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EVA・きっと沢山の冴えたやり方

・第十話 鳴らない、電話・一人目のレイ   by saiki 20021119




私は、いまだ不安を抱えている・・・今晩、私に出来る妹と、どう付き合えば良いのか・・・

青いライトに照らされた私達四人は、零号機のサルベージの打ち合わせをしていた・・・
私、碇君、碇司令、副司令・・・人払いされた実験場はすごく寂しい・・・

傍らには私の零号機が、一月前とおなじ姿で拳で壁を貫いている・・・
私を傷つけた起動事故の時使われた、下半身を固めるベークライトが痛々しく感じた・・・

「死亡直後にコアと同化されたせいで、零号機の中で補完された最初の綾波と、
二人目の綾波に魂が分割されてしまった、不完全なサルベージが行われた
惣流・キョウコ・ツェッペリンさんみたいに・・・」
「・・・それで私の感情が希薄になったり、小さな時の記憶が無いのね・・・」

私達三人は碇君の話に耳を傾ける・・・
そう、2人目、3人目の記憶も持ってる私にも一人目の自分の記憶が朧にしか無い・・・
アルミサエル襲来の時、零号機自爆と一緒に、
エヴァのコアの中に居た最初の私の記憶も、共に無に帰ったのだろうか?

「もちろん、これは僕の推論だけどね・・・LCLの中でも知ってる人が捉まらなかったから」
「確かに一人目のレイ君の死体の処理に困って、エヴァのコアに同化させたのは私達だが、
あの時、ナオコ君とレイの間に何が有ったのか、我々にも良くわからないのだよ、シンジ君」

碇君に副司令が当時の状況をかいつまんで説明する・・・
可哀そうな最初の私・・・可哀そう・・・そう、私には彼女の事が自分だと思えない・・・
記憶が無いから?・・・でも、間違い無く同じ私のはずなのだ・・・私は、混乱している・・・
最初の私・・・ナオコさんの間で何があったのだろう・・・

「本来ならサルベージだけですむけど、魂の絶対量が足りない最初の綾波の場合は、
日常生活に支障をきたすほど感情が希薄かもしれない、だから少し注ぎ足してやる必要が在るんだ」
「シンジ、それをどこから調達する・・・」

碇司令が怪訝そうに、碇君に尋ねる・・・
家を出る前に碇君が私にも説明してくれた・・・そして、その解決方法も・・・

「この場合はリリスかプラントの綾波達・・・
でもリリスには、使徒を呼び寄せてもらわないといけないから・・・
父さん、ドグマのダミープラントの綾波達を使うよ・・・」
「レイ・・・」
「良いのか・・・レイ君・・・」

碇君が辛そうにちょっと口ごもる・・・ありがとう碇君・・・私達の事を思ってくれて・・・
碇司令と副司令も、驚いた目で私を見る・・・ごめんなさいプラントの私達・・・
私の行為は、前の碇司令と変わらない罪深い物・・・でも私は決めたの、悲しまないって・・・

「・・・はい・・・問題ありません・・・」

私は自分の声が、昔の私のように抑揚の無い声だと気が付いた・・・
碇君が私を心配そうに見つめる・・・私は無理やり、ちょっと引きつった笑顔でそれに答える・・・
ありがとう碇君・・・でも、私は大丈夫・・・きっと、ちゃんとやってみせるわ・・・

「父さん、ATフィールドのセンサーは切ってあるよね・・・」
「ああ、3機ともメンテナンスだ朝までは動かん、この辺り一帯のモニターも切ってある」

私を思いやってか、碇君が話題を代えてくれた・・・ありがとう碇君・・・
私は、これから行う行為にゆれる心をゆっくりと静める・・・私は、きっと大丈夫・・・

「僕はベークライトを片付けるから、綾波はプラントの方を頼むよ・・・」
「・・・うん、碇君、行って来る・・・」

碇君が見つめるだけで冷却用LCL水路へのドアを開ける。
そして、直径1メーターほどのATフィールドを発生させ、
ベークライトを抉ると1センチまで縮小、ベクトルを合わせて転がす・・・

