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EVA・きっと沢山の冴えたやり方

・第十八話 瞬間心重ねて・恋人達U   by saiki 20030101



アタシが下駄箱を開けると、大量のラブレターが溢れだした・・・
思わず踏みにじって、ゴミ箱へ入れてやろうと思ったけど、
横でレイが、下駄箱を開けラブレターを鞄へ入れてるのを見て、アタシは思い留まる・・・
ふっ・・・レイ、ラブレターの数では私の勝ちね・・・

「あーあっ!、こんなに沢山来るんじゃあ、ラブレターもありがたみが無いわね・・・そう思わない、レイ?」
「・・・そうねアスカ・・・私の方は、ずいぶん減ってきたから・・・アスカほど大変じゃないわ・・・」

へっ!・・・減ってきたからって・・・あんた・・・なんで減ったの?

「・・・碇君と、お付き合いしてるって書いたら、元の一割ぐらいまで減ったわ・・・
アスカも、もしラブレターが迷惑なら、私と同じように書いて見たら?・・・」

アタシの額を、汗が一筋流れる・・・

「か・・・考えさせてもらうわ・・・・」
「・・・そう・・・」

レイの奴、さらりとのろけてくれるわね・・・そりゃ、シンジが多少かっこいいのは認めるけど・・・
アタシは、シンジの方をちらりと盗み見る・・・そして固まった・・・
なんで、アイツにまで、ラブレターが山のように来てるのよ・・・

「・・・碇君、減らないわね・・・」
「うん、どうしよう綾波・・・これ以上、返事を書くのに時間を取られると、ちょっと問題かも知れないね・・・」
「碇君達が、手書きで返事を書いてるからよ・・・そろそろワープロにしたら?
今頃になっても出してくる人って、貴方達の手書きの返事が目当てなんだから・・・」

レイとシンジの話に割り込んできたのは洞木ヒカリ、アタシ達のクラスの学級委員長だ・・・

「・・・そうなの?、碇君・・・」
「うーん、洞木さんが言うんなら、そうなんだろうね・・・」
「アンタ達、気が付いてなかったの?」
「はあっ、そこが碇君達の良いとこなんだけど・・・」

ヒカリが大げさに溜息を漏らす・・・まあ、シンジに気があるみたいだけど、
アタシと利害関係ないし、アンタとは良い友達になれるかもねヒカリ・・・
特大の猫を、何とか再び飼いならしてかぶってるアタシは、心の中で呟く・・・

そして、ホームルームの前のちょっとした時間も、あの三人はしばしば料理談義を繰り広げる・・・
なにも、四六時中、料理談義をして無くてもよさそうな物だ・・・
これじゃあアタシが、一人爪弾きにされてるみたいで、ちょっと癪に障る・・・・

「場所は、碇君の家のリビングで良いわね」
「・・・セッティングは私が・・・」
「じゃあ、僕と洞木さんで料理をするよ」

流石に料理談義に花を咲かせるだけ有って、三人とも、特にシンジとヒカリは、
プロ並の腕をしてるのはアタシの舌で確認済みだ・・・
昨日のお昼に、お弁当を分けてもらったから良くわかる・・・
悔しいけど、サバイバル訓練で調理の真似事をしただけの私には、とても立ちうち出来ない味だ・・・

「ねえ、アスカ・・・」

うっさいわね、アタシは考え事してるのよ・・・

「アスカってば・・・」

へっ? しつこい呼び声に振り返ると、三人が揃ってアタシを凝視している・・・

「・・・どうかしたの?シンジ・・・」
「今晩、僕の家でアスカの、引越し祝いをしようと思うんだけど・・・アスカの予定は、今晩空いてるかな?」

アタシの引越し祝いを開いてくれるって?・・・空母の上では、いけ好かない奴って思ってたけど・・・
まあ少しは良いとこあるじゃない・・・見直してやるわシンジ・・・アタシは、ちょっぴり心が温かくなった・・・

    ・
    ・
    ・

アタシはシンジの家のリビングで、猫をかぶっておとなしくしている・・・
見る間に、二つくっ付けて並べられた座卓に、レイの手によって料理が並べられてゆく・・・

日本料理と、唐揚なんかに混ざってドイツ料理もちらほらと・・・
日本料理はヒカリだとして、シンジの奴どこで覚えたのだろう、ネーデル、ジャーマンポテトのサラダ、
グラーシュ、ザワークラウト、ヴィーナシュニッツエルに、バウエルンオムレット・・・
お酒のおつまみには、アイスバイン・・・いや、これはカッセラーなの?

