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アタシ達は運命を
嘲う
3
第4話 事件は会議室で by saiki 20080905-0911
暗闇に煙るノンタールの紫煙と小さなざわめきの中、
立体投影機の光芒が闇を退け宙に文字と画像を映し出す。
≪2015年 第3使徒サキエル、襲来。
適格者
による3機のエヴァを使った反乱により
特務機関ネルフは本部の占拠、ならびにドイツ支部の壊滅の為、
日本駐留の
国連軍
にて迎撃に当たるも使徒に対する通常兵器の効果は認められず。≫
砲弾の雨の中、物ともせず上陸しようとする使徒を
積乱雲を貫く巨体が粉砕、紅蓮の炎の中、仁王立ちで咆哮を上げる紅い巨神。
≪乱入したエヴァ弐号機により、第3使徒サキエル水際で撃滅≫
「ドイツのケッペウス司令、本部の
碇
司令
ともども行方不明とはどういうことだね?」
「そもそも何故、反乱などおきたのか常識を疑うよ?」
「うむ、これは由々しき問題だな」
≪第4使徒シャムシェルの残骸とぼしき物体、駿河湾に漂着≫
「これも、反乱勢力の3機のエヴァによるものかね?」
湾に浮かぶ原型を留めぬほど蹂躪された使徒の残骸に、呆れたように溜息が漏れる。
≪第5使徒ラミエル、襲来。
反乱勢力警戒の為駿河湾沖に停泊していたUN軍太平洋艦隊と偶発的に遭遇、
超出力の加粒子砲を放ち正規空母オーバー・ザ・レインボウ以下に壊滅的な打撃を与えるも、
使徒は海底に潜んでいたエヴァ零号機らしき機体により、
二股の槍状の物体で刺し連ねられ撃破、直後飛来した残りの2機も加わり粉砕。≫
大破した艦隊をバックに、砕かれその蒼く透き通ったサファイアにも似た頂点を
僅かに海面に覗かせた、第5使徒ラミエルの残骸が波間に見えその上をカゴメらしい鳥がいく羽か舞っている。
「稼動に外部電源を必要としない事から考えるに、
あれらエヴァ達は既にS2機関を内蔵しているのではないかな?」
「もしそうなら問題だよ、あれらの力、人が御せるものでは無い」
≪第6使徒ガギエル、伊豆南東の太平洋上で頭部を粉砕されて、
漂流しているのを使徒警戒の為に
哨戒中のUN機
により発見。≫
ナレーションに海面を漂う鯨にも似た巨大な残骸を、
低空から廻りこむように空撮した画像が空中へと映し出される。
「沈んでしまう前に発見出来たのは僥倖だな、
危なく撃滅を確認できなくなるところだった。」
≪第7使徒イスラフェル襲来。
分離、相互補完という驚異的な能力を持ちながらも、
反乱勢力のエヴァ3機による連携攻撃で上陸もかなわず駿河湾内にて撃滅される。≫
「思うに、この反乱勢力の方が、
特務機関ネルフより手堅く戦っているんじゃないかね?」
≪反乱勢力、浅間山火口においてネルフ自爆用のN2爆弾を処理
この際、浅間山地底深くから微弱なパターン青検出、
おそらく第8使徒サンダルフォンが撃滅されたと思われるが詳細不明。≫
「いっそ、彼らを公認して予算を付けてはどうかな?
役に立たぬ金食い虫の特務機関よりよほど役に立つようだが?」
「……………」
ここそこから忍び笑いが漏れ、
歯軋りと共に、枝の折れるような音が闇間に微かに響く。
「ふふ興味深い意見だね、
考慮に値するよ…つまり好都合だって事さ」
「あ、あのねカヲル、ここは穏便に、穏便にね」
聞きなれぬ若い女性達の声に、闇間の雑談がぴたりと止まる。
そして、それを待ちわびていたかのように余裕のある軟らかい男の声が響いた。
「あ、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか皆さん?」
「君たち何者かね?名を名乗りたまえ!」
薄暗いライトに、あまりにも無垢な故に背筋に冷たい物を感じる笑みを浮べ、
銀髪を肩で切りそろえた透き通るような白い肌の豊かな胸の少女と、
それを呆れたように諫める黒髪を腰まで伸ばした20代後半の女性、
そして、胡散臭い朗らかな笑みを浮かべるくたびれた背広の無精ひげの男が、
何時の間にか関係者以外いかなる者も入れぬよう、UNの先鋭兵士が護るはずの
会議室の中のドアの前で、その唯一の出口を塞ぐかの如くあたり前の様に佇ずむ。
「これは失礼しました。
我々は貴方達の言う、いわゆるネルフ反乱勢力ですよ」
「な、なに」
「ば、ばかな!」
「衛兵、侵入者だ!衛兵───っ!」
穏やかな男の声で明かされたその正体に、会議会場が騒然と沸き立つ、
だが、そんな混乱にもかかわらず、呼び出しに答えるはずの警備の兵はいっこうに姿を現さなかった。
「皆さんのお考えより我々、いわゆるネルフ反乱勢力は遥かに紳士的ですよ?」
ゆっくりとショックによる混乱が収まり、
静けさを取り戻した会議場の国連議員へ向って男は慇懃に芝居がかった動作でお辞儀する。
「其処のゼーレの方々のように傲慢ではありません。
己が夢想する人類の進化とか、全生命の生死与奪権とか過大なものは求めてはいません。
使徒による汚染予防の為に建造中の参、四号機の現状のままの譲渡、
および、使徒戦の為に使い潰しを前提とした住民立ち退きの上の第三新東京市の全面的な移管、
それと今後激烈化する戦線維持の為に、ささやかな額の資金を国連で負担していただきたい。」
面
を上げた男は、ニヤリと男くさい笑みを浮かべる。
そして、ゼーレのキーワードに会議へ出席していた、人類補完委員会議長でもある
キール・ローレンツを筆頭に、委員会面々の額に冷や汗が浮び、
さらに追い討ちする様に提示された、ゼーレ主導人類補完計画の
MAGI
によるシュミレーション結果にその顔色をさらに青くする羽目になるのだった。
To Be Continued...
-後書-
事件は会議室で = 踊る大捜査線 THE MOVIE の台詞のパロディ
ケッペウス司令 = 独自設定、初出”アタシ達は運命を嘲う”第1話
UN = 国連軍
正規空母オーバー・ザ・レインボウ = TV第八話 アスカ、来日より
二股の槍状の物体 = ロンギヌスの槍、何時の間にか回収されています<滝汗
S2機関 = スーパーソレノイド機関の略。葛城博士が提唱した、使徒が体内に持つ永久機関
ネルフ自爆用のN2爆弾 = N2とはNo Nuclearの頭文字をとったものと言う噂もありますが、未だ謎です(20080905時点で)
TV第拾参話 使徒、侵入、およびTV第弐拾四話 最後のシ者 でネルフ自爆用に設置されていたもの
人類補完計画 = これの実施が、劇場版”THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に”に描かれている。
MAGI
= メルキオール、バルタザール、カスパーという
3つの独立したシステムによる合議制を特徴とする、スーパーコンピュータシステム。
ううむ、幕間としか言いようがありません、
まあこのシリーズはさらりと幕を引くと言う事で<自爆
ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。
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