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アタシ達は運命を 嘲う(あざわらう)

第3話 使徒戦役開戦  by saiki 20080824




彼、碇シンジは目の前の混沌に頭を抱えていた。

「うあああ、シンジ───ッ!シンジ───ッ!」
「…碇君が…いかりくんが……」
「ああ、せっかく女になったというのに…
全ては無駄な努力だったんだね、
でも、男だろうと女だろうと僕には等価値さ。
さあ、シンジ君!───僕と禁断のユリの世界へ──っ!」

一見少女にしか見えない少年は指で目頭を押さえると、
頭痛をこらえるかのようにジオフロントの昼なお薄暗い天井を見上げた。
さらりと腰まである黒く艶やかなウエッグが、苦笑いに引きつる彼の頬をなぶる。

「え、あ、あの……」

───いやもう、僕が悪かったよ、勘弁してください───
少年は天井を見上げ、何故か一人増えて
3人になってしまった少女達に泣き付かれたまま、心の中で叫ぶ。
それに答えるかのようにひゅるりと風が舞い、彼の纏う白のワンピースと
スカートの裾をなびかせ、その頭から巻き上げた白く縁の広い帽子を狭い空へと運び去った。

お伴のカラフルな巨人達は、合計7つの目を遥かな時を超え
再開を果たした少年少女達から反らし、
触らぬ 神に(ちょうえつしゃ) 祟り無しと、知らぬぞんぜぬを決め込んだのだった。



後に赤木親子は語る、いやもう近年希に見る見事な修羅場だったと……











青く澄み切り疎らに入道雲が浮かぶ空、夏を思わせる暑さと共に
消音が聞いたディーゼルエンジンの低い唸り(水冷4サイクル8気筒ディーゼルで1200馬力)
上書きするかのように、ヒグラシの鳴き声がそれを凌駕する。

海岸線沿い(相模湾) の舗装路に添って 重厚な装甲(モジュール装甲) を見せる戦車が、
まるで電柱に群れて止まる小鳥の様に隙間無くその無愛想な容貌を並べ。
それらが揃って 己が無骨な砲口(44口径120mm滑腔砲) を向けるのは、おたやかな蒼さが目立つ海の向こう。

蒼いキャンパスを切り裂くかのように、泡立つ白い航跡が沖合いから港へと迫り、
ズンと空気を重く振るわせる音と共に、
不運にも白い航跡と交わったイージス艦が高く水柱を上げ二つに折れ轟沈する。

『” こんごう(DDG-173) ”轟沈、 魚雷(Mk46) の効き目有りません!』
『海岸線の10式MBT群の主砲射程内に入ります』
『MBT群、正体不明物体へ120ミリ砲射撃開始!』

立て続けに起こる重厚な砲撃音が、鳴き盛っていたヒグラシ達を蹴散らし、
放たれた砲弾がまるで水溜りに投げ込まれる小石の様に、海岸線に迫る水面下の影へと突き刺さる。

ズンと大な波と共に、波間から弾着の爆煙を纏いつつ巨大な影が立ち上がった。

『敵性体に多数の弾着を認めるも、外見上の効果認められず!』

小高い丘の麓に設けられた、
野戦指揮車(CCV 82式指揮通信車) と臨時指揮所のテントの周辺が慌しくざわめく。

『東海レーダーサイトから入電、上空から巨大物体接近中!』
『厚木発、スクランブル隊未確認巨大飛行体と交差!』
『上空の巨大物体は紅いボディカラーの巨大な人型!
元ネルフ所属エヴァ弐号機と断定されました!
同機、交差後自由落下状態で急速に落下中、正体不明物体と後10秒で接触します!』

上空に浮かんでいた積乱雲を一瞬の内に吹き散らし、
真っ赤な物体が海岸線に上陸しようとする黒い影へと逆落としに踊りかかる。

『あははははは───!、惣流・アスカ・ラングレ───見参────っ!!』
OWN───────!!!!(そして主の忠実な僕、我、弐号機!)

首無し使徒こと第参使徒サキエルの胸部顔面へと、
見事に成層圏からのジャイアント・ライダーキックモドキを放ったのは、
なぜか約1名数が増え恋の鞘当で限界までストレスを溜め込んだ
碇・アスカ(予定)と、その忠実なる下僕、エヴァンゲリオン弐号機だった。

落下した弐号機の爪先にピンポイントに展開されたATフィールドが、
瞬時に使徒サキエルのフィールを打ち破り紅い巨体の膨大な落下エネルギーが、
ダイレクトに破壊エネルギーへと変換され、使徒の緑の皮膚と肉が切り裂かれ紅い体液が四散する。

『豪殺!──粉砕────っ!!』
WOOOO──────N!!!!(我らが怨敵滅びるべし!)

轟と衝撃波が地表を舐めるように広がり、
薄く張られた内向きのATフィールドに封じ込まれ、まるでミルククラウンの様に海水を舞い上げた。

使徒の胸の白い仮面状の顔面が粉砕され、
すぐ下にある紅く輝く球体もヒビ割れ、時限装置のタイマーのように明滅する。
そして、明滅が停止すると同時に十戒の紅海の様に
底を曝し焼けただれた海底へ屍を曝す水を司る者のヒビ割れた胸の球体が弾け、
閃光が十字に空へと伸び上がり、フイールドの内側をエネルギーの嵐が暴れのたうつ。

その、何物も存在を許されぬはずの宇宙の創元にも似た灼熱光の中で、
エヴァ弐号機の真っ赤な巨体が仁王立ちし、王者の如く虚空へその雄叫びを放つ。

『あはは!正に無敵──っ!ICBMでも陽電子砲でも持ってこ────ぃ!』
FWOOO──────!!(おお、まさにそのとおりだ、ご主人!) !』

後に、臨時指揮所の随員達は思い出し、震えながらその顔色を紙のように白くして語った…
第参使徒サキエルの体液で、赤いその身をさらに朱に染め上げた弐号機は正に地獄の魔人の様だったと……




To Be Continued...



-後書-


こんごう = DDG-173 JMSDF DDG KONGO class イージス艦
10式MBT = 2010年型メインバトルタンクの略

ううむ、荒らし乱入でうやむやに成り、
その後多忙で流れ流れて久々2年ぶりの掲載…

いや、どこまで書いてたかも忘れてましたよ。<苦笑

しかし、当初はさらりと海岸へ死体が流れ着くはずだった、
第参使徒のサキエル戦が派手な事に、コメデイ路線に鞍替えかな<自爆


ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。


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