ここの所、ちょっと本部の宿舎住まいで、
食堂の料理で暮らしてた私には、涙が出ほど懐かしいドイツの料理が並ぶ・・・
くうーっ、料理の香りだけで幸せだ・・・まあ主賓のアタシをほって、酒盛りを始めてるビヤ樽なミサトと、
横で幸せそうに、ミサトの頭を撫で続けてる、ふぬけた加持さんはこの際、無視しよう・・・

それより、ミサトに食い尽くされる前にカッセラーの味を・・・
伸ばしたアタシの手に、何かがぶつかって、派手にカーペットの上へコップが転がる・・・
アタシは振り返って、自分がぶつかった奴を見て、謝るのも忘れて思わず叫んでしまった・・・

「あんた・・・だれ?!」

お盆に乗せたコップを見事にばら撒いて、その真ん中にレイの縮小版が居た・・・
レイの妹・・・ま、まさかレイとシンジの子供とか・・・
そんな馬鹿な事を、自分で考えついて思わず呆れてしまう・・・

「・・・どうしたの、アスカ?・・・何があったの・・・」
「レイ、この子アンタの何なのよ?」

音とアタシの大声に、レイが何事かと顔を出す・・・
その声を聞いて、レイに似た少女が、その瞳に涙を滲ませながらアタシを睨み付ける・・・

「うそだ!おねーちゃんがアスカのはず無い・・・」
「へっ?」

突然少女に、自分を否定されたアタシは、思わず思考が停止した・・・
レイに似た少女は、アタシを睨んだまま悔しそうに涙を流し続ける・・・

「おねーちゃんが、私の名前の元になったなんて信じられない・・・
レイ姉ちゃんはもっと優しい人だって・・・」
「あ、あんた、なに言ってんのよ・・・」

レイ、あんたこの子に何吹き込んでるの・・・アタシは、レイを睨みつけた・・・
でもレイは、アタシに目もくれずに、少女を両手で抱きしめて、首を振る・・・

「・・・アイカちゃん・・・貴方の名前の元は、この人じゃないの、
まだ時間がかかるけど必ず、必ずその人に合わせてあげるから・・・」
「うん、じゃ人違いだったんだ、良かった・・・私の名前の元の人が、この人だったらがっかりだもん」

あんた達、さらっといま、酷い事言ってなかった?・・・少女とレイは、散らばったコップを片付け始める、
もちろんアタシも手伝った・・・レイ、後でしっかり、わけは聞かせてもらうからね・・・

「・・・ごめんなさいアスカ、あの子は私の妹なの・・・あんな事を言わないように、後で説明しておくわ・・・」
「いいわよ、アタシもいけないんだから・・・ア、アタシが謝ってたって伝えといてくれる・・・」

少女がコップを洗い直すため、キッチンに消えたのを目で追いながら、レイが呟く・・・
アタシはホッとした、小さな子に睨まれるなんて、あまり良い気はしない・・・

「でも、あの子の名前の元がアタシと同じ名前の”アスカ”て人だって?
凄い偶然ね、アタシもいつかその人に逢って見たいわ、ぜひ紹介してね、レイ」
「・・・それは、難しいかもしれないわ・・・」

”難しいって”な、何を言ってるの・・・レイ・・・
アタシは、レイを問い詰めようと声を掛けようとするが、間の悪い事にシンジの奴が間に入った・・・

「これが最後の料理だよ、さあ、アスカは今日の主賓なんだから、早く席に着いて」

アタシに、シンジの奴が笑いかける・・・アタシは、シンジの笑顔を見たとたん、胸の奥が暖かくなって・・・
気がつくと、アタシは席に着いて、シンジからジュースのグラスを受け取っているところだった・・・
なにが・・・何が起こってるの・・・アタシの頬を一筋の冷や汗が伝う・・・

「アスカは、オレンジで良かったかな?」
「う・・・それで良いわよ・・・」

シンジが、オレンジジュースをアタシのグラスへ注ぐ・・・
自覚して使ってるかどうかは分からないけど、これはシンジが原因の一種のマインドコントロールなの?

「じゃあ、飲み物は行き渡りましたね・・・では、アスカの引越しの無事終了を祝って、乾杯」
「「「「「「乾杯!」」」」」」

アタシはとりあえず、皆とグラスを打ちあわす・・・シンジは要注意ね・・・アタシは心の中で呟く・・・
残念ながらアタシには、戦闘中でもあの笑顔を見て魅了されない自信がない・・・

「碇君また腕上げたわね、このバウエルンオムレット凄く美味しいわ・・・ねえ、アスカもそう思うでしょ」
「うむ、ドイツでもここまで美味いのには、中々当たらない事をアタシが保障するわ」
「ありがとう、アスカにも褒められるなんて光栄だよ」

ようし!アタシは意識して、シンジの奴の笑顔をかわした・・・ちょっと、勿体無い気がするけど・・・
無理やり目をそらした先に、ヒカリの顔が有ったので、魅了される経過がじっくり観察できる・・・

以下はアタシによるヒカリの観察経過だ、
まずシンジの笑顔が爆発した後、目が少し虚ろになり頬に薄く紅がさす・・・
そして、ニヘラーッと言う感じで微笑んで・・・いやだ「碇君・・・素敵ッ」て、なに言ってるのよヒカリ・・・