無数の茶色の球が水路へのドアをくぐって水柱を上げる・・・
碇司令と副司令も、呆気に取られていた・・・確かに見てて飽きないかもしれない・・・

私は、碇君達を残してドグマのダミープラントへ行くため、実験室を出てエレベーターに向かう・・・
エレベーターを待っていると、碇司令と副司令が足早に現れた・・・
私へ、副司令がすまなそうに口を開く・・・

「レイ君、一緒に行っても構わないだろうか?」
「・・・はい・・・」

私はちょっと考えて、答えを口にした・・・
そう、私には、お義父様に聞かなければいけない事が在る・・・

エレベーターが来て私達は無言で乗りこむ・・・
IDカードを挿し込んで、行き先にLCLプラントを指定する・・・
沈黙が重くたちこめる・・・私を含めて皆口を開かない・・・階数表示だけが音を刻む・・・

口が重い・・・私はこれを、お義父様に聞いて見て良いのだろうか・・・
聞けばお義父様は、私を嫌うのでは無いだろうか・・・そんな思いが、自分の心を掻きみだす・・・

「レイ君、シンジ君はATフィールドをあんなに風に使って疲れないのか?」
「・・・ミトコンドリアサイズのマイクロS機関からエネルギーを取り出しているので、
碇君が感じるのはわずかな精神的な疲れだけです、 第11使徒(イロウル) も同じ物を使っていました・・・」

副司令が静けさを紛らわそうとしてか、私に声を掛ける・・・その心遣いが少しだけ心を温かくする・・・
碇司令も私の答えに興味が在るようだ、黙って耳を傾ける・・・私は慎重に言葉を選ぶ・・・

「・・・私は長い間LCLの赤い海の中に居て、10年ぐらい前に碇君にサルベージされました・・・
だから直接見たわけでは有りません・・・ですが、私達がいた場所の周辺にふもとを残して抉られた山や
クレーターの風化しかけた後が沢山あり、何故そうなったのか碇君に聞いた事が在ります・・・」
「まさか・・・シンジがやったのか?」

碇司令と副司令が呆然としている・・・そう、その時はアスカも私も信じられなかった・・・

「・・・はい、寂しそうに4百年ぐらい前に怒りに任せてやったと・・・
いまの碇君にそこまでの力は無いと思います・・・
でも、ベークライトを片付けるぐらいで疲れるとも思いません・・・」

エレベーターが止まる・・・私達はそのままLCLプラントの入り口へ向かう・・・
歩きながらお義父様が・・・いいにくそうに重い口を開く・・・

「レ・・・レイ、シンジに差し入れは美味かったと伝えてくれるか」
「碇、本人が来ているんだ、直接言えば良いだろうが」
「う・・うむ冬月・・だがな・・・」

私は、少しだけ心が軽くなる・・・碇君、よかった・・・お父様が美味しかったって・・・

「すまんなレイ君・・・君のお義父様はこう言う口下手な奴なんだ・・・助けてやってやってくれんか」
「・・・わかりました、お義父様・・・碇君に必ず伝えます・・・
碇君も、時々お義父様が夕食によっていただけると・・・きっと喜ぶと思います・・・」
「・・・すまん、レイ・・・」

プラントの入り口が見えたので、碇君の真似をしてATフィールドで、
ドアのリレーを動かして開ける・・・これは、IDを忘れた時すごく便利な気がする・・・

そして、ターミナルドグマへ下りるリニアエレベーターが動き出す・・・
私は思い切って振り返り、お義父様の目を見つめて問いかけた・・・

「・・・お義父様、貴方は碇君が生まれた時、嬉しかったですか?・・・」

お義父様は、突然の私の問いに驚き・・・やがて、顔を伏せた・・・

「・・・嬉しかったと言っても、誰も信じてくれないだろうな・・・」

お義父様は、呟くように語り始めた・・・

「・・・私が不甲斐無いために・・・レイとシンジには悪い事をしたと思っている・・・
もともとは、ダミーシステム、それがだめな場合はダミープラグで事が済む筈だった・・・
レイに戦わせる気も、ここへシンジを呼ぶつもりも無かったのだが・・・」

