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EVA・きっと沢山の冴えたやり方

・第二十二話 マグマダイバー・囚われの小鳥   by saiki 20030421


少し暑さが残る午後、急にアスカから私へ誘いの電話が有った・・・
修学旅行用に買い物をするから、暇だったら行かないかって・・・
碇君達と一緒に、修学旅行へ行ける・・・それを、とても嬉しいと感じる私・・・

アスカには悪いけど、また、碇君と一緒に過ごせる・・・
それが、たとえ綾波さんやアスカの後ろから、碇君をそっと見守るだけででも・・・

「・・・碇君・・・」

私は、密かに想いを寄せる彼の名を口に載せてみる・・・私の頬が、ちょっとだけ赤く染まる・・・
私の碇君への想いは、少し前に鈴原君に向けていた物とは違うと思う・・・
耐えがたいほどに焦がれる想い・・・
だから私は、額に滲む汗をハンカチで拭いながら、ここで彼らをじっと待っている・・・

天使の像をモニュメントに頂く噴水、僅かに吹き始めた風が少しだけ涼しさをかもし出す・・・
そして、やっと私の待ち人達が人ゴミの影から現れる・・・

碇君、そしてその両腕を胸に抱えるようにすがる二人の少女・・・
私の目には彼らの周りは、他の場所より鮮やかに感じられた・・・
二人の少女、その蒼と朱金の髪が、碇君の黒い髪とコントラストをかもし出す・・・
そして、朱金の髪の少女が、縋り付いていた手を放し、私へ駆けよりながら手を振る・・・

「ヒカリ〜〜〜〜ッ!」
「アスカ!」

私の名前を呼びながら掛け寄って来る、朱金の髪の少女・・・アスカ・・・
彼らだけが、私を委員長と呼ばない・・・
アスカは最近、まるで蕾が花咲くように綺麗になった・・・
そして、碇君とうちとけた様に、自然に話す彼女・・・
私は彼女が羨ましい・・・私にもう少し勇気があれば、彼女のように彼と話せるんだろうか?・・・

「ごめんヒカリ・・・待った?」
「うん、ちょっとね・・・」

私はアスカを、眩しそうに目を細めて見つめる・・・彼女の朱金の髪が、やや傾きを増した太陽に輝く・・・
彼女が笑うと、女の私でさえドキッとするぐらい明く艶やかな笑顔が、その顔に浮かぶ・・・
彼女の笑顔に見ほれていた私へ、アスカがちょっと顔をしかめ口を開く・・・

「ヒカリ・・・アタシの顔に何か付いてる?」
「ううん・・・アスカの笑顔が、何だかとっても素敵だったから・・・」

私の率直な褒め言葉に、アスカの色白の顔がポッポッと赤くなる・・・
そんな彼女を、私の羨望の眼差しが見つめる・・・
アスカが可愛く、はにかんだような笑みを浮かべて小さく呟く・・・

「ありがと、ヒカリ・・・でも、シンジに比べたらアタシはまだまだよ」
「うん、そうねアスカ・・・でも、アスカは最近凄く綺麗になったわ」
「・・・お待たせ、洞木さん・・・アスカ、なんの話をしてるの?・・・」

ちょっとぎこちない口調で、綾波さんが私へ話し掛ける・・・
彼女の微笑みも、女の私が見惚れるぐらいに可憐だ・・・
何だか、少し前まで彼女が、無表情で無口だったなんて、とても思えないぐらいに・・・

「お待たせ洞木さん、暑かったでしょ、冷たい物をでもどうかな?・・・もちろんお奢るから」
「う、うん・・・碇君、ありがとう・・・」

碇君が私へ、取っておきの頬笑みを浮かべて、優しく呼び掛ける・・・
私は思わず頬を紅色に染めて、ほわっとした心地よさに包まれたまま、たどたどしく返事を返す・・・
何だか彼の頬笑みを見ていると、私はこの午後の照り返しも、蒸し暑さも忘れてしまいそう・・・

「ええっと・・・とりあえず、喫茶店で良いかな?」
「・・・あっ、もちろんよシンジ」
「・・・う、うん碇君・・・」
「・・・え、ええ、私もOKよ」

私達は少しの間、ぽっとしてたようだ・・・
碇君の声にはっと気が付いて、慌てて声を揃えて彼に返事を返す・・・
あははっ・・・
アスカと綾波さんも、碇君の微笑みに当てられたのかも・・・ううっ、彼の微笑みは強烈だわ・・・
碇君が先に立ち、私達に合わせてゆっくり足を運ぶ、
その後を私、アスカ、それに綾波さんが横に並んで追い掛ける・・・

