双子ですから P4
次の日の午後、良平、瑞樹、トーコ、祐也の四人は良平たちの大学の学生食堂に集まった。
授業が遅れて最後に到着した良平が、すでに集まっていた三人を見て呆れたように言った。
「……お前ら、暇、だな。」
トーコがすかさず反論する。
「暇じゃないわよ。忙しいわよ!」
「忙しかったらこんな時間にこんなとこで集まれねぇだろ。」
「だから、ここに来るために忙しかったんじゃない。」
無茶苦茶だ。
「トーコ、それを暇って言うんだよ。」
良平は空いている席に荷物を置いた。
「飯は?」
「これから。お前を待ってたんだよ。」
祐也が言う。
良平はそれはどうもと肩を竦めて財布を取り出した。
そこで初めて、他の三人がじっと良平の顔を観察しているのに気付いた。
「な、なんだよ。」
瑞樹が腕を組んだまま唸って、言った。
「んー。お前と聡平は、本当にもー、見事にそっくりだな。」
「…。そりゃ、双子だからな?」
「外見でわかる違いは、目の下のその小さなほくろだけだな。」
「ああ。たぶん。」
「性格は天と地の差だけどね。」
「どーゆー意味だよッ。」
ニヤついた祐也の頭を良平がすかさずはたいた。
「よし。」
瑞樹が突然手を打って言った。
全員が瑞樹を見る。
「良平、聡平のバイト先はどこだ?」
「なんだよ、次から次へと…。大学駅前のパスタ屋って聞いてるけど。」
「その店には行ったことあるか?」
「あるわけねぇだろ。」
「チェーン店か?」
「ああ、俺らの高校の近くにもあったじゃん、イタリーって。」
「あ!あれか。」
よく高校生が夕飯を食べに寄っていた、庶民派のイタリアンレストランだ。
この辺には五万と立っている。
「お前、イタリアン系飲食店でのバイト経験は?」
「うーんと…。」
良平が指を折って数えている。
「四ヶ月くらいならあるかな。」
「それだけやってたら十分対応できるな。メニューを覚えて、あとは残りのバイト経験でカバーだ。」
「は?」
良平が不思議そうに瑞樹を見る。
他の三人はニヤリと顔を見合わせて、良平の方を見やった。
はっとする良平。
「あのな、まさかお前ら…!」
「俺らの考えた作戦はだな!」
「名付けて聡平くん分身の術作戦!!」
嬉しそうにトーコが言う。それに瑞樹が反応した。
「…そのネーミング、却下だっつったろ!」
「ピッタリじゃん!あのね、聡平くんが働いてる時間に店に乗り込んでいって、うまく聡平くんを捕獲して代わりに良平が働くの!」
「…待て。」
「そんでね、その場でささやかながら送迎会をやって、そのあと河原で花火を……」
「いやだから待てッ!」
調子よく喋り出したトーコを制して、良平が慌てて言う。
「それって俺が働くのか?したら俺、その送迎会とやらに参加できねぇじゃねぇかよ!」
「尊い犠牲よ、一人くらい。」
「いや馬鹿を言うな馬鹿を…。」
やたらと堂々と言い放つトーコに、良平は力なく肩を落とした。
隣で祐也が笑いを堪えている。
「いい案だと思うんだけどなぁ〜〜。」
「まったくよくない。それにそんなことくらいじゃ聡平をぎょっとさせることなんてできねぇぞ。」
「あーそっかー。」
トーコが残念そうに首を傾げる。
黙っていた瑞樹が、それではと次の案を出す。
「んじゃ、こういうのはどうだ。バイトはもう諦めて、その後に奴を拉致する。」
「連れ去るのか。どこへ?」
「…どこへでも。」
「それも驚かねぇと思うよ。俺らだとわかっちまったら無理じゃん。」
「わからないようにやるんだよ。」
「覆面とかすんのか?」
「普通に変質者じゃんかっ。」
他にも次々と案が出たが、意見は一向にまとまる気配がない。
良平のお腹がくぅと音を立てた。
「腹減ったよ〜〜。ひとまず、買いに行こうぜ。」
「賛成ー。」
四人は一斉に席を立って入口の列に並んだ。
昼の時間が始まってからしばらく経っているので、並んでいる人影もまばらだ。
「あーなんかパスタの話してたらスパゲッティ食べたくなってきた。」
「あ、俺もー。」
良平と祐也が麺類のカウンターの方へ向かう。
それを見て、瑞樹が突然声を上げた。
「そーだ!いいこと思いついたぞ!」
予想外に大きな声だったので、その場にいた調理場のおばちゃんまでが、瑞樹の方を向いた。
祐也とトーコが慌ててキョロキョロと周りを見渡して瑞樹を押さえた。
不審そうに集められた視線が、方々へ散っていく。
「声が大きいわよ瑞樹!」
「いや、本当にいいこと思いついたもんだから。」
反省の色なく瑞樹がトーコを見て言う。
良平と祐也は互いに顔を見合わせた。