「んむっ、ふむぅん……」
 目を閉じてシェシェの唇を迎え入れる。背負っていたもの全てを捨ててしまえば、私の心は驚くほど軽くなっていた。意識を混濁させる、脳裏を覆う桃色の霞も、抗わず身を任せてしまえば、朝のまどろみの中にいるように心地良く感じられる。
 エサを欲しがる雛のように、私はシェシェの唇をもっともっととついばんだ。
「ふむっ……クチュッ、あむっぐむっ、チュチュルッ、んむぅんっ……」
 口内に侵入してきたシェシェの舌に、自らの舌を這わせ、からませ、唇で吸い上げた。お返しとばかりに、シェシェの舌がくねり、口内のいたるところを舐めまわす。
「きふぅっ」
 突如、胸の先に鋭い痛みが走った。唇はシェシェと重ねたまま視線だけを下に移すと、ミミが私の乳房を口に咥え、コリコリに勃起した乳首に鋭い犬歯を立てていた。私と目が合うとミミはニタリと笑い、大きく口をあけて私に見せつけるように再び乳首に歯を立てる。
「ひぎうっ……むぐぅ〜……」
 敏感な突起が再び鋭い刺激に襲われる。が、その刺激は熱を生み、乳突起から乳房、そして全身をジンジンと燃え上がらせる。
「ねえ、マゾのココちゃん。乳首カジカジされるの気持ちいい?」
 ミミがからかうような口調で尋ねてくる。でも今の私は、反抗するような気もおきず、感じたままを口にしてしまう。
「気持ちいい……お胸、ジンジンって熱いの。もっと、もっと噛んで、熱くして」
 私の答えに気を良くしたのか、ミミは楽しそうに笑った。
「いいわ、もっといっぱいカジカジしてあげる。こっちの乳首にも刺激をあげるわ」
 もう一方の右の乳首を指で形を確かめるようになぞると、 親指と人差し指でつまみ、ギリッとひねり上げる。
「んぎぃ……くひぃ……」
 ギリギリと爪を立てられ、再び鋭い痛みが全身を駆け巡ると、たまらず呻き声を漏らしてしまう。が、遅れて緩やかに伝わる熱は痛みをぼやかし、心地良い刺激へと変換してゆく。元々限界まで追いつめられていた為か、幾度めかの乳首への強い刺激で私は絶頂の直前まで押し上げられていた。体がフルフルと震えだす。
 そんな私の反応に気づき、シェシェが唇を離し、私の顔を覗きこんで言った。
「もう、イキそうなのね」
 うなずく私。
「イカせてほしいの?」
 壊れた人形のように、首を上下させる。
「ねえ、ココ。アナタと私達は、ゲームをしている最中よね?」
 早くイカせてほしいのに、シェシェはじらすように話の方向を逸らす。
「アナタがイッたら、アナタの負け。呪歌の一フレーズを私達に教えること、そういうルールだったわよね」
 シスターシェシェは本当に意地悪だ、と思う。この心地良い快楽に身を委ねていたいのに、わざと私を現実に引き戻して苦渋の選択をさせようとする。
 でも、今の私には。全てを捨て去った私には、その選択は思い悩むようなものではなく、ただ煩わしいだけの通過儀礼にすぎない。私はまたコクコクと首を縦に振る。
「ダメよ、言葉にして言ってくれなくちゃ、信用できないわ。ココ、アナタは自分が浅ましく絶頂を迎えるために、どういう行動をとるのかしら」
 クスクス、とミミが笑い声を漏らす。この二人は、どこまでも私を嬲りモノにするつもりなのだ。
 シェシェの瞳を見つめる。その瞳が、再び赤い光を帯びた。
(……いいわ。貴方たちのお望みどおり、私はとびきり無様な姿を見せるわ。プリンセスである私が、誇りも矜持も投げうって、快楽の為にはしたなくおねだりする姿が見たいんでしょう)
一つ呼吸を整えると、私は口を開く。今までに口にすることはおろか頭に思い浮かべることすらもなかった卑猥な言葉の数々が、溢れるように唇からこぼれだした。
「私、南太平洋のマーメイドプリンセス・ココは、いやらしいことが大好きでたまらない、淫乱なメスブタです。イジメられると発情してしまう、変態マゾ人魚です。自らの快楽の為には、国も、国民も、仲間も、全てを裏切ることも厭わない、どうしようもない女なのです。
 シェシェ様、ミミ様。私にできることなら、なんでもします。ですから、どうか、この憐れな牝にお慈悲を。頭の中までとろけるほどの、アクメをお与えください」
 ……一瞬の沈黙。そして。
「プっ……ククッ……アハハハハッ」
「クス……クックッ……クククッ」
 シェシェとミミは耐えかねたのか、腹を抱えて大笑いしはじめた。
