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EVA・きっと沢山の冴えたやり方

・第四話 見知らぬ、天井・赤い瞳   by saiki 20021106



闇が蒼い・・・いまだ明けぬ夜の闇・・・
誰も居ない病室の中で、わたしのルビーのように赤い左目は天井を見つめる・・・
痛み止めが切れたせいか体中が痛い・・・でもいいの、私には代わりはいるもの・・・
だって私は人ではないもの・・・私は碇司令によりエヴァのため、
そして依代として消えて行くために、この世界へ生み出されたもの・・・

でもいまは、病院のベッドの上で、なんの役にも立たず横たわっているのが私・・・
きのう使徒が来た・・・でも、役立たずの私に召集は来ない・・・きっと、私はもう用済みなのね・・・

もの思い沈む私・・・
そんな時エアシリンダーの低い音と共に、
誰も訪れないはずの早朝の私の病室のドアが開き、そして閉じる・・・

「・・・だれ・・・」

痛みで身動きの取れない私は、かすれるような声で誰何した・・・
入ってきた何者かが、無言で私のベットの傍らにたたずむ・・・
私は重い頭をゆっくりと侵入者へと向ける・・・私の蒼い髪が眼にかぶさり、見通すのを邪魔する・・・
私の病室に入ってきたのは、私と同じぐらいの年の、
艶やかな黒髪と引き込まれる様に暗い瞳をした少年だった・・・

「辛そうだね・・・綾波・・・」
「・・・貴方は誰・・・なぜ私の名前を知ってるの・・・」

私の紅い左目と、彼の漆黒の瞳が絡み合う・・・
そして先に目をそらしたのは私・・・なぜだろう動悸が激しい・・・

「僕は碇シンジ・・・サードチルドレンだよ」
「・・・そう・・・それで私を知ってるのね・・・
碇・・・貴方は碇指令の息子なの?」
「そう言う事になるかな・・・」

そう言って彼は私に微笑む・・・そんな彼に私の瞳はひきつけられる・・・
さっきから動悸が激しい・・・私の体はどこかおかしいのね・・・

「・・・私に何の用なの・・・」
「綾波に渡す物があるんだ・・・
ちょっとの間、苦しいかもしれないけど、僕を信じて我慢してくれるかい・・・」

彼の顔が悲しげに、月が雲で隠されるように曇る・・・
そう・・・きっと、碇指令が役立たずの私を消すために彼に毒でも預けたの?・・・

「・・・碇指令から?・・・いい、ひと思いにやってください・・・」

私は穏やかな微笑を浮かべ・・・ゆっくりと左目を閉じる・・・
これで私は苦痛から解放される・・・あとは、三人目にすべて任せればいいのね・・・

「違うよ・・・これは、前の世界の綾波から預かったものだよ・・・」

”前の世界の綾波”って何の事?
わからない・・・ LCL(ダミープラント) に漂う私達以外にも私は居るの?
私は驚いて目を開ける・・・開いた瞳の前に彼の握られた手があった・・・
その手の中が蒼く輝き始める・・・彼が手を開くと、蒼く輝やく光球が何の支えも無く浮かんでいた。
私を見つめる彼の漆黒の眼が、わずかだが紅く輝く・・・何が起こっているの?

「・・・それは何なの・・・」
「これは、前の世界の君自身さ」

私の疑問に彼が答える・・・でも、私には意味が良く分からない・・・
蒼く輝やく光球は、ゆっくり私の額の上に下りてくる・・・
私は、その自分の命を奪うかも知れない、それを思わず見つめていた・・・
それはとても綺麗だった・・・微妙に明るさを変えながら蒼く輝やく光球は下りて行き、
やがて私の額の中へ溶け込むように消えた・・・不思議と痛みは・・・・・

「あうううっ・・・くうっ・・・」
「ごめん綾波、すぐ収まるから・・・」

私の頭の中を、掻き回すような痛みが駆け巡る・・・そしてイメージが走馬灯のように湧き上がった。
碇君に全裸で引き倒される私、使徒と戦う私、碇君とユニゾンする私、碇司令を無視する私、
自爆する私、リリスと一体になって巨大化する私、赤い海からサルベージされる私、アスカと抱き合う私、
私、私、私、私は誰・・・ここに居る私は・・・いったい誰・・・・

