チュッ。
「んあああっ!」
 亀頭に唇が触れた瞬間、手の中であやされていた時とは比べ物にならない刺激がネギの体を駆け巡る。
 チュッ、チュピ、プチュッ。
 むずがるように暴れる肉茎を両手でしっかりと押さえながら、茶々丸の唇は亀頭にキスの雨を降らせる。
「あひんっ、ん、やっ、はあんっ」
 ネギはそのヌルヌルとした感触が体に伝わるたびに、むずがるように体をくねらせた。両手を後ろに突っ張り、今にも仰向けに倒れそうになる体をなんとか支えている。
「ネギ先生……んむっ……気持ち、良いでしょうか……プチュッ……」
「あふっ……よ、よくわかんないです……さっきより、なにか、すごくてぇっ、はあぁんっ」
 ネギの吐く荒い息の中に興奮を感知し、茶々丸の唇は徐々に行動範囲を広げてゆく。尿道口から弧を描くように肉の傘を這いまわり、カリ首を優しくついばむ。
「あむっ……チュチュッ……ん……んふ……プチョッ……」
「んああっ! そ、そこダメェッ!」
 たった今まで包皮に覆われていた肉茎は、初めて感じる優しくも鋭い刺激になすすべもなく翻弄され、その刺激をダイレクトにネギに伝える。床を必死に掴みながら、ネギは初めての衝撃をこらえようとする。
 唇が亀頭から幹へ下っていき、竿表面をのたくった後にまた亀頭へ戻ってきた頃、ネギは腰の奥に甘い疼きを感じた。
「あう……茶々丸さん……僕、ちょっと……その……」
「なんでしょうか」
 尋ねながらも茶々丸の唇は動きを止めずに再び亀頭の上を這いまわる。
「え……ええと……」
 尿道口に一つキスをして、茶々丸は唇を肉茎から離した。
「あ……も、もう終わりですか?」
「いえ、これまでの行為はさわりの部分となります」
 茶々丸は、味覚を感じることは出来ないが人間そっくりの赤い舌を唇からテロンと垂らし、ネギの肉茎に再び近づけてゆく。
「あ、ちゃ、茶々丸さんっ、だ、ダメッ!」
「?」
 ネギの静止よりもわずかに早く、生温かな湿った舌はカリ首と肉茎の裏筋を覆うようにベチョリと押し付けられる。
「わ、あひゃぁぁぁんっっ!?」
「あっ……」
 その瞬間、ネギの肉茎は大きく震え、尿道口から白く濁った液体が勢いよく噴き上げる。
「や、やあぁぁぁっ、と、とま、とまんにゃいぃぃっ!」
「………………」
 ネギの意思とは無関係に白濁液は間欠泉のようにビュルビュルと湧き出し、茶々丸の顔に叩きつけられる。顔を飛び越す角度で盛大に噴き上がった白濁は、やがて重力に引かれて落下し、茶々丸の頭頂部にボタボタと降り注いだ。
「ふあ……ああ、あ……」
 数十秒と続いた長い射精がようやく終わる。天井を仰ぎ見たまま、荒い息を繰り返すネギ。茶々丸は、顔中に付着した、いや、ブチ撒けられた精液を拭う事もせず、ただ硬直している。
 初めて襲われた射精の快楽にしばし呆然としていたネギだが、いまだフワフワと意識を浮つかせたまま天井を向いていた視線を徐々に正面に下ろしていくと、射精後の余韻などすぐに吹き飛んでしまった。
「んあ……あ〜……あ……あっ!? あ、あわ、あわわわわっ!」
 目を見開いて茶々丸の顔を凝視しガタガタと震えだすネギを見て、茶々丸の硬直もようやく解ける。
「……ネギ先生?」
「あう、ううう……うう、う、うわーーーんっ!!」
 いきなり子供のように大声で号泣し始めた(実際子供なのだが)ネギに、茶々丸はどう対応してよいかわからずオロオロし始める。
「ネ、ネギ先生、どうされたのですか?」
「うう、だ、だって僕、茶々丸さんの顔に、お、オシッコ……うう、うええーーーんっ!」
 ネギはそれだけ言うと、またわんわんと泣き始める。茶々丸はその言葉を聞き、先ほどのハンカチの汚れていない部分で手に付着した精液を拭い取ってから、ネギの肩を押さえてまっすぐに目を見つめながら話し掛けた。
「落ち着いてください、ネギ先生。これは、その……お、お小水ではありません」
