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NOVEL

罪 悪 感  〜第八話〜

注意) 【過去】部下×主人公 淫語 罵倒 出血

俺達はどうして逃げてる?

一体、お前は何を考えてる?

俺達はどこに行こうとしてる?

 ホテルからは幸い誰にも見咎められる事もなく、俺達は抜け出した。ホテルから出た所ですぐにタクシーを拾い、航矢が短く行き先を告げた。
 告げた行き先は、東京駅。
 今居る場所からは、道が混んでさえいなければ30分ほどで着く場所だった。
 行き先を聞いた運転手は、すぐに車を走らせる。
 そうして、車中で暫く無言で俺達は過ごした。
 何分くらい走った頃だろう。不意に航矢が口を開いた。

「――渉。」

 小さく呼ばれた自分の名前に、ぐんぐんと流れていく窓の外に意識を飛ばしていた俺は少しの間気がつかなかった。
 だが、もう一度小さく呼ばれ、慌てて航矢の方に視線を向ける。

「何?」
「お前、怒ってねぇのか?」

 航矢の口から意外な質問が飛びでる。
 その予想外な質問に、俺は二、三瞳を瞬いた。

「何で? 別に怒ってないけど?」
「…………。」

 キョトンとした顔でそう答えると、航矢は何かを思案するように黙りこくった。自分から聞いてきていて、俺の答えを聞くと黙りこくる航矢に、俺はまた目を瞬く。
 大体、今回のことで俺が怒る意味がない。
 だって俺は、今のこの状況を楽しんでいるのだから。
 寧ろ怒るのは俺じゃなくて、航矢の方なんじゃないんだろうか?俺のせいで、待ち受けていた輝かしい人生を台無しにしてしまったんだ。
 その事に気がつき、俺はハッとした。
 そうだよ。こうして逃げたは良いけど、航矢は後悔してるんじゃないのか?

「……後悔、してる?」

 俺と逃げた事、思わず小さな声で、俺は航矢にそう聞いていた。
 その質問に今度は航矢がキョトンとした顔を俺に向ける。

「は? 後悔?」

 そして酷く不思議そうな顔と声で聞き返してきた。

「……だって。」
「あ、――あぁ。そんな事、気にしてんのか、お前。」

 俺が言いよどむと、航矢は俺が何が言いたいのかすぐに察したのだろう。ニヤリと口の端を歪めて笑い、俺の頭を拳で軽く小突いた。

「バーカ。俺が自分の決めた事で、後悔なんてする筈ねぇだろ? ……どっちにしろ、いつかはこうするつもりだったんだ。それがちぃとばかし、早まっただけだしな。」
「……え? 航矢?」
「…………。」

 キシシと悪戯っ子のような顔で笑い、もう一度俺の頭を小突いた後、不意に真剣な顔に薄く苦笑を滲ませると、航矢は小さく小さく呟いた。
 その呟きに、俺は思わず航矢の男ぶりの良い顔を穴が開くほど、凝視した。
 俺の視線に航矢は、困ったような表情を浮かべるとガシガシと頭を掻き、俺から視線を外すと外の景色へと向ける。
 航矢の言葉はいつも、唐突だ。
 いつも自分の中であっという間に答えを出し、その答えに至るまでの過程をすっとばして、俺に伝える。
 それにいつも俺は、面食らって。
 そして、それはいつも俺の中に、ナニかを運んでくる。
 今回のこの航矢の行動と言葉は、やっぱりいつものように俺の中にナニか不思議な感情を湧き立たせていた。

「……何処に行くか、もう決めてるんだろ? 教えてくれよ。」

 不貞腐れたように窓の下にある小さな出っ張りに肘を置いてそっぽを向いている航矢に、俺はそれ以上の追及はせず、これから先のことを聞いてみる。
 すると窓に映った航矢の瞳がぎょろりと動き、窓越しに俺の瞳を見詰めた。

「……沖縄。」

 そう、ぶっきら棒に小さく答える。
 窓の外の景色は流れ、俺達になじみの深い赤レンガの建物が見えてきた。そのまるで俺達の旅立ちを歓迎するかのような鮮やかな赤に、俺はうっとりと瞳を細める。
 何処までも続く青い空と海。そして温かい気候。
 それらを脳裏に描き、俺はどんどんと近づいてくる赤レンガの建物を、眺めた。

