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5

 幸一も私も汗びっしょりで、私は射精した性器がベタベタ。幸一も口の周りがベタベタだし、もちろん口腔内もまだ不快感があるだろう。小休止をかねて、私は幸一と入浴することにした。次のステップの準備もできる。あらかじめ湯は張ってあり、この季節なので追い炊きですぐ適温に温まる。シャワーを浴びてからだを洗い、湯が熱くなるのを待つことにした。
 私はシャワーから湯を出して、手で温度をみて先に幸一の頭から湯を浴びせてやった。幸一は(セックスとはまた違った意味で)気持ちよさそうなうっとりした表情を見せた。口を開けさせ、口の中に湯を注ぎ、うがいをさせてやった。それから頭にシャンプーを流し、少し泡立ててやると、自分で頭を洗うように言った。それから私もシャワーを浴び頭を洗う。幸一は髪を洗い、流れたシャンプーで顔も洗った。私はまた幸一の頭から湯を浴びせてやる。
 それから幸一にボディソープのボトルを持たせて、私のからだに塗りつけさせた。私自らの精液でべとべとの性器にも塗りつけさせ、こすらせる。もちろん快感はある。実際の感覚と、シチュエーションの両面において。しかしこの程度で反応するのは、沽券に関わる。幸一の念入りな洗う手つきにも、性器は反応しない。
 私の全身を幸一の手で洗わせたあと、今度は私が幸一のからだにボディソープを流し、塗り拡げ、手のひらで丁寧に、すべすべの肌を洗ってやる。最初に一緒に風呂に入った時、幸一にはタオルなどでからだをこする必要は全くないのだと教えてやった。手のひらで十分だ。洗いすぎこすりすぎは肌に悪い。本当はせっけんもいらないのだ。この思春期前の少年の肌のうるおいは大切にしないとな。アカ擦りなどバカげている。

 お互い全身をきれいにした後、私は、
「幸一、こっちにお尻を向けて、四つん這いになりな」
 と床を指さして言った。ちょうど風呂のお湯が熱くなった合図のメロディが流れた。
「何で?」と幸一は訊いてくる。今全身をきれいにしたはずだからな。
「お尻をきれいにするんだ」と私は言った。
「お尻もきれいにしたよ」と幸一は言った。別に逆らう気はないのだろうが、少し頬をふくらまして。
「お尻の中をきれいにするんだよ。さあ四つん這いになって」と私は幸一に少し強く命ずる。まだ何をするのかはっきりとはわからない言い方で。
「中?」と幸一は不思議そうにつぶやきながらも、言われた通り四つん這いになった。
 私はバスタブに腰かけ、右手指にボディソープをなじませた。幸一が不安げに、こちらに首をねじって見ている。
「お風呂上がったらごはんにしような。カレーおいしくなってるよ」
 と優しげに言いながら、私はシャワーのホースを手に取った。幸一の表情から少しかたさがとれた。
「その後セックスの続きをしよう」
 と私は言った。何しろ未熟な「子供」相手だから、成り行き任せの部分もあるが、ここまではだいたい見通し通り。まだまだ夜はこれから。幸一だってまだまだ続きがあることを期待してくれているはずだ、と思う。
「それにはね、幸一のお尻を使う。口の次はお尻だ」
 と私は言った。すぐには意味はわかるまい。幸一は不思議そうな顔をしている。
「おじさんのちんちんを、幸一のお尻に入れるんだ」
 幸一の顔が驚きにこわばり、少し歪んだ。
「そんなの汚いよ……」
 と独り言のように呟く。
「だからいきれいにするんじゃないか。朝はうんち出たかい」
 という問いには、ぼそぼそ声で「うん……」と返事が返ってきた。

 幸一はお通じは順調な方らしかった(メンタルのある面をのぞき、健康そのものともいえる)が、もし便がたまっていて、直腸に下りていたらアナルセックスはやりづらい。一晩あるのにそれに「挑戦」しないことはあり得なかった。どんなに痛がってもじっくり時間をかけてやってやるつもりだった。幸一には自宅はあっても本当の意味での逃げ場はない。もし便がたまっていたら、ここで洗い流すか、浣腸して、やはりここで洗うかだ。