アタシは「・・・はぅっ・・・碇君・・・」っという呟きを聞いて振り返った・・・レイの赤い瞳が逝っている・・・
そして、レイの妹のアイカとか言うのも「お兄ちゃん・・・えへへ」とか、俯いてにやけていた・・・

アタシはちょっと引きつった・・・自分も、アイツの笑顔に魅了されてる時はああなってるの?
アタシの背中を、冷たい汗が一筋伝う・・・シンジ・・・なんて危ない奴・・・・

「うーん、流石だね、シンジ君、一流のプレイボーイで通るよ」
「少なくとも、シンちゃんの方が貴方より上ね、加持」
「おかしいな・・・お酒は入ってないはずなんだけど・・・」

シンジの奴がしきりに首をひねっている、意識して使ってんじゃないようね・・・
でも、コイツ天然かしら、この事態が自分のせいだって気がついて無いなんて・・・

「ヒカリ、大丈夫?」
「えっ・・・なんのこと?アスカ」

ちっ・・・ヒカリには自覚症状無いのかしら?

「あのね・・・ヒカリが、あんまりシンジを見つめてるから・・・惚れたのかなと・・・」
「うふふ・・・良いなって思うけど・・・碇君には綾波さんがいるから・・・」

ヒカリは、アタシの掛けたブラフに引っかかった、そう、やっぱりヒカリはシンジが好きなのか・・・
でも、レイがいるから、ヒカリにはチャンスは無いかもね・・・残念ねヒカリ・・・

「・・・大丈夫よ洞木さん、碇君はまとめて愛してくれるから・・・何ならアスカが一緒でも・・・」
「ほんとに・・・良いの綾波さん・・・」
「ふん!アタシは、全部自分の物にならなければ要らないわ!」

レイが何時の間にか、
アタシの後ろにぴったり覆いかぶさって、アタシの肩越しにヒカリに微笑んで話しかける・・・
アタシはレイの言葉を突っぱねた、レイ、アンタそれで良いの・・・シンジが取られちゃうわよ・・・

レイの赤い瞳を、アタシの青い瞳が睨みつける・・・
彼女の目には、シンジへの信頼と、溢れるような愛情があるように、アタシには感じられた・・・

やっぱり、アタシみたいに性格の悪い娘には、シンジみたいな優良物件は、高嶺の花なのかな・・・
アタシは少しブルーになる・・・どうしてだろう、あの空母の一件以来テンションが上がらない・・・
ふと、顔を上げると、レイがアタシの方を心配そうに覗き込んでいた・・・

「・・・アスカ、どうしたの元気が無いわ・・・前の貴方は、もっと元気だったはず・・・」
「うっさいわよ!アタシだって調子の悪い時はあるわよ!」

あんた達が強すぎるのよ、アタシの出る幕なんてないじゃない・・・
アタシはやけになって、料理を口に詰め込む・・・
ううっ、美味しいんだけどなぜか目尻に涙が滲んじゃうじゃない・・・くっ!

アタシが落ち込んでいたら、突然シンジの携帯が鳴り始め、皆の目線が集まる・・・まさか、使徒が・・・

「はい、明日で良いんですか・・・はい、判りました・・・」

シンジの奴が残念そうに首を振る、レイが大きく溜息をついた・・・やっぱり、使徒なんだ・・・

「ごめん、みんな、太平洋上の警戒ラインに使徒が掛かったから、今日はこれで終わりに・・・」
「今から出撃なの?」

アタシは瞳を輝かしてシンジに聞いた、これでやっとアタシも、勝ち星を取れるかもしれない・・・
でもシンジは首を横に振った・・・えっ、違うの?

「使徒は、明日の11時ごろ海岸線に上陸予定だそうだよ・・・
レイ、みんなが料理を持って帰れるように、タッパー出してくれるかい?」
「・・・わかったわ、碇君・・・」

ミサトと加持さん、それにヒカリが争うように料理をつめて行く、アタシも負けないように戦線に参加した・・・
ううぅ・・・流石にヒカリ、アタシとミサト、加持さんは、まだまだテレが残ったのか上品につめすぎた・・・
ヒカリは、命掛けて一番多く詰め込んだ感じ・・・
もう、ぎっしりと確保している・・・ヒカリの家族、すごく喜ぶだろうな・・・

「洞木さん、ごめん送っていけなくて、タクシー来てるから、
お金はもう払っておいたから、安心して乗ってって・・・ところで、アスカは、どうするの?」
「どうするって・・・アタシは家へ帰るわよ・・・」

何を当たり前の事を・・・アタシはミサトの隣に引っ越したんだ、同じマンション内の部屋だから、
帰るのが当たり前じゃない・・・でも、シンジはアタシの目をじっと見つめる・・・

「7時にネルフの車が迎えに来るけど、アスカ起きれるよね・・・」
「あ、当たり前でしょ・・・でも、ここ泊まれる部屋あるの・・・」

アタシは・・・額に汗が滲むのを感じた、自分でもちょっと朝だけは自信がない・・・

「・・・アスカ、こっちよ・・・」

レイが案内を買って出てくれる・・・助かった、ちょっと聞きたい事が合ったし・・・
レイはアタシを小奇麗な部屋へ案内する・・・良い趣味してるじゃない・・・
ああ、そうだ泊まるか決める前に、こいつに聞いておかなきゃ・・・
アタシは、後ろ手にドアを締めレイに声を掛ける・・・