「アハッ、アハハッ、シスターシェシェ、この娘、最高だよっ。何も教えてないのに、こんな立派な前口上言えるなんてっ。アハハハハッ」
「クッフフッ。そうね、さすが元プリンセスね。マゾ奴隷としての作法も完璧だなんて、フフフッ」
 二人の嘲笑にさらされながら、私は視線を一面鏡張りの横の壁へと移した。
 そこにはもう、高貴なプリンセスは映っていない。媚びた笑顔を浮かべる、憐れな牝が一匹映っているだけだった。
「ククッ、そうね。そこまでお願いされちゃ、仕方ないわよね。アナタには、とびきりのオルガを与えてあげる」
「うん。頭がおかしくなっちゃうくらい、イカせてあげるね。でもま、もう少しおかしくなっちゃってそうだけど。アハハッ」
 二人は私を左右からはさむと、ベチョベチョと耳を舐めまわしはじめた。
「さあ、連れて行ってあげるわ、天国へ」
「もう、戻れなくなるかもしれないけど、ね」
 ズボォッ。
「はぎいっ!?」
 次の瞬間、耳の穴の中に、二人の舌がズブリと侵入した。
「ぎっ、はっ、あぎぃっ……んひいぃぃっ」
 脳天めがけて、舌がズブズブと突き進んでいるのがわかる。ある程度奥まで突き入れると、今度は耳粘膜を擦りながらゆっくり引き抜いていく。緩やかだった抽送はやがて速度を上げ、両耳腔を長い舌がズボズボとピストンする。
「ほああっ、ふはああっ」
 人間の女性が、性器に肉棒を突き立てられる感覚。味わったことはないが、敏感な耳粘膜をゾリゾリと擦り上げられるこの感覚に似ているのだろうか。それが、二方向から頭の中に直接響いてくる。ヌチュッ、ズチュッ、という淫らな抽送音は私の意識を揺るがす。
 生まれる熱さは脳髄をとろけさせ、その刺激は私自身をバラバラに突き崩していく。突風に煽られる木の葉のように、私は二人の責めに為すすべもなく翻弄され、獣のような牝声を上げるだけ。
 白目を剥き口から涎を垂れ流す、牝そのものとなった私。脳裏に直接、二人の堕天使の淫靡な宣告が響く。
「さあフィニッシュだよ、プリンセス。アンタが望んだ最高のアクメ、プレゼントしてあげる。耳の穴でイクっていう、常人にはできないマゾ牝専用の変態アクメをね」
「二度と忘れないように脳に直接刻み込んであげるわ。自らの欲望の為に全てを裏切った、淫らでさもしい憐れなマーメイドプリンセスは。最高のオルガがほしくて、禁じられた呪歌さえも喜んで捧げてしまう、私達ブラックビューティシスターズ専用の、肉人魚便器となったのよ」
 シェシェとミミの言葉が、頭の中に響き渡る。絶頂寸前の真っ白になった頭の中に、しっかりと刻み込まれてしまった『ブラックビューティシスターズの肉人魚便器』という烙印は、もう二度と消すことはできないだろう。
 ギュリリリッ。
「ひぐぅいぃぃっ!?」
 突如敏感な胸の先端部を襲った激しい痛覚に、私の意識が一瞬そちらへ移った。その一瞬の隙をついて、
「さあっ」
「イッておしまい!」
 ズブルボォッ!
頭蓋の奥深く、脳に届くのではないかと思うほど深くまで長い舌が侵入し、
 ベッチョオオオッ。
舌先が、最奥をネッチョリと下から上へ舐め上げた。脳ミソを、直接両側から舐め上げられたような感触。脳内に突如として発生したおぞましい感覚は、震えとなって体中に広まり、全身のいたるところでくすぶっていた快感の火種に引火し、次の瞬間、一気に爆発した。
「キヒアアアァァァァァーーーッ!!?」
 体中から沸きあがる猛烈な熱と刺激を抑えきれず、あっという間に意識はどこかにさらわれ、中身を失った器はガクン、ガクンと大きく飛び跳ねる。
 今にも破れそてしまいそうなほどパンパンに張りつめた乳房、その先端の大きく勃起した乳首がビクビクと震え。
 ブッシャアアァァッ。
勢いよく、周囲に白い液体を飛び散らせた。
「アハ、アハハハハッ!イッてる、イキまくってるよこの娘! 白目剥いて、体中ガクンガクンさせて、おまけにお乳まで吹き出して!」
「すごい、すごいわこの娘。私達、最高のオモチャを手に入れたわ!オーッホッホッホッ!!」
 気を失い、体中からあらゆる体液を噴き出しながらいまだ痙攣を続ける私の体を、あてられたのか狂気の宿った瞳で見つめながら、美貌の妖姉妹は狂ったように高笑いをし続けた……。

前のページへ戻る 次のページへ進む  小説TOPへ戻る  TOPへ戻る