「ん…………ふぅ…………」
どれほどの間眠っていたのだろうか。ひとみは眠りから覚め、目を開けた、はずだった。
だが、視界には一筋の光も差し込まず、暗闇に閉ざされたまま。いまだ意識が戻らぬのか、そう思い何度か目をしばたたいてみれば、上下の瞼が閉じ合わされる感触は確かにあるものの、やはり視界に入るのは闇ばかり。
(これって……目隠し?)
目隠し。日常では友人同士でのじゃれ合いでしか起こりえないシチュエーション。それが己が身に起きているという不自然な状況に、途端に背筋が寒くなり思わず声を漏らす。
「むふぅーっ…………ふぐぅ!?」
その時初めて、口内の異物感を強く認識する。口にリング状の何かを咥え込まされ、声すらも満足に発する事が出来ない。
「む、ふぐ、うぐーーっ!」
目も口も塞がれ、混乱に陥ったひとみは慌てて起き上がろうとする。が、いくら両手両足に力を込めてもそれは叶わない。なぜなら両手も両足も、地を掴んではいなかったのだから。
半狂乱になり大声を上げながら暴れるひとみ。だが、それはあくまで本人の感覚であり、実際にはくぐもった呻きを上げながら体を揺する肉塊がそこにあるだけ。
「むーっ、ヒック、ふぐっ、うぐーっ」
体の自由と五感の一つを奪われた恐怖から逃れようとどれだけ体を捩ろうとも、暗闇に囚われたまま抜け出す事も叶わず。それでも、じっとしていては恐怖に押し潰されて狂ってしまいそうで、ひとみは泣き叫びながら体を揺すり続けた。
「……うぅ……ヒック……ふぅ……」
それでも、涙の滝がせせらぎに変わる頃には、ひとみもいくらか落ち着きを取り戻し、視界は役に立たないながらもわずかながらに有効な聴覚と触覚で自らの情報をいくらか把握出来つつあった。
視界はどれだけ暴れてもずれる事の無い様、布ではなく大き目のアイマスクで塞がれており、口にはドーナツ状のリングを咥えさせられ大きく開いた状態を維持させられている。両腕はWの字、両脚はVの字を描き、自らの首と両手首、両足首を一枚の板で繋がれているようだ。その窮屈な姿勢を支えるのは、壁にもたれかかった背中と床についた臀部だけ。
両耳も何かで塞がれているようだが、それでもわずかに漏れ聞こえる枷についた鎖と思われる金属音が、自分が拘束されているという事実を否が応にも突きつけてくる。
多少空気に肌寒さを覚えるものの、それでも体の大部分は布地に覆われているようで、我慢できないほどではない。が、股間や乳房から外気とは別種の濡れた布特有のひんやりとした感じを覚える。それは、このような事態に陥る前に見てしまった衝撃的な光景が夢や幻ではなかったという事実を示していた。
(……麗子さん)
憧れの人の、信じられないような痴態。これは、そんなものを覗いてしまった自分への罰なのだろうか。
と、耳音にコツコツとヒールが床を叩く音が微かに聞こえる。
(え……まさか……)
その音は徐々に近く大きくなり、やがて、音の主と思われる人の気配が正面に感じられた。
「へ、へーほひゃん?」
ひとみの漏らした言葉にならない声。その声に、呼びかけられた人物はわずかに反応を示す。その人はひとみの前にかがみ、そっと頬を撫でる。柔らかな布地に包まれた手。仄かに鼻腔を擽る甘い香り。
(やっぱり、この人はっ)
もう一度その名を口にしようとしたひとみだったが、突如耳に流れてきた大音量の声に、思わず言葉を飲み込んでしまった。
『あひんっ、いいっ、オマンコきもちいいのぉーっ』
(な、なにっ?)
左右の耳から、甘ったるい女の喘ぎと淫らな水音が、ひとみの脳を直接犯すほどの大音量で流し込まれる。
『オチンポ、オチンポ好きですぅっ、もっと顔にグリグリ押しつけてぇっ』
『はぁむ、ジュプ、ジュポッ、おしゃぶりさせて、いっぱいオチンポ舐めさせてぇっ』
(いやぁっ、なに、なんなのぉっ?)
耳を塞ぐ事も出来ぬまま、零距離から流し込まれる淫らな言葉。少しでも逃れようと激しく首を振るが、耳を覆う大きなヘッドホンはガッチリとひとみを捕らえ、頭の中を劣情で掻き回す。それでも無駄な抵抗を続けるひとみであったが、淫語に混じって聞こえてきた一つの名前が、その動きを止める。
『はぶっ、ジュポ、ジュパッ、犯して、麗子のおくちマンコをいっぱい犯してください〜っ』
(……れ……麗子、さん……?)
