「ただいまぁ」
「おかえり〜」
 木乃香が扉を開けると、明日菜はソファに寝転がって煎餅を咥えながらぼ〜っとテレビを見ていた。明らかに気が抜けている。
「なんやアスナ、だらしないな〜」
「いいじゃないの、ようやく配達終わって帰ってきたんだから、のんびりしてたってさ。それよりお腹すいた〜」
「はいはい。すぐ晩御飯の仕度するわ。ちょっと待っててな。そや、ネギ君は?」
「……知らない」
 ネギの名前を出した途端、明日菜が顔を背けた。
「なんや、まだ仲直りしてへんの。ほならやっぱ、いんちょんとこに行っとるんかなあ。今日の晩御飯どないするんやろ。いんちょんとこで食べてくるんやろか」
「……えっ? いいんちょのとこ」
「わーっ! このか姉さん、それ言っちゃダメだって」
「え、アカンの?」
 このかの呟きに、テーブルの上で丸まっていたカモは思わず反応してしまった。それがかえって、明日菜に疑念をもたれる事になってしまう。
「……ちょっとアンタ、どういう事。なんでネギがいいんちょのとこに行ってるのよ。学校の仕事で遅くなるんじゃなかったの」
「え……いや〜、あの〜……あ、そうだ。オイラも用事を思い出したっ! ちょっくら出掛けてき、ふぎゃっ!」
 そろりと玄関に向かったカモだったが、一瞬早く明日菜の手の中に捕らわれてしまった。
「……カ、モ? どういう事か、説明してもらおうかしら」
「ひ、ひいぃぃぃーっ!」
 握りつぶさんばかりの勢いで胴を掴まれ、カモは断末魔の悲鳴を上げた。




「ネギ先生……」
 跪いたあやかの前で、ネギは直立不動の姿勢をとっている。その股間の中心では、幼いながらも雄々しい肉茎が、精一杯天を仰いでいる。
「ネギ先生の、オチンポ……」
 あやかはわずかに顔を近づけると、小鼻をヒクヒクさせる。途端に、むわっとした臭気が鼻腔を通り抜け、あやかの脳髄が倒錯した喜びに打ち震える。少年の甘く芳しい体臭と、一晩入浴していないことによる汗と若さ故の汚れの臭い、そして先ほどまで何度も吐き出された白濁により肉茎そのものにこびりついた、濃い精臭。三つの異なる、しかしどれもネギが発する事により一つ一つがあやかの好物と化した臭気が、混ざり合うことによってより強烈にあやかの脳を痺れさせる。
(あふぁ、凄いニオヒィィ……こんなのをお口いっぱいに頬張ってしまったら、頭全体にこの匂いが充満して……私、ドロドロに蕩けてしまいますわぁ)
 ふと、目の前の肉茎がブルンと跳ねる。視線を上げると、真っ赤な顔をしたネギが、しかし目を大きく開いてあやかの顔をじっと見下ろしていた。その息遣いは荒い。それはまさしく、臭いのキツイ肉茎を顔面に突きつけられていながら白痴のような笑みを浮かべて倒錯した喜びに浸る大人びた美少女に、嗜虐的な興奮を覚えている事に他ならない。
(はあん、ネギ先生、そんな目で見ないで下さいぃ……オチンポを顔に突きつけられて、だらしない表情をして喜んでいる私を、見ないでぇ)
 あやかはあまりの羞恥に顔を背けたくなった。しかし、実際には背けるどころか、その官能的な唇をより大きく開き、無意識に上目遣いでネギを誘うように見つめていた。
(あぁっ、違いますわ……本当は見てほしいんです……ネギ先生のオチンポを近くに感じて、いやらしい顔をしている私を……雪広財閥の娘でありながら、ネギ先生の愛の奴隷になってしまい、そのオチンポに全てを捧げたいやらしい一匹の牝に成り下がった姿を、見ていただきたいのぉ……)
 あやかの瞳はどんどん潤み、さらに大きく口を開いて、ネギの肉茎を飲み込もうとしている。唇の端からははしたなくもわずかに透明な唾液が零れ、時折興奮に耐えかねた真っ赤な舌が口外に姿を覗かせては淫猥にくねる。一国の王女と言われても頷いてしまうほどの清楚な佇まいと麗しい美貌を兼ね備えたあやかが、ネギの肉茎の前では哀れな一匹の牝であり色に狂った淫蕩な魔女に変貌してしまう。そのあまりの凄艶さにネギは呼吸すらも忘れ、色に堕ちた美少女の白痴顔を穴が開くほど凝視し、肉茎はますます血を集め天を仰ぐ。
