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 梅雨明けの、六月最後の土日。初めて幸一を私の家に泊めることになった。
 先の水曜日、父母共に金曜から出張で、早く帰る母親も月曜日までは帰ってこない、と幸一が言うので、これはチャンスと瞬間的に判断して、私は幸一に提案した。
「じゃ、いっそ泊まりにおいでよ。土曜の昼ご飯から日曜の、まあ幸一がかまわなければ、昼ご飯くらいまでさ」
 幸一は即答はしなかった。喜びや期待とともに、不安も汲み取れる表情をしていた。

 私と幸一の秘め事は、長い時間一緒にいる休日には必ずあり、もう相当回数を重ねていた。風呂にも何度が一緒に入ったことがある。四年生としては大柄ながら、幼児体型を残した柔らかな肢体だった。私は幸一を後ろから抱いて、幸一の勃起したペニスを直接握って揉んだ。幸一は抵抗のかけらもみせず、そういう行為を受け入れた。私は幸一のからだ中にボディソープを伸ばし、抱きしめてからだ中を揉みしだいた。尻の肉を握ってやった。胸部や頬も撫でる。性器を触らず、それ以外の場所ばかり愛撫してやっても、幸一は勃起し、決して口には出せないまでも、性器を触ってほしそうな素振りを、確かに見せた。
 あえて性的な行為を何もしない日も作った。幸一がちらちら私を見て、今日は何もしないのかな、などと窺う様子は、私をときめかせ、支配的な欲望を充足させた。

 さまざまな意味で幸一は、私への依存を深めていた。

 「お泊まり」を受け入れる、ということは私との性的な営みの、深化を意味することは、幸一にもわかっている(もちろん私ほどはわかっていないが)。
「でもおじさん、お仕事は?」
 幸一は一応、ワンクッション置いてくる。この二ヶ月で、(おそらく)私に対してだけは、あまりぼそぼそでなく、少しはしっかりしゃべれるようになっていた。
「土日だよ。大学はない。家の仕事はいつでもいいのは、幸一とっくに知ってるだろ?」
「でも、仕事溜まっちゃわない?」
「全然。本当は金土日でもいいんだよ。でもそれだとさすがに、お父さんとお母さんが心配……はしないんだったね」
 と皮肉をこめて私は笑う。幸一もちょっと笑う。これもおそらく、私とだけ共有する彼の秘密の一つだ
「でも常識ないって思われないかとか考えて遠慮するか、私を変に思うかもしれないからね。土日一泊なら、大丈夫だろう」
 隣人というだけで、「親子ほども」歳の離れた他人同士が、あまりにもいつも一緒にい続けるのは、本当はかなり不自然だ。それを変だと思い、詮索しない彼の親自体が、むしろ「不自然」なのだ。
 土日一泊ぐらいなら、あの母親はすんなりOKするだろう。ま、体面を気遣って手みやげを持たせるくらいか。

 土曜の昼前、寝間着と下着の替えと、ハブラシなどを持って、彼は隣室である私の家に来た。何でもすぐに取りに帰れる距離ではあるが、「お泊まり」気分を味合わせるために、私がそうするよう提案した。

 昼食には二人で卵やハムのサンドイッチを作った。それを食べてから、次いで夕食の仕込みを済ませてしまう。夕食はカレーライスにした。せっかく長い時間を共有できるのだから、旨くするには長時間の仕込みが必要な料理を選んだ。子供受けのいいメニューでもある。
 昼食と、夕食の仕込みを終える頃には、二時半を過ぎていた。

  †

 暑い季節となり、幸一は元々半ズボンだが上はTシャツ一枚。私もTシャツと短パンというなりだった。私はいびつな足が目立つため、どんなに暑くても、ほんの近所に行く時でも、必ず長ズボンだが、一人の時と幸一といる時は、こうだ。