「だ、だって、えぐっ、ぼ、僕のオチンチンから、そんなにいっぱい、うぐっ……」
「これは、お小水とは成分が違います。お小水は、その、このように白く、粘り気のある液体ではありませんので」
「う、じゃ、じゃあ……こ、これって、何なんですか……ま、まさか、僕、病気になったからこんな白いオシッコがっ」
 茶々丸に諭されて少しは落ち着きを取り戻したが、それでも理解の範疇を超えた事態にしゃくりあげながら不安気に見つめるネギ。
「いえ、病気ではありません。ある意味では、健康な成人男子である証と言えます」
「ど、どういうことですか……」
 涙でグシャグシャのネギの顔。その目尻を指先で拭いながら、茶々丸が答える。
「この液体は……精液と言って、男性の快楽が頂点に達した時に射精される液体です」
「…………ええっと……つまり、一番気持ちよくなった時に出る、という事ですか?」
「そうです」
 茶々丸の説明を受け、ネギがほうっと大きく息をつく。
「そ、そっか。オシッコじゃなかったんだ。良かった。……あ、でも、茶々丸さんの顔を汚しちゃった事には変わりないですよね。ご、ごめんなさいっ」
 ネギが大きく頭を下げる。
「で、でも、これって汚かったり、体に害になったりしないんですか?」
「はい。私には現在のところ影響は出ていません。人間の女性にも、体内で発射されない限りは影響はないと思われます」
 安心させようと説明した茶々丸の言葉に何か引っかかる物を感じ、ネギが重ねて尋ねる。
「えっ? お、女の人の体の中に入ると、どうなるんですか」
「その女性は……妊娠します」
「に、にん……にんしんんんっっっ!?」
 その言葉の持つ重い響きに、ネギの頭は一瞬にして真っ白になってしまう。
「そ、そんなっ! ちゃ、茶々丸さんが妊娠しちゃうっ!」
「い、いえ、私は」
「あわわわわっ! そ、そんな事になったら僕、茶々丸さんと結婚しなくちゃっ! で、でも、結婚してないのにどうして赤ちゃんが、あううううっ!?」
 すっかりパニックになってあたふたしだすネギ。しかし、今度は茶々丸はネギを諭す事はできなかった。
「ネギ先生と、結婚……」
 茶々丸の脳内で、一つの動画が自動再生される。
 場所は、学園敷地内の教会であろうか。両脇に並ぶ満面の笑顔のクラスメート達。その中心をしずしずと歩く、純白のウェディングドレスを着た自分の姿。祭壇の前にはタキシード姿のネギがはにかんだように微笑んでいる。やがて祭壇の前に辿り着き、見つめあう二人。ネギは精一杯背伸びをして茶々丸の顔からベールをめくり、そして……。
(……今の映像は)
 知らぬ間に入っていた待機モードから自力で復帰し、再生された身に覚えのない映像を、削除はせずにフォルダに格納しておく。
 そして、改めてネギに目をやると。
「あわわわわっ、どどどど、どうしたら〜っ!」
 いまだに混乱しているようだった。
「ちゃ、茶々丸さんっ!」
「は、はい」
 ネギが急に茶々丸の両手をガッシと掴み、切羽詰った表情で茶々丸を見つめた。
「ぼ、ぼぼぼく、まだ10歳ですけど、が、がんばりますからっ! だから、赤ちゃんと3人で、がんばって生きていきましょう!」
「は……はい」
 ネギの突然の告白に、思わず頷いてしまう茶々丸。が、脳内で事態を整理し終わると、慌ててネギに訂正した。
「あ、いえ、落ち着いてくださいネギ先生。私は人体とは構造が違いますし、あくまで顔に浴びただけですので、妊娠はしません」
「え……ほ、本当ですかっ!?」
「はい」
「あ……よ……良かったあ……」
 ネギは茶々丸の両手を握ったままで、浮かせていた腰から力が抜けて再びペタンと尻をついた。大きく息を吐いて安堵の表情を浮かべるネギを見て、茶々丸はなぜか、残念という感覚が浮かんできた。
「……茶々丸さん?」
