監禁 P4
カーテンの隙間から、朝の太陽の光が射し込んでいる。
薄暗い部屋の中で、良平はベッドに眠っていた。
部屋の方向に背を向けて、気を失って表情を無くしている。
タオルケットの上に見える肩は裸で、両方の手首は玩具の手錠にタオルが巻かれていてベッドの一端に括り付けられていた。
見たところ傷らしい傷はなく、寝顔も健やかだ。
昨夜、瑞樹と引き換えに再び智哉の家に連れ込まれた良平は、そのまま智哉たちに乱暴されるものだと思っていた。
智哉の仲間たちは相変わらず気に食わないニタニタした顔で良平を蔑むし。
智哉自身は相変わらず何を考えているかわからないし。
服を脱げと言うので、Tシャツを脱いで、智哉の顔に叩きつけてやった。
乱闘になったらそれはそれで、逃げ出すチャンスがあるかもしれない。
そう思って挑発してみたのだが、案外と智哉は冷静で、わめく仲間たちをさも煩そうに部屋から追い出した。
それからずずいっと良平の前へ近付いた。
目の前で見ると身長差は明らかで、良平は思わず方眉を上げた。
「佐久間さん。今度は逃げるなよ。」
「…。」
「逃げたら、お前の親しい人がどうなっても知らねぇよ。」
「っ…卑怯な奴。」
「欲しいものを手にするためならなんだってやる。お前はもう俺のものだ。」
「阿呆が。勝手に決めんな!!」
「そう強がっていられるのも今のうちだよ、佐久間さん。…ううん、良平、さん。」
「……くそっ。」
「その悔しがる表情、たまんないね。もっと悔しがれよ。俺のことを憎めば憎むほど、お前は俺の虜になる。」
勝手な理論だ。
良平が唇を噛み締めて智哉を睨み上げた。
智哉はそれを意に介さず、良平の右腕をとって、その二の腕あたりに口付けた。
「あっ?」
予想外な箇所に噛み付かれ、良平は思わず動きを止めた。
智哉の唇の感触が、良平の腕を蝕む。
「は、離せ…っ。」
「抵抗してもいいんだぜ。無駄だろうけど。」
「てめぇっ!!」
良平は思い切り腕を引いた。
そう来ることを予想していたのか、その瞬間に智哉が右腕を恐ろしいまでに強く掴んだので、良平が痛みに目を閉じた。
「っ!」
「ほらね、無駄だ。でも…抵抗が多いほうが燃えるな。」
「っざけんな!」
「俺は本気だ。」
その目が、良平の動きを完全に止めてしまう。
彼の瞳の、心の奥には一体何があるのだろう。
諦めたように動きを止めた良平の顎を取り、智哉は近くに引き寄せた。
「良平さん。このホクロ、かわいいね。」
「な…っ。」
はっと振り向いた瞬間だった。
今度は目の下の小さなホクロに、智哉が噛み付いた。
熱い舌が、ねっとりと頬の上を滑る。
「やめ…っ」
良平がどうにか逃れようと暴れたので、その頭を強く掴んで頬を貪る。
局所的な刺激に、良平の体が無意識に火照りだした。
「こっちへ来い。」
智哉は急に唇を離し、良平の手を引いて奥の部屋を空けた。
一人暮らしのくせに、部屋が二つあるとはやはりどうかしている、このアパート。
中には大きなベッドが一つ、それに智哉の学校道具などが無造作に置いてあり、小さいが窓もあった。
智哉は良平のことをベッドに押し付けて、その下に隠してあった箱から手錠を一つ取り出した。
「この前のは壊しちゃった?」
「…そのままにしとけるかってーの。」
「今度は壊したら、ただじゃおかないからね。いい?」
「勝手にしろよ!!」
やけっぱちに叫んだ良平の両手を取り、智哉は手錠をかけた。
その上からタオルを今度は解けないようにしっかりと巻いて、ベッドの一端にくくりつける。
良平は両手を頭上に上げた形となり、それを智哉が見下ろした。
智哉の目線が良平の首筋や鎖骨、胸や腹の筋などのポイントを舐めるように動き、良平はそれだけで身体を緊張させた。
「鍛えられてるわけじゃないけど…洗練されたカラダだな。」
智哉は満足そうに口の端を歪めて笑い、良平に顔を近づけた。
「悔しい?良平さん。手を拘束されて、俺に見られて。」
「…っせぇ!」
「ここまで大人しくさせてくれるなんて、あの瑞樹って男。ちょっと、妬けるな。」
「…おいっ!てめぇ瑞樹や他の人には何もしないって約束、守れよ?!」
「わかってるよ。その代わり、それに相当するくらい良平さんが俺を満足させてくれるわけだろ?」
「…!!」
智哉は言うなり、何かを言いかけた良平の唇に飢えた獣のようにかぶりついた。
吸うように貪ると、良平の柔らかい唇が吸い付いてくる。
嫌がる良平に圧し掛かるようにして、激しいキスを与えた。
「ぁ…っく…っ。」
良平が呻く。
その声すら逃がさぬように、良平の口内を舌で犯す。
良平は呼吸すら満足にできずに苦しそうにもがき、震えた腕がガチャッと手錠を鳴らした。
「…っは!」
一旦離すと、舌が糸を引き、良平が苦しそうに酸素を求めて喉をそらせた。
しかしそれも束の間、正常な呼吸を取り戻す時間を与えない速さで再び唇を塞がれた。
「んぅぅ〜……っ!!」
酸素と共に愛も足りない。
良平は智哉が落ち着いて止まってくれるのを待つことしかできなかった。