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注意:この話はX指定です、18歳未満の方、架空と現実を読み間違えるような方は閲覧をお避け下さい。


「くそ!なんてこった奴は無傷だぞ!」
「アイオワとネバダの40センチ砲、気化爆弾も効果有りません」

艦隊提督とオペレーター達が、C3Iで作戦チャートを、苦虫を潰したような顔で睨み付ける・・・

「太平洋艦隊と、
このオーバー・ザ・レインボーの全兵力をもってしても、奴に対しては無力だと言うのか!」
「戦略級原潜レッド・オクトーパー、N弾頭発射体制に入りました」
「全艦退避!Nの洋上爆発に備えろ・・・対電磁波、対ショック体制!」
「5・4・3・2・1・・・全弾着弾します・・・」

突然、 (はるか) か彼方の洋上で閃光がきらめく・・・
わずかな間を置いて押し寄せる風と高波で、いく隻もの駆逐艦があっけなく海の 藻屑(もくず) になり、
巨大な戦艦や空母が、まるで風に舞う木の葉のように揺さぶられる・・・

「紫の奴はどうなった!」
「電波障害から回復!奴は健在です!傷一つ付いてません!」

自分達の無力さを思い知らされた彼は、
自分の帽子を忌々しそうに床に投げつけ足で踏みにじる。

「くそっ!悪魔め!」



EVA・全てに滅びをと彼は願った
中編 Rei
by kouji.saiki 20021114





私がそこから外へ出た後、扉を破壊され土足で蹂躙された家から二発の銃声が響く・・・

黒服の男が、私の前を黒髪の全裸の少年を引きずるようにして黒い車へ向かう・・・
私はスカートのポケットから携帯電話を出して、短縮ダイヤルを掛けた。

「・・・碇司令、保護対象者を確保しました、戦自の諜報員は抵抗したため射殺・・・」
『良くやった、レイ、撤収しろ』
「・・・はい、作戦を終了、撤収します・・・」

私は携帯を仕舞い込んで、黒服達の後を車に乗り込んだ・・・

「・・・現時刻を持って作戦を終了、撤収します・・・」
「はっ!・・・」

私は車の後部座席で、黒服を間に挟んで横に乗せられた、黒髪の少年を見ながら記憶と照合する。

碇シンジ 14歳 マルドゥック機関より選出された
サードチルドレン、エヴァンゲリオン初号機専属操縦者。
度重なる(たびかさなる) 召集に応じず、戦自の諜報員と共に逃亡。

黒髪の少年はただひたすら前を見つめ、小さな声で 呟き(つぶやき) 続けている、彼は、私を見ようともしない・・・
この人が碇司令の子供・・・なんだか写真と違う感じがする・・・そう、存在感が希薄なのね・・・

   ・
   ・
   ・
   ・

昼なお暗い司令長官室、いまこの広い部屋にいるのは6人だけ、
私、碇司令、副司令、赤木博士、碇司令の子供、保安部の人・・・

保安部の人から報告の後、誰も話さない、
碇司令も三年ぶりにあった子供に何も言う事は無いのかしら・・・
あの人たちには、私と違って親子と言う絆が在るはずなのに・・・
何故この人達はいつまでもしゃべらないの・・・

「シンジ、 何故(なぜ) 呼ばれたのに来なかった」

重く垂れ込める沈黙を破るように、碇司令が口火を切った・・・でも誰も答えない・・・

「シンジ、何故答えない」

今度は威圧感を掛けて、再び碇司令が口を開く、
一人を除いて皆が、その心をザワリと削る感覚にその身を震わすほどに・・・

なぜ・・・私でさえ威圧感を感じるというのに・・・
私は彼の目を見て判った・・・彼はここに居ないの・・・
だから、誰の呼びかけも恫喝も彼には届かない・・・

「すでに奴は 強羅絶対防衛線(ごうらぜったいぼうえいせん) を越えつつある、シンジ君ばかりに 構って(かまって) おれんぞ、碇」
「わかっている、冬月」

それに気が付いた私の、無いはずの心がざわめく・・・
貴方は私と同じ・・・いえ、私以上に何も無いのね・・・

「シンジはこのまま営倉へいれろ、レイ、出撃準備だ」
「シンジ君は病院に入れたほうが良くないか、碇」

貴方の絆は・・・そう・・・碇司令とでは無いのね・・・
私の中で、ゴム・スタン弾を体に受けながら、
動けるはずも無いのに私に向かってくる、あの少女の姿がよみがえる・・・

