どのくらいの間、そうしていただろうか。とても長い時間だった気もするし、わずか数秒であった気もする。
貪りあうわけでもなく、ただ二人は互いの唇を合わせていた。触れ合った唇から、お互いの想いが流れ込んでくるようで、体の中を温かいモノが満たしていった。
示し合わせたわけでもないのに、やがて二人は同時にゆっくりと唇を離した。
閉じられていた瞳をゆっくり開くと、そこには大好きな人の顔。何だか気恥ずかしくなって、二人は同時に頬を朱に染めた。
「本当はね」
「えっ」
祐巳の戒めを解きながら、お姉さまがポツリとつぶやく。
「怖かったのよ、私も。……あんな事をしてしまって、祐巳に嫌われてしまうんじゃないかって。いいえ。確実に嫌われてしまうだろうって、わかっていたわ。でも、抑えきれなかった」
お姉さまの瞳が不安気に揺れている。
「え、でも……私の全てを受け入れてくださるという事を証明するために、その、したことじゃないんですか?」
祐巳が尋ねると、お姉さまは一瞬驚いたように目を丸くした後、嬉しさと恥ずかしさがない混ぜになった表情を浮かべて、祐巳の頭をギュッと抱き締めた。
(わわ……)
お姉さまの豊かな乳房の狭間に顔がうずまって、祐巳の顔はますます赤くなった。ふにゅふにゅと柔らかい感触が心地よい。
「バカね……それだけの為に、あんな事まですると思う?」
「……私は、あんな事までしてくださるほど、私を大事に思ってくれてるんだなって……嬉しかったです」
祐巳の答えを聞いて、お姉さまの腕にさらに力がこめられる。お姉さまの胸でなら、窒息してもいいかな。ちょっと息苦しいけれど、そんな事を考えながらされるがままになっていた。
「本当はね。私のエゴなの」
両腕の力を緩めると、お姉さまは、訥々と語りだした。
「受け入れてもらったのは、本当は私。祐巳なら、こんな私でも受け入れてくれるんじゃないかって。心のどこかで、貴方に甘えているの」
両手を肩に置いて、抱き締めていた体をゆっくり離すと、お姉さまは祐巳の瞳を覗きこんだ。まるで、幼い迷い子のような、不安げな瞳。
「嫌いにならないで、いてくれる?こんな……こんなっ」
変態みたいな、私を。そんな風に続くのではないかと思うと、祐巳は思わず、お姉さまの唇を塞いでいた。お姉さまに、そんな風に自分を卑下してほしくなかったから。
「祐巳……」
「私は、お姉さまのことが大好きです。それは、どんな事があっても変わりませんから」
そうだ。あの日、決めたんだ。どんな事があっても、お姉さまを信じるって。
「今度は、私の番です」
「えっ」
「私が、お姉さまを受け入れる番ですから」
自由になった手で、お姉さまのお尻にそっと触れてみた。わわっ、胸に負けず劣らずやわらかい。控えめな肉づきである祐巳の尻肉とは弾力性が全然違う。
「え、ちょっと、まさか」
お尻を軽く揉まれる感触にピクンピクンと反応を示しながらも、お姉さまは慌てた。
「だ、ダメよ。祐巳にそんな事させられないわ」
「いいえ、今度は私の番なんです」
「いいのよ、そんな。あれは私が勝手にやったことよ。祐巳まであんな事をする必要ないわ」
「ダメですっ。お姉さまがしてくれたように、今度は私が、お姉さまの全てを受け止められるんだって事、お見せしますから」
「でも……」
お姉さまは言いかけて、口をつぐんでしまった。
でも、恥ずかしいわ。そう続けようと思ったが、言葉に詰まった。先にとんでもなく恥ずかしい事を強要したのは自分ではないか。そんな言い逃れが通用するわけもない。
「祐巳……」
まっすぐに、私を見つめ返す瞳。まったく。いつからこんなに頑固になってしまったのかしらね。……それはまさしく、姉である自分の影響だろうが。
「……イヤになったら、すぐに言いなさいね」
「だいじょうぶですよ。お姉さまのなら、平気ですから」
そんな風に言われては、断りきれないじゃない。とんでもない提案を掲げながら笑顔で返す祐巳に、思わず心の中でぼやく。
でも、本当は。面と向かって頼む事などできるはずもない祥子の願望を、笑顔で自らかなえたいと言ってくれたのが嬉しくて。勝手に頬がほころんでしまっていた。
「これで、いいかしら」
(わあ……)
スラリと長い脚を肩幅に開いて立つお姉さま。お尻が祐巳の顔の間近でフルリと揺れる。いつもその姿を目で追ってしまうとはいえ、こうして改めて下半身を眺めることなど初めてだった。
先程までとは逆に、今度は祐巳が正座してお姉さまのお尻を見つめる形になっている。
「お姉さま、もう少しお尻を突き出していただけませんか?」
「なぜ? これでいいでしょう」
振り返るお姉さまの顔が少し赤い。
「でも、これだと、その、お尻の……穴、とか……よく見えませんし」
「別にかまわないでしょう、そんなの」
「あ、お姉さまズルい。私だって恥ずかしかったんですから」
「知らないわよ、そんなこと」
むぅ。またお姉さまのワガママがはじまった。
しょうがないので、別の方向から攻めてみる。
「そのポーズだと、その、真下に落ちちゃうじゃないですか。脚が汚れてしまいますよ」
「かまわないわ。もう少し脚を開けばいいのでしょう」
なかなか手強い。こうなったら強硬手段。
祐巳は仰向けに寝そべると、お姉さまの開かれた両脚の間に頭を置いた。わわ、すごいアングル。
「ちょっ、祐巳、何をしているの」