 幸一と私で二人プレイのゲームをした。私は幸一にやりたいゲームを聞き、何本かは彼のために買ってやった。ゲーム機のない幸一が持ち帰っても意味がなく、うちに置いておくのだが、実質は幸一に買ってやっているのと同じだ。食事も頻繁にともにして、疑似親子のような関係は深まっていった。だが幸一にとって本当に幸せな私との関係のターンは、長くは続かない宿命にあった。今だって内実は歪んでいるのだが、幸一には比較すべき「普通」の親子関係の経験がない。
 幸一の後ろにぴったりくっついて彼を抱き、ゲームをしながら彼の性器を揉んだ。空いた手で太ももを撫でた。幸一の性器はかたくなっている。
 私は幸一の半ズボンのボタンに、手をかけて外そうとしていた。この先は幸一には初体験の領域だ。幸一はおそるおそる、私のその手を、形ばかり押しとどめるように握った。だが幸一は私が途中でやめたりしないことを知っている。
「脱がすよ」
 と私は手を止めることなく囁く。先の展開に私は胸をときめかせ、手に汗をにじませる。幸一にも不安ばかりあるわけではない。性器は勃起している。さらなる快楽への予感と期待。
 私は幸一のズボンを白いブリーフが全て露出するまで下ろすと、そのパンツの上から、外見(そとみ)にもつっ立っているのがわかる性器を、つまんだり揉んだりした。幸一のからだは火照り、性器の先は湿って白いブリーフに小さなしみを作る。私はパンツの中に手を滑り込ませた。幸一はその私の手首をちょっと握るが、すぐに離した。このぐらいは序の口だよ幸一。翌朝まで長い。時間はたっぷりある。風呂でも直接性器に触れてやったことはあるが、その時よりもずっと激しく、私は指を使い、そしてパンツの中で幸一の幼いモノの包皮を剥きおろした。幸一が自分の性器が剥ける、仮性包茎の状態にあるのを知ったのはまだ先週のことだ。私が浴室で剥いてやった。
「剥けるようになったら、お風呂では剥いて洗うといいんだよ。皮とここの間に汚れがたまるんだ。おじさんのを見てごらん。幸一も大きくなったら、こうして毛が生えて、皮が剥けたままになるんだよ」
 私の、(幸一のモノに比べれば)皮が剥けて先が赤黒い、三倍も四倍も大きい、もちろん陰毛も茂ったモノを見せて、そう説明してやった。幸一は恥ずかしがってうつむいていたが、話はちゃんと耳に入っていたはずだ。皮を剥いた性器の先は、シャワーの湯が当たるのにも痛みを感じるほど、敏感だった。幸一は私の言うことは守るはずだ。毎日の浴室で、包皮を剥いて性器を洗っているだろう。

 まだまだ敏感だろうが……。私は剥いた亀頭の部分を親指で触れた。幸一は息を吸いこみ、ちょっと身をかたくする。
 幸一は「痛い……」と声に出した。視線はゲームのスタート画面に戻ってしまった真正面の液晶テレビ画面。
 私は幸一のブリーフを、陰嚢の下に引っかける位置まで下げると、指を唾で湿して、勃起し露出した小さなピンクの亀頭に、ちょんちょん、と触れた。幸一はきゅっと身を捩って反応する。私はリズミカルな亀頭への刺激を継続した。幸一は「ん」と高く掠れた声を何度か出し、剥き出しになった臀部をもぞもぞさせる。
 私は指先で亀頭をつつく動作をやめ、勃起した性器を濡れた指つまみ、上下に擦った。荒い息。肩や肘や腰に、順に力が入る。
「気持ちいい?」
 と私は幸一の後ろで囁いた。幸一は答えない。後からなので表情の変化は窺えないが、彼は恥ずかしくて言えないだけだ。私と幸一は男と男だし、反応を見れば幸一がただ痛みをこらえているだけのはずがないとわかった。
「痛くない?」
 幸一はこの問いには、言葉には出せないもののうなずいた。先週風呂場で剥いてやった時よりも、幸一の亀頭は刺激に慣れているはずで、この短時間にも少しずつ慣れてくる。ただきつくやり過ぎるとこの後痛みばかりになってしまうかもしれず、加減が必要だった。