「・・・い・か・り・く・ん・・・」
「綾波・・・」

見上げると、私の顔を覗き込んだ碇君の瞳から、涙が私の頬に落ちる・・・
気が付くと、私も碇君と同じように眼帯に覆われていない左眼から涙を枕へ滴らせていた・・・

「・・・碇君・・・ただいま・・・」
「おかえり・・・綾波」

碇君の顔が私の視野一杯に広がる・・・私は頬を紅く染めゆっくり眼を閉じた・・・
碇君の唇が私の唇に押し付けられ、唇を割り開いてお互いの舌を求め合う・・・

「んんっ・・・くぅ・・・」

お互いの唇をむさぼるような濃厚なキスで、私の頭はふらふらする・・・
やがて、どちらからとも無く唇を離す・・・私の中で彼の暖かさが広がった・・・

「・・・はぁはぁ・・・碇君・・・」
「ごめん・・・綾波、傷に障った?」

私は肺から吸い出された空気を求めるように、苦しげに喘ぐと
碇君が私の傷の加減を心配してくれた・・・碇君はやさしい・・・

「・・・ううん・・・大丈夫・・・いま直すから・・・」

私は使徒モードに切り替わった体に、いまある欠損部分の修復を開始させる。
マイクロS器官が動き始め、私の瞳はいつもより余計に紅く輝き始める・・・

「はうんっ・・・」

いままでの苦痛が薄れて行く・・・思わず声が漏れるほど気持ち良い・・・
私の体中に注ぎ込まれた活力が、所狭しと駆け回るのを感じる・・・
私の血が肉が沸き立つように増殖して、全ての傷を癒していく・・・
数分もあれば、私の体のすべての不都合は解消されるだろう・・・

「・・・碇君・・・アスカは?」
「まだドイツだよ・・・」

アスカはまだ ドイツ(ネルフ支部) にいる・・・そう、 第六使徒(ガギエル) 襲来のタイミングがあるから・・・
会いたい・・・たとえそれが私の知ってるアスカじゃなくても・・・

「・・・そう・・・」
「でも、綾波と違って、アスカにはどうするか選ばせて上げる約束だから・・・
だから仮にアスカが来ても、彼女が選ぶまでは僕達の知るアスカじゃ無いよ」

碇君が寂しそうに私の瞳を覗き込む・・・

「・・・そう、こちらの 私達の体(スペアボディ) を使うとしても・・・
アスカの心が決まらないと使えないわ・・・アスカが悲しむから・・・」
「うん、綾波・・・アスカの事は待つしかないね・・・」

私は右眼の眼帯を外し、両の眼で碇君を見つめてにこりと微笑えんだ、
碇君も微笑みながら右手のギブスを外すのを助けてくれる。
碇君はマギの眼を誤魔化す為、最小レベルのATフィールドを爪に這わせて
ギブスを両断して行く・・・やがてギブスは二つに分かれて床へ落ちた・・・

「・・・ありがとう、碇君・・・」
「うん・・・」

ギブスから開放された私の白い手を、碇君は愛しそうにゆっくり撫ぜてくれる。
そうしてもらうと碇君の暖かさが肌にしみる様で、大変気持ちいい・・・

「・・・碇君、胸の包帯も取りたいの・・・」
「あ、ごめん綾波・・・」

碇君が頬を染めて私から手を離す・・・腕に碇君の暖かさが無くなって、とても残念に感じる私・・・
でも良いの・・・すぐに思いっきり碇君に甘えられるから・・・
わたしは検査衣の前をはだけ、胸の包帯に手を掛ける・・・なぜか包帯がうまく外れない・・・

「手伝おうか綾波・・・」
「うん、碇君・・・」

碇君は頬を紅くして手を私の胸に伸ばす、私も頬を染め胸の鼓動が激しくなる・・・
私の体の上を包帯越しに碇君の指が這い回る・・・それが、まるで愛撫されているようで気持ちがいい・・・

