「……えっと」
 また知らない単語が出てきたので、ネギは茶々丸の顔を覗き込んだ。その茶々 丸はと言えば、先ほどまでよりさらに頬が紅潮して見える。
「茶々丸さん、このフェ」
「失礼します」
 ネギが言い終わるより早く、茶々丸はネギのベルトに手をかける。
「わわわっ、ちゃ、茶々丸さんっ!?」
「申し訳ありません。これは下を脱いでいただかないとできない行為ですので」
「あうう、そ、そんな〜」
 ジタジタと嫌がるネギだが、あっという間にパンツ一枚にされてしまう。
「あううう〜……」
 ネギは顔を真っ赤にして、パンツの前を両手で隠す。茶々丸はネギから奪ったズボンをキレイにたたんで机の上に置いてから、今度はネギのパンツに手をかけた。
「えうっ、パ、パンツもですか?」
「はい。お願いします」
「あうう……あの、パンツだけは……」
 泣きそうな顔で茶々丸に懇願するネギだが、当の茶々丸も困った顔を見せるばかり。
「う……うう……ううううーっ」
 ネギは必死で恥ずかしさを押し殺し、手をパンツからわずかに浮かせた。その 機を見逃さず、茶々丸の手がストンとネギのパンツを下ろす。
「はううっ」
 しかしネギの頑張りもここまで。前を隠しながら、女の子のようにペタンと座 り込んでしまった。
「ありがとうございました。ネギ先生」
 ネギの脱いだ服の上にパンツを重ねてから、茶々丸が礼を言う。
「は、はい……」
 ネギは真っ赤になりながらも、微かに頷き返した。
「では……手をどけていただけますか」
「ふえっ! 手、手をですかっ」
「はい。このままでは……始めることができませんので」
「で、でも今は、ちょっと、その……ダメで……」
 ネギはもじもじと体をくねらせる。余りに恥ずかしそうにしているので、茶々 丸もどうしたものかと動きを止めてしまっていた。膝を突き合わせたまま赤い顔 をして俯く二人。ここまでは勢いでトントンと進んでいたが、それが一旦途切れてしまうと次に踏み出す足が急に重く感じられてしまう。
「……ここまでにいたしますか」
「えっ」
 茶々丸の言葉に、ネギは弾かれたように顔を上げる。
「ハカセには私の方から話しておきますので」
「で、でも、それじゃ茶々丸さんが怒られちゃうんじゃ……」
「ですが、ネギ先生がどうしてもおイヤだと言われるのであれば」
「む〜……」
 ネギは頭から湯気が出るほど考え込み始める。茶々丸はただオロオロとその様 を見守っている。
「……あの」
「はい」
 ネギは上目使いに茶々丸の顔を見上げる。
「……絶対笑わないって、約束してくれますか」
「はい」
 茶々丸に確認を取ると、ネギは大きく息を吸い、その勢いで一気に手を腰の後 ろに回した。
「あ……」
 そこにはネギの、皮を被ったまだ小さな肉茎が、それでも精一杯大きく見せよ うと、天井を向いて立ち上がっていた。
「あ、あのっ……僕、さっきから何か変で、急にココが大きくなっちゃって、そ の、元に戻らなくて、えと、あばばばば」
 あわあわと何とか弁解しようと試みるネギに茶々丸は小さく笑みを浮かべると 、そっと右手でネギの肉茎に触れた。
「ひゃうんっ!」
 その瞬間、かわいい悲鳴を上げながら全身をビクビク震わせると、糸の切れた 人形のようにクタクタとくず折れた。
「ちゃ、茶々丸さん……こんなところ、触っちゃダメですよぅ……」
 うっすらと涙を浮かべながら、ネギは茶々丸を哀願するように見つめる。
「ネギ先生……これは、別におかしな事ではないとの事です」
 茶々丸はへたり込むネギの背後に回るとネギが間に入るように足を開いて尻を つき、その背中を自分の体にもたれ掛けさせた。
「えっ……ど、どういう事ですか」
「健康な成人男子は、女性と接触すると、その……コレが、大きくなるとの事で す」
「ひゃんっ!」
 話しながら、後ろから手を伸ばしてネギの肉茎をそっと摘まむ。ネギは再び、 悲鳴を上げて体をくねらせる。
「ですので、これはネギ先生が大人に近づいた、という事かと思われます」
「そ、そうなんですか……」
 ネギは瞳を潤ませながら、茶々丸の顔をぼうっと見上げる。茶々丸の耳に、一 際大きくドキン、という音が響く。
「それで……これが、フェラチオ、なんですか?」
「いえ、違います。ですが、その前の準備段階として必要な事かと思われます」
「そうですか……」
 ネギは体に力が入らなくなってしまったようで、完全にその身を背後の茶々丸 に委ねてしまっている。
「あ、あの、ネギ先生……続けますが、よろしいですか?」
「は、はい……おねがいしますぅ……」
 ネギはまた、フニャフニャと力の抜けた笑みを浮かべる。茶々丸はちょっと困った顔を浮かべながらも、肉茎を握った手を緩やかに上下させ始めた。
「ん、はうんっ……や、あんっ……」
 茶々丸の指が動くたび、ネギの肉茎と、そして体全体が波打つように跳ねる。
手の中の肉茎も、少しずつ大きさを増していくように感じられた。
 茶々丸の左手もネギの背後から回され、肉茎の根元をキュッと握る。右手の指 先は亀頭を包む包皮の合わせ目に添えられた。
