「これから、どうするつもりなの」
私はシェシェに尋ねた。どれほどの時間絡み合っていたのだろうか。いつの間にか気を失っていたようで、まだ気だるさの残る体を起こす。シェシェはすでに目を覚ましていたが、ミミはいまだシェシェの膝の上で眠り続けていた。気を失い、寝息をたてながらも、快楽の余韻か時折体をピクピク震わせている。そんなミミを優しい瞳で見つめ、頬を撫でながら、シェシェは答える。
「私達には、使命が与えられたの。この新しい力と引き換えに。当面は、それを遂行する為に動くことになるでしょうね」
「そう……」
元々、彼女達と私は住む世界が違う。そんな事は当にわかっている。
「……一緒に来る?」
「えっ?」
全く予想していなかった言葉に絶句する私に、シェシェは笑いながら言う。
「フフ、冗談よ。私達はこれから、地上にいるマーメイドプリンセス達と戦うことになるんですもの。アナタがあの子達を裏切れるはずないわよね」
当然だ。そんな事ができるはずがない。……でも、もし、シェシェにそう命じられたとしたら……。
「この洞窟、いいわねぇ。……決めたわ。ここを南太平洋の王国侵攻への足がかりにしましょう」
「なにを……」
「週に一度、私達はここに南太平洋の王国を監視する為に訪れることにするわ」
そう言って、薄く笑うシェシェ。それはつまり、週に一度、彼女たちにここで会う事ができるということ。
「……今日は不覚をとったけれど」
私もまた。
「次に会った時は、この南太平洋の王国を守る者として、全力で貴方達と戦うわ」
自然と笑顔が浮かんでいた。
「ウフフ、いつでもかかってらっしゃい。返り討ちにして、今日よりすごいお仕置きしてあげる」
シェシェがニヤリと笑う。いつの間に目を覚ましたのか、ミミも私を見ながら微笑んでいた。
私は二人に背を向け、洞窟を後にする。外はすでに朝日が昇り始めており、オレンジのまばゆい光が辺りを包んでいた。王宮を空けてもう一昼夜。側近の中には気を揉んでいる者もいるだろう。それでも誰も探しに来ないのは、私の「一人になりたい」という言葉をきちんと受け止めてくれているからか。
私は一度背後の洞窟を振り向き、そして前に向き直る。
私は南太平洋のマーメイドプリンセス。この王国を守る者。
今日の事は夢。そう、プリンセスとしての日々に疲れた私が見た、ちょっとした淫夢。夢から冷めればまた、プリンセスとしての生活が始まる。
岩場から飛び上がり、海へ飛び込む。朝のひんやりとした水温が心地良い。
また、プリンセスとしての私に疲れたら、あの島へ行こう。
あそこは、全てを忘れさせてくれるから……。
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