「ここに泊まる前に、アタシはあんたに聞いておかないといけない事があるの・・・」
「・・・なに?アスカ・・・」

アタシは、ごくりとつばを飲み込んで重い口を開く・・・

「シンジは、アンタを抱いた事があるの?」
「・・・少し違うわ、アスカ・・・私が碇君に、抱いてもらうように頼んだの・・・」

レイの話を聞いて、アタシの顔は真赤に茹で上がる・・・やっぱり、こんなとこへ泊まれない・・・

「・・・たぶん貴方は誤解しているわ、アスカ・・・貴方が求めない限り、碇君は貴方に何もしない・・・」
「ばっかじゃない!一つ屋根の下に、こんなに可愛い美少女がいれば、シンジじゃなくても、
襲いたくなるって物よ!アンタにはわかんないでしょうけどね・・・」

アタシの怒鳴り声に、レイはちょっと頭をかしげて、困ったようにアタシを見つめる・・・
そして、レイはポンと手を打ち合わせると、突然、自分のスカートの裾をまくった・・・

「ちっとレイ、いきなり何するのよ・・・」

彼女のスカートの中から、白い太腿がのぞく・・・アタシは顔を再び、赤く染める・・・
そんなアタシの前に、
レイが太腿に巻いたフォルダーから取り出した、超小型拳銃ハミングバードR133を差し出した・・・

「これをどうしろって言うの・・・」
「・・・部屋は鍵が掛かるけど・・・それでも、心配なら、これを枕の下に入れて寝れば良いわ・・・」

アタシは、手の上に置かれた可愛い拳銃に途方にくれた、
レイの体温だろうか、セラミックを主体にした拳銃がほのかに暖かい・・・

「・・・一番風呂に入るのなら急いでね、アスカ・・・
タオルと下着の予備、寝巻き、洗面用具はここに入ってるわ・・・」
「あ、ありがとう・・・レイ」

レイが、部屋に作り付けの大きめのクローゼットを開けて、来客用の備品をアタシに示す・・・

「・・・タッパーは冷蔵庫へ入れておくから・・・」
「うん、お願い・・・」

あいつら・・・どうやって・・・
備品はアタシが来るのを知ってるかのように、アタシ好みの色で統一されている、赤い歯ブラシ、
レモンイエローのタオル、寝巻き、タオルケット、下着は白一色だがサイズが全部合っている・・・
でも、何なのよ、この抱き心地のよさそうな、おサルの大きなぬいぐるみは・・・
アタシにこれを、抱いて寝ろって言うの?・・・


入るかどうかちょっと悩んだけど、アタシは一番風呂の魅力に勝てなかった・・・
ああ、この体を包み込むお湯が心地よい・・・
気を緩めていたアタシは、ドアを叩く音にハッと、身を硬くする・・・
アタシの目線の先には、鍵を掛けたドアのすりガラス越しに、小さな影が見える・・・

「な、なに?」
「お姉ちゃん、お風呂次ぎは私だから声掛けてね」

この影は・・・レイの妹、アイカって言ったっけ・・・

「わかったわ、アイカちゃん・・・あの、さっきはごめんね・・・」
「お姉ちゃんありがとう、私もあんな事言って・・・ごめんなさい」

アイカが、レイと違って愛嬌のある声で、アタシにガラス越しに頭を下げる・・・

「大丈夫、お姉ちゃんも、もう全然気にして無いから・・・ね」
「うん・・・」

そのままアイカは、ドアの前を離れる・・・
アタシは、張ってた気が抜けて、鼻の辺りまでブクブクとお湯に浸かる・・・
良かった、レイの奴にそっくりとは言え、アタシは小さな子に睨まれるのはいやだから・・・

風呂から上がり、素早く寝巻きに着替えたアタシは、真新しい赤い歯ブラシで歯を磨く、
一緒に入ってた練り歯磨きはペパーミント味だ・・・
何でここまであいつら、アタシの好みが分かるんだろう、ちょっと気味が悪い・・・

お休みって頬笑みを向けるあいつらに、
礼儀上グーテ・ナハトって答えたアタシは、部屋に鍵を掛けて篭る・・・
弾を確認して、安全装置を掛けた銃を枕の下に、アタシはベッドに横たわった・・・
カーテンの隙間から見える夜空は、アタシの心のように真っ暗で、月はない・・・

何だか目が冴えて眠れない・・・明日が、アタシにとっての正念場だと言うのに・・・
寝返りをうつアタシの目に、天井の常夜灯に照らされた、あの、おサルのぬいぐるみが目に入る・・・
アタシの手が無意識に白いシーツを掻き毟る・・・う、あぁぁぁ・・・我慢できない・・・

