仕事と関係 P5
目の前の恭平が、これほど愛しく思えたのは初めてだったような気がする。
これまでにも恭平とセックスがしたいだとか、家庭のことを任せきりで申し訳ないとか、そんな意味で愛しく思っていたのは事実だが。
それとは別の、いや、それに加えてさらにかけがえのない存在に思えた。
「…参ったな。お前にはペースを崩されてばかりだ。」
孝平が苦笑した。
ベッドに入ってから初めての笑顔だったような気がする。
恭平も安心したように微笑んだ。
「恭平。」
「はい。」
「もう一度、抱いてもいいかな。今度はちゃんとやるから。」
「…えっ?竹本さんの話は…?」
「やりながら話してやる。こういうことを自分の口から言うのは…したことないんだ。」
「…。」
こういうことって…。
「もしかして、父さん。竹本さんとも…?」
「もう一度抱くよ、恭平。」
拒否権を与えない手早さでもう一度恭平をベッドに押し倒し、恭平を抱き寄せた。
耳元に唇を寄せて、重なった体の隙間から胸に指を滑り込ませる。
「いいね?」
囁いて、指を胸の突起にかけた。
恭平が困ったように顔を赤らめて、胸の刺激に息を震わせた。
「わ、わか…っ。い一回だけ。」
恭平の了承を合図に、孝平は両方の手で左右の乳首を揉み解し始めた。
「んん…っ。くふ…んっ。」
恭平がくすぐったそうに鼻をならす。
孝平は首筋に唇を這わせ、一回目に乱暴に残したキスマークを優しく舐め取っていった。
その舌さばきに恭平の感覚が翻弄される。
一度冷めた興奮が、先ほどよりも大きくなってもう一度押し寄せてくるのにさほど時間はかからなかった。
「竹本とは、まだ愛が生きていた頃からの仕事仲間だ。その時から私や会社のことをとてもよく支えてもらっている。」
言いながら、孝平は恭平の胸を弄くるのをやめない。
恭平はなんとか孝平の言葉に集中しながら、胸の刺激に耐えた。
「ん…っ。」
「もはやあいつなしでは、私は仕事を続けていく自信がない。それは確かだ。」
「は…はぁ…っ。」
孝平の手の力が強くなり、恭平の身体がピクリと震えた。
自然と両足が左右に開いてしまうのを押さえられない。
恭平のものは触れてもいないのに控えめに膨張し始めていた。
孝平の右手が、動いた。
「俺は仕事仲間としてしか見ていなかったが…いつだったかな。少なくとも、お前のことはもう抱いていたと思うが。…竹本に迫られた。」
「ぁ…あ!」
動いた右手が乳首を離れ、腹の上を下降し、恭平のものへ辿り着く。
恭平が興奮のあまり腕を孝平の首へ絡ませた。
孝平の右手は恭平のものに近付いたまま、なかなか触れてこない。
焦らされて、恭平が身を捩る。
「はぁ…はぁ…んっ。」
「迫られた日に…私は、あいつを抱いた。」
「…!」
恭平が言葉の意味を理解した瞬間に、孝平の手が恭平のものを包み込んだ。
「ひあ…ぁッ!!」
焦らされていた刺激が、直接大きな波になって押し寄せる。
孝平はそのまま間髪入れずに指を巧みに動かして恭平のものをしごいた。
恭平の身体が快感に跳ねる。
「ふぅっ。はぁ…っ。んっ。アッ。」
身体に与えられる刺激が、恭平の思考をかき乱す。
それでも事実は聞こえていた。
父さんは、竹本さんとこういうこと、したんだ……
「あぁぁぁ…っ。」
孝平の指が、恭平を絶頂へと導く。
速すぎるとも言わずに、孝平は恭平のことをイかせてやることにした。
射精の衝撃で、恭平が大きく腰を震わせる。
その官能的な動きに、セックスに慣れた孝平ですら見惚れてしまう。
「あ…っ。」
小さく叫んで、恭平が射精した。
孝平の中に白濁の液体が溢れる。
「しまった…つい、タオルを忘れたな。まあいいか。」
そんなことを呟いて、射精の余韻でビクビクと震える恭平の側で満足そうに微笑んだ。
「恭平。続き、いいかな。」
「はぁ…はぁ…。う、うん…いい…。」
必死に呼吸を整えて、孝平にしがみつく恭平。
開いた両足の真ん中に孝平を迎えると、動く左足だけをその腰に絡ませた。
動きの遅れる右足は、孝平がそっと支えてやった。
「お前に言ってもわからないかな。私はいつでも必死なんだ。余裕のあるときの方が少ない。」
「…?」
「お前とこうしている時も、竹本との時も、私のしていることは同じだ。これといって大差はない。」
「…。…んっ。あ…っ。」
孝平が、右手の人差し指を恭平の後ろの入口に差し込んだ。
ひくついて孝平の指を飲み込むそこは、先ほどの行為で傷ついていた。
指についた汗が、染みる。
「い…はぁ…っ。」
「痛いか?」
「すこし…い、た…っ。」
恭平が苦しそうに顔を歪めたが、孝平を抱きしめる腕の力は変わらなかった。
構わず続けろと、そういう合図のような気がした。
「昨日、お前が社長室に来たときに…隣の部屋のベッドに、竹本がいたんだ。」
「…っ。」
誰かがいるとは思ったいたが、そういうことか。
恭平は顔があげられず、孝平にしがみついたまま動かなかった。
自分がどんな顔をしているのか想像もつかないし、見られたくはなかった。
あの告白を聞かれていた。
きっと今、自分が孝平の腕の中にいることも、竹本には想像がついているのだろう。
そう思うと、恭平はどうしようもない羞恥に身を襲われた。
しかし孝平にはそれを知ってか知らずか、恭平を弄ぶ手を緩める気配はない。