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穏やかな微笑と共に

第4話 case.Misato  by saiki 20030627



今日、ついに私、 葛城(かつらぎ) ミサトは、噂となっている幾多の失踪事件の真実を確かめるべく、
捜査を開始した、私の相棒となるのは長年愛飲して来た”エビチュ”と、銃のみである・・・

「こんなとき・・・ドイツにいる、アイツがいてくれたら心強いのに・・・」

私は、心の中に浮んだ無精髭が似合う優男を、思わず頼りにしようとする自分を自嘲した・・・
アイツを頼りにするなんて・・・ここに最近見ない、リツコがいたら、きっと無様と笑い転げるだろう・・・

いま私は、ネルフ内部に流れる幾つかの怪しい噂のうち、
”補給倉庫をうろつく、謎の白い影”の正体を探るべく、薄く赤錆の浮くコンテナの陰に潜んでいる・・・

冷たく埃っぽい床の上に、シュラフを引いて胡坐をかいた私は、
UN謹製のパイロットウォッチを覗き込み、時間を知ると今日幾度目かの溜息をつき、
暗闇の中で指を、氷と”エビチュ”を満載したクーラーボックスへ伸ばす・・・
そして、取り出した良く冷えた缶のプルトップを、音を立て無いように、慎重に引き開ける・・・
微かな炭酸の抜ける音と共に、命の水が泡と共に吹きこぼれた・・・

「うっ・・・勿体無い・・・」

私は、床に滴った僅かな染みに眉をひそめると、思い切り仰け反って、良く冷えた液体を喉に流し込んだ・・・

「くうぅ・・・この一瞬のために、生きてるって感じね・・・
矢だろうと、鉄砲だろうと、もう幽霊だろうと、もってこいってのよ!」

思わず低い声で、私は、歓喜の声を上げる・・・その時、ドアが引き空けられる音が響いた・・・
私は、薄くルージュを引いた唇に残る泡を、手の甲で吹き取り、
床に並べておいた、銃とマグライトを手にすると、猫科の動物のように音も立てずに素早く位置を変える・・・

そして、軽やかなステップで倉庫へ入ってくる、白い影の後ろへ忍び寄ると、いきなり銃を付きつけ誰何した・・・

「フリーズ!!!!」
「・・・・・・・・」

しばし時間が、私の目の前で局部的に止まる・・・
私が銃を付きつけ、マグライトで照らし出したのは・・・蒼銀の髪と赤い眼の少女だった・・・

「れ・・・レイ、アンタなんでこんなとこへいるのよ!・・・」

私は、眩しさに眼を瞬かせる少女に、思わず間の抜けた声を掛ける・・・
レイは、私の声に不思議そうに、その首を僅かに傾げた・・・ああ、なんてことよ・・・
私は、いままでの緊迫に満ちた時間が、全くの無駄になった事を嘆いて、思い切り大きな溜息を突いた・・・

「補給倉庫をうろつく、謎の白い影の正体がレイだとはね・・・
幽霊の正体見たり枯れ尾花・・・か・・・久々の荒事だと思ったのに・・・
次は、”未使用水路区画に無数に光る、謎の紅い燐光”でも当たろうかしら?・・・」
「そう思います?・・・葛城一尉・・・」

私は、背後から掛けられたレイらしかならぬ声に、思わず振り向こうとして・・・
突然、自分の目の前が真紅に染まる・・・
薄気味悪い、穏やかな微笑みを顔に貼り付けた・・・レイ、いえ・・・レイそっくりの少女・・・
私は最後に見たのはそれだけだった、朱に染まった世界で、
大量の水をまとめて、床へぶちまけられる様な音が倉庫の闇の中で辺りに響く・・・

    ・
    ・
    ・

濃厚な、発情期の獣の巣の中のような臭気が鼻に付く・・・
なに真っ暗じゃない・・・ここは何処?
私の足に、脛毛の生えたごつごつとした筋肉質の足があたる・・・
次の瞬間、自分はそれを思い切り蹴飛ばしていた・・・

「いてて・・・おい、葛城・・・今日も大学を休むのか?・・・」
「・・・うん・・・なんだ・・・加持君か、いま何時・・・」

私は、おへその辺りを薄くマネキアを塗った爪で掻き毟ると、ビールの缶を手探りで探す・・・
コンビニの袋と、空の缶の間から指先がやっと中身のあるビールの缶を見つけた・・・

「ああ・・・もう昼になってるな・・・」
「・・・あうっ・・・じゃあいい・・・今日も休む・・・」

アイツは布団をかぶったまま、時計を確認し、
私も布団から出ないまま、プルトップを空けて中身を飲み干す・・・

「お、おい葛城・・・布団の中でこぼすなよ・・・」
「加持〜っ、私がそんな勿体無い事をするわけ無いじゃん・・・」

私は、布団の隙間から入る光に、薄っすらと浮かび上がるアイツの顔に、 () だるそうに笑いかけた・・・

「おれ、古谷教授のレポート出したっけな?」
「・・・いいジャン、加持君が留年したら、
私も付き合ったげるから・・・安心しなさいよ・・・うふふふふ・・・」

暗闇の中のアイツの顔が、嫌そうにゆがむ・・・

「無責任な事を言うなよ、葛城・・・俺はちゃんと三年で卒業するぞ・・・」
「卒業か・・・私達・・・何時からこうしてるんだったっけ?・・・
何だか、何年もずーっとこうしてるような気がしてきた・・・」

私は、眠気にアルコールによる酩酊も手伝って・・・
また意識を少しずつ手放し、眠りの底の安らぎへと沈み込もうとしていた・・・

「葛城・・・」
「なに?・・・加持君?・・・」

私を見つめるアイツの顔が、何時に無くマジだった・・・

「お前、亀でも助けたか?・・・」
「な、何の事よ?・・・」

眠気が少しだけ遠ざかる・・・

「知らんのか・・・まあいい、葛城・・・いま、幸せか?・・・」
「・・・か〜じ〜っ、寝かせなさいよ〜っ、
幸せに決まってんでしょ〜っ・・・お・や・す・み〜っ・・・」

私は、加持を怒鳴りつけると・・・
そのまま、穏やかな微笑を浮かべて、安らかな眠りへと包まれて行った・・・





To Be Continued...



-後書-


お前、亀でも助けたか? = うる星やつらビューティフルドリーマー参照の事。
エビチュ = ミサト愛飲のビールの銘柄、正確にはエビスビール、
  他にkuroshio bussan のBOA BEER(空飛ぶ幽霊船のボア・ジュースのパロディか?)
  なども飲んでいるのは、エビチュのイメージが強く、意外と知られていないようだ。


このケース・ミサトは、当HPの書下ろしです。
何だかまとめて電波が受信出来たので(滝汗
大盤振る舞いと言う事で・・・(苦笑、なんだかな・・・

一応、五話も、当HPの書下ろしの予定です
平行して六話は”戦国時代+エヴァ小説リンク集”の投稿掲示板にぼちぼち書く予定です。

ご注意!:新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。


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