 私はボディソープをまぶした指で幸一のアナルの襞に触れ、引き伸ばしたりこすったりした。幸一は見えないその部分を見ようとするのをやめ、顔は両手の間、床を見ている。時々ぞくぞくっとからだを震わせる。全身に鳥肌が走る。
「おじさんのなんか、ぼくのお尻に入らないよ……」
 幸一のくぐもった掠れ声。私は構わず、アナルへの刺激を続ける。
「入るさ。男と男でセックスしているのは、『普通』じゃないかもしれないけど、私たちだけじゃないよ。女の子にはここに穴があるけど」
 私は幸一の性器に触れた。今はさすがに勃起していない。
「男にはないから、さっきみたいに、口を使ったり、お尻の穴を使う人は多いのさ。『普通』じゃない人たちの中では普通だ」
 と言って私は笑った。その間もずっと臀部の肉や肛門の襞やその周辺をいじり続ける。
「痛くない? 裂けたりしない?」
 と幸一がちょっと大きな浴室に響く声で訊くので、
「最初はたぶん痛いよ」
 とあえて本当のことを言って突き放してやる。それでもなお、受け入れるという気持ちになってもらいたいのだ。幸一には。
「でもね、おちんちんの、皮の中になってたところだって、最初ちょっと触っただけでも痛かっただろ?」
「……うん」
「だんだん痛さが消えて気持ちよくなる。裂けたりはしないよ。そこはおじさんに任せておけ」
 と言って私は幸一の尻を軽くぺしゃっと叩く。
「お尻の穴も気持ちよくなるの?」
 幸一はまた頭をひねってこちらを見、訊いてくる。
「当然、女の人の前の穴とは違う感じだろうけど、なるよ。気持ちよくなる。女の人でも、わざわざお尻でセックスする人、いるくらいなんだから」
 幸一の表情に少し安堵が浮かんだ。すでに十二分に異常な世界に引き込まれている自覚が、彼にどのくらいあるだろう。アナルの快感については、私自身はウケに回ったこともなく、直接の性交渉の相手からの伝聞でしかない。ましてや性交渉の経験もなく、前立腺もないはずの女性のアナルの快感についてなど、全くわからない。

 私はシャワーノズルのヘッドをはずして、ホースだけにしてネジの部分を握り込んで持った。もちろんネジ山で幸一のアナルを傷つけないだめのやり方だ。その拳を幸一のアナルにぐっと押し当てた。幸一の背中にきゅっと力が入った。
「お尻の中を洗うよ。お湯がお尻の中に入ってくるからね。じっとしてるんだよ。動くとすき間からお湯が漏れてしまう」
 幸一は腕の間に頭を埋めてうなずく。
 ぬるま湯になるよう温度調節をして、カランをひねり幸一の直腸に湯を注ぐ。幸一はぶるっと震え、私の拳がより強くアナルに押しつけられるのを感じて、力んで動かないように努力しているようだった。腕と腕の間に頭を入れ、少し背を丸めて、全身に力を入れている……。
 幸一の口から高いくぐもった短い声が漏れた。そして、
「おじさん……お腹苦しい……」
 と本当に苦しげな小さな声で私に訴えた。私は握り拳をぱっと幸一の尻からはなしてやる。幸一のアナルからびゅっとぬるい湯が噴き出し、それからちょろっと流れた。ほとんど異物の混じらないきれいな湯だ。異臭もない。浣腸は必要ないな。後日の機会にとっておこう。私は一応、親指でホースの先を押さえて、勢いよく拡がる湯で床を洗い流した。
 私は再度ホースを握り込み、アナルから湯を注入する。
「今度はもうちょっと、ぎりぎりまで我慢するんだぞ」
 と言ったら、幸一はからだをひねり上半身に力を込めたりして、さっきより二、三十秒は辛抱したあと、「おじさん……」と本当に掠れた苦しい声で訴えたので、私は再びぱっと手をはなしてやる。さっきよりも長く激しく、幸一のアナルから湯がびゅうっと噴き出す。
 合計四回、私は幸一のアナルに湯を注入した。四回目は、目一杯辛抱しろと命じておいて、もうダメ、という言葉を聞いてからさらに私は注入を続けた。手と幸一の臀部の間から相当湯が漏れていた。「おじさん! おじさん! 破裂しちゃう!」と泣きそうな声で訴えるのを訊いて、私はそこから五を数えてやっと手をはなした。ぶしゅっと、爆発的に湯が噴き出した後、びゅうっと長く、弧を描き流れ出た。幸一は肩から崩れて、大きく息をして、性器をわずかにかたくしていた。これならアナルセックスの快感も保証されたようなものだ。
「ようし、きれいになった。もうちょっと力入れてみて。お湯、残ってない?」
 私は幸一の尻をぴしゃぴしゃ叩きながら、明るい声でそう言った。幸一は言われた通りに尻に力を入れ、わずかな残った湯が、幸一の穴から流れ出た。

 私はシャワーノズルを戻し、幸一のからだを再度念入りにきれいにした。それから私自身も。
 その後二人で湯船につかって、私は幸一を背後から抱く。温かい湯の中で胸や太ももをさすり、尻の肉を握る。ただ性器には触れない。触れない幸一の性器も、幸一の尻の下の私のモノも、少しふくらみとかたさを得ていた。