(あぁ、咥えます、あやか、咥えますわ……ネギ先生のオチンポに、このお口を征服されてしまいますわ……あやかはネギ先生のオナペット、オナホール……手だけではなく、このお口も、ネギ先生に捧げられた、白濁を搾り出す為の道具に成り下がってしまいますわ……でも、それでも構いません……いいえ、そうさせていただきたいの……思う存分、私をお使いになって……ネギ先生の溢れる性欲を、私に注ぎ込んでくださいっ)
 限界まで開かれたあやかの唇が、ネギの肉茎を飲み込もうと1ミリ、また1ミリと近づいてゆく。倒錯した興奮により大量生産された唾液はあやかの口内をヌチャヌチャに濡れそぼらせ、秘穴に負けないほどの淫猥な肉穴に変貌させる。そして、今まさにその淫猥な肉穴が、少年の肉茎を飲み込もうとした瞬間。
「……やっぱりダメェッ!」
「ムギュ」
 あやかの顔は、ネギの手のひらに押し止められていた。
「ネ、ネギ先生?」
「ご、ごめんなさい、いいんちょさん。でも、やっぱりこんなのダメです。僕は先生で、いいんちょさんは僕の大事な生徒で……だから……」
 ネギは俯き、両手をきつく握り締めている。決して嫌がっているわけではない。それでも、鉄の意志で自分を律しているのだ。そんなネギを見て、あやかは立ち上がる。
「今日は、いいんちょさんにすごく感謝しています。でも、いいんちょさんのお陰で、一人でどうすれば良いのかだいたいわかりましたから。僕もう、帰りま……わぷっ」
 あまりにいじらしいネギの態度に、あやかはたまらずネギを抱きしめていた。その豊かな胸に、ネギの頭が埋もれる。
「い、いいんちょさん、あのっ」
「ネギ先生……どうしてそんなに、お優しいんですの……少しくらいワガママをおっしゃってくださってもよろしいですのに」
「いえ、やっぱり僕は、皆さんの先生ですから。しっかりしないとダメなんです」
 まだ遊びたい盛りの少年であるはずなのに、重い責任を一人で背負い、どこまでも自分には厳しくあたる。そのネギの覚悟に、あやかは思わず涙が出そうになった。だから、ネギをよりきつく大きしめ、耳元にある提案を囁く。ネギの負担を少しでも軽くしてあげる為に。
「では、ネギ先生。こういうのはいかがでしょう。私のワガママを、一つ聞いてくださいませんか。そのお礼に、私がお口で奉仕させていただきます。いかがですか?」
「え……でも……」
「本当は、お口でご奉仕させていただけるのなら、それも私にとっては十二分に大きな喜びなのですけれど。でも、それにネギ先生が責任を感じてしまうのなら。お互いに一つずつ、ワガママ。おあいこでしょう」
 ネギはあやかの胸の中から顔を上げ、あやかの顔を見上げる。そこにはにっこりと、優しい笑顔。どこかで見た事があるような、とても安心できる笑顔。
「……お姉ちゃん……」
「え」
「あ、いえ……その……そういう事なら……」
 語尾はもにょもにょと濁らせながらも、ネギは本当に小さく、頷いた。それを了承と理解し、あやかはまたネギを抱きしめた。
「嬉しいですわっ、ネギ先生。では、私のワガママを聞いてくださいね。……キス……してください、ネギ先生」
「……え、ええっ!? ……キス?」
 ネギは驚いて顔を上げる。そこには頬を染め、恥じらいの混じった笑顔を浮かべるあやかの顔。先程まで淫蕩に大胆に振舞っていた少女と同じ人物だとは思えない。
「私、ずっと、悔しかったんです。修学旅行での、のどかさんが。事故とはいえ、ネギ先生にキスしていただけるなんて、悔しくて、うらやましくて……ですから……」
 もじもじと。告白するあやかの花びらのような唇に、ネギの視線は吸い込まれてゆく。仮契約の為、何人かの生徒達と唇を重ねた事はあったが、その誰とも勝るとも劣らぬ、魅惑的な唇。そして、いつも包み込むような大きな優しさを持ったあやかの、初めての年相応のおねだり。