 私は幸一のわきの下に手を回して持ち上げ、彼をあぐらの膝の上に乗せた。何度もしてやった抱っこの姿勢だが、尻が剥き出しなのが違う。私は幸一のブリーフと半ズボンを、さらに下ろして足から抜き取った。それから手のひらをなめ、指先を湿し直すと、濡れた手のひらで幸一の勃起した小さな性器を握りこんだ。左手で柔らかな腹部の肉をつかみ、揉みしだく。シャツの下から手を入れ、捲りあげながら、微妙な曲線を持ちすべすべの腹部から胸をさする。性器を握り、ゆるめ、また握る。Tシャツも抜き取ってしまう。これで幸一は靴下だけの裸になった。
 裸の幸一をクッションに座らせておき、私も短パンと下穿きを脱いだ。私のモノはすでに、斜め上を向いて、かたく勃起していた。ぼんやりした目で、幸一は私のその性器を注視しているように見えた。私は上も脱いで幸一と同じように裸になった。それから幸一の手を引いて立たせ、正面から抱きしめた。私の大人の肌と幸一の柔らかな子供の肌が触れ合った。幸一のからだは熱い。エアコンは弱めに入れてあるが、互いの素肌が汗ばんでくるのを感じた。私の勃起した性器は、幸一の腹部に押しつけられている。幸一は甘えるように私の胸に顔を軽く押しつけていた。私は鼓動が高まるのを感じた。幸一をさらに強く抱いた。
 私は幸一から一度離れ、
「ベッドに行こう、さあこっち」
 と言い、彼を寝室に導いた。何度か入れてやったことがある。狭い部屋に大きめのベッド、デスク、その上にノートパソコン、乱雑に仕事のものや小説などの本。
 幸一を部屋に入れドアを閉める。薄暗い部屋の灯りをつけ、寝室専用の小型エアコンのスイッチも入れた。やや空気は淀んでむっとするものの、元々室温はそれほど上がっていなかった。すぐに快適な温度になるだろう。二人のからだが熱くなっても大丈夫なほどに。
 私は幸一をベッドに仰向けに寝かせた。幸一にはこの先私が何をするのかよくはわからない。不安感に表情が少しこわばっていた。
「幸一はセックスって知ってる?」
 私は単刀直入に訊いた。
「言葉は聞いたことあるけど……知らない」
 本人の性への目覚めは、本来まだまだというところだ。四年生だと女児の方が先行しているだろう。だが早熟あるいは耳年増な同級生あたり、「年頃」の兄のいる子あたりから、そろそろ情報は入ってくる頃だろう。
 私は靴下を脱いでしまい、幸一の方へふり向いてベッドに足を上げ、じっと寝ている幸一の靴下も脱がせた。それから幸一の両肩の横に手をつき、彼に覆い被さった。幸一の色白の顔は火照っていて、目は潤んでいた。
「幸一は、本当のお父さんとお母さんが、裸で抱き合っているのを見たことあるんじゃないか?」
 聞き出した幸一の特殊な生育歴から、それは直接的に口にされなくても、あったに決まっていた。ただ正確には、男の方は本当の父親かどうか定かではない。
 幸一は返答できなかった。母親を殺害した男のことを思いだしたかもしれない。私はあえてそういう記憶を蒸し返したのだ。
「『普通』はね、大人の男の人と女の人がするんだ。抱き合って、お互いに気持ちよくなる」
「でも、お母さんは……苦しそうだった、けど……」
 幸一の表情が動いて、ぼそぼそと言った。私は幸一の顔に顔を寄せる。
「お母さんに訊いてみた?」
 訊けるはずがなかった。幸一は首を振った。
「すごく気持ちいい時と苦しい時って、似たような声、出るもんなんだよ」
 でも……と口が動いたが、幸一は結局何も言えなかった。
「嫌なこと思い出したかな?」
 私は幸一のさらさらの髪をそっと撫でた。もちろん私はわざと思い出させたのだ。
「お母さんは男の人に殺されたって、幸一は私に話してくれたね。でもそれはたまたま、その殺した男があまりにも『普通』じゃなかっただけだ。自分をいじめる人と一緒に住んで、何回も裸で抱き合ったりするわけないだろう?」
 実際には、支配と服従、暴力が日常である男と女の関係もあるし、幸一の母と男の場合、SM的性嗜好の果ての可能性もあったが、ここでそんなことを幸一に説明や理解をさせる気はない。
「特にお互い好きになって、子供も欲しいと思えばね、男と女はセックスする。そうしないと子供はできないんだ。幸一だって、私だって、お母さんとお父さんがセックスしたから生まれてきたんだよ」
 幸一はセックスという言葉だけを知っている一方で、性交や交尾の本質的な意味をきちんと理解していなかったらしい。
「私は幸一とセックスしたい」
 私の言葉に、幸一はかなり驚いたようで、何か言おうと唇は動くものの、なかなか言葉は出なかった。
「でも僕男……だよ」と幸一はやっと言った。
「男同士でもセックスはできるんだ。さっきおじさんが幸一のちんちんの先触った時、ちょっと声を出しただろ? あの時気持ちよくなかった?」
 幸一は目線だけで肯定のサインを送ってきた。シナリオ通りだ。
「セックスはもっと気持ちいい。だからお母さんは大きな、苦しそうに聞こえるような声を出すのを我慢できなかったんだよ。幸一もセックスすればわかるよ」
 もしかしたら男か、あるいは男と女相互の、歪んだ性欲の果てに死んだかもしれない、母親の気持ちがね。
「おじさん、僕、恐い……」
 幸一はすがるように言った。私はすっと彼の髪を撫で、優しく微笑んだ。
「幸一はおじさん嫌いか?」
 幸一は慌てて強く首を振った。本当にかわいいヤツだ。
「私がちんちんさわるのは、嫌だったかい? 正直に言っていいんだよ。どうしても嫌ならもうしないから……」
 幸一は私の言葉が終わる前にまた強く首を振った。幸一は選ぶ権利を与えられているようで、実は私に全てを選ばされている。私がにっと笑うと、幸一の顔にわかりやすい安堵の表情が拡がった。
「じゃあ、おじさんにちんちん触られるのは好き? 気持ちいい?」
「……うん……」
 幸一は首を少し持ち上げ、恥ずかしそうに肯定した。それでいい。
「あれもセックスの入り口みたいなもんだよ。だから気持ちいい。でもたぶん相性の合わない人や、まして嫌いな人にはされたくないはずだ? 違うかい?」
 幸一は物心ついてからこっち、自ら大人との当たり前のスキンシップさえ、避けてきたのだ。
「おじさんは幸一抱っこしたいなあ、裸にしたいなあ、セックスしたいなあ、って、たぶん会ったその日から始まって、少しずつ強く思うようになったのさ」
 その本質が肉食動物の食欲のようなものであったとしても、私は嘘をついていない。
「もちろん『普通』のことじゃない。『普通』の人には絶対ばれちゃいけない。男同士、しかも子供とセックスなんて、『普通』の人は絶対したいと思わない。でも私はしたいと思うし、特に幸一とはどうしてもしたいのさ。私はがまんしない。だから幸一に嫌われても、たとえ二度とうちに来なくなっても仕方ないから、こうして幸一に正直に話している。私はね、幸一。どうしても欲しいと思ったものは、どんなことをしてでも、手に入れようとする。法律に違反しようが、ばれたら『普通』の人に嫌われようがね。幸一も私のことが嫌いになったら……」
 幸一はがばっと上半身を起こし、私に抱きついてきた。
「ならないよ! おじさん好きだもん……」
 私はここぞという場面で、強いプレッシャーを幸一にかけたのだ。「普通」であり、人に言えない禁を破り、私の思うままの幸一になるのか、それとも私を切り捨て、凡庸な少年に戻ろうとするのか。幸一は前者を選んだし、私には彼が選ぶだろうという相当の自信があった。彼には戻るべき場所がないからだ。
 幸一の反応は予想以上で、私は感動さえ覚えた。私はゆったりと彼の幸一の手をほどいてまたベッドに背中をつけさせ、彼の顔に顔を寄せていった。
「いいね……?」
 まだまだ、静かに息を吐きながら、私は幸一に確かめる。幸一はゆっくりだが迷いなくうなずいた。
「後悔しないね。途中でもやめないね」
 幸一はまたうなずいた。私はノーの解答など想定していなかった。これは通過儀礼だ。「幸一、お前が選んだ道だ」という言質みたいなもんだ。幸一は薄く目を閉じ、これまでの「性的いたずら」の先にある「セックス」という行為に期待さえしているように見えた。
「じゃ、キスからはじめよう」