「あんんっ・・・」
「ごめん、綾波、くすぐたかった?」
「・・・いいの・・・碇君、続けて・・・」

私は、思わずはしたない声を上げてしまった・・・私の体は感じやすいの・・・
それとも触ってるのが碇君だから・・・私は碇君の指だから気持ちが良いの?
伝えられる気持ちよさを、私は下唇を噛締めて我慢する・・・
解かれた包帯が床へと落ちて行く・・・
夜の闇に白く浮かび上がるように、私の小さいけど形の良い胸がむき出しになる・・・
その乳房の上に碇君の手が被さり、その大きさを確認するようにするりと優しく撫ぜる・・・

「はうっ・・・碇君?・・・」

私は、自分乳首がいたいほど張っているのを感じる・・・
私・・・感じてるの?・・・碇君の手だから?
使徒モ−ドの私と碇君、限りなく使徒に近いもの・・・
まったく別の種の私達に子供は出来ない・・・でも・・・体は感じるのね・・・
碇君が包帯を取るためはだけられた、私の胸へ顔を近づけて行く・・・

「・・・だめ、碇君・・・私、シャワー浴びてないから・・・」
「僕は気にしないよ、綾波・・・これは僕達の契約の印・・・」

碇君は私の胸の谷間に唇を付け、赤いキスマークを刻む・・・
唇が触れた胸が熱い・・・私、碇君を求めている・・・
碇君がベッドの下から、クリーニングされパックされた服を取り出す。

「綾波、これに着替えて・・・父さん達に挨拶に行こうよ、僕達の家を頼んであるから」
「・・・葛城一尉と同居?・・・」

心配そうな私の声に、碇君は頭を横に振った・・・私はほっとして、思わず笑みを浮かべる・・・

「綾波、安心した?」
「・・・うん・・・葛城一尉が居れば、きっと碇君と一つになれないから・・・」

私は碇君にうなずきながら、検査衣をベッドの上に脱ぎ捨て、
惜しげも無く純白のショーツ一枚で白い肢体を夜の闇にさらす・・・

「綺麗だ・・・綾波・・・」
「・・・碇君・・・」

私は頬を紅く染め手を止める・・・碇君が止まってしまった私に服を差し出す・・・

「手止まってるよ、綾波」
「・・・碇君、意地悪・・・」

私はちょっとほっぺたを膨らませて、碇君相手にすねてみせる・・・
碇君がそんな私を見てクスクスと笑う・・・
私は手早くブラウスとスカートを身に付けた・・・

「行こう、綾波」
「・・・うん、碇君・・・」

碇君が私へと手を差し伸べてくれる・・
私はその手にすがりつくように体を寄せる・・・

そんな私達の前で病室のドアが開き、そして閉じる・・・
私達の前には暗く人気の無い通路がどこまでも続く・・・

私は碇君と歩きながら、記憶の整理のために、この体へいままで起こった事を思い起こす・・・
そして思い知る、自分でも驚くほど思い出が少ない・・・
印象に残ってるのは、零号機の起動失敗ぐらいだろうか・・・

それに比べて、しっとりと溶け合った前回の私の記憶はなんとカラフルで
多彩で暖かいのだろうか・・・碇君・・・アスカ・・・また一緒に暮らしたい・・・

私達はいつものエレベーターを乗りついで、いかついドアの前に立つ・・・
碇君が私の顔を覗き込む、私はそんな碇君へ微笑みを返しうなずいた・・・
碇君が入り口に座る秘書に声を掛ける・・・

「父さん、まだいる?居たら、綾波を連れて来たって伝えてくれるかな」

やがて、私達の前の分厚いドアが開き中へ入る、中には私が碇司令と呼んでいた人と、
白髪の副司令と呼んでいた人が書類を片付けていた・・・
私達が入ってきたのに気づいて碇司令が振り向く、私はその顔に違和感を感じた・・・

「・・・碇司令・・・いえ、お義父様・・・お髭はどうされたのです?・・・」

私の納得の行かない顔に、碇君は困ったように苦笑を浮かべた・・・




To Be Continued...



-後書-


ああ・・・ちょっと猥褻で甘い、なんでもない文章が続いていく・・・(汗)
当初の予定ではここへゲンドウ、冬月コンビがくる予定だったんですが
四話でレイと書いちゃったし、ストレートに三話の続きでも面白くないので
ついに使徒モードレイちゃん復活となりました、良かった良かった
ということで見知らぬ、天井は変則的ですが三話構成になる予定です。(苦笑)


ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。


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