「……わかりました。僕でよければ」
「ほ、本当ですかっ。うれしいっ」
 蕾が満開の花を咲かせるように、あやかの顔に大輪の笑みが輝く。その瞬間、ネギの胸がドキンと大きく高鳴った。
「で、ではネギ先生。さっそく」
 あやかは膝を曲げるとネギの頭と同じ高さにし、瞳を閉じて唇をわずかに突き出す。待っていればネギの方からしてくれるのだから、そう何度も言い聞かせて胸の鼓動を静めようとするも、唇は早く早くと待ち焦がれて、ツイと突き出されキスを誘う。
 そんなあやかに誘われるように、ネギは小さな両手をあやかの頬に添え、意を決して唇を近づけていく。
(ハアァンッ、ネギ先生にキスしていただけるなんて、今日は人生最良の日ですわぁっ! 私、ネギ先生に失礼はないかしら。いえ、ネギ先生がいらっしゃる前に、お風呂にも入って歯も磨いて、身だしなみは完璧ですわ。体は精液に塗れてしまっているけれど、それは二人の愛の営み故。ネギ先生の唇を迎え入れるのに、何の妨げにも……!)
「はうあっ!」
「うわっ?」
 突然あやかが弾かれたように頭を仰け反らせる。虚を突かれたネギも驚いて声を上げ、目を丸くしてあやかの顔を見る。あやかは両手で唇を押さえ、驚愕の表情を浮かべていた。
「い、いいんちょさん? どうしたんですか」
「……わ……私……なんという事を……」
 ネギの言葉も耳に入らず、あやかは己のミスを恥じた。うっかり、取り返しのつかない事をしてしまう所だったではないか。
「も、申し訳ありません、ネギ先生! 5分、5分だけ、私に時間を頂いてもよろしいですか」
 あやかは立ち上がると、直角に折れ曲がるほど大きく頭を下げた。
「は、はい。僕は構いませんけど」
 あやかの行動と真剣な言葉の響きに、ネギは気圧されてただ頷く。
「本当に、本当に申し訳ございませんっ。少し、少しだけお待ちくださいねっ」
 あやかは唇を手で隠したまま、部屋の扉の横に置いてある大きな鈴をチリンチリンと鳴らす。すると、外から掛けられていた鍵が開けられ。数名のメイドが現れる。素っ裸のネギは慌てて股間を隠してうずくまるがメイド達は決してそちらを見ることはなく、あやかに指示を仰ぐとすぐに部屋の外へ出て行った。
「ネギ先生、すぐに戻りますから、どうかお待ちくださいね」
 そう言って、最後にあやかが部屋を後にする。大きな部屋に一人残され、ネギは裸のままペタンとへたりこんでいた。

「……私とした事が、とんでもない過ちを犯してしまう所でしたわ」
 雪広家のいくつもある大きな洗面所の一つで、あやかは一心不乱に歯を磨いていた。
「……ネギ先生のお尻の穴に奉仕したばかりの唇を、ネギ先生に捧げようだなんて、なんてはしたないマネを」
 そう。ネギの唇が触れる瞬間、あやかは思い出したのだ。その数分前、ネギのアナルを舐めながら手コキ奉仕をしていたという事を。
「いえ、決してネギ先生のお尻の穴が穢れているとか、そういう事ではないのです。……それはとても刺激的なお味で、私は……」
 脳裏に愛しき少年の尻にかしずいて奉仕する自分の姿が浮かび上がり、あやかは思わず背徳の幸福にトリップしそうになる。慌ててあやかは頭を左右にブンブン振り、それを振り払う。
「な、こんな事をしている場合ではございませんわ。今もネギ先生がお待ちになっているというのに。早く口の中だけでも清潔にして、ネギ先生の下へ戻らなければ。ハッ、髪の毛がベタベタに。ネギ先生の精が……整えていった方が良いかしら……ああ、でもネギ先生をお待たせするわけには……はう、時間が、時間が足りないですわっ」
 あやかはパニックになりかけていた。行為の途中であれば、その過程でどれほど汚れてもお互い気にはならないだろう。しかしこうして一度間を置いてしまえば、次にお互いを目にした時にそれが汚れとして移ってしまうのではないか、という恐怖が生まれてくる。