「いえ、なんでもありません。……では、続きを始めさせていただきますが」
「つ、続き? まだ終わりじゃなかったんですか?」
「はい。後は、舌で舐める、口で含む、などの行為があります。始めさせていただいてよろしいでしょうか」
「は、はいっ。……あっ、ちょ、ちょっと待ってください」
 慌てて立ち上がろうとしたがこれまでの疲労かまともに腰を上げられなかった為、四つん這いで茶々丸がたたんであった己の服まで辿り着き、ハンカチを取り出してから茶々丸の前まで戻ってきた。
「茶々丸さん、こんなに汚れたままじゃないですか。キレイにしないと」
 手にしたハンカチで、茶々丸の髪や顔を丁寧に拭っていく。
「ネギ先生。私はこのままでもかまいませんが」
「だ、ダメですよ。こんなにドロドロになっちゃってるのに」
「男性はこの状態の方が喜ぶ、というデータもあります」
「ぼ、僕は嬉しくないですから。もう少し待ってください」
 ハンカチ一枚で拭い取れる量には限界があったが、それでも付着物が目立たないほどには何とか拭き終えた。
「とりあえずこれで。ううっ、なんかベタベタするし変な匂い。僕が言うのも何ですけど、帰ったらお風呂に入ってくださいね。僕も、入りますから」
「はい。ハカセにボディの洗浄をお願いします」
 顔をしかめながらハンカチをつまむネギに、茶々丸は一つ頷いて見せた。
「では」
「は、ハイ……」
 ネギは再び体の後ろに手を置いて、股間を露にするポーズを取る。先ほどからのドタバタのせいか、肉茎はすっかり縮んで元のかわいらしい姿に戻ってしまっていた。茶々丸はその根元を右手の親指と人差し指で摘まみ、顔を近づけてパクリと口に咥え込む。
「はうんっ」
 再びかわいらしい悲鳴をあげるネギ。しかし射精の後と言う事もあってか、先ほどまでよりは幾分か余裕が感じられる。
「ん……チュッ……んふっ……ペチュッ……」
 肉茎をチュウチュウと軽く吸い立てながら、舌を緩やかに回して口内を転がしていく。そのゆったりとした感触に、ネギはうっとりとした表情を浮かべる。甘やかな口愛撫を経て、ネギの肉茎は再び大きさと硬度を取り戻した。
 茶々丸は口から肉茎を吐き出すと、大きく舌を突き出して肉茎の裏側に押し付け、グリグリと舌を左右に揺する。
「んっはっ……ああっ……」
 ネギの唇から再び快楽の調べが紡ぎ出される。
「んぶ、ベチョッ……グチョ、ネロォッ……ふぅっ……ネリュッネリョッ……」
 舌の動きはだんだん大きく激しくなり、肉茎全体を余す所なく舐めつくそうとヒルのようにうねうねと絡みつく。
 茶々丸はいったん舌を離すと、包皮をめくって露になった裏筋に舌先を忍ばせ、くすぐるようにテチテチと震わせる。
「んあっ、そ、そこは……んひゃぁっ……」
 裏筋、カリ首、尿道口と、舌先はネギの特に鋭敏な部位を踊るように跳ね回る。
「ピチャッ、チュッ、ペチョッ……んっ……テロッ、ニュル、クチョッ……チロッ、チュルッ……」
 茶々丸の多彩な責めの前に、ネギの表情も先ほどまでの陶酔から何かを耐えるかのようなものに変わっていく。
 舌先でこってりとネギを責め抜いた後、茶々丸は再び大きく口を開いて根元まで一気に肉茎を飲み込んだ。大きくなったとはいえまだ子供の肉茎であるため、口内にはいくらか余裕がある。その隙間を埋めるように頬をへこますと、頭を振りながら大きくストロークを始めた。
「ズズズッ、ジュボグボッ、ズジュルッ、ブチュブチュ、はぷっ、グポグポ、ブブジュズジュッ」
「ふああっ! そ、それダメェッ!」
 新たな責めの生み出す大きすぎる快楽に翻弄され、ネギはたまらず悲鳴を上げて身悶える。しかし茶々丸は責め手を休めず、口唇での吸引に舌の蠕動も加えて肉茎を責め立てた。
「ズブチョッ、ベロッ、グチュブチュ、レロベチョッ、ズジュジュ、グプグプッ、ンベロネロォッ」