「提案します、碇司令、シンジ君をこのまま初号機で出して見てはいかがでしょうか」
「な、何を言うのだ赤木君・・・」

あの子は・・・貴方を守ろうとしていたのね・・・貴方の絆はあの子とつながっていたの?・・・
私の体に震えが走る・・・私が・・・私が、貴方の絆を切ったの・・・この私が・・・・

「ショック療法です、リスクは大きいですが、うまく行けば彼は正気に戻ります、
もともと初号機の暴走はシナリオに織り込み済みです、少なくとも使徒の殲滅は達成出来ます」

なぜか目頭が熱くなる・・・私はどうしたの・・・何故こんなに、心が凍て付くように冷たいの・・・

「レイ、どうしたの・・・」
「・・・なにか、赤木博士・・・」

気が付くと碇司令の子供以外の人が、みんな私の方を見つめていた・・・
赤木博士が私を何か場違いな物を発見したように見つめる・・・

「あなた、泣いてるわよ・・・」
「・・・問題ありません・・・」

私は、何時もの様に感情のこもらない声で答える・・・
でも、私の頬はなぜか涙でぬれていた・・・

   ・
   ・
   ・
   ・

暗闇の中で、光に浮かび上がるような私の白い全裸の肢体・・・
横たわり身動きしない私を、碇司令が犯す・・・

「くぅうう・・・あっ!!」

私は苦痛と少しの快楽に呻き声を上げる・・・
何歳になっても成熟しきれない私の体には、碇司令の行為はほとんど苦痛でしか無い。

「ひあっ!!」

碇司令の舌が、私のまだ成長し切れない白い乳房をなぶる・・・

「ん・・・あっ・・・」

最近やっと胸をいじられると、私は気持ちよくなってきた・・・

「はあっ、ああっ、ああーーっ!」

でも、この時間、この行為はいやだ・・・
私を蹂躙しているこの男は、私を見ていない・・・

「ん・・・んんっ!!」

碇司令が私の唇を奪い、舌を絡ませる・・・
この人は 何故(なぜ) 、私を見てくれないの・・・

「ひっ・・・!!」

再び碇司令の物が 淫肉(いんにく) を貫き、私の中へ (ぼっ) する・・・
内臓を 抉られる(えぐられる) 様な苦痛が、私を 苛んだ(さいなんだ) ・・・

「んぐっ!!」

太い肉の塊が私の柔肉を、ずるりと引きずり出し、一呼吸置いて再び押し込む・・・
その度に、私の喉の奥から呻き声が漏れる・・・

「くふっ・・・・あくっ!!」

何故、貴方はこんな事をするの・・・
私が何か悪い事をしたから?・・・私の存在その物が、いけない事なの・・・

「ユ!・・・!・・・」

碇司令が、私の知らない名前を叫びながら、自分の欲望を私の中へと吐き出す・・・
私にとっては一方的な陵辱・・・
血を流さない私のあそこから、無駄に流された碇司令の遺伝情報が、シーツにシミを作る・・・

『プラグ固定完了、第一次接続開始!』
『エントリープラグ注水』

私の意識が過去から現実に戻る・・・

『主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート、シナプス挿入』
『A−10神経接続異常なし、初期コンタクト全て問題無し』

私は発令所の片隅で、プラグスーツを着て両ひざを抱いて床に座る・・・
私の周りでは忙しそうに立ち回る私が知らない人々・・・

『全ハーモニクスクリアー、シンクロ率31.3%!!』

スクリーンへ映る生気の無い彼の黒い瞳には、虚ろな虚無が広がる・・・
その虚無を彼に与えてしまったのは私・・・彼の絆を切ったのは私の両の手・・・

『エヴァンゲリオン初号機発進準備』
『第一ロックボルト外せ!』

私の白い手は、目に見えない赤い血で染まったまま・・・
この血はどんなに洗っても落ちない・・・それは邪悪な私の心に付いた血だから・・・

『解除、続いてアンビリカルブリッジ移動!』
『第一、第二拘束具除去、第3第4拘束具除去』

碇司令の子供は、赤木博士の進言で初号機に乗せられ、
いま敵の前に生贄の子羊として放り出されようとしている・・・

『1番から15番までの安全装置解除。』
『内部電源充電完了、外部コンセント異常なし』

意味も判らず上に従う、私と同じ愚かな人たち・・・
知っていて、なおもそれを助ける愚かな老人・・・

『エヴァンゲリオン初号機、射出口へ。』
『進路クリアー、オールグリーン!発進準備完了。』

触れ合うことを恐れる 小心者(しょうしんもの) の大人・・・
妄執(ぼうしゅう) にとらわれ復讐のみに生きる、血塗られた母性・・・

「・・発進!」

私の心を、読んだ時には意味が解からなかった言葉がよぎる・・・
”祈りをささげよ、やがて裁きの日は 速やか(すみやか) に貴方の元を訪れる”

