始まり P9



「は、はぁ…。」

初めて開いた恭平の身体は、思ったよりも柔らかくて弾力があり、想像したよりもずっと、白くて細かった。
呼吸が細くて、あまり乱暴にすると壊れるのではないかと思うほど、繊細。
長い脚と腕が絡みついてくると、その若い肌に飲み込まれそうになった。

「あ、…ん…ッ。」

孝平は、罪悪感も、自分が彼の実の父親だということも忘れて、無我夢中で目の前の身体を貪った。
頭の中が真っ白になって、こんなに何も考えられなくなったのは、久しぶりだった。

「あ……ッ!」
恭平が、孝平の手の中で射精した。
人の手で初めてイくことを覚えた恭平は、自分の身体が自分のものではないような感覚に、眩暈を起こした。
自由が、きかない。
冬場だというのに汗だくになって、恭平はベッドのシーツにしがみついた。
孝平の手が、再び肌の上を走る。

「あ…!と、父さん…ッ。もう、無理…っ。」
恭平の搾り出したような反抗の言葉は、中空に消えた。
始まってからずっと、恭平ばかりがイかされている。
暴走し、火照った身体は少しもいうことを聞かず、孝平の手の動きに反応を示して膨らむ。
恭平は未だかつて経験したことのない快感の渦に飲まれていた。
逆らえない。

「おねが…ッ。も、もう…やめ…ッ。ああぁぁ……ッ!」
孝平の手の動きが速まって、その激しさに恭平が絶叫した。
身体がビクビクと震え、胸を仰け反らせるようにして、腰をくねらせる。
恭平ほどではないが、それでも汗をかいている孝平が、ふふ、と笑って恭平の耳元で囁いた。
「もう、十分に気持ち良くなった…?」
「あッ。うッ。ん…ッ」
恭平はぎゅっと閉じた目から涙を流して、枕に顔を押し付けた。

孝平の指が、肌を流れる汗を拭うようにして、内股から股間へ、走った。
「ひあぁぁ……ッ」
興奮が高まって、上ずった声が漏れる。
「気持ち、イイ?」
「い、いい…ッ。ような、気がする…ッ。」
「気がする?」
「あ……っ!!」
恭平が、ものを根元から掴まれて悶絶した。
答えを言うまで離さない、という合図だ。

恭平は初めて焦らされて、行き場のない欲望の波に翻弄された。
ろれつの回らない舌で、必死に、答える。

「なんか…よく、わかんない…ッ」
「わからない?」
「身体が、変。止まらない…ッ!」

恭平はそこまで言うと、呼吸を整えて、孝平の方を振り向いた。
後ろから抱きかかえられているので、首だけを孝平の方へ向けて。
瞬きをする度に、粒上の汗が滴った。
「は、離して、父さん…。」
「…。」
「お願い…気が変になりそう。手を。お願い、父さん…っ!!」

恐ろしいまでの適応力。
いつから、こんなに色っぽく懇願できるようになったのか。
孝平は表情から笑顔を消し、恭平の身体を仰向けにしてベッドに押し付けた。
顎を引いて頬に口付け、流れた涙を舐め取る。

「あ、あ…ッ」
舌の少しの動きにも反応して、恭平が身体を捩らせた。
孝平は、恭平の両足を大きく開いて押し上げながら、唇で彼の身体を順番に下降していった。
中心部に辿り着くと、根元を掴んでいた手を離し、それを口の中に含んだ。

「ああっ!!」

突然の暖かい感触に、恭平の身体が痙攣する。
何が起こっているのかわからなかった。
柔らかくて熱いものが、恭平の一番感じるところを何度も何度も撫で回す。

「あっ!いや…アア…ッ!」

すごく、感じる。
気持ちいいか悪いかなんて、考えられない。
ひたすらに本能が、欲望が、恭平の中で出口を探して渦巻いた。
助けて。
誰か…

この快楽から、救い出して。


「う…んく…ッ!!」
孝平は、恭平を何度も射精させたのと同じくらいの時間を使って丹念に穴を慣らした後、交わることを開始した。
本当は最後までするつもりはなかった。
少しばかりの悪戯として、恭平に気持ちよさを味あわせてやろうと。

朝から降り続いていた、あの億劫な雪が昔の思い出を思い出させるから、少しイライラしていたんだ。
ただ、それだけだったのに。
恭平の反応が予想外なものだったので、勢いが止まらなくなった。

若さとはこういうものか。
孝平は腰を進めながら、少しでも恭平の痛みを取り除こうと、全身に唇を寄せて、手で愛撫を与え続けた。
こんなに気を遣ってセックスをするのも、何年ぶりかわからない。
しかしこの気遣いのお陰で、恭平は比較的すんなりと、孝平を受け入れることができた。

「ん…はぁっはぁ…ッ!!」
恭平が、苦しそうな呼吸を繰り返しながら腕を絡ませてくる。
無意識にすがる物を探して、孝平の胸に抱きついた。

「こ、こわい…いやだ、もう…っ。」
「大丈夫。恭平は任せていればいいんだ。安心して。」
「壊れ、そう…っ」
「壊さない。大丈夫だから。……いくよ。」

孝平の声が、恭平の脳で認識されるより早く。
全身を駆け巡るような、芯から振るわされる律動が、恭平の身体を支配した。

どうやって終わらせたのか。
どうやったら、あの快楽から抜け出せたのか。
今でもわからない。

わからない、けど…

いつもより、優しくて。
普段の生活ではわからなかった、力強さを感じた。
いつも守ってばかりいた恭平が。

初めて、守られることを知った瞬間でもあった。

忘れられない、感覚。
思い出しただけでも胸が熱くなる。

もっと…

感じたい。
父さんを。

そんなことを考え始めていたことを、思い出した。


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+表紙+