  †

 風呂を上がり、私は幸一に提案して、裸のままで食事することにした。二人だけの空間だからできることだ。

 カレーのできばえも計算通り(料理は科学だとか誰か言っていたな)で、幸一は大喜びだった。これまでの行為とこれからの行為に対して、今この当たり前の少年らしさがよい。
 幸一はカレーをおかわりして、少しふくらんだ腹部を剥き出し(全裸なのだが)にして、絨毯の上に寝転んだ。うっとりしたような、眠気もさしたような表情だ。
 眠らせるわけにはいかない。私も裸で、幸一の横に寝転んだ。幸一はからだをころんと横にして、私の腕にすがりつくので、私もからだを横にして幸一を抱きよせた。頬をさすり、腹部を揉み、尻の肉を握る。額に軽くキスする。幸一も私の胸にキスしたり、腕をさすり背中に手を回したりした。

 しばらくそんなペッティング行為を楽しんだあと、私はさっと立ち、
「片づけてしまおう」
 と元気よく言った。

 幸一も立ち上がり、洗いものなどを二人で手早く済ませた。そうこうしているうちに「お尻を使ったセックス」への幸一の不安も、少しとけてきた感じがした。一時的な逃避かもしれないがね。

  †

 寝室のベッドに、幸一を大の字にゆったり寝かせると、私はサイドデスクの引き出しからローションの大型ボトルを取り出した。
「お尻に入れる前にからだをあっためてやるよ。新しい気持ちいいことをしてやるからな」
 私は言って、右手にローションをたっぷりととった。そしてその手で幸一の性器を包むように握った。幸一はからだをびくっとさせた。
 ぬるぬるの手指で、戻っていた幸一の包皮を剥き、敏感すぎてさっきは痛がった部分に触れ、じわじわと力を込めてこする。幸一の性器はあっという間に目一杯勃起した。痛みよりも明らかに快感が勝るようで、幸一はからだのあちこちに代わる代わる力を入れてひねり、「アア! アア!」と声を出した。満腹から来る眠気も、すぐに飛んでしまったらしいな。
「どうだ気持ちいいか?」って訊いてやると、幸一は何度も首を縦に振り、また「気持ちい……」と高く掠れた声を上げた。恥ずかしがらずによく言えたな。もっと気持ちよくしてやるからな。

 幸一は喘ぎ、からだをひねり、ほとんど理性などなくして激しく反応を続けた。このままあまり続けると惰性になるか、疲労がきてしまう。夜は長い。私は幼い性器への刺激をいったん中断した。
 今度は幸一のすべすべの胸にローションをたっぷりと流し、それを塗り拡げた。上半身全体がぬるぬるになった幸一のからだに、ピアノを弾くように指を立て、指の腹を使って乳首からへそへ、わきの下から腰へと、引っかくように刺激した。ローションがなければ痛いほどの強さで、胸には赤い痕が残り、柔らかい腹部には指が食い込んだ。私は縦横に走る指の動きを速くする。快楽かくすぐったさか、幸一は荒い息を吐きながら身を捩った。幸一の熱っぽい目線は、一番気持ちのいいところの刺激の、続きを求めていると思う。そのために私は、ペニスへの刺激を一度中断したのだから。
 もう少しじらしてやる。時間はたっぷりある。私はぬるぬるの指で幸一の腕を強くつかみ、わきの下に親指を食い込ませた。ローションはところどころ乾きつつも、胸と腹部だけでなくそこら中をぬるぬるにした。
 新たにたくさんのローションを両手に取り、その手を幸一の性器に近づけるが、まだ触れてやらない。陰嚢を握り、それから足を開かせ、尻の肉を握り、さすり、双丘の間をぬるぬるにして、アナルの襞を指でこすった。幸一はからだをぞくっとさせて反応する。さらにアナルの襞をぎゅっぎゅっと押したりして、幸一の尻のふくらみやや肛門やその周辺も全部、ぬるぬるにした。それから私は幸一の背中に手を回し、ローションまみれのそのからだをがっちりと抱きしめた。幸一の体温は熱い。私の性器はすでに目一杯勃起しており、幸一の腹部に食い込むように、私と幸一のからだに挟まれ、動く度にあちこちに向いた。私のからだも性器も、ぬるぬるになっていく。幸一の側からも、私の首に手を回して抱きついて、彼からもからだをこすりつけてきた。腰を使い、自らの性器に快感を与えようとしている。淫らでいい子だ、幸一。幸一の顔は今本当に間近にある。その淫らな表情が私を嵩ぶらせる。時々幸一が唇を噛みしめて「あっ、うっ」と声を出してるのは、私が興奮のあまり幸一の背に強く指を食い込ませたからか、あるいは快感のためか。苦痛と快楽の声は、よく似ていて、時に区別がつかない。