『最終安全装置解除!エヴァンゲリオン初号機リフト・オフ!!』

生贄の子羊が狼の前に放り出された・・・
彼は動かない・・・いえ、動けないのね・・・そう、あそこにいる彼は抜け殻だから・・・

「エヴァ動きません、使徒が初号機の腕を・・・」

使徒と呼ばれる敵が、エヴァの腕をへし折り頭部を鷲掴みにする・・・
それを見る赤木博士の顔に、猫が鼠をいたぶる様な笑みが浮かぶ・・・

「エヴァ頭部、敵光学兵器が貫きました!」
「パイロット、反応在りません」

私は悲しくなる・・・私には、祈りを捧げるべき神はいない・・・
貴方達は彼に何を期待しているの・・・私のせいで、心が死んでしまった彼に・・・

「初号機完全に沈黙」
「始まるわ・・・・」

赤木博士の低い呟き・・・何が始まるの・・・赤木博士・・・
私は 俯き(うつむき) 、組んだ両腕に押し付けていた顔を上げる・・・
同時に魂を震え上がらせるような唸り声が、発令所の中へ響き渡った・・・

「エヴァ再起動!」
「シンクロ率急上昇・・・220・・・290・・・330」

私は思わず両の手で肩を抱く・・・体が酷く寒い、自分でも振るえているのが解かる・・・
この、心を凍らすような 雄叫び(おたけび) は何?・・・彼に何が起こってるの・・・

「マヤ!シンクロ率を下げて!急いで!」
「だめです先輩!エヴァ、全ての制御を受け付けません!

赤木博士があわてている・・・そう、これは貴方の予想外の出来事なのね・・・
私は、だらしなく目の前を塞ぐ蒼い髪越しにスクリーンを見つめる・・・

「シンクロ率400%!・・・エントリープラグ内映像回復します!」
「シンジ君!・・・リツコこれはどういうことよ!」

エントリープラグ内に彼の姿は無い・・・彼はどこへ行ったの・・・
作戦部長が赤木博士を睨み付ける・・・葛城一尉、貴方も彼を載せるのに承知したのに・・・
なぜ赤木博士を責めるの・・・良心の 呵責(かしゃく) ?それとも自分の復讐の駒が減ったから?・・・

「シンジ!」
「こ、これは・・・まずいぞ、碇」

碇司令、副司令も呆然と言葉を吐く・・・そう、貴方達にとっても計算外なのね・・・
初号機が再び吼える・・・その動きは目にも止まらぬ速さ・・・何がおきているの・・・

「アンビリカルケーブル断線!エヴァ内臓電源に切り替わりました!」
「敵ATフィールドを展開!初号機もATフィールドを展開、瞬殺しました」

再び魂を揺さぶる唸り・・・何か、人で無い物が目覚めたのね・・・

「エヴァ、敵性体を殲滅・・・いえ、敵を引きちぎって・・・
うぐっ・・・食ってる・・・うぅぅぅぅっ・・・げぇっ」
「マヤ!しっかりしなさい、内臓電源は後何秒?」

エヴァが自らずたずたにした使徒の肉を食らう・・・
耐え切れずに伊吹二尉が吐いた・・・私も気分が悪い・・肉は嫌い・・・

「ご・・ごめんなさい先輩!エヴァ内臓電源・・・電源!カウントマイナス!」
「電源無しで勝手に動いてるの・・・まさか、使徒のS2機関を取り込んで!」

呆然(ぼうぜん) とたたずむ赤木博士・・・そう、貴方にはもう手の打ち (よう) が無いのね・・・
私は初号機の装甲がたわみ一部のパーツが 剥奪(はくだつ) していくのを見た、
エヴァが、初号機が人の手を離れて行く・・・
貴方は私と違って、もう誰の人形でも無いのね・・・私はあれがうらやましい・・・
私と違って、誰の手も及ばぬ自由と言う翼を手に入れたから・・・

「リツコ、電源無しでエヴァが動くって、どういうことなのよ!」
「暴走してるのよ、私達には止めようが無いわ・・・
S2機関を取り込んだエヴァ、アダムのコピー、あれはすでに使徒となんら変わりないわ」

