「んむぅん……」
 甘い。唾液がこんなに甘いものだなんて知らなかった。雰囲気がそう感じさせるのだろうか。それはチョコの甘さなどとは全然違うけれど、とにかくもっともっとと欲しくなって。湧き出る唾液をただただ貪ってしまう。
「…………ぷはぁっ」
 ゆっくりと唇が離れる。少し顔を離さなければお互いの顔も見づらいのだけれど、でもまだ離れたくなくて。そんな気持ちを表すように、二人の唇にトロリと唾液のアーチがかかる。
「おいしいわ、祐巳」
 目をトロンとさせ、頬を紅潮させて、お姉さまが言う。発情した、とてもイヤらしい顔。たぶん祐巳も、同じ様な表情をしているに違いない。
「お姉さま、シーツが汚れてしまいます」
 本当はどうでもいいことだけど、気恥ずかしさからか、そんな事を口にする。
 たぶんこれから二人は、様々にお互いを求め合って、様々な液体でこの大きなベッドのシーツをグショグショに濡らしてしまうのだ。
「かまわないわ、そんな事」
「それに、せっかくお風呂に入れて下さったのに、また汗をかいちゃう」
 私が気を失った後、お姉さまが地下室に備え付けのお風呂で体を洗ってくれたらしい。たしかに、あのままの状態でいるのはさすがに具合が悪い。せっけんの匂いが濃かったのは、臭いが残らないようにと念入りに全身を泡立ててくれたからだろう。
 ……地下室については、何も聞かなかった。お姉さまもあまり触れて欲しくなさそうだったから。これだけの大きなお屋敷だもの、たぶんいろいろあるのだろう。
「そうね。その時は、また一緒にお風呂に入りましょう。今度は祐巳が私の体を洗ってちょうだい」
「はうぅ」
 顔に血が上って、真っ赤になっているのがわかる。今日は本当に、『百面相の祐巳』の面目躍如だ。……そんな異名、嬉しくはないけれど。
「ウフフ……」
 微笑みながら、祐巳の頬を撫でる。視線がとても艶っぽい。そんな目で見つめられると、背筋がゾクゾクしてしまう。
「今日は一日中二人きり。誰の邪魔も入らないわ」
「あ、でも、蓉子さまと聖さまがお見えになる予定だったはずじゃ」
「お姉さまはいらっしゃらないわ」
「えっ。ご連絡があったんですか」
「いいえ。でも、そんな気がするの。なんとなくわかるのよ」
 二人の間にしかわからない何かが、あるのだろうか。
「こら、そんな顔しないの」
 知らず思案顔をしていたのだろう。おでこを指先でツンと突つかれた。
「今日は、祐巳は私だけのものよ。そして私も、祐巳だけのもの」
 お姉さまが。全生徒の憧れ、ロサ・キネンシスである小笠原祥子さまが、祐巳だけのもの。ああ、なんて甘美な響き。
 それにしても、お姉さまがとても饒舌だ。たぶん、先程の件が影響しているのだろう。
 あれだけの事があっても、全てを許すと最愛の人が言ってくれるのなら、もう何も怖いものはない。何でも話せる。いくらでも甘えられる。
 今の祐巳には、お姉さまの気持ちが手にとる様にわかる。だって、祐巳もまた同じ気持ちだったから。
「ンフフ……ふあ、あんん……クチュ、ピチュ……ヌクチュッ……んはぁ……」
 再びお姉さまに唇を奪われる。口内で舌と舌とを重ね合わせると、お互いの火照りを感じることができる。
「祐巳が私のモノだという印をつけてあげるわね」
 一度ジュルッと吸い込んでから唇を放すと、お姉さまは二人分の熱い唾液がたっぷりとたまっている自身の口の中で、回すようにゆっくりと舌を蠢かせた。
 二人分の唾液が攪拌されるクチュクチュという音は、ひどく淫靡な響き。口内でかきまぜながらもさらに分泌する唾液を加えていく。
 お姉さまがゆっくりと口を開くと、たっぷりとたまって泡立った唾液、その中でヌラヌラと濡れ光る赤い舌が見える。その液体の一部が先ほどまで自分の口中にあったものだと考えると、余計にイヤらしく感じられる。