  †

 私は仰向けの幸一に覆いかぶさった姿勢のまま、幸一の唇に唇をそっとくっつけ、舌で少し上唇をなめる。
 それから私は幸一の口の中に舌を押し込んでいく。幸一は潤んだ目で間近な私を見つめている。私は一度顔を上げ、小声で囁いた。
「口を開けて……」
 幸一は言われた通りに、歯科検診みたいに大きく口を開けたので、私はかわいいなと思った。私はまた顔に顔を近づけ、幸一の口を全部塞げるくらい大きく口を開け、唇と唇が触れ合い、私は舌を幸一の口内に押し込んだ。
 匂いも味も、食べ物みたいにはしないはずだ。人間同士だから。だが少年の口内の味わいはやはり甘く、匂いも濃すぎない甘さを感じさせる。私は舌先をかたくして幸一の舌をなめ回した。積極的な反応こそぜず、戸惑ってはいるが、嫌がっているような感じはまるでない。ただ時間が長くなってくると息をできるのが鼻だけなので、ちょっと息は苦しくなる。私も同様、鼻息が荒くなる。
 私は右手で幸一の頭を抱え、いっそう強く唇と顔を幸一に押し当てる。それから左手を幸一の背中に回して、柔らかな臀部の双丘を撫で、二人のからだに挟まれ勃起した幼い性器を触り、握り、揉みしだいた。
 私は幸一の唇をはなし、一度顔を上げたあと、今度は幸一の額と頬にキスをし、首にもすがりついてキスをし、喉仏から耳の下までなめ回した。幸一の全身にさあっと鳥肌が走るのを感じた。胸をなめた。腹部の柔らかい肉を揉んだ。乳首を吸った。かたくした舌先で乳首のあたりをぎゅうぎゅう押した。幸一の鼓動を感じ、肌の汗ばむのを感じた。
「おじさんの手をなめて」
 と求めると、幸一は首をちょっと持ち上げ、さし出された私の左手のひらを、ためらうことなくぺろぺろなめた。口の中に指を一本一本押しこんでやったが、それも丁寧になめてくれた。幸一の唾液で濡れた指を使い、私は幸一の性器の包皮を剥きなおして、きゅっと握った。幸一が一瞬呼吸を止め、全身をかたくする。私は濡れた指をからませ、幸一の性器を握る手をゆるめたり強くしたりし、その間も胸やわきの下などを舌で愛撫した。右手はやわらかな曲線の尻や腹部をさすったり揉んだり、痛くない程度にきゅっと握ったりした。幸一は力を抜いたり、入れたり、身を捩ったり、掠れた高い声で「あっ」とか「う」とか短い声を漏らした。眉をひそめて、唇を歪めた幸一は、快楽にこらえかねているのだが、なるほど苦悶に耐えているように見えなくもない。