「きょ、今日だけなんだから・・・枕がアタシに合わないのがいけないのよ・・・」

アタシはタオルケットを剥いで立ち上がると、あのぬいぐるみを、両手で抱えてベッドに運ぶ・・・
ああ・・・ほっぺに当たるぬいぐるみが心地良い・・・
それに、微かに柑橘系の良い匂いがする・・・これはオレンジ?
何だか陽で、ママに抱かれてるみたいな気がする・・・
アタシはタオルケットの中で、ぬいぐるみに抱きついた・・・

「・・・ママ・・・」

アタシの閉じた瞳から、不覚にも涙が滲む・・・何で泣いてんだろう、あの時泣かないって決めたのに・・・

    ・
    ・
    ・

誰かがアタシの名を呼んでる・・・ママ・・・ママなの?

「・・・アスカ、起きて!・・・アスカ!・・・」

アタシは眠気眼で辺りを見回す・・・おサルのぬいぐるみと目が合い、
もう少しでそれに挨拶をしそうになって、やっと目が覚めた・・・
ドアをノックしながら、声がアタシを呼んでいる・・・
ドアを開けると、濃い蒼色のワンピースを着た、レイが立っていた・・・

「・・・アスカ、貴方はシャワー浴びて目を覚ました方が良いわ・・・もう銃は良いわよね・・・」
「うん、ありがとう・・・良く眠れたわ」

レイの奴が、アタシ越しにチラッと部屋の中を見回す・・・

「・・・でも、貴方に必要だったのは、銃より、ぬいぐるみの様ね・・・
言い忘れたけど、あれは貴方への引越し祝いに用意した物・・・だから、気にいってくれて嬉しいわ・・・」
「そ・・・そう、ありがとう、喜んで頂くわね、レイ・・・」

アタシはちょっと複雑な表情で、彼女に礼を言った・・・
何だか嵌められたみたいで面白くないけど、おサルの昨夜の抱き心地は、
アタシの中でプライド以上の、捨てがたい物に膨れ上がっている・・・

シャワーを借りた後、朝食をご馳走になり、昨日のパーティの残りのタッパーを持ったアタシは、
ぬいぐるみを抱えたレイを伴って、一晩ぶりに自分の家へ戻った・・・
さっそく、アタシはレイに対抗して、素早く赤いワンピースを着込みながら頭をひねる・・・

何で朝食はガーリックトーストだったんだろう、付け合わせはスクランブルエッグとドイツウインナー、
サラダはジャーマンポテトのサラダだし・・・なんでシンジの奴、アタシの好みが分かるんだろう・・・

マンションの駐車場に・・・空色のシャツと黒いスラックスのシンジ、濃い蒼のワンピースを着たレイ、
そして赤いワンピースを着込んだアタシ・・・その髪の色さえ黒、蒼、朱金と個性的なアタシ達の前に、
ネルフの差し向けの車が止まる・・・今日の運転は、山岸さんが担当のようね、サブは長峰さん・・・

「おはようございます」
「・・・ご苦労様です・・・」
「グーテン・モルゲン」

ガードとしては珍しい、妙齢の女性の長峰さんが、車のドアを開けてくれる・・・
アタシ達は彼女に促されて、後部座席に乗り込んだ・・・

「おはようございます、朝早くから、ご苦労をかけます。
あなた達にはこれから私達と一緒に、ネルフへ向かってもらい。
到着後は三人とも、プラグスーツに着替えて、エヴァキャリアに乗り込んでもらう予定です」
「やっぱり空輸ですが?」

シンジが長峰さんに確認する、コイツ作戦立案にも一枚かんでるんだろうか?

「はい、零号機も幸い戦時仕様に改装が終了してますので、
日向一尉は、三機で使徒を押さえ込む作戦のようですね」
「まあ、改装が間に合わなければ技術部が何とかしてくれたでしょうが
零号機の戦時仕様への改装が終了したのは、ほんとにありがたいですね」

悔しいけど、アタシも早く内部事情を把握しないと、こいつらに着いていけないかも・・・

ネルフに着いたアタシ達は、プラグスーツに着替えてすぐエヴァキャリアへ向かう、
エヴァはすでに昨夜のうちに搭載されていた、アタシはキャリア02へ乗込む・・・

芦ノ湖の淵の沿岸にカモフラージュされた、全幅300メートルのシャッターが開きアタシ達が乗る、
翼長200メートルを誇る三角形の全翼機STOLが空母並の電磁射出で空中に放たれる・・・
瞬間的に数Gにも及ぶ力でアタシは、シートに押さえつけられた・・・
レイなんか体の線が細いから、このGはちょっと辛いかもしれないわね・・・

「コーヒーをどうそ、落ち着きますよ」
「あ、ありがとう・・・」

水平飛行に入ると、手隙の整備の人が、アタシにコーヒーをポットから分けてくれた・・・
アタシはありがたく紙コップを受け取ると、感謝の言葉とともに頭を下げる・・・

「がんばってくださいね、惣流さん、整備はばっちり上がってますから」
「うん・・・がんばるわ、整備ありがとう」

ドイツ支部と違って、本部の人たちはアタシをセカンドなんて記号じゃなく人として扱ってくれる・・・
そんな扱いに、アタシは、昔より少しだけ素直になれるような気がした・・・