並んで歩くアスカと綾波さんが、仲良さそうに微笑みながら話している・・・
良かった、二人の中がギスギスしなくて・・・
彼女達の姿を見て、私も微笑む・・・
いつか綾波さんが言ったように、碇君がアスカの事もまとめて愛してくれたのだと思う・・・
でも私には、アスカのような勇気は無い・・・ただこうして、微笑みながら碇君達を見つめているだけ・・・

「・・・私はカキ氷・・・レモンで・・・」
「じゃあ、僕もカキ氷でメロンにするよ」

喫茶店に入り席に着いた綾波さんが、早速メニュを見て決める、碇君も彼女に習いカキ氷を注文した。

「ヒカリ、ここのジャンボパフェは絶対にお勧めよ」
「えっ・・・ジャンボ・・・」

アスカは顔中に笑みを浮かべながら、私にジャンボパフェを勧める・・・
これって、二人前あるわよアスカ・・・私は、メニューの写真を見て目を丸くする・・・
私は昨日、風呂上りに見た体重計の目盛りを思い浮かべる・・・だ、駄目!アスカの誘惑に乗っちゃあ・・・

「じゃ、アタシはジャンボパフェ・・・ヒカリも決まった?」
「わ、私は・・・私も、同じ物を・・・」

うぅっ、私の堪え性の無い心はジャンボパフェの魅力には逆らえなかった・・・
こうなったら、晩を軽く済ませるしかないわね・・・私は心の中で、ザメザメと涙を流しながら誓う・・・

「あはは、来た来た・・・ヒカリ、凄いね・・・美味しそうじゃない?」
「ひっ・・・こ、これがそうなの?」

でも、目の前にそれが運ばれてきた時、私はやっぱり後悔した・・・
ジャンボパフェその実物は、見本写真で見たより凄く大きく感じる・・・
丼の様な特大のグラスに、高層建築の様にうず高く積まれたバニラアイスとフルーツ・・・

「あはははは・・・これは、ちょっと不味いかも知れないわね・・・」

パフェの頂上を見上げながら、私の頬が引きつり・・・虚しい笑いが漏れる・・・
そんな私にアスカはニヤッと笑って、猛然とした勢いでパフェをスプーンで口に運び始める、
私も顔を引きつらせたまま、パフェにスプーンを突き立てた・・・

「ヒカリ・・・大丈夫?」
「あははははは・・・だ、駄目かもしれない・・・」

私は早くも、志し半ばでノックアウト寸前だった・・・
でも私に声を掛けたアスカは、信じられない事にすでに完食している・・・
綾波さんも、時々頭痛に顔をしかめながらも、カキ氷をほとんど食べ終わっていた、
碇君も食べ終わり、頬杖を付きながら店の外を窓越しにぼんやりと眺めている・・・

「シンジ・・・」
「なに、アスカ?」

アスカが、お行儀悪くスプーンを舐めながら碇君に呼びかける・・・
碇君が、視線を窓の外からアスカへ向け、穏やかな笑みを浮かべる・・・
アスカが、クリームを綺麗に舐め取ったスプーンを、彼に付きつける・・・

「気が利がないわね・・・あんた少し、ヒカリを手伝って上げなさいよ」
「うーん、洞木さんがそうしてほしければね・・・加勢が要るのかな、洞木さん?」

碇君が私へ、クスリと微笑んで問いかける・・・
アスカは露骨に人の悪い笑みを浮かべて、私へウインクした・・・
私は頬を薄赤く染めて、目を忙しなくアスカと綾波さんの間で彷徨わせる・・・

「・・・服を選ぶ時間が減るから、手伝ってもらう方が良いと思うわ・・・」

カキ氷を食べ終わった綾波さんが、私へまじめな顔で助言する・・・
良いの・・・ほんとに良いの・・・綾波さん・・・アスカも・・・
私はますます赤くなりながら、うろたえて言葉に詰まる・・・

