佐久間良平と杉野拓巳 P2



「ん…っふぅっ」
二宮の舌が良平の口の中に強引に侵入してくる。
生暖かい感触に、良平の意識は痺れ、拒むことができなかった。
舌が口内を余すところなく舐め回し、堪能を繰り返す中で、良平の頭に微かに杉野の姿が思い浮かんだ。
「んっんぅ…っ」
なんとか唇を離そうと自分でも舌を動かすと、それは二宮の舌にからめとられてしまった。
溢れた唾液が頬を伝う。
(杉野…助けてっ)
息が苦しい。
甘い痺れに意識が朦朧となった。
「…っはっ」
突然唇が解放され、良平は酸素を取り込もうと荒い呼吸を繰り返した。
同時に二人ぶんの唾液を飲み込んでしまう。
二宮は唇を手の甲で拭いて、不敵に笑って乱れ気味の良平を見下ろしていた。
呼吸を整えた良平は、彼のことを睨み付けた。
「…にすんだよっ」
「あ〜危ない危ない。あれ以上するとやばかった。」
二宮はわざとらしく、ふぅとため息をついた。
「良平くんのキスは甘いねぇ、痺れたよ。」
「ばっ」
全身が沸騰する。
そんなん言われても嬉しくない!
「じゃあおやすみ。」
良平は不振な目で二宮を見つめた。
それに気付いた二宮は、両手を上げて明るく笑い、
「だーいじょうぶ、もう何もしないよ。」
今はね、と小さく呟いたがそれは良平にはうまく聞こえなかった。
「え?」
「変なことすると拓巳に怒られちゃうからねぇって話だよ。」
「…そうっすか。じゃ遠慮無く。」
良平はカーテンをしめて布団に包まった。

「あ」

「え?なんだい?」
「今の、杉野の奴に言わないで下さいね!」
「今の?」
「あーーーー…」
良平は赤くなって無意味な発声をした。
二宮が吹き出す。
「えっとねぇ、じゃぁ言わない代わりに、またさせてくれる?」
「駄目です!!」
「じゃあバラそ。」
おもむろにケータイを取り出す二宮。
「ちょっ、先生ぇ!!」
「な〜に?」
「やめてよ!」
「じゃもう一回♪」
「…却下!!」
「あっもしもし拓巳〜?俺、咲斗。」
「せっ先生!!」
良平は慌てて二宮に抱きつきケータイを取り上げた。
二宮が椅子に座っていたので、丁度その上にのっかる形となる。
『あれ?良平?』
受話器から聞こえる杉野の声。
すると反対の耳に二宮が口を近付けてこう呟いた。
「これでもう一回決定ね♪」
良平の体が硬直する。
『?どした?何だ、良平?』
「杉野…」
良平の瞳から涙が零れた。杉野の優しい声が心に染みる。
「助けてぇ…杉野ぉ…」

ぐゎらっっ
ばーーーーん

突然、物凄い音をたてて保健室の入り口が開いたので二人ともがそちらを振り向いた。
そして唖然とする。
そこには杉野拓巳がケータイを握り締めて仁王立ちになっていた。
息を切らして、物凄い形相でこちらをみている。
「何、やって、んのかなぁ…?」
彼の声は怒りで震えている。
良平と二宮は、保健室の、椅子の上で、良平が二宮の上に乗るようにして向かい合って抱き合っている。
二宮の首に回された良平の腕。
良平の耳に寄せられた二宮の唇。
ちゃっかり腰に添えられた手。
そして何より良平の涙目。
杉野は目が座ったままニヤリとほほ笑み、堂々とした足取りで二人に近寄った。
次いで良平を二宮から剥がすように抱き上げて、自分の後ろに下ろした。
遅れて走ってきた聡平がドアから入ってきて、良平に、何事?と目配せをしたが良平は困った顔をするばかりだ。
「おっさん、何、してたのかなぁ?」
杉野の拳がばきっとなる。
「ひ、ひどいなぁ、俺まだおっさんてほど年でもないんだけど」
彼は、今年で二十七歳だ。
「何、して、たのか、って聞いてるんだ、けど?」
「…り、良平君と」
「とォ?」
「…スキンシップを」
「へぇ?」
杉野の拳が再びばきっと鳴る。
「良平、このボケに何されたの。」
「えっ、あ…」
「怒らないから言ってごらん。」
「…ス…」
「え?」
杉野が耳を疑うかのように聞き返した。
良平は自分でもわかるほど顔を真っ赤にして、聡平に隠れるようにしながら言った。
「キス、されたの!!」
「なっ?!」
絶句する杉野。
「んげ。」
不振な目で二宮を見る聡平。
「…。」
もう何も言えない二宮。
「っほ〜ぅ。」
「あっいや…」
「お前さん、何度言ったら、」
今度こそ本気で拳を固める杉野。
二宮が椅子から離れて後退りをしたがもう遅い。
「何度言ったらわかるんだ、ボケーーーーー!!!!」


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+表紙+