「ネギ先生。これから行うことは少々痛いかもしれませんが、よろしいですか」
「えう……あ、はいぃ……」
 事前に尋ねてみるものの、ほわほわとした反応が返ってくるだけ。一瞬判断に 迷った茶々丸だが、それでも覚悟を決め、肉茎の根元を握る左手に力をこめてし っかり押さえると、包皮に指をかけてムリッと一息に引きずり下ろした。
「クヒィィィィッッッ!!」
 その瞬間、ネギは絶叫しながら背も折れんとばかりに仰け反った。
「あ、あが、が…………」
 おこりにかかったかのようにガクガクと体を震わせた後、魂を抜き去られたか のように背後の茶々丸に再び体を預ける。目からは大粒の涙がポロポロとこぼれ 落ち、しまりなく開け放たれた口はワナワナと震えていた。
「ネ、ネギ先生っ。だ、大丈夫ですか?」
 自分のやった事とは言え、これほどの反応が返されるとは予想していなかった 茶々丸は、オロオロとネギの顔を覗き込んだ。
「……ちゃ……ちゃちゃまる、さん……今の、なん、ですか……体が、ビリビリ って……」
「そ、その、この後の行為のために必要な事だったのですが……い、痛かったで しょうか」
「え、と……なんだか、すごくビリビリってして……ごめんなさい、よく、わか んないです……」
「……そうですか」
 それでもネギがちゃんと受け答えをしているのを見て、茶々丸はホッと胸を撫 で下ろす。剥けた包皮から右手を離してポケットからハンカチを取り出すと、ネ ギにそっと話し掛ける。
「ネギ先生……亀頭をお拭きしますが、もし刺激が強すぎるようならばおっしゃ ってください」
「……きとう?」
「その……オチンチンの、先です」
 左手で握っていた根元をそっと揺らす。
「ふうんっ!」
「あ、も、申し訳ありません」
 軽く揺すっただけでも反応するネギに、茶々丸は慌てて肉茎の揺れを押さえる 。
「い、今のはだいじょうぶでした……じゃあ茶々丸さん、よろしくおねがいしま すね」
「は、はい」
 頷いて見せると、根元を押さえていた左手を包皮に触れるように握り替え、剥 けた状態に固定する。そのわずかな動作にもネギは反応を示していたが、まだ耐 えられるレベルであると判断し、ハンカチで初めて外気に晒された桃色の肉塊を 傷つけないようにそっと拭ってゆく。
「あはっ……ん……くひゃんっ……」
 ネギの啼泣に動揺しながらも、決してペースを早めずにじっとりと全てを拭い 取っていく。やがて、茶々丸のハンカチがねっとりと汚された変わりに、ネギの 肉茎は汚れの無い桃色に照り輝き、フルフルと震えていた。
「拭き終わりました」
「ん……あ、はい……」
 茶々丸の言葉に、ネギも目線を下げて自分の下半身を見つめる。
「なにか、ヘンな感じですね……ふだん見ているのとぜんぜんちがう……」
「大人になると、このように大きくなり、皮も剥けるという事です」
「ん〜……じゃあ僕、大人になれたのかな」
 目尻に涙を溜めたまま微笑むネギを見ていると、胸部がカッと熱を持ち、肉茎 を掴んでいた手に知らず力がこめられてしまう。
「あうっ」
「あ、ま、またっ。も、申し訳ありませんネギ先生」
「あ、あははっ、だ、だいじょうぶですよ茶々丸さん。だって僕、もう大人です から」
 精一杯の笑顔を浮かべるネギの言葉に、茶々丸は体内に温かな何かが広がっていくような感触を覚えた。
「あ、そういえば……フェラチオっていうの、まだこれからなんですよね」
「え……そ、そうですね」
 茶々丸自身、行動の優先順位がどんどん勝手に書き換わるせいか、何の為にそ れを行っているのか、うっかり忘却してしまっていた。
「で、では、第五の指令を遂行させていただきます」
 茶々丸はネギの背後から正面へ回ると、桃色の肉塊へ向けてそっと唇を近づけ ていった。



「どう? 何か感じる」
 学校へ向かう道すがら、明日菜は肩に乗っているカモに尋ねる。
「ん〜、まだ何も。そんなにヤバいヤツがいるって感じもしねえなぁ。やっぱ考 えすぎかな」
「だったらそれはそれでいいけどさ。携帯も繋がんないし。……遅くなるなら、 あのテレパシーみたいなので連絡ぐらいしなさいってのよ」
 ぶつくさ言いながらも走りつづける明日菜を、カモは笑顔で見つめる。
「何よ、ニヤニヤして。またバカなこと言い出したらぶつわよ」
「ニヤニヤって……微笑んでるって言ってくれよ姐さん」
「そんな良いもんじゃないでしょ。……まあいいわ。とりあえず教室から廻るわ よ」
「教室かい? 教室は行かなくてもいいんじゃねえかなあ」
「? なんでよ」
「なんでって、そりゃあ……あれ? なんでオイラ、そう思ったんだろ」
 首を傾げるカモ。
「まったくもう。結局役に立たないんだから。ほら、急ぐからしっかり掴まって なさいよっ」
「わわっ! あ、姐さん、落ちる、落ちるってー!」
 振り落とされまいと必死で服の裾に掴まるカモに構わず、明日菜はさらにもう 一段階スピードを上げた。


前のページへ戻る  次のページへ進む  小説TOPへ戻る  TOPへ戻る