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EVA・きっと沢山の冴えたやり方

・第二話 使徒襲来・出撃   by saiki 20021101-20060618



「ミサトさん、ひょっとして迷ったんですか?」

ぼくは一緒に自走路に乗ったミサトさんへ、苦笑いを浮かべながら声を掛ける、
カートレインを下りて3ブロック行った辺りから、早くも彼女の挙動が怪しくなったのに気がついたのだ。

「ちょっと、地図見せてもらって良いですか?」
「うううっ・・・後光がさすほどかわいい笑顔なのに、なんだか可愛くない・・・」

ぼくがにこりと笑ってミサトさんの手から地図を受け取ると、彼女は悔しそうに顔をしかめる。

「ああ、行き先はこのマークのところですね、
いま居るところがレベル2のR−15ブロックだから、ここならあと2階下りて」

ミサトさんはすたすたと足早に先に進むぼくの後を。しぶしぶと後からついてくる。
これでは、どちらが案内をしてるのかわかんないかもしれない。

   ・
   ・
   ・

前回と違ってミサトさんとぼくの二人はあっさりと初号機のケージにたどり着いた、
最初のときあんなに時間がかかった挙句ホバークラフトまで使ったのと大違いだ、。
まあ、その後の戦闘出動はネルフに着いてからほぼ10分ぐらいで出撃してたから、
あの時が異常だったとしか思えないけど、前の時、綾波がストレッチャーで
運び込まれたドアが軽い音と共に左右に開き、ぼく達はケージの中へと入って行った。
ケージではオレンジ色の繋ぎを着た整備員の人達が、
エヴァ初号機の出撃準備のために忙しく立ちまわっている。

「サードチルドレンを連れて来たんだけど、リツコをしらない?」
「ああ、葛城一尉、どこか不都合な所があるとかで、いま、冷却用のLCLに潜っておられます」

よかった、リツコさんの予想外にぼく達が早く着いたので、
前回のようにこった演出は出来なかったらしい。
まあ普通、暗闇に連れ込んでエヴァ初号機の顔のアップと対面させるなんてしないよね。

「やあ、久しぶりだね初号機・・・それに母さん・・・」

ミサトさんはあわててリツコさんを呼びに行き、一人取り残されたぼくは、
初号機の顔の前に渡されたアンビリカルブリッジに立ち、つぶやくように初号機へと呼びかける。
ぼくは聞きたかった・・・ぼくを産み、ぼくが初号機に乗るきっかけをつくり、そして父を狂わせた人、
母さん・・・あなたは、ぼく達の苦しみを知ってたんですかと・・・

「悪いけど母さん、今回は、初号機から下りてもらうよ・・・」

ぼくは初号機に向けて、ちょっと顔をしかめてつぶやく様に断固宣言する。
母さんさえしっかりしてくれれば、ぼくがこんなに困る事なんてなかったかも知れないのだから。
物言わぬ初号機に小声で愚痴ってるぼくの元へ、ミサトさんと一緒に、
バスタオルで体を拭いながら金色に髪を染めた女性が近づいて来た。

「珍しいわね、貴方が迷わず目的地へたどり着けるなんて」
「もうリツコったら、シンジ君待ってるわよ」

ミサトさんが,、金髪と体を拭き終わった冷たい感じのする女性に白衣を手渡す、
白衣を水着の上に羽織り、彼女はまるで値踏みをするようにじろじろと、
ぼくを見てからおもむろに口を開いた。

「はじめましてシンジ君。私はこのネルフでE計画を担当している赤木リツコです」
「あ、こちらこそはじめまして。碇シンジです。えっと、赤木博士」

いろいろとトラブルを抱えた寂しい人だけど、
再び合う二人目の知り合いの顔へ、ぼくは親しみを込めて特上の笑みで微笑み掛ける。
あれ・・・リツコさんの顔が少し赤い、そうか、この人はこんな表情もするんだ。

「リツコでいいわよ、それよりこれを見てのどう思ったか、感想を聞かせてもらえないかしら、シンジ君」
「そうですね大変迫力があると思いますよ、リツコさん、
でも、カラーリングが紫色基調じゃあ悪役っぽいですね」

ちょっと苦笑しながら、ぼくは率直な意見を述べる、まあ14歳だった頃のぼくの意見じゃないけど、
リツコさんはすこしむっとしたようだ、ぼくに向けて、さあどうだとばかりに言い放った。

