その後、互いに責めたり責められたりを繰り返し、何度も絶頂を迎えた二人は、やがて力尽きて折り重なるように倒れこみ、気を失ってしまった。
顔を淫水にまみれさせテラテラと濡れ光らせてはいたが、二人とも、天使のように無垢な笑顔を浮かべ、安らかな寝息を立てていた。
翌日、二人は目を覚ますと、まずは様々な液体でベトベトになっている体を洗い流すために一緒にお風呂に入った。体を洗うといいながら、あちこちに手を滑らせて互いの体をまさぐりあったり、まるで新婚さんのよう。
お風呂から出ると、簡単なものだけど一緒にご飯を作ったり、グチョグチョになっているシーツを洗ったり。二人で何かをする、それだけの事がただ楽しくて。顔を見合わせては笑い合っていた。
この二日間で、私達姉妹の絆は確かに強くなったんだって、そう思うと嬉しくてしょうがなくて。不意にお姉さまに抱きついたりして、それをたしなめるお姉さまも、終始笑顔だった。
「すっかり遅くなっちゃいましたね」
とっぷりと日も暮れ、暗くなってしまった校内を、祐巳はお姉さまと手をつないで歩いていた。
今日は山百合会の残務処理を二人で片付けた。一年生達が手伝おうかと言ってくれたけど、二人で十分、と丁重にお断りして先に帰らせたため、今日は帰りも二人きり。
お姉さまのお宅に伺って、その、色々あってから一週間。前より、言葉を交わさずともお互いの事がわかりあえるようになった、とはいえ。それでもやっぱり、触れ合っていられるのが嬉しいから。お姉さまがお忙しくてなかなか二人きりになるチャンスが分、こうして帰宅途中の数十分だけでも二人きりで過ごせるのが嬉しかった。
他愛もないおしゃべりをしながら、校舎を抜け、マリア様の像のある分岐路へ差し掛かる。
「きれいな月ね」
薄い雲の隙間から姿を覗かせる満月。その柔らかな月光に照らされたお姉さまの横顔は、息を飲むほどに嬉しくて。いつの間にか、祐巳は足を止め、その横顔に見とれていた。
「祐巳?」
振り返るお姉さま。吸い込まれそうな、深い瞳。祐巳は、そっと目を閉じる。
「……マリア様が、見ていらっしゃるわよ」
お姉さまが、たしなめるように言う。でも、その言葉は優しさに満ちていたから。
「いいんです。マリア様になら、見ていただきたい」
ちょっとだけ、甘えてみる。
「……仕方ないわね」
そうは言いながらも、お姉さまは幸せそうに微笑んで。
柔らかな感触が、唇に触れた。
月と、マリア様だけが、二人を柔らかく見守っていた。
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