前の時、お義父様は何も言ってくれなかった・・・
もし、いまの言葉を言ってくれる勇気があったら、きっと私も碇君も違う運命をたどっていただろうに・・・
でもそれは、私の求める答えでは無い・・・私は、少し意味を代えて問いかけを繰り返す・・・

「・・・お義父様は、碇君の子供が出来るとうれしいですか?・・・」
「う・・・うむ・・・」

お義父様が唸る・・・また、私の聞き方が悪かったのだろうか?・・・

「レイ君・・・自分の子供より孫の方が可愛い物だ」
「・・・ごめんなさい・・・私には、理解出来ません・・・」

副司令がお義父様に代わって答えてくれた・・・
でも、孫?私は子供の事に付いて聞いているのに・・・

「自分の子供はたしかに可愛いが、その将来に対して責任がある、
だが子供の子供、つまり孫に対してはただ純粋に可愛いがる事が出来る」
「・・・やはり、可愛いのですね・・・」

私は孫が、やはり子供の事を表す事を知った・・・

「うむ、たいていの子は自分で子供を作った後、自分の親が孫バカになったと驚くものだ」
「・・・よ・・良くわかりません・・・」

だんだん質問から、副司令の答えがずれて来ているように感じる・・・
私のボブギャラリーが少ない為だろうか・・・私は首をかしげた・・・

「こればかりは、レイ君がその立場にならんとわからんかも知れんな・・・」
「・・・碇君は、半ば使徒の私達に子供が出来ないのを悲しんでいます・・・
私は何故、碇君がそれを悲しむのか解りません・・・私が解らないのを知ると
碇君はもっと悲しくなるようです・・・私は碇君を悲しませたく無い・・・
私は・・・私は、どうしたら良いのでしょう・・・」

私は、思わす涙がこみ上げ、顔を俯け蒼い髪が目を隠す・・・私の涙がエレベーターの床に滴った・・・
お義父様が、碇君が良くやるように肩を抱き頭を不器用に撫ぜてくれる・・・
私は、搾り出すようにその時の思いを口にした・・・

「・・・もし・・・私達に子供が出来たら・・・祝福していただけますか・・・」

私の言葉は・・・どんどん小さくなり最後はかすれかける・・・

「うむ、ぜ、ぜひとも祝福させてもらうよ・・・碇、ちゃんと答えろ」
「あ、ああ・・・わ、私も・・・そうなると嬉しい・・・」
「・・・あ、ありがとう・・・ございます・・・

私達は、ぎこちない言葉をお互いかわす・・・でも、それが何故かとても暖かい・・・
その時、三人とも何故か頬を薄っすらと紅く染め、目を合わさない様に俯いていた・・・

   ・
   ・
   ・

中央の試験管のような管、頭上の脳を思わせる機械の塊、その周りを囲む水槽・・・
ダミープラグのプラント・・・水槽の中の私達が赤い眼を向け私へ微笑む・・・お帰りなさいと・・・
私はこの沢山の私達の中の一人だったのだ・・・魂が宿るまで・・・

私は碇司令と副司令を残し、小さなタラップを上がり水槽の上に立つ・・・
そして、水槽のハッチを開け、個を保つATフィールドを少し下げると、彼女達に呼びかける・・・
赤木博士は、彼女達を魂の無いただの入れ物だと言った・・・
でも、魂の無い物に個を保つATフィールドは張れない、僅かな間に体がLCLになって崩れてしまう・・・
だから、彼女達にも魂は微かに存在する、そう・・・瞬く様に微かな魂たち・・・

「・・・お願い、私達の妹に魂を与えて上げて欲しいの・・・」

私の呼びかけを聞いた、彼女達の紅い目が心なしか輝く・・・そう、彼女達の望みは無に帰る事・・・
人との触れ合いの暖かさを知らないから、彼女達は無に憧れ引かれる・・・
ごめんなさい・・・かって私であり・・・私が代わりに、そうで在ったかもしれない彼女達・・・