「ヒィィッ、ちゃ、ちゃちゃまっ、ふひあああっ!!」
 苛烈を極める口腔による責めにネギはたまらず茶々丸の頭を引き剥がそうとするものの、頭の左右に手をあてがったところで引き剥がすだけの余裕は残っておらず、見ようによってはネギが積極的に口唇奉仕を促しているようにも見える。
「んあああっ、ぼ、ぼくもう、ダメッ、また、で、でるうぅぅっっ!!」
 腰の奥にたまっていた快楽の種が一気に弾け、ネギの肉茎から再び大量の白濁が噴出する。頭に添えた両手はその瞬間硬直し、茶々丸の回避を許さずに白濁はしたたかに喉奥を打ちすえた。
 ドクッ、ドク、ビュル、ビュクッ、ドクドクッ。
振りほどく事を諦めた茶々丸は、次々に吐き出される灼熱の粘液を口から溢れさせぬ様に次々に飲み下してゆく。
「うあ……あー……あぁ〜……」
「ゴキュッ、ぐぶっ……ゴク、ゴキュン……ぷふっ……ング、ゴクンッ……」
 茶々丸の顔に腰を押し付けるようにして、ネギは情けない声を上げながらその口内にドクドクと精を注ぎ続ける。茶々丸は抗わず、時折口内の容量を超えた分を口端から垂れこぼしながらも、そのほとんどは体内に収める事に成功した。
 再び長い射精が終わると、ネギはそのまま仰向けに倒れこんだ。ようやく解放された茶々丸は、肉茎から口を離し、飲みきれずに口端に白い線を描いている残滓を指先で拭い口内に収める。
「あっ……茶々丸さんの、体の中に……」
 あたふたと起き上がろうとするが二度の射精の疲労感からか指先一つ動かすのも容易でないネギを両手で優しく制し、上からその顔を覗き込みながら茶々丸が語りかける。
「ネギ先生、安心してください。口からの摂取では妊娠はしません。それに」
「あ、そうか……そうでした……アハハ……」
 気が抜けたような笑顔を見せるネギに、茶々丸の表情もフッと緩む。
「……ネギ先生。今日は色々とお付き合いいただき、ありがとうございました」
「あ、はい……。あれ、でも……まだ、指令は残っているんじゃ」
「いえ、これだけデータを取れれば十分かと思います。それに、ネギ先生の疲れが限界点にきているように思われますし」
「ぼ、僕はだいじょう……あれ」
 起き上がって元気なところをアピールしようとしたネギだが、そんな空元気も残っていないほど体のほうはクタクタに疲れきっていたようで、やはり起き上がるどころか指先すら動かない。
「……やっぱりダメみたいです」
 エヘヘと笑って見せるネギを見ていると、茶々丸は命令違反を犯そうとする自分を咎める機関が全く働こうとしない事にも、なぜか納得できてしまった。
「……ネギ先生」
「はい?」
 茶々丸の体が、わずかずつ傾けられてゆく。その長い髪が、月光を浴びて煌きながら、ネギの薄い胸板にハラハラと舞い降りる。
「一つ、お願いがあるのです……これは、実験とは関わりのない事なのですが」
「なんですか?」
 自分でもなぜこのようなことを言い出そうとしているのか理解できない。が、認識せぬままに右手はネギの左頬にそっと添えられ、唇はどんどんとネギに吸い寄せられてゆく。
「……最後にもう一度だけ……キスをさせていただいてもよろしいでしょうか」
「えっ……」
 ネギは一瞬、驚いた顔を浮かべる。が、
「……はい」
 柔らかく微笑んで、瞳を閉じる。茶々丸もまた目を閉じ、震える唇をそっと重ねた。唇を通して、ネギの中の温かさがほのかに伝わってきたような気がした。



「ネギッ!! だいじょう……ぶ……?」
 いきなりの大声と大きな物音に、ネギと茶々丸は文字通りビクンと大きく体を跳ねさせて開かれた扉を凝視する。そこには、血相を変えた明日菜が、ゼイゼイと息を荒げながら立っていた。
「あ……アスナ……さん」
「………………」
 硬直して二の句が継げない二人。それは明日菜も同様で、半裸で体を重ねあう二人を見ながらポカンと大口を開けて立っている。