シンジが一体、レイが二体・・・アタシはまだ、一体も使徒を倒していない・・・
せめてアタシが役に立つ事を証明しないと、エヴァから降ろされる、最悪ドイツに送還も・・・
アタシは、あんな自由のない所へ戻るのは嫌だ、連日の実験と訓練、人を記号扱いする上司達・・・

アタシは今日こそ使徒に勝って、自分の実力を示さないといけないんだ・・・
無意識の内に、コーヒーの紙コップが手の中で握りつぶされ、
少しだけ残ったコーヒーが、手を汚し床へ滴る・・・
アタシは慌てて、洗面でスーツの手の部分を洗うと、ペーパータオルを持って引き返し床を拭う・・・

「・・・何してんだろうアタシは・・・」

床を拭ったペーパータオルを捨てながら、アタシは呟く・・・
すでに、エヴァの投下地点は目と鼻の先に迫っていた・・・

アタシは、簡易シャワーで体の埃や汚れなどを落としてから、
エントリープラグに入りエヴァにエントリーを開始する・・・
LCLを満たし、内臓電源を入れると周りの光景が目に入る・・・
この高さから飛び降りるのは、何度もシミュレーションを繰り返した今でも、ちょっと怖い・・・

前を行く零号機と初号機が投下され、次はアタシの番だ、カウントが入る・・・

「フュンフ、フィーァ、ドライ、ツヴァイ、アインス」

たどたどしいドイツ語でカウントが入る・・・たぶんこの人は、アタシの為にドイツ語を使ってくれてるんだ・・・

「ダンケシェーン」

切り離される寸前、アタシは叫ぶ”どうもありがとう”と、アタシの真紅のエヴァは地上へとダイブした・・・

アタシの心配にもかかわらず、エヴァは危なげなく海岸線に着地する・・・
すぐに電源車が近づき、アタシの真紅のエヴァにアンビリカルケーブルを接続した。

「朝早く引っ張り出してごめんね、三人とも体と機体に異常は無いかい?」
「はい、異常ありませんよ日向さん」
「・・・問題ありません・・・」
「あー・・・何も無いわよ」

アタシの目の前に、昨日の内にこちらについたらしい、指揮車からの通信ウインドウが開く・・・

「かねてからの予定通り、先攻はアスカ君、一撃を与えてからいったん引いてくれ」
「了解!」

と言う事は、アタシが一撃で仕留めれば良い訳ね・・・

「その後は、様子を見て三機で攻撃する事になると思う、
いざと言う時はNを使うから、みんな、引き際を間違わないように」
「了解!日向さん」
「・・・了解・・・」
「わかった」

あんた達の出番なんか作らない、アタシが華麗に優雅に決めてやるわよ・・・

「送り狼をしている巡洋艦ハルナからです、湾岸から5キロの所で目標をロスト」
「ありがとう山岸さん、みんな聞いたね、すぐに七番目の使徒が上陸する、注意して」

うふふ、来るなら来いアタシが餌食にしてやる・・・
アタシは唇をなめる・・・体が武者震いに震えた・・・

アタシの弐号機が、低い唸り声を上げる・・・少し沖合いで、水の跳ねる音がした・・・

「き・た・わ・ね!」

アタシは駆出す、体が軽い、エヴァが何時に無く、自分と一体に感じる・・・
弐号機は風のように、優雅にビルを足場に次々と飛び移った・・・

「ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁーっ」

アタシの目前に、緑の醜い首無し使徒の巨体が海の中から立ち上がる・・・

「もらった〜〜〜〜っ!」

アタシは、長刀状のソニック・グレイブを使徒の頭上から見舞う・・・
気持ち良いぐらいに、使徒の肉体がピンクの断面を見せながら、アタシの前で二つに裂けて行く・・・

「クククッ、アタシに掛かれば使徒なんてこんな物よ・・・見てくれた、お二人さん?」

真っ二つになった使徒を前に、アタシは、後ろのシンジとレイに呼び掛ける・・・これでアタシも・・・

「アスカ君、いったん引くんだ、君は援護射線をさえぎってる!」

日向さんの焦った声が響く・・・アタシは呆然とした・・・な、何を言ってるの・・・
そして、すぐ思い知る事になる・・・倒したはずの使徒が、あっという間に二体になって再生したのだ・・・