「人の造り出した究極の汎用決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン!
これはその初号機!我々人類の最後の切り札よ!」
「エヴァンゲリオン、福音ですか・・・どちらかと言うとイメージ的には、
ルシファーとか、 (オーガ) とかの方が似合ってそうですけど?」

意地になって声を上げるリツコさんへ、ぼくはさらりと流すように意見を述べる、
そういえばJAの時もえらく食って掛かってたってミサトさん言ってたっけ?
ああ、なんだかずばり言いすぎたかもしれない、リツコさん落ち込んじゃったかも、
俯いて小さな声で”資料と違う”なんて愚痴ってる・・・

「シンジ君、これは、貴方のお父さんの仕事なのよ、それとも、あなたはお父さんを嫌いなの?」

ミサトさんが落ち込んだリツコさんをフォローしようと、悲しそうな声でぼくに語り掛けるけど、
ちっとも話に整合性がない、見た目、中学生だからって迫力とのりで、押し切ろうって思ってませんか二人とも?
まあ、父さんなんかは大人に対しても無言の迫力で押し切るんだろうけど、まねしないほうが良いですよ。

「ほんとに困った親だと思ってますよ、
10年以上もぼくをほって置いて”来い”の一筆で呼びつけるような人は普通、親とは言えないのでは?」

こんどはミサトさんが頭を抱えてるよ、一応、ぼくが今迄どういう扱いを受けていたかは
分かってはいるようだね、ごめんねミサトさん、今日のぼくはちょっと意地悪かもしれない。
この辺でそろそろ父さんの渋い声が響いてきてもいいはずなんだけど、
ひょっとしてタイミングを計りかねてるのかな?

『久しぶりだな、シンジ』

ああ、久しぶりに聞く父さんの声がケージの中に響く、
ぼくの目は、天井の一角に開いた窓からこちらを見つめる父さんを見つけた。
やっぱり父さんにサングラスとひげは似合わないな、そんな事を考えながら思わずぼくは苦笑を浮かべるた。

「父さん、ほんとに久しぶりだね、ところでぼくを呼んだのは、
まさかと思うけど、これに乗ってさっきのと戦えって言うんじゃないよね?」

ぼくは意地悪くにやりと笑い、初号機を指差してたずねて見た。
フフ・・・周り中の人が図星を挿されて引きつってる、
父さんまでちょっと引いてるよ、まあ今回は直接ケージに来たから、少しは時間の余裕があるかな?

『お前の考えてるとおりだ!』
「色の趣味が悪いよ父さん!紫はやめて、せめてボディカラーを赤か青にしてくれないかな?」

ごめんよ初号機、前々から紫はちょっと色がきついかな・・・と思ってたんだ。
あれ、ちょっと言いすぎたかな、ミサトさん呆けてるよ、リツコさんと父さんは青筋浮かべてるし、
初号機までなんだか怒ってるような気がする、ちょっとおふざけがすぎたかもしれないね、まあ妥協するかな?

『くっ!乗るなら早くしろ、でなければ、帰れ!』
「わかった、乗るよ父さん、でも後でちょっと話があるから時間を取ってくれるかな?」

ここで追い詰めて重体のレイを、父さんに呼びつけられても困るから、この辺で妥協するとして、
一応、アポイントメントを取っておいた方が良いね、父さん、後で面白い話を聞かせて上げるよ。

「・・シンジ君・・」

あっさりと承諾したぼくを心配したのだろうか、ミサトさんが小さくつぶやく。

『良いだろうシンジ、赤木博士に説明を受けろ』

ケージ内を父さんの冷徹としか取れない声が響き渡る。
父さん、そんな言い方するから、回り中から誤解を受けるんだよ、もう少し、言い方を工夫した方が良いよ。

「シンジ君、さあこっちへ来て」

リツコさんが不審そうな声で、ぼくをエントリープラグへと導く、
そうですリツコさん、確かにぼくはうんと怪しいですよ、
クスクス・・・これからぼくがやる事はもっと怪しいですけどね。
でも、どうしてだかは教えて上げません、宿題ですよリツコさん、
思わずぼくは、人の悪い笑みを浮かべてしまい、リツコさんがピクリと振るえ無意識に体を引いた。