 幸一の背中から右手を離して、股の間に入れる。幸一の左足をぐっと押して、彼の手につかませ、胸のところで左足を抱える姿勢にさせる。ローションをたっぷりと補填した私の手は幸一の臀部に戻り、いよいよ中指を、幸一のアナルに侵入させる。ごくごく、スムーズにそれは飲み込まれたが、幸一のからだにきゅっと力が入り、指も締めつけられた。多少痛みか異物感があったのだろう。大丈夫だ、すぐに慣れる。慣れさせてやる。
 幸一は煌々と明るい部屋で恥ずかしさからほとんど目を閉じていたのだが、今目を見開いて首をちょっと持ち上げてこっちを見ていた。その彼と目が合った。
 私は幸一のからだを離し、寝かせ、またからだ中に、左のてのひらでローションを塗り拡げた。水性のローションは、短時間で乾いてべとつき、やがてぱりぱりになる。幸一はカエルみたいな大きく足を開いた姿勢で、片足は自分で抱えている。アナルには私の右手の中指が半分以上入っていた。私はその指をくいっ、くいっと左右に、ドライバーのようにひねった。
「イッ!」
 幸一は声を出し、空いていた右手をぱっと伸ばしてきた。私はいったん指の動きを止めた。しかし、こんなところで中断するはずがない。
「我慢だ。からだの力を抜かないと気持ちよくならないぞ」
 私は静かに言い、指を根本まで一気に押し込んだ。幸一は健気に声を出すのをこらえ、ぎゅっと身を捩って痛みにたえた。
 私は優しげに微笑んで頑張りを讃え、幸一に覆いかぶさって頬を撫で、ローションを左手にとって、その手で少し萎えかけていた幸一のペニスを握った。少しかたさが戻ったところで、手のひらで押しつぶすように腹部に押しつけ、ぐりぐりと刺激した。幸一は目を閉じからだを弛緩させ、もっともっとと求めている。包皮の剥けた亀頭を、かなり強くすり潰すように指でいじった。幸一はからだを左右にひねり、強く目を閉じたまま「ああ、ああ!」と声を出す。快感が痛みを凌駕したか。私は並行してアナルの中の指をぐるぐる回し、曲げ、引き抜いて、また押し込む。幸一は「か、は」と声にならない声を出し、全身を突っぱらせ、戦慄し、「あ」と声を漏らして全身を弛緩させた。性器からも力が抜けていく。分泌物はカウパーだけだ。
「イッたのか幸一……」
 私が静かに問うと、幸一は薄目を開けてうなずいた。精通のない彼は、何度でも絶頂を迎えられる。果てしない夜を味わわせてやろう。私は幸一に覆いかぶさり、頭を撫で頬をさすってやった。お前の淫らさを讃えてやる。幸一はまたぐったりと頭をシーツに落とした。

 私は指をアナルから抜き、中指と人差し指を揃えてローションをたっぷりとまぶした。その二本指を重ね、幸一のアナルに当てがって、ぐいと押し込んだ。
「くっ!」
 と幸一は声を漏らし、全身に力を込め突っ張らせる。足の指先までぴんと伸びる。締めつけはなかなかきつく、後の期待も高まる。
 幸一は大きく息をしてからだから力を抜こうとする。指示なしに。賢い子だな幸一。私はリラックスを促すべく左手で彼の腕をさすってやる。二本の指をさらに深く、押し込んでいく。幸一は股間を見るのをやめ、目を閉じて頭を落としたようだ。指を根本まで押し込めば、束ねた先端と違ってけっこうな径に、アナルは押し拡げられる。指を動かせばぐちゅぐちゅと音がした。ローションがアナル内部から周辺に、たっぷりと注がれていたから。
 私は根本まで押し込んだ指をひねり、抜ける寸前まで引いたり、押し込んだりする。アナルのしわの押し込まれまた戻る様、様々な変形や収縮が淫らだ。幸一は鼻から「ふ」と短い息を漏らしたり、時には「イ」と痛いと言いそうになったりする。その度にきゅっと全身に力が入りアナルの締めつけが強まる。その時は痛いだけでなく無理がかかっていて切れて出血などもこわい。そんな状態で犯すのも乙かもしれないが、それは行きずりの子にやることだ。ここは丁寧に、じっくり、優しくやる。強い反応と緊張の度に私は手を止め、からだをさすってやったりして、リラックスを促した。
 幸一は少しずつ慣れていった。アナルは柔らかいものだし、ローションと慣らす指でもっと柔らかくなる。時間をかければ思いがけないほど拡がるのだ。ついでに感覚も鋭敏になるとか。幸一は同じような二本指レベルの刺激では、痛がらなくなってきた。彼自身の性器は、微妙にふくらんでいるくらい。
「自分でおちんちん、いじっていいぞ」
 と私は言った。幸一はすぐに、手を股間に伸ばす。その手にローションを流してやった。左手は足を抱えているので、右手で包皮を剥いた状態の性器をつまんだ。幸一はローションを亀頭に塗り伸ばし、その上部、彼の快感のスポットらしき部分を、親指の腹で押したり、こすったり、揉んだりした。幸一は首を左右に振り、噛みしめた唇から「ん」「ん」と声を漏らした。私は二本指のピストン運動を素速くし、アナル内奥で大きく曲げた。それでも幸一はペニスへの刺激の快感に身を委ね、苦痛など表現しない。幸一は次々に新しいことを吸収する優秀な生徒だ。