「温かいだろうな。沖縄。」
「……あぁ、そうだな。」

 俺の小さな呟きに、航矢がやや遅れて同意する。そのぶっきら棒な言い方に、くすりと俺は小さく笑い、もう目の前にまで迫ってきた駅の巨大な建物から視線を外す。
 そして、俺とは逆側の窓の外を眺めている航矢の横顔へと、顔を向けた。

「航矢。」

 小さく口の中で、その名を呼ぶ。
 すると、面倒臭そうな顔をして航矢は俺の方を向いた。

「何だよ?」

 低い声でそう自分の名を呼んだ俺に聞き返す。
 それに笑って見せ、俺は小さく、ありがとう、と航矢に感謝の言葉を述べた。
 と、航矢の顔が鳩が豆鉄砲を食らったような顔になり、俺の顔をまじまじと見詰め直した。

「――俺、実はもう逃げたかったんだ。あの人の――、ボスの腕の中から。だから、ありがとう、航矢。」

 航矢の驚き戸惑う顔をしっかりと見据え、俺は微笑みながらもう一度航矢にお礼を述べる。
 途端、航矢の顔が不機嫌そうに歪んだ。

「渉――。」
「お客さん、着きましたよ。」

 航矢が何かを言いかけた時。
 キッとブレーキを踏む音が車内に響き、そして航矢の声に被るように運転手がそう俺達に声を掛けてきた。
 それに航矢はハッとすると、スラックスの後ろポケットに手を突っ込み、財布を取り出す。そして運転手の告げた料金を支払うと、俺の肩を押してタクシーから降りた。
 走り去っていくタクシーを少しの間俺達はぼんやりと無言で眺めていたが、航矢が俺の肩をポンッと軽く叩いた。
 それは、行くぞ、の合図。
 俺はその航矢の合図に薄く微笑むと、先に立って歩き出した航矢の後ろを少しだけ小走りに追いかける。

「航矢――!」

 そう俺が呼ぶと、航矢は立ち止まって俺を振り返った。
 そして。


 航矢は初めて俺に向けて、柔らかく微笑んだ。



 それは俺にとって希望の微笑みだった。
 そして、本当の幸せの訪れを告げる、優しい笑顔。



 ここからが本当に戻る事の出来ない、俺達の道程の始まり。
 俺も航矢も。
 もう何処にも還る場所は、なくなった――。

◇◆◇◆◇

 ボスに身も心も捧げた愛玩動物となって、あっという間に一年が経った。
 ボスの俺への寵愛振りは、組織の中では知らぬものなど居ないほど、公然の秘密で。
 俺は、その為特に望んでも居ない権限をこの身に与えられていた。
 何処に行くにもボスの息のかかっている監視者が付く。そして、逐一ボスが居ない間の俺の動きは、些細な事までボスに報告されていた。
 お陰で、自由はそれなりに与えられていたが、そんな偽りの自由を謳歌する気にはなれず、俺は日がな一日ぼんやりと豪華なマンションの一室でボスの訪れを待つという日々を繰り返す。
 ボスは出張など長期で出かけることがない限り、最低でも二日に一度くらいの割合で俺の元を尋ねてきていた。
 そして、セックスをして帰っていく。
 相変わらず俺達の間には傷を舐めあう以上の愛情は、育たなかった。
 優しさも、慈しみも、ボスから俺へ与えられる事はない。
 ただ、その獣欲とも言えるほどの凶暴なセックスへの欲求を俺の体で満たし、吐き出し、去っていく。
 そして、俺も。
 ボスに愛情は感じていた。
 だがそれが、子供だましなちゃちな代物だと言う事は、もうとっくに気がついていて。
 ただひたすらボスの命令に服従し、体を開き、ボスの熱を体内に感じる事で、自身の中にある空洞を埋めようとしているだけだった。

 俺とボスは、よく似ている――。

 それは誰に言われた言葉だったか……。
 セックスに対する執着も狂気も、抱える空虚の大きさも、俺達はよく似ていた。
 だからこそ惹かれあい、そして、酷く反発しあった。