「あ……アンタ達……」
「あうっ、あ、ち、違うんです、これはっ」
 明日菜の周りの空気が一変したことにいち早く気づいたネギが、先程までまったく動かせなかった体に鞭打ってなんとか半身を起こし、両手を前に突き出して弁解しようと試みる。
「うひょー、アニキ、やるねえ。まさかロボとこんな関係になってた、ギュウッ」
「……アンタはちょっと黙ってて」
 囃し立てようとしたカモの首を左手で握りしめると、明日菜はゆっくりと教室に向かって一歩踏み出す。
「なかなか帰ってこないから、また厄介事に巻き込まれてるんじゃないかって心配して探しに来てみれば……」
「あ、アスナさん、えと、これはその、指令で、その……」
 ネギの言い訳など全く耳に入らないかのように、一歩一歩ゆっくりと、しかしピリピリとした空気を撒き散らしながら近寄ってくる。
「夜の教室で、裸の女の子と二人きり……?」
「あわわ、これはその、事情があってっ」
 明日菜が小さく「アデアット」と呟くと、何もない空間から突如ハリセンが現れ、明日菜の右手にスポリと収まる。
「…………いい加減にしなさいよっ! このバカネギーーーーーッッッ!!」
 スパコォォォォォンッッッ!!
「もげぺらもろぺれーーーーーっ!」
 ズシャアアアーーーーーッッ!!
 明日菜のハリセンのフルスイングが直撃し、ネギは悲鳴を上げながら教室の端までブッ飛んでいった。
「茶々丸さんも茶々丸さんよっ!」
「は、はいっ」
 一撃を加えたことで怒りの対象がネギから茶々丸に移行する。
「こんな時間まで十歳の子供を連れまわして、裸で何やってるのよっ!」
「いえ、これは、その……指令で……」
 明日菜に真正面から凄まれ、茶々丸はまともに弁明も出来ずしどろもどろになる。
「……? 茶々丸さん、なにか……顔とか髪とか、濡れてない……?」
「!! こ、これはっ」
 窓から差し込む月光に照らされた茶々丸の髪や顔に白く濁った液体がところどころ付着しているのを見て、明日菜が首を傾げる。
「……ま、まさか……ウソよね? だって、十歳の子供だよ……?」
「あ、あう……ち、ちがっ……ちがうんです……」
 壁に激突して目を回しているネギの剥き出しになった股間と、茶々丸の顔を交互に見比べながら、明日菜は唖然として呟く。
「そんな、十歳の子供相手に、そんな事……えっ……だって、そんな……ウソでしょっ?」
「チガ……チガうんデス……チガ……チガガ……」
 明日菜の驚愕が次第に怒りに変わってゆく。鋭い視線に見据えられ、茶々丸の心臓部にかかる負荷がどんどん大きくなってゆく。それに伴い、茶々丸の全身がガタガタと震えだす。
「チガッ……チガウッ……チガガガッ……」
「……アンタっ! いくら人間じゃないからって、やって良い事と悪い事がっ!」
「チガチガガチガガガガ……ピーーーーッッ!!」
 明日菜が怒鳴りつけようとしたその瞬間、茶々丸の脳天から大量の蒸気が噴き出した。
「な、なにっ!?」
「チガー、チガウ、チガウンデスーッ! チガウーッ!」
 いきなりの出来事にひるむ明日菜をよそに、茶々丸は足から炎を噴き上げ、教室中をガンガンとぶつかりながら縦横無尽に飛び回り始めた。
「チガウーッ、ネギセンセッ、チガ、チガーウッ」
「な、何なのよいったいーっ!?」
 明日菜はなんとか茶々丸の動きを止めようとその体に掴まるが、その勢いは全く衰えずに明日菜ごと教室中を飛び回り続けた。
「アスナーっ、追いついたえっ、て、なんやー?」
「あ、アスナさんっ!?」
 明日菜に遅れて教室に辿り着いた木乃香と刹那は、目の前で繰り広げられている光景に思わず固まってしまった。
「ちょっと二人ともっ! 見てないで、なんとかしてよーーーっ!!」


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