彼女達は笑顔で水槽から上がり、私に微笑んで魂を託しLCLへ還っていく・・・
私は、なぜか悲しい・・・LCLへ還る彼女達の笑顔が心を冷たくする・・・
私の涙が、LCLの水槽に戻る彼女達の名残と共にオレンジ色の波紋を描く・・・

「・・ゴメンね・・・みんな・・・ゴメンね・・・」

私は呟き続ける・・・次々とLCLへ還る彼女達・・・後、数人を残すところで私は手を止める・・・
これから、私はもっと残酷な事を、残った彼女達に頼まなければいけない・・・

「・・・ごめんなさい、貴方達には残って欲しいの・・・」

残った彼女達の顔が、失望に染まる・・・無に還り損ねた・・・彼女達の顔が、私をそう責める・・・
私は頭を水槽の淵に擦り付けるようにして謝る・・・私は彼女達に、残酷な頼みごとをしている・・・

「・・・私や友達の、スペアボディとして残って欲しいの・・・でも、貴方達の魂はちゃんと私が迎えるから・・・」

私の最後の言葉に残った彼女達は微笑む・・・ごめんなさい、貴方達・・・
私は、心の中でそれを繰り返すしか、術を知らない・・・私は、水槽のハッチを締めるとタラップを下りる・・・
LCLが満たされた水槽の中では、5人の私達が私を羨望の目で見送る・・・
私の手の中で逝った彼女達が残したのは、小さく寂しい淡い蒼い光・・・魂の欠片・・・

「・・・終わりました・・・」

私の頬を伝う涙を見て碇司令、いえ、お義父様がハンカチを渡してくれる・・・
この涙はホルモンバランスのせい・・・それとも私の依存症が原因・・・でも泣いてはだめ・・・
私が悲しむと碇君も悲しむ、だから私は泣いてはいけない・・・でも、もう少しここで泣いてから行こう・・・
碇君の前で泣かないように、何時も笑っていられるように・・・私はもっと強くなりたい・・・

   ・
   ・
   ・

碇君は、自走タラップの上で私達を待っていてくれた・・・

「お帰り・・・綾波」
「・・・ただいま・・・碇君・・・」

ターミナルドグマから帰った私達を、その太陽のような笑顔で迎えてくれた・・・
そして碇君は私を力強く抱きしめる・・・そう、彼は解ってくれてる・・・
私がどんなに悲しんでるかを・・・でも、無理をしても、私は笑うの、碇君のために・・・

「準備は出来てるよ・・・」
「・・・行きましょう・・・碇君・・・」

碇君は私の手を引いて、タラップの上に上げる・・・
碇司令と副司令も乗ったのを確認して、碇君は、自走タラップのリモコンを動かす・・・

「少しゆれるから、手すりにつかまって・・・」

私達が乗ったタラップは、腰を床に付け、
足を投げ出すように座り込んだ、零号機の胸の当たりに移動する・・・

碇君が身を乗り出して、零号機の胸の装甲板の継ぎ目を指先でなぞる・・・
装甲板が指先の動きどうりに切断され下に落ちる・・・
私達は、思いのほか大きな音に身をちじこませた・・・
開いた穴には、零号機のコアが血のように赤い色で鈍く輝やく・・・
碇君はタラップを開いた穴に近づけた・・・

「僕が再構成させながらサルベージするから、綾波は魂を補完して・・・
それと、殺された時のイメージがフラッシュバックして暴れるかもしれない、
その時は、父さん達も押さえるのを手伝って・・・」
「・・・わかったわ碇君・・・」
「うむ・・・」
「そ・・・それは厄介だな・・・」