うわ言の様に呟く赤木博士・・・その彼女を葛城一尉が殴り倒す・・・
床に倒れる赤木博士、葛城一尉の (こぶし) が振るえる・・・貴方は、自分には責任は無いと言うの一尉・・・

「エヴァ初号機を使徒として殲滅します、よろしいですね碇司令」
「くうっ!葛城一尉・・・」
「初号機にこだわるな、碇!・・・構わん!殲滅したまえ葛城一尉!」

葛城一尉が断定して、エヴァ初号機を切って捨てる・・・何故そんなに簡単に、物事を切り捨てられるの・・・
全ては復讐の為、何時かあなた自身が誰かに見放された時、貴方はそれに納得できるの・・・

「レイ、ベークライトを爆破して除去、零号機で出て、目標はエヴァ初号機の殲滅、いいかしら」
「・・・はい了解しました葛城一尉、零号機で出撃、エヴァ初号機を殲滅します・・・」

葛城一尉、貴方はそこで命令するだけで事が進むと思ってるのね・・・
私は人形・・・貴方達の思惑で踊る人形・・・命令を拒絶する権利は誰も与えてくれなかった・・・
そして今日、私が過ちの果てに・・・絆を切ってしまった少年は、消えてしまった・・・
きっと、次ぎは私の番・・・何の根拠も無いけど・・・
神とやらがいるなら、こんな私を長くほって置くはずはないわ・・・

   ・
   ・
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   ・

ケージが揺れる・・・私は、自分を包むLCLが微かに波打つのを感じた・・・
指向性爆薬で無理やり剥ぎ取られた、特殊ベークライトがそこらじゅうに散らばっている・・・

『22枚在るうちの、第1から第19までの装甲が大破』
『レイ、まだなの!』

金切り声を上げる葛城一尉、彼女の声が気に障る・・・
前は暴走した零号機だが、今回は無事に起動した・・・
私は自分の思うとおりに動く機体を、ゆっくりとウオーミングアップさせる・・
左足の部分が少し引きつる様に痛い・・・爆破でエヴァを痛めたのかもしれない・・・

『もう間に合わないわ、零号機はジオフロント内に射出するわよ、レイ!』
「・・・はい、葛城一尉・・・」

私の乗った零号機が実験棟からリニアカタパルトへ移動を開始する。
LCLに浸かった私は、消え去る運命を受け入れたように心静かだった・・・

『レイ、試作前期型のパレットライフルとポジトロンライフルを出すわ使って見て』
「・・・了解、両試作兵器を使います、赤木博士・・・」

赤木博士は、試作前期型と言う言葉を、
密造拳銃なみでいつ問題を起こしてもおかしくないと言う意味で使う。
本来は実戦で使うような物では無いのだ、
これらの使用場所は、対爆実験室のテストベッドこそがふさわしい。

『零号機、ジオフロント内へ射出』
『最終安全装置解除!エヴァ零号機リフト・オフ!』

ジオフロントの中へ出た私は、兵装コンテナからパレットライフルとポジトロンライフルを取り出し構えた。
私の視線の向こう、天井都市の方向で十字の爆発が広がる・・・
彼だ、使徒とされたエヴァ初号機を、
私は無意識に自分の手で絆を壊してしまった少年とダブらせていた・・・

『エヴァ零号機ポジトロンライフルからパレットライフルに射撃切り替えました』
『零号機ポジトロンライフル 投擲(とうてき) 、ライフル過負荷で爆発!』

私は彼に無数の射撃を加える、だが一筋の傷も付けられない・・・
発令所は騒いでるけど、驚く事は無い、予想出来たことだ・・・

私はパレットライフルを休むことなく撃ち続ける、
劣化ウラン弾の着弾で一瞬、彼の姿が視界から消える・・・
目の前に光る 双眸(そうぼう) が現れたと思った瞬間、私の零号機は喉元をつかまれ、地面に叩き付けられる・・・

叩き付けられたショックで、アンビリカルケーブルが断線し内臓電源に切り替わる・・・
各種遠隔サーボ断絶、発令所との通信も切れ、私はふってわいたような静けさに包まれた・・・
サーボ、通信系はエヴァの背面に装備されている・・・
そこがごっそりやられたと言う事は、エントリープラグが潰れなかったのが奇跡のようだ・・・
左手で喉を押さえながら、初号機の腕が何のためらいも無く零号機の左手を引きちぎる・・・