 しかし、広い屋敷のこれまた広い部屋の中に一人ポツンと取り残されたネギの心細さを思えば、悠長に構えている時間はない。あやかは割り切って、口内だけでも清潔に保つと、冷水で顔を洗った。若さゆえ、薄化粧が落ちてもその美貌が損なわれる事はない。
 自分で出来る身だしなみを終えると、あやかはパンパンと手を叩く。するとすぐさま数名のメイドたちが現れて、あやかを着替えさせてゆく。ドレスを脱がし、新しく用意された衣装を着用する。ドレスを脱ぐのはともかく、服を見につけることくらいは普段は自分で行っているあやかだが、今は何しろ時間がない。あっという間に着替え終わり、あやかは大きな鏡の前で両手で長い後ろ髪をかき上げ、ポーズを取る。
「ネギ先生、気に入っていただけるかしら」
 それはあまりに扇情的な姿だった。純白のビスチェからこぼれんばかりのあやかの豊かな胸。股間を覆う同じく純白のショーツはギリギリまで布地をカットされており、横と背面はほぼ紐状。ふっくらとした恥丘とお尻の穴をかろうじて隠す事のみを目的としている。ガーターベルトはあやかのモデルのように長く、しかし肉付きの良い足を包んだ金色のストッキングを吊り上げている。二の腕をほぼ覆わんばかりのロンググローブも、ストッキングと合わせた金色。しかしそれがざらついた下品な印象にならないのは、特殊な製法による。絹の柔らかさと金の光沢を併せ持ったその手袋とストッキングは、あやかの密かなお気に入りの一品なのだ。
 官能を存分に刺激しながらもどこか清楚を漂わせるのは、それを着こなすあやか自身の魅力によるものだろう。これならネギにも気に入っていただけるはず、あやかは鏡を見て確信し、一つ頷く。
 と、メイド達の視線が自分に注がれているのに気付く。皆一様に頬を赤く染め、中には悩ましい吐息を漏らす者もいた。
「あ、貴方達、勘違いしないでくださらない。私はただネギ先生に、私にできる限りのもてなしをしたいだけなのですから」
 淫らな想像はおよしなさい、そう意味を込めて発した言葉だったが、『もてなし』という単語がかえってその想像を鮮明にさせてしまったようだ。メイドの一人は思わず鼻血を噴き出していた。
「ハッ! こんなのんびりしている場合ではありませんわ。ネギ先生〜っ」
 メイド達を残し、あやかは一人洗面所を飛び出し慌てて駆けていった。

「ネギ先生、お待たせいたしまし、あら?」
 あやかが静かに扉を開けると、ネギはスーツを身につけて身支度を済ませていた。
「あ、いいんちょさん、僕、ブッ!」
 何かを言いかけたネギだが、あやかの扇情的な姿に思わず噴き出し、慌てて背中を向ける。
「ネギ先生。この部屋、少し寒かったでしょうか。暖房を入れた方がよろしいですか」
 寒さ故に再び衣類を身につけた、そう判断したあやかに、ネギは背を向けたまま首を振る。
「いえ、そうじゃなくて。今日は僕、もう帰ります」
「ええっ、そんなっ」
 ネギの突然の言葉に、あやかは思わず声を漏らす。
「僕、いいんちょさんが席を外している間に、色々考えたんです。それで、これはやっぱり自分で何とかしなきゃいけない事なんだって思って。だってコレは、これからもずっと僕の体の一部なんですから。……幸い、一人でじっとしていたら、収まってきたし。後は、いいんちょさんが教えてくれたやり方で、一人でなんとかしますね」
「ネギ先生……」
 背を向けたまま語るネギ。だが、かなり無理をしているであろうことは、わずかに震えているその背中を見ればすぐにわかる。それでも自分の欲望に蓋をし、あやかの事を一番に考える。ネギのそんな所があやかの愛した部分であり、そしてもどかしい部分でもあった。
「それじゃ、また学校で。サヨウナラッ」
 そう言って、ネギはあやかの横をすり抜けようとする。その瞬間、あやかは思わずネギに抱きついていた。
「い、いいんちょさん、放してください」
 後ろから抱きすくめられ、ネギは戸惑いの声を上げる。あやかはネギの頬に頬を重ね、呟いた。