 そう、俺達は反発し合っている。

 一見、俺は大人しいボスの玩具だったが、その実、まったくボスの求めている玩具ではなかった。
 言う事を良く聞く高性能な玩具。
 きっとボスの中の俺に対する認識はこんなものだろう。
 周りの人間の言うとおり、俺はボスの教え込んだ性技を全て吸収し、今まで飼っていた人間達とは一線を画す程、寵愛されているのも確かに本当の事だ。
 だが。
 多分、ボスは俺を憎んでいる。
 それも、酷く。
 言いなりになるだけで、ボスの中にある空虚をまったく埋める事の出来ない俺への苛立ちが、愛情を抱く前に憎悪に変わっていた。
 だから、俺はいつボスに殺されるのだろうかと、怯え半分、期待半分を抱えて毎日を過ごしていた。




 そんなある日。

「あ……っ、う、ん……っ。お、願い……、もっと、突き刺して……っ。」
「ん? こうか?」
「あっ! あぁぁっ!! そ、そうっ! イイッ、イイ、よぉ……っ!!」
「……まったく、凄まじいな。」

 くくく、と低い笑い声が俺の周りを取り巻く。それは幾重にも重なり、男に貫かれて身悶えしている俺の感情を酷く高ぶらせていた。
 俺を貫いている男も、周りの笑い声に習うかのように、忍び笑いを漏らしてまた最奥を強くえぐった。

「はっあぁああっ!! も、もうダメっ!! な、なぁ、出して! ナカに精液出してっ!! 熱いの、熱いのをくれよぉっ!!」

 深くえぐられた痛みと凄まじい快楽に俺の背が弓なりに反る。そして、後ろで腰を振り続けている男に懇願した。
 もう腹の中が焼け付くように快楽で熱い。そこに、男の精を吐き出して欲しくて、俺は無我夢中で腰を振った。そんな俺に、また回りからさざめきのように笑い声が沸き起こる。
 俺の牡はもう充血して酷く腫れあがり、先端からは止め処なくはしたない汁を零していた。腰を揺する度に、それが零れ、高級な絨毯の上に染みを作っていく。

「こんな淫乱じゃぁ、ボスも大変だな。もうここに居る奴全員に突っ込まれたってーのに、これじゃあな。」

 侮蔑を込めた声で今のこの状況を作り出した首謀格の男が、咥えていた煙草を灰皿の上で揉み消しながら、そう呟いた。
 その呟きに回りに居た男達が、くすくすと笑いあう。
 ボスが長期で出張に出かけて、早、二週間。
 後、一週間はボスが帰ってこないと解っていて、この男は他の男達を誘って俺を輪姦しにやってきた。
 こいつは俺のお目付け役の、取り纏めをしている立場にある人間で。
 今、こうして俺を玩具にしている男達の上司だ。
 いつの頃からか、この男はボスが長期出張の時は、何故かこうしていつも俺を犯しに来る。
 最初はてっきりボスの命令だと思っていた。だが、何度か犯されている内に、この男の独断で行っている事に気がついた。
 その後、俺は一応の抵抗を試みてみたものの、多勢に無勢。しかも、武芸に秀でている彼等相手ではどうにも出来ず、結局は無茶苦茶に犯されてしまう。その事が解ってからは、俺はこいつら相手にも従順に服従し、こうして彼等が満足するまで体を開く事にした。
 その方が楽だし、何より抗うのも面倒臭かったから。

「ほらよ。お前の大好きなザーメンをケツにぶちこんでやるよ。」
「あっ! あーーっ!!」

 後ろを犯している男が、欲情に滾らせた声でそう言い、俺の最奥を強く一突きした。その先端が内壁にぶち当たったかと思うと、勢いよく灼熱の欲望をそこへ叩きつける様に放出した。
 男が放出した熱が、そこに溜まっていた自分の熱と結びつき凄まじい快感を生み、俺は絶叫しながら自身からも何度目かの射精をした。ビュルビュルと白濁した液が先端から飛び出し、絨毯と俺が上半身を預けている革張りのソファを汚す。
 放出した開放感に俺は肩で息をしながら、クッション性に富んでいるそのソファに顔を埋めた。
 と、ぐったりとしている俺の背後で人が動く気配がし、奥まで突き刺されていた杭が一気に引き抜かれた。