「さあ」
 私は指を抜いた。べとべとのアナルは、ゆっくりと収縮して簡単には閉じなかった。幸一は目を開きペニスをいじる手を止めた。幸一の上半身あたりのローションは乾いてぱりぱりの薄い皮みたいになり、アナルから尻の周辺、ペニスとその周辺は、粘度の増したローションでぬるぬるだった。
「入れてやるからな」
 私は新にローションを、一杯に勃起した性器全体にまぶした。
「幸一は見える方がいい? 見えない方がいい?」
 私が訊くと、幸一は「よくわからない」という顔をした。私は顔に笑みを浮かべる。
「このままやればおじさんのが幸一の中に入るのが幸一にもよく見える。うつぶせか四つん這いになれば、見えない。見えないから恐くないか、見える方がどうなってるかわかって恐くないないか、だね」
 私はさらに笑顔になった。多少は恐がって、なおかつ私を受け入れてほしいのだ。幸一はすぐには答えられないようだ。どっちみち未知の体験だからな。
「どっちみち両方やるけどね」
 と私はこともなげに言った。幸一の表情が一瞬こわばったように思えた。夜は長いんだよ幸一。時間のある限り、互いの体力が続く限り、そしてお前が受け入れる限り、私は、私たちは禁じられた行為に耽るのだ。最初からそのつもりだった。ただお前はどこまで受け入れるか、選べるんだよ。私は暴力や強要を使っていない。そんなもの必要ないよね幸一。私に任せておけばきっと幸せになれる。
「先に見える方でやろうか。一度見ればどういう具合になってるか、見えなくてもわかるしね」
 と私は軽い口調で言った。命令してはいない。違うことを選びたかったら選んでいいよ幸一。
 私はそれだけ頭の中で語ると、すぐに挿入の準備に入った。
 仰向けの幸一の腰の下に、枕を挟んで尻の位置を高くした。片足は幸一に抱えさせたままだ。もう一方を私が幸一のからだの側に押す。膝立ちになり、じりじりと幸一の大きく開いた股の間に寄り、アナルにペニスの先を当てた。入り口はぬるっとして、少し熱いくらいだ。ローションに濡れた襞の肉は熟れた果実みたいだ。幸一の視線は私の下腹部あたりに注がれている。「見える方」とは言ったが、姿勢から言って接合部そのものは見えないだろう。
 ペニスを押し込むと、じわじわ関門が拡がっていく。飲み込んだ二本指があれだけ暴れても大丈夫だったのだから、これで切れたりはしない。が、指の刺激により炎症になって、過敏になっている可能性もないではない。私はかたくなり反ったペニスが飛び出さないよう、右手で下に押さえ、左手指で先端を穴に合わせて、なお押し込んでいく。
 カリの部分が入るのに多少抵抗があったので、私は少し引いて少し押すこと繰り返し、何度目かで一気に強く押し込んだ。
 幸一は「いっ!」と声を漏らし足指の先などからだを突っぱらせた。私は構わず、というよりその反応に満足して、ゆっくりと、さらにペニスを押し込んでいった。「痛い、痛い……」と幸一は高い掠れた声を出し、私の方に手を伸ばしてくる。その反応、素晴らしいぞ幸一。
 私は左手で幸一の萎えかけた性器を軽く揉み、彼に顔を寄せた。笑みを作り、語りかける。
「大丈夫、もう一番太い所は入ったよ。これ以上は痛くならないよ……」
 私の性器は、特別巨大というほどではないが日本人としてはまあまあの太さと長さだ。竿の部分は根本に向け雁首と同じくらいの太さになる。根本まで入れれば雁首が関門を通過した時と同じくらいの負荷が、入り口にかかってくる計算だな。
 私はじりっと膝を前に出し、腰を突き出し、じわじわとガチガチに勃起した性器を押し込んでいく。もう手で支えなくても、飛び出したりしないだろう。幸一のアナルの襞はいっぱいまで引っ張られていた。
 幸一は私がわずかに動くごとに、からだのあちこちに代わる代わる力を入れ、身をくねらせた。そろそろ心得たようで、アナルそのものからは力を抜こうとしている。締めつければ自分が痛いだけだ。今のところはね。より快感を得るために自ら締めつけてくるステージまで、いずれお前を連れて行きたい。
 私のペ二スは、竿の三分の二ほどを飲み込まれたところで、幸一の直腸の壁に突き当たったようだった。四年生にしては大柄といっても、この体格なら全部は無理か。私はつっかえてから、少し腰を引いて、勢いをつけてペニスをぐっと押し込んだ。少し曲がったペニスがより奥まで入るが、やはりつかえる。幸一は「う、あ!」とうめき、こちらに手を伸ばしてきて、「痛い、痛いよ」と掠れた高い声で訴えてきた。
 私は意地悪くその訴えを黙殺し、また腰を引いて、どんとペニスを押し込む。それをゆっくり繰り返した。「くうっ」と苦しげな声を幸一は漏らす。苦しくて言葉も出ないか。私の興奮は高まった。幸一はこちらに手を伸ばしたり、ベッドを叩いたりもした。苦しそうだ。でもお前が選んだんだ。途中ではやめられないよ幸一。辛抱すれば痛いだけじゃなくなる。お前ならね。
 私はピストン運動に変化をつけた。大きく、抜ける寸前まで引いて押す。押し込んだ状態でさらに内奥にねじ込む。小刻みに速い動きに変えていく。
 幸一は私に「やめて」と訴えるのをあきらめ、手を下ろした。それでも時々苦悶にうめいた。私が全体に腰の動きを速めていくと、幸一は、「ア、ア」と高い声を漏らし、いつの間にかしゃくり上げ、涙を流していた。幸一は足を抱えていた右手も離して、両腕で顔を覆った。泣いているのを見られるのは嫌なんだろう。男の子らしい。そしてそれでも幸一は、もうやめて、も、嫌だ、も言わない。私は泣き顔を隠し苦痛を耐えしのぶ幸一の姿に、しばらくぶりの嵩ぶりを覚えていた。私のような男とて、こんな機会はそうそうない。おあつらえ向けの落としやすい少年に出会えるかどうかもあるし、会えても、いわゆる「旬」は短いものだしね。