「ひどいですわ、ネギ先生。いつも紳士のネギ先生が、顔も見ずにサヨナラをおっしゃるなんて」
「そ、それは、その」
 思わず口ごもるネギ。
「ウフ、わかっていますわ。気づかれたくなかったのでしょう。ここが、また大きくなってしまったこと」
 あやかは右手を這わせ、ズボンの上からネギの膨らみを撫でた。
「ひぅんっ、あ、これはそのっ」
「私のこの下着、いかがですか。未来の旦那様にだけお見せすると決めていた、とっておきのモノですのよ。……興奮、していただけました?」
 手のひらで優しく股間を撫でまわしながら、あやかは囁く。ネギの視線は、股間を這いずる金色の柔らかな肉の動きに釘付けになる。眩い光沢を放ちながらもいやらしく蠢くそれに、再び股間に血液が集中し始める。
「お気に召さなかったわけではないですわよね。私のこの姿を一目見て、オチンチンが反応してしまったから、気づかれない様にすぐに後ろを向いた。……と考えるのは、私の自惚れでしょうか」
「そ、そんな事は……」
 股間を大きくしたこと、あやかの自惚れである事、そのどちらも否定する言葉が思わず零れる。まさしく、あやかの言う通りだった。しかし、はっきりと頷いてしまえば、せっかくの決意が無駄になる。
「ネギ先生……私のワガママ、もう一度聞いてくださいますか……私に、キス、してください……そして、このオチンチンを鎮めるお手伝いを、私にさせてください……」
「それは……でも……」
 いつの間にか、キスの引き換えだった奉仕までもが、あやかのワガママに切り替わっている。しかし、それは確かにあやかのワガママだったのかもしれない。すでに意を決したネギをこの場に引き止めていたいが為の、ワガママ。
 逡巡するネギの頬を、熱いモノが濡らす。それがあやかの涙だと気づくのに、さほど時間は掛からなかった。
「いいんちょさん……どうして……」
「ワガママばかりで、ごめんなさい。でも、明日も、明後日も、ネギ先生が会うたびに暗い顔をしていらっしゃったらと思うと、私、胸が張り裂けそうで……ですから……」
 ネギはその涙に、心を打たれていた。ここまで自分を思ってくれるこの人を置いて、帰る事ができるだろうか。例え帰れたとして、明日からこの人を苦しめないように、常に笑顔を浮かべているように自分を保てるだろうか。魔法や戦いの悩みとは違う。この悩みを共有しているのは、ネギとあやかだけ。ネギが自己解決できなければ、あやかは理由を知っていながら協力できずに、余計に苦しむ事になるだろう。だから。
「……わかりました」
「えっ」
 胸に回されていたあやかの左手を両手で握り、ネギは呟く。
「僕からも、お願いします。いいんちょさん。もう一度、僕の悩みの解決を、手伝ってもらえませんか」
「は……はいっ。喜んでお手伝いさせていただきますわっ」
 あやかは眩いばかりの笑顔を浮かべて頷いた。ネギはあやかの両手から抜け出すと、正面に立つ。そして改めて、あやかの姿を頭から足の先まで見つめた。
「ど、どうでしょうネギ先生。私のこの格好は」
 あまりに熱心に見つめられ、肌をほんのり桜色に染めながら、それでも隠す事無くネギに視姦される幸福に包まれるあやか。
「は、はい。とっても綺麗で……とっても、エッチで、いやらしい、です。……僕の、オチンチン、もう、パンパンに張り詰めて、痛いくらいです」
 言葉通り、ネギの股間はズボンを突き破らんばかりにパンパンに膨らんでいた。
「ああっ、私のはしたない身体が、ますますネギ先生を悩ませていますのね。申し訳ありません、すぐに小さくするお手伝いをさせていただきますから……だから……最初に、キスを、いただけますか」
 あやかは少し膝を曲げ、瞳を閉じた。ネギも一歩歩み寄り、瞳を閉じて、あやかの頬に両手を添える。そして、今度は間違いなく。あやかとネギの唇が、ぴっとりと重なったのだった。


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