 私はからだを幸一の足の方にずらした。幸一の足を開かせ、その間に膝をついた。それから幸一の自らの唾液に濡れ勃起した性器を、口にくわえた。

 幸一は驚いた様子で、頭をちょっと持ち上げて私の方を見た。精通もまだない子供から見て、小便をする器官であるペニスをくわえられるのは、ちょっとインパクトがあるだろう。が、そこで快感が得られることは、幸一はもうとっくに知っている。
 私は一度口をはなし、
「噛んだりしないから心配するな。気持ちよくしてやるからな
 と早口で言い、また幸一の幼いモノをくわえた。幸一はベッドにがくっと頭を落とした。素直に私に身を任せるのだ。
 舌を使い、性器の根本から亀頭の部分までチロチロと細かく舌を動かして、なめ上げていく、「ん」という息の漏れのような声のような音を出した後、幸一は掠れた声で「いたい……」と漏らした。まだまだ、敏感すぎるんだろう。しかし、だんだんと慣れるさ。
 私は幸一の性器から口をはなし、
「痛いか。まあだんだん慣れるよ。でもちょっと優しくしてやるからな」
 と静かに言い、また幸一のモノをくわえた。「優しく」という言葉が効いて、幸一は「痛い」や「やめて」を言いづらくなるはずだった。
 私は舌の裏側を使って、幸一のペニスの、皮の剥けた亀頭の部分を押したりなめ回したりした。舌の裏は表に比べれば滑らかで柔らかい。少し息を吸ってやるとその柔らかい舌の裏面が性器に吸いつくのだ。幸一は「ああ、う!」と声を漏らし、時にはからだに力を込め身を捩った。私は舌先にかすかなしょっぱさ、甘ったるい少年の汗に似た味を感じた。
 幸一はすでに次々押し寄せる快感の虜になり、次の快感の訪れに期待していた。私は幸一の両足を手で抱えて持ち上げ、ぎゅっと幸一の肩側に押した。ちょうど赤ちゃんのおむつ替えのような姿勢になった。一度幸一のモノから口をはなした私からは、少し上向きでこっちに向かうかわいい肛門が丸見えだった。幸一は恥ずかしそうだった。電気は煌々とついたままだしな。幸一と私の唾液、先走りに濡れた性器は、じわじわと力を失いつつある。
 だが私はすぐに幸一の大股開きの足の間に顔を入れ、再度幸一のペニスを口にいれると、唇をきゅっとすぼめて顔を上下に揺さぶった。幸一の性器を、唇や舌、なるべく柔らかい部分を使って、かつ強く締めつけ、摩擦する。幸一はからだを右にひねり左にひねり、「あ」「く」と短い声を途切れ途切れに出しながら、全身で快感を表現する。私は唇で幸一の性器の根本を締めつけた状態で、舌をぐるぐるとそこら中動かした。彼が力み、もっとも強い快感を表現するのは、どうやら性器の、剥き出しの上側のようだ。かん高い「ああっ」とい声を出して身を捩る。舌の表のざらざらした部分で、なめてやっても痛みが勝つことはなくなってきた。私はその快感のポイントを舌の表や裏で繰り返し刺激した。幸一はからだ中に力を入れてひねり、手でシーツを握って乱し、声を出し続けて、何だか叫びだしそうな感じから、実際は声を出さず、「か」というような口の形で、息を漏らし、身を震わせて、びっくりしたような顔になった幸一は、股間に顔を埋める私の方に手をまっすぐに伸ばしてくる。私は力を少しゆるめながらも、なおも幸一の性器をなめ続けた。この急激な反応と弛緩は、未精通、未熟ななりの少年のオーガズムであろう。