「そうだね・・・どうするの、洞木さん?」
「お・・・お願いできる・・・碇君?」

碇君の問いかけに、私はなけなしの勇気を振り絞って、彼にお願いした・・・
何でこんな事に、なけなしの勇気が必要なんだろうと言う、心の中の冷静な声を無視して・・・

    ・
    ・
    ・
    ・

アスカが、私へ派手な水着を見せて笑いかける・・・

「ねえヒカリ・・・こんなのどうかしら?」
「ウーン、ちょっと派手過ぎない、アスカ?」

喫茶店を出た私達は、東京第三デパートの水着売り場で、修学旅行用の水着を選んでいた・・・
流石に碇君は、コーナーの外で私達を待っている・・・
そして、つき合ってくれたお礼に、私へ一着買ってくれるって・・・
嬉しい・・・でも、始めて男の子に買ってもらえる服が水着だなんて・・・
私の心の中で、ちょっと複雑な気持ちが渦巻き、頬が赤みを増す・・・

「・・・で、どうだったのヒカリ?」
「な、なにアスカ?」

アスカが水着を選ぶ手を休めて、私の耳へ口を近づけて囁く・・・
何だか、耳へアスカの息が掛かってこそばゆい・・・何が言いたいのアスカ?

「もちろん、一つのパフェをシンジと分けて食べる気分・・・」
「あ、あれはアスカが・・・」

アスカが、おろおろする私の目を見つめて、悪戯っぽくクスリと笑う・・・

「どきどきして、気持ちよかった?」
「・・・・・・」

私は真赤になって何も言えずに俯き、思わず、手に持った大人し目の水着を握り締める・・・

「満更でもなかった様ね・・・でも良かった、ヒカリが承諾してくれて、
おかげでアタシはシンジと間接キッスできたしね・・・ありがと、ヒカリ」
「えっ・・・」

私はアスカの言葉に、思わず顔を上げた・・・
私の目に、アスカのちょっと頬を赤く染め照れた顔が飛び込んでくる・・・

「アタシ達って、ディープなのと違って、こういうソフトなイベントは稀有なのよね・・・」
「あ・・・アスカ・・・」

私はアスカの、意味深な発言をどう取って良いのか、戸惑いながらも・・・
妄想が暴走して、湯だった様に赤くなってしまう・・・でも確か、アスカって大学出てたわよね・・・
まさか、アスカと綾波さん、もう碇君と大人の関係になってるんじゃ・・・

「うん・・・どうしたのヒカリ?」
「アスカ・・・まさか碇君と・・・」

私の考えが、どんどん怖い方へ暴走する・・・
そう言えば、二人ともだんだん艶やかで妖艶とさえ言える美しさを、
その身にまとっているように思えるのは、何故なんだろう?

「・・・洞木さんアスカ、これなんかどう?・・・」

真赤になって固まった私と、それを怪訝そうに見つめるアスカへ、綾波さんが突然話しかける・・・
その声にはっと正気に戻る私・・・危ない危ない、もう少しで暴走の果てに叫びだすところだった・・・

「あ、アタシが言うのもなんだと思うけど・・・それ危なすぎだわ、レイ」
「だ・・・大胆なのね綾波さん・・・」
「・・・そう?・・・」

私と、アスカの見つめる前で、ハイレグの目の覚めるように真赤な色をした、凶悪にきわどい水着を手に、
綾波さんは、納得行かない表情で頭を傾げる・・・綾波さん、いくらなんでもそれは不味過ぎるわよ・・・
修学旅行先の沖縄の海には、碇君以外にもカメラを抱えた相田君とか、いろいろといるのよ・・・
綾波さん、分かってないのかしら・・・私の胸に、ちょっと不安がよぎる・・・

でも、アスカもだけど・・・綾波さんも綺麗・・・
最初の頃は、近寄りがたい冷たい人形のような美しさだったけど・・・
今の彼女は頭を傾げる何気ない仕草さえも、女の私をドキドキさせる・・・

「ヒカリったら、レイを見つめちゃって・・・惚れた?」

アスカが私の目線に気が付いて、人の悪い笑顔で私をからかう・・・
私はちょっと顔をしかめて、逆にアスカへ聞き返した・・・

「アスカと綾波さんが最近綺麗になったのは・・・やっぱり碇君のせいなの?」
「何故そう思うの、ヒカリ?」

相変わらず人の悪い笑顔を纏わり付かせたまま、アスカが口を開く・・・

「何だか綾波さんみたいに、アスカもどんどん綺麗になっていくんだもの・・・」

アスカの笑顔が、ますますその人の悪さを深めたように私には感じられた・・・
彼女の口から、信じられないような言葉が私の耳へ飛び込む・・・

「ヒカリも三号さんで良ければ、私達に混ざる?」
「えっ〜〜ええぇっ!」

アスカの言葉に、私はデパートの中だと言う事を忘れたように驚嘆の声を上げた・・・
でもアスカは、私の口をその手で素早く余裕を持って塞ぐ・・・
私は自由になろうともがくが、彼女の手はしっかりと私を押さえ込む・・・
そして身動きならない私の耳元に、アスカは顔を寄せて囁く・・・