「う、うそーっ!」

エントリープラグ内のLCLに、アタシの間抜けな声が響いた・・・

「あぶない!アスカ!」
「・・・アスカ、逃げて・・・」

くっ・・・確かにやばいわね、ここはいったん引いて・・・
えっ!なに・・・なんでこんな肝心な時に、頭痛がすんのよ・・・

「あうぅっ・・・こ、殺してやる・・・」
「アスカ!」
「・・・アスカ!・・・」

何なの・・・アタシ、何言ってんのよ・・・いまは、撤退しなきゃあ・・・

「殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる・・・」
「・・・ミサトさんと同じ、 条件付け(マインドコントロール) ・・・アスカ、暴走してる・・・」
「日向さん、アスカがいざと言う時は神経接続のカット願います」
「わかったシンジ君、アスカの援護を頼むよ」

あああ、アタシに何が起こってるの・・・
弐号機がアタシに関係なく、機械的な動きで、二体に分かれた使徒の金色の方を、ずたずたにする・・・

「殺してやる・・・殺してやる・・・」

でも、瞬時にその傷は再生して元に戻る・・・どうなっちゃってんのよ・・・
アタシの視野の端に、もう一体の銀色の使徒が、弐号機の背後に迫るのが見える・・・
奴には零号機と初号機の、パレットライフルの攻撃が当たっているけど、あまり利いていない・・・

「殺してやる・・・殺してやる、殺してやる・・・」

ああ、早く撤退しなきゃ・・・でも、アタシの体は動かない、弐号機もまるで人形みたいに、
単調な攻撃を繰り返すばかり・・・どうなってんのよっ!これはっ!・・・

「殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる・・・」

銀色の使徒が、弐号機を背後から羽交い絞めにし空中に持ち上げる・・・
金色の方も、弐号機の足に爪をめり込ませて持ち上げる・・・くううっ・・・痛いじゃないの・・・

「殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる・・・」

銀色の奴が、今度は肩に爪をめり込ませる、そして二体の使徒は、弐号機を空中へ放り投げた・・・
アタシの背に寒気が走る・・・奴らは、落ちてきた弐号機をその爪で串刺しにするつもりだ・・・
だが、零号機と初号機の体当たりが、アタシの窮地を救った・・・
息の合った二機のエヴァに、使徒二体は数百メートルも見事に弾き飛ばされる・・・

そして、アタシの神経接続だけがカットされる・・・プラグ内に、日向さんの声が響いた・・・

「アスカ君、僕の言う意味が、君に分かるかどうか疑問なんだけど、ともかく聞いてほしい・・・」

ア、アタシは・・・なんで、アタシの意思に反して、こんな事が起こるの・・・

「いま君のエヴァの神経接続をカットした、
後はシンジ君達が何とかするから、しばらくそこから出ないように・・・」
「・・・前回はアスカとだったから・・・今回は私と碇君ね・・・」
「別にユニゾンしなくても、コイツはどうにかなるんだけどね」

レイとシンジの声が小さく聞こえる・・・アタシはやっぱりお荷物ね・・・
まだ映像を写しているスクリーンに、
零号機と初号機がアタシ以上に滑らかな動きで、使徒二体と交戦中なのが見える・・・

「君がそこから、出ようとする動きが見えたら、君の安全の為に電源もカットしないと行けなくなるから・・・
僕達には、君の条件付けのトリガーが分からないんだ、それにどこまでが君の自由意志かさえもね・・・
だからアスカ君、安全になったら回収するから、そこから絶対に動いちゃ駄目だよ・・・」
「レイ、ナイフを装着して」
「・・・了解・・・」

蒼と紫の二体のエヴァは、アタシの目の前で、パレットライフルの先端にプログナイフを装着する・・・

お互いをフォローして、優雅に使徒の攻撃を避けながら間をつめて行く・・・
同期して動く使徒、それを同じように危なげなく避ける、蒼と紫のエヴァ・・・

アタシは、目の前で繰り広げられる戦いに魅入られた・・・
まるで、香港のクンフー映画を見ているようだ・・・

そして、戦いの終わりは、訪れるべく訪れたように、アタシには思えた・・・
ひらりと使徒の攻撃をかわした、レイとシンジのエヴァが銃剣を奴らの背中へと突き入れる・・・
銃剣の先端が、コアの中から火花を散らしながら使徒の前方へ突き出てそのまま止まる・・・
次の瞬間、アタシの目を閃光が襲った・・・

    ・
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アタシは、照明の落とされたブリーフィングルームに、真紅のプラグスーツのまま一人うずくまる・・・

「ママ・・・アタシ、きょうも勝てなかったよ・・・」

テーブルに俯いたまま、アタシは一人呟く・・・

「アタシ、これからどうなっちゃうんだろう・・・ママの居る、弐号機を降ろされちゃうのかな・・・」

アタシの目から一滴、涙がテーブルに滴った・・・

日向さんだって、こんなわけの分からない、条件付けなんか受けた子は、使わないわよね・・・
アタシの心は、暗い思いの淵へと沈む・・・そんなアタシの背後のドアが開き、二人分の足音が響く・・・

「・・・気を落とさないで、アスカ・・・」
「二人して、無様なアタシを笑いに来たの?ほっといてよ・・・
同情されるだけ、アタシが惨めになるじゃないのよっ!」

アタシの横に人が座り、その細い指で、アタシの頭を撫ぜる・・・
少し落ち着きを取り戻したアタシが、顔を上げると、
正面にシンジの奴が座って、辛そうにアタシを見つめていた・・・