 私は幸一の腰を両手でがっちり支えて、腰を振ってガチガチの大人の性器で少年の未熟なアナルを繰り返し繰り返し突いた。私は汗にまみれ、額から流れた汗が幸一の乾いたローションまみれの腹部にぽとりぽとりと滴った。
 幸一は両腕で顔を覆い続けていたが、涙は止まったようで腕の隙間から私の様子を見ているようだった。私が腰を突き出すたび、幸一の足は大きく揺れる。幸一は全身の力をなるべく抜こうとしている。腰から下は私が両手でがっちり支えているが、私が激しくアナルを突くたびに、全身が枕から持ち上がって位置がずれた。
 幸一は柔らかな肢体を捩りつつ、泣きながら私を制した時とは違う、ああ、うう、というような呻きを漏らした。多少は快感を得られるようになったのか、あるいは苦痛に慣れ感覚が鈍磨しているのか。
 私は正直ここまで遠慮なく激しく動くつもりはなかったが、今は幸一が初体験であることなど関係がないくらい、十二分に腰を使い温かく狭い少年のアナルをむさぼり、麻薬的快感の域を味わっていた。私は少し粘ってこの至福を長引かせたかったので、頂点の直前で何度か動きを止めた。からだは熱いのにぞくぞくした。動きを止めた私を腕の隙間から見る幸一は、私に何かを訴える。「やめないで」「もっとして」ではないだろう。そろそろ私にイッてほしいのだ。でも言葉ではっきり言わないと、私は都合のいい解釈をするよ幸一。

 私は「おお」と声を漏らし、歯を出して、背中をのけ反らせた。
「幸一、気持ちいいぞ、もうイキそうだ。お前の中に出すぞ」と、私は激しく腰を使いながら震える声で言った。幸一は両足を手で抱え直し、私がイクのを待ち構える。健気だ。
「幸一、お尻に力を入れておじさんのを締めつけろ」と私はなおも激しくペニスを出し入れしながら幸一に命じた。幸一には寸時のためらいがあった。痛みが増すと思ったのだろう。その通りかもしれない。だが幸一はすぐに決断し、アナルに力を込めた。背骨を微電流が駆けのぼり、後頭部で快楽物質が爆発する。私は「いいぞ、そうだ……」と震える声で言い、ぐっと腰を引いた。亀頭がこぼれだすぎりぎりのところまで、ペニスを引き抜き、ぐいっと腰を突き出し、幸一の腰を引き寄せてどんとペニスを押し込んだ。根本まではいかないが、幸一の直腸の壁に突き当たる。幸一はのけ反って「ぐうっ」と声を漏らした。私は幸一の直腸内にどくどくと射精した。ぬるい粘液に幸一直腸内の私のペニスが包まれ、アナルの隙間からじわっと漏れ出した。私は幸一の腰をつかんでいた手をゆるめた。幸一の体内で私自身の精液に包まれた性器が縮んでいく。幸一がぞくぞくとからだを震わせた。それは私のペニスに、余韻といえる緩やかな快をもたらした。