私は手の中へ、大事そうに私達から回収した魂の欠片を実体化させる・・・
その儚い蒼い光を確認してから、碇君はコアの表面に手を這わす・・・コアが薄く光る・・・
硬いはずのコアの表面が水面のように揺れ・・・中へ手を差し伸べる碇君・・・
再び引き戻されたその手には、白く小さな手・・・それを見た私は、少し身構える・・・
バシャッと水の跳ねるような音と共に、蒼い髪の幼女の全裸の体がタラップの床に横たわる・・・

「綾波!」

私は、幼女の個体を維持するATフィールドを部分的に中和して、魂の欠片を近づける・・・
儚い蒼い光を放つ破片は、同じ魂を求めて引き合い・・・幼女の中へ消えた・・・

「ひいいいっやぁぁぁ・・・いやっ!おばちゃん!殺さないで!いあゃぁぁぁっ・・・」

幼女が大声を上げ暴れ始める・・・碇君と碇司令、副司令が三人がかりで押さえつける、
手を離すとタラップの下は数十メートルある、落ちると命が無い・・・

「だいじょうぶ・・・もう大丈夫だからね・・・」
「・・・私・・・おねえちゃんが・・・付いてるから・・・」

碇君が笑いかけ、私は幼女の頭を撫ぜ続け安心させようと優しく語りかけた・・・
泣き続ける幼女が、ゆっくりと落ち着きを取り戻した・・・三人が押さえつける手を緩める・・・
私は、幼女を胸に抱いてあやす・・・自分より小さくて弱い者が、私を頼る・・・
切なくて、私の心が引き絞られるように痛いけど・・・この感じいやじゃない・・・
なぜかこの手に抱いた者を守って上げたい・・・いとおしい・・・そう愛おしいのね・・・

「・・・何が・・・あったの・・・」
「・・・あのね・・・迷ったから・・・おばちゃんに・・・所長室どこって・・・聞いたら・・・」

私の胸に顔をうずめ、しゃくり上げながら、幼女は切れ切れに語る・・・
私は幼女の、少しぬれて冷たく振るえる体を、バスタオルで拭いてやりながら、頭を撫ぜ続けた・・・

「急に動きが止まって何か呟いて・・・私の・・・私の首に手を回して・・・」
「大丈夫・・・怖いおばちゃんはもう居ないから・・・私が守ってあげるから・・・」

碇司令と副司令が、幼女の言葉を聞いて顔を見合わせる・・・そう、ナオコさんはもう居ない・・・
貴方の首を締めた後、飛び降り自殺をしたから・・・でも、この子にそれを知らせてはいけない・・・

   ・
   ・
   ・

あの後、あの子へ、ジオフロントへの途中で買い揃えた服を着せ、
碇君が携帯できる医療機器を使って、出来る限りの診察をした・・・
診察結果は問題なし、精神状態もあんな事の後コアの中へ、
10年もほって置かれた割には、問題ないので一同胸を撫で下ろした・・・

そして、いまは車で送ってもらって私達の家にいる・・・
さっきまで、私達と一緒に遅い晩飯を取っていたわ・・・

メニューは、時間が無かったのでソーセージとサラダ・・・
碇君が本当はお弁当に入れるのが正しいんだけど、今日は特別にと断わって、
蛸さん仕様のウインナーと、デザートにウサギ仕様の林檎を出してくれて・・・

あの子は喜んで、驚くような食欲で食べたの・・・
私も、あれぐらい食べれれば、アスカみたいに綺麗になれるのかな・・・

「綾波・・・お風呂に一緒に入ってあげてくれる?・・・」
「・・・ええ・・碇君・・・」
「おねーちゃんも綾波っていうの、私と同じだね」

少し私になついてくれたのか、ニッコリと笑って幼女が私に言った・・・
私と碇君は困った顔を見合わせる・・・そう、この子も私と同じ綾波レイなのだ・・・

「・・・レイちゃん、ごめんなさい貴方の名前は私がもらったの・・・私も綾波レイって言うの・・・」
「お、お姉ちゃんが私の名前を取っちゃったの・・・ひどいよ・・・おねえちゃん・・・」