リツコさんは前回と同じく簡単な説明をして、
ヘッドセットを付けた後、学生服のままぼくをエントリープラグの中へと押し込む。
エントリープラグの中に乗ったぼくは、落ち着いて初号機へプラグが挿入されるのを待った。
発令所とぼくを繋ぐ通信機には、発進準備が滞り無く進められているのが聞こえる。

『冷却完了、ケージ内全てドッキング位置』
『パイロット、エントリープラグ内コックピット位置に着きます』
『了解、エントリープラグ挿入』

何かに当たる大きな音と金属がこすれる音が響き、プラグが小さく揺れる。

『冷却用LCL排出開始』
『プラグ固定完了、第一次接続開始!』
『エントリープラグ注水』

赤い液体が足元から流れ込み、たちまちぼくの頭を超えてプラグ内に充填される。
ぼくは肺の中の空気を大きく吐き出して一気に、肺の中の空気とLCLを入れ替える。
ぼくの周りを懐かしい母さんの気配が、ほのかに包み込む、ほんと久しぶりだね母さん・・・
ゆったりと微笑むぼくを、双方向通信ウインドウに写るリツコさんの視線が思い切り不審そうに貫く、
そんな、あまりにリツコさんらしい反応に、ぼくは思わず思い切り微笑んでしまった。

『『『『『・・・・・・・・』』』』』

発令所内のざわめきが一瞬静まった、どうしたんだろう?
なんだか、リツコさんとミサトさんの頬がほのかに赤い、そういえば、マヤさんもだ。

『!』

咳払いが聞こえた、たぶん冬月副指令かな?
いっせいに、われに返ったみんなが戦闘業務を再起動する。

『主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート、シナプス挿入』
『A−10神経接続異常なし、初期コンタクト全て問題無し』
『全ハーモニクスクリアー、シンクロ率・・・シンクロ率99.89%!!』
『そんな!シンクロ率が高すぎるわ!マヤ、センサーを再チェックして!』
『”マギ”による3重チェック、異常ありません、シンクロ率はたしかに99.89%です』

なんだかシンクロ率の事で、マヤさんとリツコさんがあわててるみたいだ。
甘いですよリツコさん、シンクロ率なんてどうとでも設定できるし、
あまり遠くからじゃなければ、ぼくは外部からでもシンクロ出来ますよ。

『リツコ!シンクロ率が高かったら動かないとか、何か問題があるの?』
『分かって無いわねミサト!シンジ君のシンクロ率は明らかに異常だわ!』

発進作業が止まったので、ミサトさんがリツコさんに食って掛かってる。
リツコさん、こんな時のミサトさんを説得しようたって無理ですよ。

『碇指令!・・・宜しいですね。』
『勿論だ!使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い、作業を進めたまえ』

じれたミサトさんは、父さんにじかに許可を取る。
リツコさんは思い切り顔をしかめて、ぼくとの双方向通話ウインドウを睨み付ける。

『シンジ君!なんとも無い?』
「はい、ぼくの方はOKです」

問いかけるリツコさんに微笑を向けてぼくはあっさり答える、
こうなっては、ぼくに不審を抱くリツコさんも先へ進めざる得ない。

『マヤ!作業を続けて!』
『はい、先輩!』

再び発進作業が再開される

『エヴァンゲリオン初号機発進準備』
『第一ロックボルト外せ!』
『解除、続いてアンビリカルブリッジ移動!』
『第一、第二拘束具除去、第3第4拘束具除去』
『1番から15番までの安全装置解除。』
『内部電源充電完了、外部コンセント異常なし』
『エヴァンゲリオン初号機、射出口へ。』
『進路クリアー、オールグリーン!発進準備完了。』

ミサトさんが心配そうに、ぼくにつながる双方向通信ウインドウを覗き込む。

『・・シンジ君、準備は良いかしら?』
「はい」

ぼくは、勢い良くミサトさんへ返事を返す。

『・・発進!』

ミサトさんの合図と共に、初号機の巨体が乗ったカタパルトが、
電磁射出レールの上を、火花を散らしながら戦場へと駆け上がって行った・・・




To Be Continued...



-後書-


うう、お約束とはいえこの辺はちょっとマンネリかもしれません・・・次回はサキエルとの戦闘シーンの予定です。
しかしシンジ君、予定より段々お茶目になっていく(笑)でも赤い初号機、まるで赤い彗星ですね(爆笑)
一人称で書くとその人が聞いた事以外書かなくてすむはずなので、本来文章は短くなるはずなんだけど、なぜ(苦笑)


ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。


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