 私は唇をはなし、四つん這いで幸一に覆いかぶさっている。幸一は脱力し、肩で息をしていた。目つきに短期的な疲労感が見て取れた、
「イッたみたいだね」
 と私は優しげに話しかける。
「イッた?」
 もちろんそんな言葉を幸一が知るはずもない。その感覚もまた。
「セックスでね、気持ちよさが、一番高い所に来て、突き抜けることを『イク』って言うんだ。日本ではね」
 私はさらにぼんやりと反応の鈍い幸一の頭を撫でた。
「幸一をイかせることができてよかったよ。ぼーっとしてるね。ぐったりきたかな。でもセックスは両方とも気持ちよくならないと。今度はおじさんの番だ」
「うん」頭を持ち上げうなずく幸一はあくまで健気だった。彼の性器はしぼんできている。

  †

 幸一は私に言われた通り、ベッドを降り、膝をつき、ベッドに座る私と向かい合った。
 私の性器は特別に大きな方ではないが、勃起し、きゅっと斜め上を向いたそれは、長さで幸一のモノの三倍。体積はもっとあるだろう。包皮は剥けた状態で、この先の期待と先ほどの行為の興奮のため亀頭がてらてら光り、さらに鈴口から先走りが湧いている。
 私は自分の指でそのカウパー腺液をすくい取り、幸一に濡れた指の腹を見せた。
「これはね、おしっこじゃないから。おじさんは幸一が来る前にシャワーできれいにしておいたから心配ないよ」
 幸一が「小便の出る器官」を口にくわえることをためらうのではないかと、先に私は説明しておいた。ただ幸一は「がまん」してでも私のモノをくわえただろうとは思う。先に私に「してもらった」ことは返さないと、と彼は考えるだろうから。
「幸一もたぶん私の口の中で出していたと思うけどね。気持ちよくなったり、そういうことがこれからある、と思うだけでも、出てくる液だ。唾に似ているね。おいしいものを食べる時や、これから食べるっていう時、いいにおいだけで、口の中にわいてくる」
 私が食いたいのは、目の前にいるお前だよ、幸一。

 幸一は私の命ずるままに、私の大人のペニスの先を湿らすカウパー腺液を亀頭全体に塗り拡げて、手で性器の先を握って、揉み、こすった。ちらちらと幸一は私の表情を窺っている。私にちゃんと快感を得てもらえているかが、気になるようだ。私は脱力し、優しげな笑みを返す。その調子だ。
 幸一はカウパー腺液を固くなって弓なりに伸びた竿の方にも塗り拡げた。懸命に小さな手で竿をこする幸一。悪くない。直接的な快感とともに、幸一の仕草、健気な態度が私を嵩ぶらせる。幸一は手の動きを速くしたり遅くしたり、手の力をゆるめたり、ゆっくりと力を込めたりした。幸一は力を入れすぎないよう気を遣っているようだったが、彼の握力くらいでは、痛いというほどのことはない。