あわててお姉さまが両手で股間を隠すけど、なんだかかえってエッチっぽい気がする。
「だって、こうでもしなきゃ、受け止められないじゃないですか」
「だからってあなた、そんな」
お姉さまはそこで言葉を切った。たぶん、便器みたいな、などと続くはずだったのだろうが、その言葉は飲み込んでくれたようだ。
「……しょうがないわね」
諦めたようにそう言って、お姉さまはさっきまで祐巳の顔があった辺りにクイとお尻を突き出した。
「……あなた、いつまでそうしているつもりなの?」
「あ、は、はい」
腰を突き出したせいで更にすごいアングルになってしまった股間をポ〜ッとなって見つめていたら、怒られてしまった。
慌てて座りなおすと、そこにはお姉さまのお尻のさらにアップ。アソコもお尻の穴も丸見えだ。
お姉さまの秘密の唇は、容姿の華々しさと比べれば驚くほど控えめで、一本の筋が通っているだけだった。ただ、その筋の周りは透明な液体でトロトロと潤っている。興奮してくれているんだなと思うと、ちょっと嬉しい。
目線をわずかに上げると、控えめな桃色のすぼまりがある。
麗しのお姉さまはこんなところまで上品であらせられるようで、ため息を漏らすと同時に、先に恥ずかしいところを見られてしまった祐巳としては、自分のそこにどのような感想を持たれたのかと思うと、怖くなって思わず尋ねてしまった。
「あの、お姉さま」
「なにかしら」
お尻を突き出し前屈みになり、膝に手をついた体勢をとっているお姉さま。窮屈な姿勢でジッとしているのはやはり苦しいのだろうか、声が震えている。
「私の、その、アソコとか、変じゃなかったですか」
「ええ。特には変わったところはないと思うけれど」
「本当に?」
「私も他人のそんなところなんて見るのは初めてだったから、よくはわからないけれど」
「あ、そうか。そうですよね」
祐巳だって他人の恥ずかしい所なんて見るのは初めてだ。むしろ、自分のアソコだってまじまじと見たことなどない。
……聖様なら、他の女の子のアソコとか見た事あるのかもしれないな、なんて少し思ってしまった。
「かわいらしいと思うわよ」
お姉さまがポツリと呟いた。
「えっ」
「祐巳の、ソコは、他と比べる事はできないけれど、小さくてかわいらしいつくりじゃないかしら。あなたらしいって思ったわ」
「そ、そうですか」
顔が真っ赤になってしまう。アソコを褒められるなんて、素直に喜んでいるのかわからない。でも、とりあえずお姉さまに悪い印象は与えなかったようで一安心。
「お、お姉さまのも、とても清らかな感じがして、素敵です」
「……こういうことをしていて、清らかと言われるのも、変な感じね」
……たしかに。振り向いたお姉さまと目が合うと、お互いに吹き出してしまった。泣いたり照れたりばかりだったから、こうしてお姉さまと笑い合うのは久々な気がする。
ひとしきり笑い合うと、祐巳はふと疑問に思った事を聞いてみた。
「それで、お姉さまはその、もう出そうなのですか」
「えっ」
こうしてお姉さまのお尻の前で待ってはいるものの、どうもその気配がない。肌を紅潮させたり体を震わせたりはしているけれど、我慢が効かないといった感じでもなさそうだ。
「あまり、したいという気分ではないけれど」
「そうですか」
うっすらと汗をかいているのは、羞恥ばかりではなく、窮屈な姿勢を維持していることにも原因がありそうだ。
「薬は先程祐巳に全て使ってしまったし」
「くすり……」
そうか。我慢できないほどおなかが急に苦しくなったのは、お薬のせいだったのか。
「……ごめんなさい」
祐巳が呟いたのを非難と受け取ったのか、お姉さまは消え入りそうな声で言った。空気が重く感じる。
(う〜ん)
妙な空気になってしまったため、祐巳はどうすればお姉さまの便意が促進されるかを考えてみた。何か強い刺激を与えれば、誘発されるのではないか。
(そうだっ)
先程の自分の状況を思い返してみて、祐巳はある事を思いついた。改めて目の前のお姉さまのお尻を見つめる。
桃色の排泄孔がお姉さまの呼吸に合わせて収縮している。お姉さまの体の一部、そう思ってみると、かわいらしくさえ思えるから不思議。
一つ息をつくと、目の前で息づく排泄用の口にそっと口づけてみた。
「ひっ」
体をブルッと震わせて、お姉さまはよろめいて数歩前に出た。
「あ、お姉さま、ダメですよ動いちゃ」
「な、何をするのっ」
驚きで声が裏返ってしまっている。
「お尻に刺激を与えたら、したくなるかなと思って」
「だからって、そんな事」
「お姉さまのココはキレイだからいいんです」
強引に押し切ると、目の前で揺れる双尻をわしっと掴んで、ひくつくすぼまりに再び口づけた。
「いやぁ」
口では拒絶の言葉を吐き出しているが、本心から嫌がってはいないのは声の響きでなんとなく伝わってきた。その直感を免罪符に、祐巳はいっそう強く吸い付いてみる。
本当は祐巳だって恥ずかしいのだ。でも、今冷静になったら、いろいろ考えて動けなくなってしまう。お姉さまに一方的に受けとめてもらってそれで終わりでは、これから先の二人の関係に必ず影を落とすことになる。だから、時間を空けちゃいけない。この雰囲気に酔ったまま、二人の関係をもっともっと深いものにしなければ。
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