 幸一のアナルから抜けだした私のペニスは、少し下を向きながらもまだある程度の硬度を保っており、全体がぬらぬらで、幸一の体液とローションと私自身の精液がからみついていた。私はその性器を自分の手で支えながら、肩で大きく息をしていた。これほどの嵩ぶりと快感は久しぶりだ。
 呼吸が落ち着くと、私は膝で前に進み、ぼんやりとからだを弛緩させた幸一のからだにまたがった。
「幸一のお尻、気持ちよかったぞ。幸一はどうだった?」幸一を見下ろし、私は訊いてやった。幸一は顔を腕で拭った。見たところ涙は乾いていたが、さっきは泣いていたからな。幸一は少し口ごもって、結局何も言葉に出せず、首を振った。どうしてあんなに痛くするのか、痛いと訴えても途中で行為をやめないのか、知りたくないのかな。
 私は優しげな笑顔を作って幸一の頬を撫で、
「泣いちゃってかわいいな幸一は」
 と言った。幸一は赤面して目を逸らす。その仕草こそ愛らしい。
「慣れるまで痛いかもね。でも幸一なら気持ちよくなると思うよ」
 と幸一の両頬に手を添え、顔を近づけて私は言う。そして軽くキスしてやった。
 それから私は顔を上げ、幸一のわきの下ぐらいまで膝を前に進めて、べとべとのペニスを彼の顔のすぐ上に持ってきて、
 「さあ、おじさんのをきれいにして、精液全部、幸一のからだに入れてくれよ」
 と当然のように言った。幸一は一瞬戸惑ったようだったが、直前まで自分のアナルに入っていたそれを口に入れることを、強く嫌がりはしなかった。あるいは激しい行為に快楽と苦痛の連鎖が、彼を疲れさせ判断力を鈍らせているかもしれなかったが。
 幸一は口を開けて舌を出し、私のどろどろに精液の絡んだペニスをなめた。舌先で粘液をすくい取り、口の中に送り込んだ。それをまた、喉を鳴らして唾液とともに飲み込む。私の萎えかけたペニスを幸一が手で絞ると、濡れた鈴口からはまだ精液が湧いてきた。幸一はそれもきれいになめ取る。私はペニスの隅々をきれいにさせるため、腰を動かしていろいろな向きで幸一の口にペニスを押しつけた。幸一は自らも遺漏のないよう気を遣って、徹底的に私のモノをきれいになめ上げた。性器の根本あたりをなめた際は陰毛が口に入り、それだけは不快そうに指で舌から取り、ベッドのシーツにこすりつけた。

 もうここまででも淫らで従順な性奴みたいなものだ。素晴らしいよ幸一。
 私は幸一をまたいでベッドに腰かけ、後を向いて彼を見て、
「じゃあ次は見えない格好でやろう。犬みたいに四つん這いになってごらん」
 とうきうきした口調で言った。

  †

 さすがに幸一はべそをかくように表情を歪ませた。先ほどのアナルセックスでは相当な痛みもあったようだから、それは抵抗もあるだろう。でも私も、次は最初よりも快感が勝るように導いてやるつもりだった。今日も夜は長いし、今日だけで終わる気もない。幸一にはアナルセックスの味もしっかり覚えてほしい。
 幸一はのろのろと、ベッドの上で四つん這いになった。私は力任せの強要はしていない。でも実質は私の思うがままの道を、幸一は選ばされている。逃げようと思えば逃げられる、断ろうと思えば断れる、そういう状況で幸一に「選ばせる」ことが肝心なのだ。

