳をたてられると厄介だが…
考え込んでいた孝平の首筋に、恭平の細くて長い指が這ってきた。
積極的な恭平は珍しい。
「ね、早く…。お願い…。」
恭平は恥ずかしそうに顔を赤らめて、孝平の体を引き寄せた。
勢いで孝平が、恭平の身体の脇に手をついた。
引き寄せた孝平の頬に、恭平は唇を寄せてキスをした。
全身の毛穴が開くくらい、孝平はゾクゾクする感覚に陥った。
恭平を見つめ、苦笑する。
「…お願いは禁止だと言ったのに。竹本のせいでそんな気分もそがれたな。」
言って恭平の顎を掴んで熱烈なキス。
恭平の唇を割って下を入れ、何度も重ね直して口内を味わう。
交わった唾液が恭平の唇から溢れ、頬を伝った。
「あ…んッ。」
唾液を伝って頬を舐め、首筋を下降する。
恭平の身体が小刻みに震え、下半身の熱は衰えることを知らなかった。
「はぁ…はぁ…ッ。」
裸になってからやっと初めて与えられるまともな刺激に、恭平は腕や脚を絡ませて、必死になって反応した。
腕に絡み付いていたシャツを剥ぎ、足首を舐めてやりながら靴下までも脱がせた。
「ア…ッアア…ッ。」
全身が性感帯になったみたいに、どこを触れても恭平の身体が跳ね、甘い吐息が漏れた。
孝平は扉の向こうに、そろそろ竹本が戻ってきているのではないかと感じた。
自分のズボンを脱いで、恭平の上に覆いかぶさってから耳元で囁く。
「父さんではなく、孝平と呼びなさい。その方が興奮する。」
「あ…。こ、孝平…?」
「そうだ。間違えるなよ。」
孝平は恭平の耳を軽く噛み、恭平が身をすくめたのを確認してから、彼の股間に自分のものをあてがった。
「あ…あぁぁ!…く…ふ、あぁぁぁぁぁぁーッッ!!」
恭平の切なげな嬌声が、部屋の中に響いた。