「ひ……ぅ、んっ……。」

 男が引き抜かれる感覚と、ドロリと吐き出されていたものが後ろの穴から零れ、太股を濡らして行く感覚に俺は小さく身震いした。
 ゴポゴポと音を立てて大量の精液が後ろから零れていく。
 その太股を伝っていく生ぬるい精液の感触に、俺はギュッと目を瞑った。一体今零れているのは、誰の精液なのか――。その事を思い出したくなくて俺は更にソファに顔を埋めて、ひたすら息を整えていた。

「まだ、寝るには早いぞ。」

 と、突然俺は後ろ髪を引っ張られ、無理矢理顔を持ち上げられた。そして、低い声でそう耳元に囁かれると、前準備なしに後ろへ男の太いモノが突っ込まれる。

「はっ、あぁ……っ!」

 多量の精液のお陰で、なんの抵抗もなく男のモノは、俺の中へと沈んでいく。その熱く太いモノで押し開かれていく快感に、また俺の喉ははしたない悲鳴を上げた。
 グチュグチュと、酷くいやらしい水音を響かせながら、男は滅茶苦茶に俺の中を蹂躙する。その荒っぽいやり方と出入りするモノの大きさ硬さで俺は、それが誰のものであるか解った。
 首謀者の男だ。
 こいつはいつも俺を犯す時には、酷く無茶苦茶に腰を打ちつけてくる。それは快楽を得ようと言う動きとは多少違って、まるで俺の内壁を突き破ろうとでもするかのような酷く乱暴なもので。そのお陰で俺は、快楽と同時に酷い吐き気も覚える。

「おらっ! この淫売! もっと尻を突き出せよ! 俺が突き破ってやるからよぉっ!」

 俺の髪を掴んだまま酷く体を揺すり、内壁を強く男のモノで突き刺す。その度に俺は吐き気と快楽の狭間で、悲鳴なのか喘ぎ声なのかえづく音なのかわからない声を上げ続けた。

「あ゛っ、あ゛あ゛ぁああっ!! ひぅっ……っ! や、やめ、てっ……! こわっ、壊れ……っ。」
「あぁん? 止めて、だと? クソ淫売の癖に生意気に俺に命令すんのかよ! ボスに可愛がられてるからって、いい気になってんじゃねーぞ! 蛆虫!」
「ひっ!」

 俺の懇願が気に触ったらしく男は俺に汚い言葉を浴びせながら、更にキツク俺の内壁をそのイチモツで突き刺す。その本当に内壁を突き破る勢いで押し込まれた男のモノの感触に俺は引き攣った悲鳴をあげた。

「くく、テメーのここマジに使い物になんねーようにしてやろうか? そうすりゃボスも目ぇ醒ますだろ? なぁ? 淫売。」

 くつくつと喉の奥で笑いながら男は俺の髪を無理矢理引っ張り上げて俺の顔を上向かせると、俺の頬に舌を這わせながら恐ろしい事を言う。
 男からは酷い憎悪が感じられ、俺はぞっとした。
 だが、一体、こいつは俺の何が気に入らないのかが解らず、俺は必死になってソファに爪を立ててその暴力を受け入れるしかなくて。体を強く揺さ振られ、痛みを伴う突き上げに悲鳴を上げながら男が果てるのを待った。

「チッ! おらっ、もっと腰動かせよ! 俺のザーメン欲しいんだろ? 出してやるからよ、もっと締め付けろよな。おらっ! 大好きなザーメンぶち込んでやるから、よっ!!」

 俺が男の憎悪に目を瞑ったのを見て取ると、男は耳元で忌々しそうに舌打ちをした。そして、一旦入口付近まで肉棒を引き抜くと、一気に最奥までえぐる。

「や、あぁぁあああああっ!!!」

 痛みと強い快感に俺は、仰け反り絶叫した。
 その瞬間。

 パンッ。

 と、やけに乾いた音が室内に響く。

 そして。


 突然、俺の後ろから大量のシャワーが降り注いだ。



 そのシャワーは、何故か真っ赤で。
 ところどころ変な塊が混ざっていた。



コレハ、ナニ――?





to be continued――…