「声が高いわよ・・・落ち着きなさいヒカリ、冗談よ」
「もう!からかわないで!アスカ!・・・」

私はアスカの手を振り解くと、ちょっと頬を膨らませてアスカからはなれる・・・

「何故、アスカ?・・・私も碇君もかまわないのに・・・」
「馬鹿ね、レイ・・・ヒカリには刺激が強すぎるわよ」
「そう・・・そうかもしれない・・・」

でも私は、二人の小声での会話を聞き逃さなかった・・・

    ・
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    ・

私達は飛行機の数時間の旅の後、修学旅行の目的地沖縄へとついた・・・
この地もセカンドインパクトが原因の海面の上昇で、かなりの名所が水没し、
多くの人々が、人工のメガフロートの上に都市を築いて生活している・・・

セカンドインパクトで流れが変わってしまった海流が、日本全体を8月の気候に染め上げてしまった・・・
でも、もともと亜熱帯に近かったここの気候はセカンドインパクト前とあまり変わりは無いらしい・・・
だからいまだにハブとか、イリオモテ大山猫とかも生き残っているとか・・・

海面の上昇で沈没し、苦労して移築された新那覇市の首里城跡や玉陵なんかを私達は見学し、
人工海岸で体を焼き、スキューバーを楽しみ、お土産を見繕い宅配で発送した・・・

そして・・・私達の楽しかった修学旅行最後の夜・・・
風呂上りに自動販売機へとジュースを買いに行ったあと、私の記憶はぷっつりとそこで途絶えた・・・

    ・
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    ・

何でこんな事になったんだろう・・・泣き疲れた私は、すでに涙もかれてしまった・・・
私はいま、裸で身動きさえ取れずに、倉庫らしき場所に敷かれた薄汚いマットレスの上に横たわってる・・・
すでに時間の感覚も薄れてきて、今が何時なのかも分からない・・・

じっとりと湿り気を帯びた空気と、不安に駆られて流れる脂汗で、
床のマットレスに当たる肌が気持ち悪い・・・こらえ切れずに私は、芋虫のように体をくねらせる、
後ろ手に掛けられた手錠の鎖が音を立て、私を拉致した、気味の悪い男達が私を睨みつける・・・

「撒き餌は確保、状態は良好」
『了解、ターゲットを呼び出す』

薄気味悪い男達の一人が、通信機らしい物に短く言葉を呟くとそれに答えて機械から声が返る・・・

「合図あり次第、搬出を始める」
『了解、オーバー』

男は通話を打ち切るとニヤリと僅かに口元をゆがませて、
私を品定めするようにその無表情な目で舐めるように見つめる・・・
私は全身に鳥肌が立つのを感じた・・・嫌らしい目つき?・・・
ちがう、この人が私を見る目は人を見る目じゃない・・・

「Uボートへの搬出準備に入れ」
「ヤー」

感情のこもらない声で、無表情な男達の間に短い指示が飛ぶ・・・
黒い軍服を着た男達が言葉少なく、私の周を音もなく立ち回る・・・
そう、私を見る彼らの目は、まな板の上に乗る魚を見る時のそれのようだ・・・

それに気付いた私は羞恥と恐怖にその体をすくませ、涙に腫れた目を堅く閉ざす・・・
幅広のテープに口を塞がれ、心細い私は心の中で叫び続ける・・・碇君・・・助けて・・・



To Be Continued...



-後書-


あはは、今気が付いたんですがフイルムブックに付属の設定書によると
三番の冷却パイプは後頭部に繋がってます・・・左手は四番だ・・・
設定書にもラストで使うのは四番にしてくれって書いてあるし・・・何故に?

申告とか風とかで執筆送れちゃいました・・・まだスランプ抜け切ってないと言うか、いまひとつ、
だんだん溢れるばかりのリビドーが品切れに・・・まあ、仕事もあるしまことに情けない(汗)

いまひとつ、書きたいとこが膨らまなくて二ヶ月も更新できなかった上、
何だかとんでもないところで切れてますが、お許しを。
しかも、この続きはちょっと先になりそうです(涙



ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。


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