 幸一は何を考えてるのか顔はぼんやりして視線は宙を漂っていたが、手の動きは休みなく私に素晴らしい(技術的なことは問題ではない、性的な知識のほとんどない彼が、私に健気に尽くして快楽を与えようとしているというだけで十分だった)快感を与え続けていて、その額には汗がいっぱい浮かんでいた。
 私に頭を撫でられ、幸一ははっとしたように私を見た。ほめてやらないとな。
「いいね、気持ちいいよ幸一。次は口でしてくれ。おじさんがしたのを思い出しながら真似をすればいいよ」
 幸一は素直にうなずいた。
 幸一は口を開けた。一生懸命私に快感を与えようと、「いいセックス」をしようというような、そんな意思すら感じられた。
 幸一は口を開けた。私のペニスをちょっと手で押し下げて、口のところにもっていった。舌先を出し、私の性器に押し当てるのには、少し時間がかかった。だがそれは抵抗感や嫌悪感からではなく、未体験のことについて、「これでいいのだろうか」というような不安からきている。幸一は軽く目を閉じて、ちょろっと舌を出して、顔ごと私のペニスに近づき、ようやく私のペニスの先に舌をくっつけた。幼い舌の感覚に痺れを覚える。
 幸一は命じなくても、舌を動かした。かたくした舌を敏感な亀頭にきゅっと押しつけた。その舌が動くと、快感の微電流が私の背を駆けのぼった。私は鼻から大きな息を漏らし、幸一の頭を撫でるのではなく、乱暴めに髪をぐしゃっとつかんだ。幸一は私の快楽のサインと受け止めたのだろう、舌の動きを激しくした。さらなる快感が性器から背骨へと走る。
「幸一……エロいな……やっぱり思った通り、才能あるな」
 私は幸一の髪をぐしゃっとつかんだ手で頭を強く撫でながら言った。荒い息に言葉が途切れた。「才能」――お前は淫らな子だというメッセージだ。私は幸一に考える暇を与えず、次の指示を出す。
「上手だぞ幸一。そのまま私のをくわえるんだ。できるだけ奥深く口に入れるんだ」
 私はあえて強い命令口調を選択した。受け入れるか選択するのは幸一だ。幸一はためらいなく、実際「できるだけ」大きく口を開け、私のペニスの亀頭部分をくわえ込んだ。私の先端は温もりに包まれた。さらに幸一は健気に竿の部分もできるだけ吸いこもうとしたが、半分も入らなかった。幸一の口腔内は熱いくらいだ。そして狭い。私は直接的なペニスの快感とシチュエーションに嵩ぶった。
「舌動かすんだ幸一」
 私は嵩ぶりにまかせた支配的な命令口調を続ける。幸一は怯えることなく、ただ私に従い、そのことで私を喜ばせようとしているとしか思えなかった。
 幸一は口腔内いっぱいの私のペニス、特に亀頭部分を懸命になめまわした。自分が一番気持ちよかった場所、露出した亀頭の上部を、念入りに刺激した。そこを念入りになめるには少し性器を口の外に出さないといけない。彼はそうして、舌に力を入れ、舌の表も裏も使い、念入りに刺激してくれた。
 少年を前にして、弱みとは違うが、あまりに快感に酔い乱れる様を見せるものではない。私はできるだけ声も出さないようにしてきたのだが、暴発しそうなほどの快感に、「んっ」と声を漏らし、腰を引き幸一の口から性器をはなした。
「……おじさん、イッたの?」
 おそるおそる、今覚えたばかりの言葉を口にし、上目遣いで私を見る幸一。口の周りは唾液まみれだ。私は首を振った。
「もうちょっとだ……幸一、びっくりするといけないから、今言っておくけど、大人の男はね、イク時、さっきみたいな透明の液じゃないのが、たくさん出るんだ」
 幸一は不思議そうな顔で黙って聞いている。
「セックスは元々男と女がするもんだって言ったろ?」
 幸一はうなずいた。
「ニワトリは卵を産むけど、人間の女はお腹の中に卵みたいなのを持っていてね。お腹の中で赤ちゃんになってから人間は生まれてくる」
 幸一はまだよくわからないままにうなずいているようだ。
「ニワトリだろうと魚だろうと人間だろうと、女、メスだけでは子供はできないんだ。男、オスとセックス――動物の場合は交尾というけど、それをして、男の精子をもらい、卵と結びつくと、子供ができる。女はそこに……」
 私は幸一の性器の場所を指さした。
「ちんちんがなくてかわりに穴が開いている。見たことはある?」
「あるはずだけど、よくおぼえてない」
 少しの間のあと、幸一は答えた。
「そう。男は女のそこの穴にね、ちんちんを入れて、精子のたくさん入った精液を出す。その時が気持ちよさのてっぺんだ。子供を作るのはどんな生き物にとっても大事なことだから、そういうのは気もちいいようにできている」
 ただし無論、幸一と私は男と男だ。幸一に女役をさせたいのとも全く違う。
「僕は出ないの?」
 と幸一はふと思いついたように訊いてきた。
「あと何年かで出るようになる。日本人だと中学校に上がる前くらい。遅くとも中一には、多くの男の子が出るようになる。幸一はまだからだが子供なんだ」
 その「子供」「男の子」である幸一の中に、私はたっぷりと自分の体液を注ぎ込み支配したい。
「おじさんが『イク』時は、精液がたくさん出る。幸一の口の中に出すから、びっくりして吐き出すんじゃないよ。そのまま口の中にためておく。そうしたらおじさんの精液を、幸一にも見せてやろう」
 私は不安げな幸一の顔を覗き込んだ。
「恐い? 精液はおいしくないかもしれないけど、毒じゃないよ。汚くもない。女の人の中には、どんな男だって出すんだから」
「僕は子供できたりしない?」
 幼稚すぎるほどの素朴な幸一の問いに、私は破顔して力が抜けてしまった。冷めた、人を近づけないオーラは、ただの仮面で、彼は様々な面で成長し損なってここまで生きてきたのだ。私は――そんな幸一を、正直愛おしく思った。私には愛などないはずでは、あったが、いびつな、愛に近いものなら、私にもあるのかもしれない。
 私は声を立てて笑い、今度は優しく彼の頭を撫でて、
「かわいいな幸一。男の子のからだの中には卵の元がないんだから、絶対子供はできない。女でも口から精液入れても、子供できないよ」
 と言った。かわいいという言葉に照れたのか、バカげたことを訊いた、と思ったのか、幸一は恥ずかしそうに頬を染めた。