幼女が、泣き出しそうな悲しい顔で私を見上げる・・・助けて、碇君・・・

「大丈夫だよレイちゃん、お姉ちゃんから新しく良い名前をもらえばいいんだから」
「お姉ちゃんから、私に、新しい名前をもらう・・・」
「・・・うん、がんばって良い名前を贈らせてもらうわ・・・」

助けてくれてありがとう碇君、でも、新しい名前なんてすぐには・・・アスカ、私どうしたら良いの・・・

「・・あのね、お姉ちゃんのとても仲の良い友達に、アスカって子が居るの・・・
その子の名前から、二文字もらって”アイカ”って名はどうかしら・・・」
「・・・アイカ・・・」
「うん、良い名前だね漢字で書くと愛される香りかな?」

私が咄嗟に思いついた名前を、碇君も援護射撃してくれる・・・
ごめんなさい・・・他に思いつかなかったの・・・

「良かったねアイカちゃん、君にはいま名付け親が出来たんだ」
「お姉ちゃんが私の名付け親・・・うん解った、いまから私はアイカなんだね」
「・・・ありがとうアイカちゃん・・・」

ありがとう碇君・・・今日、私は妹が出来た、そして名付けの親とはいえ親にもなれた・・・
アイカ・・・名前を呼ぶと心に愛おしさが溢れる・・・この子は私の愛おしい妹・・・
私はアイカを抱き締めて泣いていた・・・なんだか私は変だ・・・きょうは泣いてばかりいる・・・

その後、私とアイカは一緒にお風呂に入って、お互い洗いっこをした・・・

今晩は、私も碇君もパジャマを着ている・・・碇君と一つになれないのがちょっと不満だけど・・・
私達の間にアイカが寝てるから・・・疲れて先に寝るアイカが私の胸にすがり付いて来る・・・
ちょっとくすぐたいけど、いやじゃない・・・むしろ愛おしさが胸にこみ上げてくる・・・

もし、私と碇君の間に子供が出来たらこんな感じなのだろうか・・・
愛おしい者に囲まれて寝る自分を想像すると・・・胸が心地よさできゅっと締め付けられるようだ・・・

「・・・碇君・・・子供が生まれるとこんな感じなのかしら・・・」
「どんな感じなの、綾波?」

私は一緒にベットの中にいる、碇君に微笑む・・・

「・・・私はアイカを守って上げたい・・・そして愛しい・・・」
「僕達に子供が生まれたら、綾波はやはりそんな風に感じると思うよ」

私は迷い、寄り道して、碇君と私の子供が自分にとって、
どういう存在かにやっと辿り着いた・・・守り愛おしむもの・・・

「・・・私・・・碇君との子供が欲しい・・・でも・・・」
「綾波、ちゃんと対処法は在る・・・だけどもっと時間が欲しいんだ、待ってくれる?」

碇君は、対処法は在ると言ってくれた・・・私は高ぶる心を静める・・・
私は待っわ・・・貴方を信じてるから・・・でも、あまり待たせないでね、碇君・・・

「しまったな・・・ダブルベットにしとけば良かった・・・」
「そうね・・・アスカも一緒に寝たがると思うわ・・・」

私は碇君とアイカの香りに包まれて、その夜は安らかな眠りに付いた・・・




To Be Continued...



-後書-


ナオコ、ノイローゼ説というとちょっと笑えるかも(汗)
このあたりはいろいろ解釈ありますが、とりあえず死ぬほど甘く解釈してます
でも、ナオコさんを暗殺するならマギ完成直後はタイミング悪いし、(バグが山ほど残ってるはず)
交通事故とか建築中の設備の事故ならともかく、一人目のレイに悪口を言わせて
自殺するのを期待するという、あんな不確定要素の多い方法は暗殺には向きません。
徹夜続きでノイローゼのナオコが見た幻覚・・・の方が説明が付きやすいような気が(謎)

しかし一人目のレイ命名”アイカ”安直です・・・
だいたい普通、子供が名前を代えられて納得しないと思うけど
そこはそれ、お約束と言う事で・・・ご勘弁を(滝汗)


ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。


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