「ねえ、祐巳。目を閉じて」
 もっと見ていたい気もしたけれど、言われた通りに目を閉じてみた。視覚を遮断されると、次に何が起こるのか予想がつかなくて、ドキドキする。
「ウフフ……」
 ピチュリ。
「ひあっ」
 まぶたの上に、熱くネットリとした液体が垂れてきた。
(はあぁっ、私の顔に、お姉さまの唾が、唾がぁっ)
 まぶたを覆い隠すほどに唾液をたっぷりと垂らされると、今度はそのまぶたの上にブチュリと口づけられた。
「うひぃっ」
 祐巳の反応などおかまいなしに唇でまぶたの上をなぞると、舌で唾液をすくいとるようにベチュリベチュリと舐めあげられる。
(わ、私の顔、お姉さまに舐めしゃぶられてるぅっ)
 たっぷりと舐めあげると、今度は反対側のまぶたに唾液を垂らし、またねぶりあげる。
 ベチョッ、ネロ〜、ズチュルルッ、ネチョォッ。
「ふぁ、はおぉぉぉっ」
 快と不快の狭間の感触に、祐巳は獣のように吠えながら身悶えた。
「祐巳の鼻はかわいい形をしているわね」
 お姉さまが祐巳の鼻の頭を人差し指でピンと弾く。
「お、お姉さまのお鼻の方が、スッと高くてかっこい、ヒッ!」
 祐巳が言い終わるより早く、今度は鼻に熱い液体が垂れてきた。
「ほあぁぁぁっ、つばが、つばが鼻を覆ってるぅっ、すごいにおいヒィィッ」
 大量の唾液でネトネトにされた鼻を、今度はパックリと口中に咥えこまれた。
「アヒイィィィッ、はな、はな食べられてりゅうぅっ」
 口中に鼻を咥えたまま、舌をうごめかせてその輪郭をなぞる。そして、
「ふぎいぃぃっ、あな、はなのあなはらめえぇぇっ」
 なんと舌先が祐巳の鼻の穴に侵入してきたのだ。さすがに奥までは入ってこないけれど、入り口付近の鼻の粘膜をネロネロと舐めあげられる感触はなんとも形容しがたい。さらに。
 ズジュジュビュ〜〜。
「は、はにゃみじゅ、しゅわないれぇ〜っ」
 鼻の穴の中にネトネトの液体を送り込み、今度は元から鼻の中にあった液体ごとジュルジュルと吸い上げられる。鼻の奥がツーンとして痛い。
 祐巳は締まりのなくなっている唇から、ただはしたない声と涎を漏らし続けてしまう。
「フフ、まだまだよ。もっともっと、祐巳がとろけてしまうほどしゃぶり倒してあげる」
「しゃ、しゃぶりたおすってぇ……」
 お姉さまは祐巳の鼻を解放してそのグチャグチャになっている顔を見つめると、ニヤリとイヤらしい笑みを見せつけた。
「ヒィッ……も、もう私、頭の中までグチュグチュなのにぃ……これ以上されたら、バカになっちゃいまふうぅ……」
「そうよ。バカになってしまいなさい。私とイヤらしい事をする事しか考えられない、恥知らずのケダモノにしてあげるわ」
「そ、そんなの、らめれ、ふぐうぅぅっ!」
 言いかけた祐巳の唇を割り裂いて、お姉さまの長くしなやかな指が口内にもぐりこんできた。
「んはぁ、ひゃ、ひゃめへぇ〜」
 熱い壷の中を激しくかき回す二本の指。唾液がかき回されて、ブチャブチャと卑猥な音を奏でる。やがて二本の指は、おろおろと逃げ惑っていた祐巳のぬめついた舌を挟み、口外に引っ張り出した。
「まったく、こんなに艶かしいピンク色をして、テラテラと濡れ光って。イヤらしいったらないわ」
「ひょ、ひょんなぁ」
「この口で、瞳子ちゃんや可南子ちゃんをたぶらかす甘ったるい言葉を紡いでいるのね」
「わ、わらひ、ひょんなこと」
「それだけじゃないわ。聖さまにしてもそうよ。いつもいつもベタベタして、祐巳は私のモノなのに」
 お姉さま、目がすわっていて怖い。戒めがなくなったため、秘めていた負の感情までもとめどなく溢れ出てしまっているようだ。それにしても、お姉さまがそんなふうに気にやんでいらしたなんて。自分では、いつでも祥子さま一筋のつもりなのに。