「ひいいいっ!・・・ぎぁっ!」

私の叫びがプラグの中に響く、
エヴァの左肩から血が 噴出す(ふきだす) 、思わず私の右手は左肩を押さえようとする・・・
初号機の腕が零号機の右腕を捕らえ、回すようにひねり上げて行く、関節が音をたたて砕けた・・・

「いやあぁぁぁぁぁっ!・・・ぐがっ!」

エヴァからのフィードバッグが私にダメージを追わせる、私は思わず吐いた・・・
これが罪の罰・・・私へ与えられる罪の 報い(むくい) ・・・私の両腕から、狂うほどの痛みが押し寄せる・・・

「ひっ・・・ひあっ・・・ひいいっ・・・」

私は硬く眼を閉じ生まれて始めて苦痛で泣いていた・・・そんな私の左太腿に重さがかかる・・・
背筋を冷たい汗が滴った・・・目を上げると初号機が、私のエヴァの左太腿に、足を乗せ体重を掛けた・・・

「や・・・やめ!・・・ひああぁぁぁっ・・・」

音を立てて、私のエヴァの左太腿が砕ける・・・私は叫びのたうつ・・・
あの、少年を守ろうとした少女のように・・・エヴァの両腕と左足から伝えられる痛みは私への報い?・・・

「ぐぁっ・・ぎはっ・・ひぎぃぃっ・・・」

動きが取れなくなった私の零号機の内臓を、彼が腹を割いて引きずり出し 貪る(むさぼる) ・・・
私の物で無い内臓を、掻き回され貪られる感触に再び私はLCLの中へ吐いた・・・

「いやっ・・・くあっ・・・やめ・・・ぎひっ・・・あうっ・・・」

でも、負けるわけには行かない・・・私は苦痛に翻弄されつつも、体を捻り座席の後ろへ顔を向ける・・・
(あご) でボタンを押しパネルを開ける、私の蒼い髪の毛が、冷や汗でじっとり (ひたい) 纏わり(まとわり) 着く・・・

「・・・さようなら・・・」

私は誰へともなく別れの言葉を呟く・・・
あるいは、初号機に取り込まれてしまったあの少年へかもしれない・・・
私は、赤い瞳を閉じてレバーを口にくわえて引く・・・
インテリアの背後のドライブが、 MODE:D(自爆モード) で回転を始める・・・

これで無に帰れる・・・私は生まれて始めて、嬉しくて泣いた・・・
これで私は、罪から解き放たれるかもしれない・・・
私の閉じたまぶたに光が溢れる・・・やっと、この苦痛からも・・・・

   ・
   ・
   ・
   ・

私はセントラルドグマのLCL水槽の中で目覚めた・・・そう、あの私は死んでしまったのね・・・
私の魂が、両手をもがれ、足を 踏み砕かれ(ふみくだかれ) 、内蔵をむさぼられた記憶に悲鳴を上げる・・・
私は心の痛みに、思わず胎児の様に四脚を引き寄せる・・・私の目から涙が漏れる・・・
それを見守る多くの赤い瞳・・・一緒にLCLの中を漂う私達が居る・・・
私を珍しい物でも見るように、好奇の見つめる無数の赤い眼たち・・・

LCL越しに微かな振動がここまで伝わってくる・・・感じるでしょう死神が近づいて来るのが・・・
駄目だったのね・・・もう、あれは誰にも止められない・・・私の足掻きも無駄に終わったのね・・・
何も知らない無垢な私達・・・ごめんね、私達・・・貴方達もきっと今日、無に帰る・・・

『人工知能により 自律自爆(じりつじばく) が決議されました、所員は速やかに退避して下さい』

聞こえるでしょう・・・愚かな人たちの、最後まで愚かな足掻きが・・・
死が近づいてくる・・・でも貴方達に罪は無い恐れも無い・・・罪は全て私のもの・・・
何故だろう私の体が振るえてる・・・そう、怖いのね無に帰るのが・・・私の心を凍らせる、これが恐怖・・・
・・・恐怖・・・それは、人形だった私が得た唯一つの感情・・・
恐怖に振るえながら、訪れる死を待つのが私への罪・・・

突然私の回りの世界が灼熱の光に包まれる・・・
私の意識が消え入る寸前・・・
あの少年の姿が浮かぶ、漆黒の髪、引き込まれるような虚ろな目、中性的な顔立ち・・・
ごめんなさい・・・私のせいで絆を失った貴方・・・



To Be Continued...



-後書-




ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。


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