その名前と、記憶に新しい憧れの人の痴態。その場に紡がれていた淫らなBGMが、次々に流し込まれる卑猥な言葉の本流と違和感なく混ざり合う。
『麗子は、ザーメン大好きな変態レースクィーンですぅ』
『お顔にビュルビュルひっかけて、麗子の顔をザーメン漬けにしてぇっ』
『んむ、ねぱぁ、舌に溜まった皆様の特濃ザーメン、オマンコぐちゅぐちゅにしながら飲み干しますぅ』
実際に一度目にしているというリアリティ故に、瞼の裏には耳から注ぎ込まれる淫らな言葉がくっきりと鮮明に映像かされていく。
(ああ……さっきだけじゃなかったの……麗子さん、本当に、何度も何度も男の精液で犯されていたの……?)
脳裏を桃色に染め上げられ、ギャグから涎を溢れさせ腰をヒクヒク震わせるひとみ。彼女は思わず忘れていた。目の前にその声の主と思われる女性がいる事を。
バチンッ!
「ひゅぐぅっ!」
突如胸の先端を襲った鋭い痛み。右の乳首が、ボディコンワンピースの上から何かにギリギリと摘まみ上げられている。間髪いれず、左の乳首にも同様の激痛が走る。
「ぎ、ふぎぃっ」
ジンジンと敏感な突起を苛む痛み。しかし、耳から次々と注ぎ込まれる淫らな声が、その痛みを何か別のものに変化させていく。
痛みと劣情の狭間で困惑するひとみ。身悶え続ける彼女の、ふるふると震える腰を覆うスカート部が、スルスルとたくし上げられる。
(ま、まさか……)
その衣擦れの感触に、思わず次に起こるかもしれない最悪の事態を想像し、彼女の意識は知らず最も敏感な部位へ集中する。そして、次の瞬間。
バチンッ!
「ぎゅふゅうーっ!?」
視覚を奪われたひとみの意識が集中しきった淫豆が、パンティの上から強烈に挟み込まれた。瞼の裏に飛び散る火花。あまりの衝撃に足の指先をピンと伸ばし、ガクガクと腰を揺する。だが、それだけでは終わらなかった。次の瞬間、少女の敏感な3つの突起が乱暴に震えだしたのだ。
「ひゅぐ、ふぎゅぅーっ」
ひとみは大量の唾液を溢れさせ、頭をブンブン振りたくりながら激痛に翻弄される。
『はひぃっ、麗子は変態マゾです、痛いのが気持ちいんですーっ』
『もっと、もっと乳首つまんで、グリグリしてぇっ』
『クリトリス、クリトリスですっ。ピンピンにイヤらしく尖ったオチンポみたいな麗子のはしたないクリトリス、噛み潰して、被虐アクメさせてえぇっ』
なおも脳裏に注ぎ込まれ続ける淫らな言葉。ひとみの理性も意識もかき回され続け、全てがドロドロに混ざり合っていく。ひとみはもう、何が苦痛で快楽なのか、何が良くて何がイヤなのか、すっかりわからなくなっていた。
(れ、麗子さん……助けてぇ……)
『麗子は皆様の精液便所ですっ。ザーメンの掃き溜めにされるのが嬉しくてたまらない、さもしい肉穴女なんですぅっ』
(わたし、このままじゃ狂っちゃう……)
『チンポ狂いのメスブタ麗子のスケベマンコ顔に、ドピュドピュザーメン塗りたくってくださいっ』
(もう……壊れっ……ちゃうぅ……)
『アクメ、アクメさせてぇっ。すまし顔した人気レースクィーンのあさましい本性を剥き出しにして、ビンビンに尖ったエロ乳首とドスケベクリを捻り潰して、マゾアクメする麗子をザーメンレイプしてえぇぇっ!』
「ン、んぐひゅふうぅーーーっっ!!」
両乳首とクリトリスをローターのついた大きなクリップでギリギリ摘ままれながら揺さぶられ、ギャグを填められた口からは涎を溢れさせながら、秘部からは布地では受け止められないほどの淫蜜をブシャッと噴き上げる少女。やがて、絶頂に意識を攫われ、緊張にピンと伸びきっていた指先も力なく垂れ下がる。それでもなお、耳は卑猥な言葉に、突起は激痛と振動に犯され続けているのだろう。
少女の前で屈みこんでいた女性が、スッと立ち上がり、そんな少女の姿を悲しそうな瞳で見つめる。が、すぐにクルリと踵を返すと、少女に背を向け歩き出す。だが、徐々に遠ざかっていく彼女の奏でる硬質なヒールの音は、もう少女には届いていなかった。
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