忘れ難き P4



「良平さんのこと…好きなんです!」

あ〜〜〜〜〜〜〜〜やっぱりぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!

良平がフリーズしたように固まっていると、目の前に西川の顔が近づいてきた。

「わぁ!待て!てめ…!」
良平が仰け反って逃げようとした肩を勢いよく掴んで、西川が強引に唇を奪った。
西川の柔らかい唇の感触に、良平はクラリときた。
…が、それも束の間。

ガン!!

思い切腕を振り切って、西川の頭を殴って引っぺがす。
その拍子にバランスを崩した西川が、図らずも良平の上になだれ込んできた。
「いってぇ!!」
良平は、床に思い切り頭をぶつけて悲鳴を上げた。

「す、すいません!大丈夫ですか?!」

西川が、良平の上でガバッと身を起こして言った。
…押し倒しといて、そんな泣きそうな顔すんなよ…。

「てめぇな!自分のしたことわかってんのか!!」
「す、すいません!良平さんの唇見てたら、なんか、吸い寄せられちゃって…。」
「あほか!!」
良平は呆れて物も言えない。

「っつか、退け!」
「え。い、嫌です!」
西川は、良平の上に圧し掛かったまま、首を振った。

ふ・ざ・け・ん・な

「襲われてピーピー泣いてた奴のすることかよ、これが!」
「泣いてません!それに…。」

西川は、顔面をこれでもかと言うほど真っ赤に染めて、叫ぶようにして言った。

「それに、俺は襲われるの嫌いなんです!どちらかというと、襲う方が好きなんです!!」

だ〜〜〜〜〜〜いい加減にしてくれ〜〜〜〜〜〜!!

どうして俺はこういう目に合いやすいんだ!!
どうして、今日知り合ったばかりの奴に唇を奪われなくちゃならないんだよ〜〜!!
畜生!

「西川!てめぇ…っ!」
「初めて見たときから、胸がドキドキしたんです。本当なんです。」
しらねぇよ!
「初めて見たときから、良平さんと、キス、したいなぁ…って。」
「ふざけんな!そういうことは、同意の上で…っ!」

反論してたら、上から退かすの忘れてた。
良平は、またもや顔を近付けてきた西川に、抵抗することなくまたもや唇を奪われた。
今度は、さっきよりもしっかりと、重なった。

わ〜〜〜〜も〜〜〜〜!!

しかもなんか、西川の唇って柔らかい…。
そんなことを考えていたら、首に腕が回されて、抱きつかれた。

ちょ、ちょ、ちょー待て!

西川をはがそうともがくが、しっかりと抱きつかれているので離れない。
上半身だけ起こした格好で体重を支えていた手を離したため、良平の背中はまたもや床に落ちた。

ただのキスだ。落ち着け、良平。

そう言い聞かせて、西川が離れるのを待った。
そう長くは続かないはず…高校生だし。
我ながらおかしな理論を並べ立てていると、西川が離れた。

近くで、目を見つめてくる。
だから、その、泣きそうな顔をするのはやめろ。泣きたいのはこっちなんだ。

「良平さん…。」
「いい加減に…、離れろ!!」

良平は、今度こそ懇親の力を込めて西川を払いのけ、距離を置いて立った。
体格も違うし、年も離れてる。
体力では良平の方が確実に勝っていた。

「ざけんなよ!大人しくしてたら調子乗りやがって!!」
「ご、ごめんなさい!!」
「謝って済むと思うな!金輪際お前とは会わない!わかったな!!」
「…っ!い、嫌です!」
「黙れ!」

良平は聞く耳持たずに怒鳴った。
床に置かれた鞄を勢いよく掴んで、部屋を出る。

「あ…っ!良平さん!」

西川が追いかけようとするのを、冷ややかな目で見下ろすと、勢いよく扉を閉めた。
扉の前で立ち尽くす西川。

階段を降りる音がして、良平が玄関に向かっているのがわかった。
急いで扉を開けて、追いかけた。

靴を履き終えた良平が、玄関の扉を開けている。

「待って…待って、良平さん!ごめんなさい…!!気持ち悪いですよね、僕、男だし…。」
「はぁ?」

良平が、表情一つ動かさずに振り向いた。
かなり怒っている。
ここまで怒らせて、仲直りできた人間はまずいない。

「ふざけんなよ。そんなとこに怒ってんじゃねぇよ、カス。」

良平は見下したように言って、玄関を出た。
西川がまたもや追いかけてきたので、足を止めて、振り向いた。

「口説いてもいねーのに、強引にしたとこがムカつくんだよ。まあ俺は口説き落とされねぇけどな。」

言い放って、駆け出した。
追いつかれないように、全力疾走。

運動なら何をやってもソコソコできる運動神経を持った良平に、西川が追いつけるはずがなかった。


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