正直、ドキッとした。 それもそうだろう。 いきなり自分の妹の命が、あと3ヶ月だなんて聞かされて、 驚かない兄はいない。 しかし、何かおかしい。 何か違和感がある。 そうだ、何故このバカは、あと3ヶ月の命だっていうのに、 のほほんとしていやがるのかだ。 しかもこのバカ、「どうだ、驚いたか!」と言わんばかりに誇らしげだ。 普通、あと3ヶ月の命と知ったら、失意のどん底だろ? 必死に延命する為に緊急入院だろ? だのになんだコイツの余裕っぷりは? そこでオレは、一つの仮説を導き出した。 それは、ともみがオレに「虚偽の報告」をしたという可能性だ。 平たく言うとウソをついたということである。 ともみの分際でオレ様にウソをつくとはけしからん。 よし、ここは一つ、この悪たれを懲らしめねばならんな。 「ふーん」 オレは思いっきり興味なさそうに、この話題をスルーしてやった。 ヘタに驚いたりしたら相手の思うツボだ。 「えっ! あれ!?」 「ん? どうしたともみ?」 オレはワザとらしく聞いてやる。 「どうして驚かないの? 普通、驚くでしょ?」 「驚くか驚かないかはオレが決めることだ。 つまりお前のネタはその程度だと言うことだね。 もっと精進したまえよ? ともみくん。カッカッカッカッカッ!」 どっかの古風な社長風に笑った。 もちろん皮肉の意味をこめてだ。 「うぅーっ! ネタじゃないもん! ホントだもん!」 ともみは顔を真っ赤にして反論した。 このへんで非を認めればいいのに…。 よし、ならば徹底的に質問攻めしてやる。 「ほう、ネタじゃないとするとお前の死因はなんだ?」 「し、しいん…? 試飲?」 「違う! テイスティングしてどうすんだよ! お前が死ぬ原因のことだ!」 「そ、それは…」 「んー? どうした? 言えないのか? こっちはお前に聞きたいことが山ほどあるんですがねぇ。 はい、落ち着いて言い訳考えてね」 「うぅーっ!! お兄ちゃん、いじわるだよーっ!」 「いじわるなもんか! 死因もわからないのに3ヶ月後に死ぬなんて聞かされて、 納得するヤツはいるわけないだろう!?」 「うぅ…。だって、そこまで教えてくれなかったんだもん…」 「教えてくれなかったって、誰から聞いたんだ?」 「占い師のおじさん…」 「はぁ? 占い師!?」 「うん、今日、学校の帰り道で声をかけられて…」 「で、貴方は3ヶ月後に死にますよって言われたのか?」 「うん、あのね、そのおじさんスゴイんだよ! 初対面なのに私の名前を知ってたの! 年齢も学校の名前も全部知ってたんだよ! スゴイよね〜」 「んで? そいつ、今どこにいるんだ?」 「え? なんで? 駅の方に歩いていったから、たぶん駅かなぁ…」 「ん? ちょっとそいつをな、ぶん殴ってきてやるんだ!」 「えっ! ケンカはダメだよっ!」 オレはダッシュで駅まで行こうとしたのだが、 ともみのヤツが慌てて引き止めやがった。 「バカ! そいつは変質者だ! なんで3ヶ月後に死ぬなんて言ったのかは解らんが、 いや、解りたくもねぇが、絶対にお前の身辺調査をしているぞ、そいつは! ひょっとしたらストーカーかもしれん! オレが警察に突き出してやる!」 「でも、でもっ! ケンカはダメだよぉ!」 ともみはオレの腕にしがみついて、強引にオレの動きを封じる。 服の上からだが、ともみの体温を感じた。 ついでに胸の膨らみも。 む!? こいつ、前より少し大きくなったんじゃないか? うむ、この状況は悪くない。 もうしばらく、こうしていようかな? いやいや、そういうわけにはいかん! このバカをなんとかせねば。 「あのなぁ、お前は他人の心配するより、自分の心配をしろ! お前、そいつにつきまとわれてるんだぞ! 怖くはないのか!?」 「うぅ…、ちょっと怖いかも…」 「つきまとわれて、自分の家まで来ちゃうんだぞ、そいつが! そんで、お風呂とか覗かれちゃうんだ! んで、 『えへへ、ともみちゃんのおっぱい、また大きくなったね。ハァハァ…』 とか言われちゃうんだぞ!」 「うぅーっ! 怖いよー、お兄ちゃんがっ!」 「バカ! オレじゃないだろ、怖いのは! 怖いのはそのストーカーの方だ!」 「う〜、だってホントに恐かったんだもん。迫真の演技っていうカンジで。 お兄ちゃんが本物のストーカーさんになっちゃったのかと思って、 ちょっと心配しちゃったよぉ…」 「お前に心配されたくねぇよ! バカ!」 ポカッ!と、ともみの頭を殴ってやる。 「いったぁい!」 「教育的指導だ…。オレも辛いんだよ…」 「そんなのキベンだよぉ…」 「まぁ、今日はお前のタンコブに免じて許してやるが、 またそいつがお前の前に現れたら、速攻でオレに言えよ。 いいな? 解ったな!?」 「うん、わかった!」 ともみはニコッと微笑んで答えた。 いつもこう、素直だったらいいんだけどな…。 「あのね、お兄ちゃん…」 ともみがあらたまって、何か言おうとモジモジしている。 なんだろう? まだ他に何か問題があるのだろうか? 「ん? なんだ?」 オレがそう、やさしく発言を促してやると…。 「んっとね、いつも守ってくれて、ありがとう…」 そう言って頬をほんのりピンク色に染めたともみは、 走ってオレの部屋を出て、階下へと降りていった。 なんつーか、あの表情って…。 いや、オレらは兄妹だ。 そんなハズはない。 と、信じたい…。 ・ ・ ・ つづく ---- あとがき --------------------------------------------- どもども、ATFです。今回も読んでくれてありがとうございます。 第一話の文章量が少なかったので、2話目を早めにアップしました。(当社比) まぁ、一話分の文章量はそれほど多くないので、短いスパンで書いていきたいな、 と思っているのですが、その意気込みがいつまで続くことやら…。(汗) 鋭意努力いたします。 |
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文章:ATF (2002年3月8日) |