初雪の降る日 P6



「えー!それではここでッ。今日のゲストをご紹介したいと思います〜!」
良平と瑞樹、それにトーコとその友達女子二人、それに祐也にバンド関係者が二人、そして杉野が揃った席で、代表者の瑞樹が立ち上がって言った。
良平がニヤリと目を輝かせて、ビール瓶を一本杉野の前に置く。

「俺、良平、牧村、喜多の4人が高校の時に非ッ常ぉーにお世話になった我らが先輩、杉野拓巳さんです!」

飛び交う拍手。
杉野がどーもどーもと言いながら手を軽く上げて立ち上がる。
瑞樹がビール瓶を杉野に持たせ、隣で言った。

「杉野先輩、年はおいくつですか?」
「若さはじける23です。」

はい♪イッキ!イッキ!イッキ…

「いい飲みっぷりですね〜あ、その辺でいいですよ、次がなくなっちゃうんで〜。」
杉野が飲むのをやめて瑞樹を見る。
彼の酒の強さは実は半端ない。
「じゃ次。えーと好きな女性のタイプは〜?」
トーコ周辺の女性軍がキャー!と黄色い声援を上げる。
良平は笑ったまま口を引きつらせた。
「えーと、真のしっかりした美人が好きでーす。」

キャー!
はい♪イッキ!イッキ!イッキ〜!

「じゃ次の質問…。」
「はい!」
「はい良平くんー採用!どうぞ〜。」
「んじゃ、好きな女性のタイプはなんですか?!」

キャー!!
事情を知らない女性軍と、事情を知っている数人が異常な盛り上がりを見せた。
杉野は少し酔いの回った表情でニヤリと笑みを浮かべる。
「えーと、やんちゃで細身の筋肉質な人が好きでーす!」

キャハー!
はい♪イッキ!イッキ!イッキッキ〜!!

ちっ、かわされた。
良平が軽く舌打ちしたのに目もくれず、杉野は楽しそうに飲み続けている。
そろそろビンの中身がなくなりそうだ。
「お酒ほんっと強いっすね〜。では最後に!一言お願いしま〜す。」
「えー。これからもこいつら四人、それぞれよろしくお願いしまーす。」

わー!!

人数にしては異様な盛り上がりを見せつつ、杉野はビンを一本開けてしまった。
ドン!とビールを机に置いて、軽く会釈をしながら席に戻った。
瑞樹もこれで役目は終わったとばかりに席に座る。
店員の女性が迷惑そうにこちらを見ていたが、気にしない。

「どーしたの良平、不機嫌?」
「別に?なんでだよ。」
隣に座っていた祐也が良平の顔を覗き込んで尋ねた。
「女性の好みなんて、どうだっていいじゃん。お前男だろ。」
「…うるせぇな、気にしてねぇってば!」
「ふーん。」
目だけで笑って、祐也は皿に取った料理を口に運んだ。

良平はしばらく黙っていたが、ふと決心したように顔を上げると、残ったビール瓶を取り上げて瑞樹の所まで歩いていった。
「勝負だ瑞樹!!」
「はぁ〜ん?俺に勝てると思ってんの?」


飲み会は二時間続いた。
あんまり酒の強くない良平は途中でつぶれ、トイレを行ったりきたりし始めた。
そして襲ってくる眠気。
まだ飲み足りない奴に強引に飲ませようとしているところで、時間が来て全員店を出た。

「二次会行く人〜〜?」
トーコが手を振って人を集めているが、良平はこれ以上飲んだら死んでしまうと思った。
ほとんどの人が手を上げたのに対し良平が黙っていたのでトーコが寄って来た。
「良。行かないの?」
「わりぃ、寝不足なの。楽しんで。」
「そう。アンタ今日主役なのに。」
「瑞樹に頼ん…。」
トーコの後ろでニヤリと見下したように笑った瑞樹は、
「俺一人で目立っちゃお〜♪」
という目で良平を見た。

む、むかつく…

それでも無理なものは無理。
良平は家に帰るつもりでみんなと別れた。
杉野が駅まで送るよとついてきたが、断った。

「まぁまぁそう言わずに。あ、トイレあるよあそこに。」
余計なおせっかいかけんなと振りほどこうとしたが、優しくされると弱い。
良平は文句もそこそこに、駅への途中にある公衆トイレの中に入った。
個室の手前のところでベルトに手をかけたら、すぐ後ろについてきていた杉野に個室まで引っ張り込まれた。
「オ、オイ?!」

ガチャンと鍵を閉められたので、良平は杉野の顔を見上げた。
「な…杉野?おまえ、まさか。」
「良平〜。俺もう我慢できな〜い。」
「はぁ?!おま…っ!馬鹿やろ!出せよ!」
「駄目。ね、気持ちいいことしよ。」

おいおい待てよ〜〜!!
外は雪が降ってる上に、ここは公衆のトイレだぞ!

「わ、わかった。わかった…お前んち行く。今から。それでいいだろ?」
「う〜ん。でも、今すぐがいい。」
「おいッふざけんなッ。」
「ふざけてないよ。良平が好きなんだ。」

知ってる。
知ってるからそんなことは。

良平はどうにかこのピンチを抜け出そうと思考を巡らせた。
しかし杉野には力では勝ったことがないし、このままでは説得も聞いてくれない。
仕方がないから一回だけと条件を出して…
イヤイヤそれでもこんな屋外でヤるなんてできない!
こんな狭い空間でどうやって…いやその前に他に誰か人が来たら…

「良平。」
「ぅッ。」
気がついたら杉野の顔が目前まで迫っていた。
ドアを背にした杉野に抱き寄せられて、良平は目を閉じた。


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