「それもこれも、このだらしない口のせいよ」
「ひゃぐぅっ」
 お姉さまが指で祐巳の舌をねじりあげた。
「いい、祐巳。あなたの舌も、口も、髪の毛一本までも、全て姉である私のモノなのよ。私以外の誰かに軽々しく差し出してはダメなの。わかっているの?」
「ひゃ、ひゃいっ」
「言葉だけでは信用できないわね。……そうだわ。まずは体に教えてあげる」
 妖艶な笑みを浮かべ、指先で祐巳の舌の表面を優しく撫でながら、その美しいお顔を近づけて祐巳の瞳を覗きこんでくる。
「フフフ……顔だけで、イカせてあげる」
「か、かおだけ……」
「そうよ。あなたは顔だけでイキまくる、はしたない牝妹だということを自覚しなさい」
「そ、そんな……」
「淫らなはしたない顔をぶらさげているとなれば、他の女の子の前に無防備に出ようとは思えなくなるでしょう。だって、祐巳の顔は性器と同じなんですもの。オマンコ隠さずに人前に出て喜ぶのは、露出狂の変態だけよね」
 自分の顔をオマンコ扱いされ、祐巳はドキドキしてどうにかなりそうだった。このままお姉さまに絶頂に導かれてしまったら、自分の顔が淫らな粘膜だと認めざるをえなくなる。それを自覚してしまえば、まるで性器が蠢くようにクルクルと百面相する表情を無防備に晒す事が、恥ずかしくてたまらなくなってしまう。
「あら、抵抗するつもりなのね。でも、イヤらしい祐巳にどこまで我慢できるものかしらね」
 なんとか堪えようとギュッと固く目をつぶった祐巳を見て、お姉さまはニヤリと笑うと、大きく口を開けてパクリと祐巳のかわいらしい鼻を咥えこんだ。
「ひゃぐぅ」
 驚いて変な声が出てしまったけれど、これなら先ほど経験済みだし、耐えられる。そう思ったが、甘かった。
 舌でまんべんなく鼻の形をなぞるように舐めまわすと、咥えたままお姉さまは頭を上下させはじめた。口全体で咥えこんだかと思うと、鼻の稜線を頂までなぞるようにニュルニュルと唇をスライドさせ、鼻の頭まで唇が到達すれば、また全てを飲み込むために、麓へと滑らせてゆく。
 ニュプッ、ニュプルッ、ヌポッ、プチュルルッ。
 鼻を咥えて頭を上下させるお姉さまの顔を間近で見ながら、祐巳は似たような行為をどこかで見た事があるような気がしてならなかった。尖ったモノを、口から唾液を溢れさせながら激しく舐めしゃぶる、その姿は……。
「ひゃはあぁぁんっ」
 開きっぱなしだった口から犬のように突き出されていた舌を根元から先まで指でシゴキあげられ、ブルブルと身震いしてしまう。その瞬間、目の前で繰り広げられる淫技と記憶の中のある光景が重なった。
「これ…………フェラ……チオ……」
 お嬢様学校で純粋培養されて育ってきたとはいえ、日々の暮らしの中で性的なものを目にする機会は当然あるわけで。祐巳も以前、友人の家にお泊まりに行った際に、彼女のお兄さんの秘蔵のHビデオとやらを数人でキャイキャイ言いながら鑑賞した事があった。
 あまりに部位も状況も違うから頭の中で結びつかなかったけれど、これは確かにあの時見た、男性器を口で愛撫する行為……フェラチオによく似ている。
 祐巳の驚愕の視線を受けた祥子さまは淫靡に笑い、とびきりイヤらしい口調で言った。
「どう、祐巳……ズチュルッ……鼻フェラされるのは、気持ちいい?」
「はにゃへら……」
 なんて淫靡な響き。
「そうよ。私の口が、舌が、あなたの鼻を舐めしゃぶりまわしているの……ズビッ、ジュズリュッ……私の口マンコがあなたの鼻チンポに、ジュポジュポ犯されまくっているのよ……」
 淫らすぎる自分の言葉に酔っているように、陶然とした顔を浮かべるお姉さま。それは、祐巳も同様で。