 私は立ち上がり、幸一を膝立ちにさせて、わずかにゆるんだ性器を再びくわえさせた。
「おじさんが動くから、幸一は唇をきゅっと締めて、思うように舌を動かせばいい。じゃ、行くよ」
 幸一は私のペニスを頬張ってうなずくこともできないので、目線で「はい」の合図を送ってきた。
 私は幸一の頭を両手で後から押さえた。腰を突き出し、いっぱいまで怒張しつつあるペニスを彼の喉にまで押し込む。息が苦しいであろう幸一は鼻で荒く息をして、私に言われた通り唇を引きしめ、狭い口腔内でぐるぐると舌を動かした。素晴らしい唇の締めつけを味わいながら私は腰を引く。亀頭を残し濡れた竿の部分が幸一の口から抜け出す。また押し込む。私はそれを繰り返した。
 少しずつ動きを速くしていく。私は時々幸一の頭を手で強く引きつけて、性器を喉の奥に飲みこまれるほどの深さにぐいと押し込んだ。幸一はさすがにむせて愛らしい苦しげな顔を歪ませ涙をにじませる。私は快楽に酔い、荒い息を吐いた。幸一の唇と私の性器の隙間から、唾液が流れあごを伝った。休まず、腰を使いピストン運動をする。私の亀頭が口からこぼれ落ちそうになると、幸一は唇の締めつけをいっそう強めた。その時電撃的な快感が、背骨を駆けのぼった。快楽にひたり、私がそこで動くのをやめると、幸一は懸命に、舌で亀頭の先端をなめまわし、鈴口に舌を押し込んでくる。私はその健気な淫らさに感激し、嵩ぶり、幸一の髪をわしづかみにして、強く髪を引っぱって、頭をこちらにぐいと引きつけ、また幸一の喉奥にペニスを押し込もうとした。幸一はまた苦しんでむせる。私はそれを見てさらに嵩ぶる。太ももに力が入り、時折腰に戦慄が走った。
 私はまた、激しく腰を振り始めて、幸一の髪をわしづかみにし、強く引っぱって、
「幸一、もうすぐイクからな! 精液出すからな! こぼすなよ! 飲むのもまだだぞ」と興奮のあまり震える強い声で言った。命令され、支配されることを受け入れろ、幸一。
 幸一が私の言葉を受け、唇の締めつけをあらためて強くした。痺れる快感のあまり、私は「おお」と小さく低い声を漏らした。私は腰の動きを大きくし、何度も幸一の喉をガチガチの大人のペニスで突いた。そして私は頂点の訪れを感じた。幸一の口内で私の性器はむくっとふくらんで、私は腰をぶるぶると震わせ、「うう!」とうめき、射精した。
 どろどろの粘液が幸一の口腔内を満たしていく。幸一は私に言われた通りそれを吐き出しもせず飲み込みもせず、口の中にためていた。精液はうまいものでもないし私の射精は幸一に直接的な快をもたらさない。幸一は熱っぽいような不思議な表情をしていた。

 私は幸一の口から射精後の萎えつつあるペニスをずるりと抜いた。斜め下にだらんと下がった私のペニスには、私自身のネバネバした白濁の液と、幸一の唾液とで濡れてべとべとだった。私が性器を抜き去った後幸一は慌てて口を閉じたが、具合が悪そうだった。
 私は、
「さああーんして。こぼれないように上向いてね」
 とイク前とうって変わって穏やかに言った。
 幸一は言われた通り上を向いて口を開ける。嫌でも少しは口腔内の粘液が喉に流れこむだろう。
 私は幸一の口に指を入れ、舌に絡んだ私の精液の粘っこいかたまりをすくいとって、幸一に見せた。
「気持ちよかったぞ幸一。これがおじさんの精液。イッた証拠だ」
 その言葉に、表情が緩み幸一は喜んだと思う。だがこの状況では、何も言葉に出せない。
 私は幸一の頭を、さっきとは違って優しく撫でた。
「今の幸一を鏡で見せたいよ。口の中にいっぱい精液ををためていやらしいぞ」
 幸一は頬を染める。自分を貶める言葉とは受け止めていないし、私もそんなつもりはない。本気で賞賛しているのだ。だから私の言葉の真意も伝わるのだ。
「全部飲めるね幸一。私の精液を幸一のからだの中に入れるんだ」
 私に穢された者になるのだ。幸一は私に言われるままに、喉を鳴らし私の精液とたっぷりわいた自分の唾液の混ざった液体を飲みこんでいった。口腔内のねばつきが気になるらしく、口の中を舌でなめ回す様は、淫らだった。幸一はそうして掃除した分も新たに湧いた唾液とともに飲みこんで、それでも口の周りをべたべたさせたまま私を見てきた。

 まだまだこれからだ幸一。

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