「ほんとは、もう少しアスカが落ち着いてから、提案したかったんだけどね・・・
今日のアスカを見てたら、これ以上待つと致命的な結果になってしまいそうだから・・・」
「な・・・何が言いたいのよ・・・」

アタシの青い目が、シンジの漆黒の目を睨みつける・・・・
こいつの目は、なんて落ち着いて・・・まるで経験を積み重ねた、年老いた賢者の目のようだ・・・

「君の知らない君と約束したんだ・・・どうするか選ばせるって・・・」
「何の事なのよ!あんたの言ってること、わけわかんないわょ!」

シンジがポツリと呟く・・・アタシはその意味が分からず、いらいらして叫んだ・・・

「もし君がエヴァに乗るのをあきらめれば・・・
君の一番合いたい人が帰ってくるとしたら・・・君はどちらを選ぶ?」
「そ・・・それはどういう意味よ!」

シンジが魅力的な笑顔を、戸惑うアタシへ向ける・・・
アタシは、アイツの笑顔に魅惑されそうになりながらも、詰問の言葉を吐く・・・

「レイと一緒に乗った時、アスカは弐号機の中に、お母さんが居るのを感じただろう・・・
アスカの返事しだいで・・・僕達で、アスカのママを、あの中から出して上げられるよ・・・」
「えっ・・・うそっ・・・」

アタシは目を見張った・・・ママが、自分の元へ帰ってくる・・・そんな、夢みたいなことが・・・

「でも、アスカのママが居なくなると、弐号機にはいまのアスカは乗れなくなる・・・
しかし、このままアスカが乗り続けると、弐号機が致命的な損傷を受けて、
アスカのママが失われる事になるかもしれない・・・いや、必ずそうなると思う・・・」

ううっ・・・また頭が痛くなり始めた、またああなるの・・・
ママの事だって言うのに・・・なんで、アタシは自分の思うとおり動けないのよ・・・

「いやょ!あたしはエヴァに乗るしかないの!」

違う!アタシはそんな事を言いたいんじゃない・・・なんでっ!・・・

「だから、貴方達に干渉してほしくないわ!」

違う!違うのよ!これはアタシが言ってんじゃないの・・・

「・・・・・・・」
「仕方ないね、約束だから・・・レイ、君のスペアを使うよ・・・」
「・・・わかったわ・・・碇君、このアスカと、弐号機はどうするの?・・・」

これが、あの時レイが言ってた条件付け?・・・誰か・・・誰か助けて、レイ・・・

「弐号機はとりあえず封印、アスカには、検査とカウンセリングを受けてもらわないと・・・
今日のアスカの振舞いは、どう見ても明らかに異常だったからね・・・」
「・・・まって、碇君・・・」

レイが、アタシを見つめる・・・気付いて、レイ・・・あれは、アタシの本心じゃない・・・
アタシの頬を伝って、涙が真紅のプラグスーツの胸に滴る・・・でも、どうやっても声が出ない・・・

「・・・アスカ・・・あれは、あなたじゃないのね・・・もしそうなら、三度瞬きして頂戴・・・」

レイ、あんたは分かってくれたのね・・・アタシは渾身の力を振り絞って三度瞬きする・・・

「・・・じゃあ、貴方のママをサルベージしても良いのね・・・」

アタシは再び、渾身の力を振り絞って三度瞬きする・・・

「・・・わかったわ・・・すぐ赤木博士と相談するから、アスカは安心して休んで・・・」

シンジが携帯で連絡を取っているのを見ながら、アタシは安心したせいか、レイの胸へ倒れ込む・・・
レイはアタシを優しく抱き締めて、頭を撫で付けてくれた・・・ああ、これでアタシはママとまた合えるんだ・・・

「・・・ママ・・・」

アタシは、ママに抱かれたように、安心して夢さえ見ない深い眠りの中へと落ちて行った・・・





To Be Continued...



-後書-


”きっと沢山の・・・”のアスカは何だか凄く弱気です(汗)
良く考えたら、周りの二人がしっかりしてる分、彼女が弱く見えてるのもあります・・・

それに表面じゃなく、見えないはずの内面と言う事でかなり勝手な解釈ですが
いろいろと葛藤とか、他の人から見えないところで泣いちゃってるとか・・・
作者の独断と偏見で入れてます・・・強いアスカファンの皆様、平にお許しを・・・

まあ、書き手としては、弱気のアスカも皆様に気に入っていただけると嬉しいのですが(滝汗)

チャットしながら書いてると、文章の整合性や何やらがちょっと危機・・・(涙)

結局、アスカの条件付けの件は、結局うやむやにしちゃいました・・・
まあ人の心はブラックボックス、そう簡単に自由にはなりません(苦笑)

でも書いてるうちに年越(2002−>2003)ちゃったよ、おいおい・・・(ナイアガラ涙)



ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。


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