 鼻フェラ、口マンコ、鼻チンポ、犯されまくって……。
 普段なら耳を覆って逃げ出したくなるような淫らにすぎる言葉ばかりなのに、倒錯的なこの雰囲気の中で最愛のお姉さまから直接浴びせかけられると、逃れる事もできずにただ晒されるがままになり、倫理観も貞操観念もグズグズにとろかされてしまう。
 発情して白痴のように緩みきった祐巳の顔を満足そうに眺めながら、尚もお姉さまは祐巳を攻め立てる。
「ウフフ、舌チンポもこんなにヒクヒクさせて、お汁を撒き散らして。ほら、シコシコしてあげる。私の指コキでイキまくりなさい」
 何かが乗り移ったかのようにスケベな言葉で祐巳を攻め続けるお姉さま。すでに祐巳の理解の範疇を超えている部分もあるけれど、その言葉の秘める淫らな気はダイレクトに伝わってきて、祐巳の頭の中は沸騰してしまっていた。
 ジュポジュポ、クチュクチュと淫音が響き渡り、段々そのペースも早くなってゆく。
 グチュ、ヌチョネチョ、ムニュル、ピチャッペチャッ、ネプネプ、ズルヌグチュッ……
「ハヒッ、お、おねえさま、わ、わらひ、もう……」
「あらあら、どうしたの……ジュポッ……もう、イキそうなの……チュルルッ」
「は、はいぃ…………もう、イッちゃいまふぅっ……」
「フフ……なら、はっきり宣言なさい。あなたは、何をされて、どんなふうにイクのか」
 もう祐巳の頭の中からは恥ずかしさなどとうに流れ出て消えてしまっていた。だから、躊躇なくお姉さまの望む言葉を紡ぎ出してしまう。
「わらひ、ふくざわゆみのかおはぁ……ハウゥッ……性器なんれふぅ……らから、おねえさまにしゃぶられてぇ、ビクビクかんじて、イッちゃうんれふぅっ」
 もうろれつも回らない。ただただ、イキたい、それしか考えられない。
「あら、認めるのね。自分の顔がオマンコだって」
 意地悪く聞き返すお姉さま。でも、否定できない。なんでもいいから、続きをして欲しい。
「はいぃっ、わらひっ、かお、おまんこなのぉっ……らから、してぇ……かおおまんこ、ペロペロしゃぶりまわして、いかせてぇっ」
 恥も外聞もなく、ただ絶頂を求めるメス。それが私。
「まったく、なんて恥知らずなメスなのかしら。オマンコ剥きだしで、フェロモン垂れ流して、マリア様のお庭に集う天使達を淫らに狂わせていくのね、あなたは。
 いいわ、私が躾けてあげる。姉として、もう二度と他の女の子にスケベな匂いを嗅ぎとらせないように、祐巳のドスケベフェロモンをここで絞りつくしてあげるわ」
 お姉さまの鼻フェラが勢いを増す。口の中から淫らな気の塊を引っ張り出そうとするかのように、舌をシコシコとシゴく指の動きも速くなる。
 ジュボジュボジュボォッ、ベチュベチュ、シュリシュリシュリ、ジュルルッ……。
「ンアヒィッ、もうらめ、イク、ヒクゥッ」
「イキなさい、顔面嬲りでイキまくりなさいっ、オマンコ顔の変態牝妹っ、ホラッ、イクのよっ!」
 鼻の頭に鋭く歯を立てられ、舌を爪の先でくじられる。敏感すぎる粘膜と化していた祐巳の顔に、こらえきれないほどの桃色の衝撃が走り、爆発した。
「んひゃっ、イ、イクウゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!」
 全身に電流を流されたように体がビクッビクッと痙攣し、上の口からも下の口からも淫らな汁を大量にしぶかせた。何度も何度も汁を噴きこぼし、壊れたゼンマイ仕掛けの人形のようにガクガクと体を揺すり続ける祐巳。
痙攣が収まった頃には指一本動かす力すら残ってはおらず、焦点の定まらないうつろな瞳で、ただ天井を見るともなしに見つめるだけだった。



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