 私は幸一の後ろに廻り、膝立ちになった。幸一は手をついた間に頭を入れ、股の間からこちらを見ている。私はまたローションを左手にたっぷりとり、幸一のペニスを陰嚢ごと握りこんだ。いったん戻った幸一のモノの包皮を、ぬるぬるの指でまた剥きあげる。幸一のものはすぐに反応してむくむくと大きくなった。あるいは、触られる前から反応していた。
 私はかたくなった幸一のペニスを指で挟み、押しつぶすようにしたりこすったりした。幸一は肘を折り曲げてからだをぐにゃぐにゃとさせ、激しく喘いで反応した。
 ペニスへの刺激を休むことなく、右手で、幸一の双丘の谷間にローションを流した。幸一は冷たさに反応してか「ひ」と声を出しからだを震わせた。流したローションを上から下、下から上と指で塗り拡げる。もちろん通過するアナルの襞に丁寧に擦り込む。そして右手の中指をゆっくりと挿入していく。幸一は少しからだをかたくしたが、苦痛は感じさせない。実は子供の方がこういうのに慣れるのは早いのではないかと私は思う。まああらゆる年齢層とセックスした経験があるわけではないから何とも言えない。ただ幼いから、未熟だから無理ということはない。幸一はまだ精通すら迎えていないのだ。
 根本まで押し込んだ指を、私は曲げたり伸ばしたり、ぐるりと回したりして直腸の壁を様々に刺激してやった。時にはけっこう強く。痛がることはない。私は一方で左手によるペニスの愛撫も続けていた。延々と、亀頭を中心とした強い刺激を与え続けた。息遣いとかすかな声で、私は幸一が達するのではないかと判断し、いったんペニスを解放し、ローションを手に継ぎ足したり、その手で大きく動く柔らかな腹部の肉をつかんだり揉んだりした。そしてまた性器をつまみ、かたくなったそれを手のひらで腹部に押しつける。
 一度アナルから指を抜いて、人差し指を中指に添え二本にして、再度ぐっと押し込む。ローションもたっぷりだし、二度目だ。それほど苦痛はなさそうである。ただやり過ぎれば腫れてきて、また痛みを生ずるだろう。何しろ肛門というのは元々こういう使い方をする器官ではない。
 アナルの奥深く沈めた指は、まっすぐに奥の行き止まりまでは届かない。もっと入り口の近く、今は幸一の腹部側の腸壁を、ぎゅっぎゅっと、押したり指の腹でこすったり、いろいろと位置を変え、幸一の様子を窺いながら続ける。左手では性器をこりこりと指で転がし、揉んだり、柔らかな腹部に押しつける。亀頭の先の上側に、幸一は一番感じるようで、そこを強く押されたりこすられたりすると「あっ」と高い声を上げて肘を曲げからだをひねり、激しく反応した。私はその淫らな反応に満足しながらも、そこばかりの刺激は続けない。未精通の彼は何度でも達することができるだろうが、短時間に繰り返せば達することへの満足感が減じるだろう。だから私は加減して簡単に達しないよう、幸一を攻める。
 中指の先端は腹部の側を向いて、直腸の内壁の少々かたい手応えの部分をこすっていた。幸一はまずぶるっとして、「あっ」と短い声を漏らし、腕の間から自分の性器を見た。私はそれももみ続けている。カウパー腺液は出続けているだろうが、それ以外の変化はない。小便が漏れたような気がしたのではないか。だとしたら私の指は前立腺にうまくヒットしたかもしれない。未だに私は、位置や触った感触のみで「ここが前立腺だ」と断定はできない。私は医者じゃないが、これはたぶん相当個人差が大きいのだろうと思う。だが腹部側の直腸壁に近いところにあるのは、男性に共通しているはずではある。
「んん、ああ! おじさん、おじさん……」
 幸一は頭を上げて、首を後ろにひねって、高い声を出して何か私に訴えようとしているが、続きが言葉にならない。
「どうした? 痛いか」
 私は幸一に訊く。幸一は首を戻し左右に振った。
「んん、漏れそう! 何か漏れそう! おじさん」
 たぶん私の指は前立腺にヒットした。していなくても幸一が感じていることに違いはない。
「本当に漏れそうなら、ベッドに漏らしちゃっていいぞ。おじさん怒らないよ。どうだ、ここは」
 私は嵩ぶりに震えた、少し大きな声で幸一に言うと、直腸内壁を押す指に力を込め、さらに激しく左右にこすった。実際、アナルへの刺激で快感のあまり小便を漏らすケースもあると聞く。後始末には困るが、一度それならそれで見てみたい。私は性器への刺激も強めた。幸一はアナルとペニスへの同時の、激しい刺激に身を捩り反応した。「あ、ううっ!」っと高い掠れた声で叫び、ぶるぶるとからだを震わせ、腕を曲げ上半身をぺしゃんこにした。幸一は頂点を迎え、そして快楽の波が引いていくのを待っている。私はそんな幸一のようすを見て、アナルとペニスを攻める手指をゆるめ、やがて止めた。幸一は鈍い疲労と、眠気と、夢のような多幸感にひたっているように見えた。頂点を迎えた余韻だ。次は私の番だ幸一。

 幸一は上半身を揺らして大きな呼吸をしていた。額や背には汗が流れていた。私は力の抜けた幸一のわきに手を回し、持ち上げて再度四つん這いにさせた。「さあいくよ」と未だぼんやりとした感じの幸一に言い、腰に手を添え、私の勃起したペニスの先を幸一のアナルに押し当てた。幸一に緊張や恐れはないように感じとれた。ある意味全ての感覚が鈍磨し、ある意味では全身が鋭敏に感じるセンシティブな状態にある。それが今の幸一だろうと思う。

 私はためらいなく亀頭の部分を幸一のアナルにぐいと押し込んだ。「ん」と短い声が漏れ、一瞬下半身に緊張が走った。このくらいで裂傷を起こしたりはしないほど幸一のアナルは柔らかく拡がっているのはわかっている。
 さらに腰を進め怒張したペニスを押し込む。全方位からの吸いつき、加えて体温を上回る熱いほどの狭い空間。私は快感に身震いする。私は腰を使う。反り上がったペニスが、直腸の内壁の、前立腺があるであろうかたい感触のあたりを、こする。幸一はきゅっと背中を反らせ、反応した。私は幸一に覆いかぶさり、肩を両手で押さえた。腰を激しく使っても、幸一のからだが逃げないようにだ。腰を振る。ペニスを出し入れする。にち、にち、とローションのおかげで淫猥な音が響く。私は足の幅を狭め腰を少し高くし、斜め上から幸一のアナルを突いた。直腸壁の腹部側をできるだけ狙う。ペニスは壁にぶつかるとすべって、さらに直腸の奥に押し込まれた。その時幸一はやや苦しげにうめく。だが通り道では快感に身を震わせた。私は腰の動きを速く、細かくした。「うう、ああ!」幸一は声を出し上半身を様々にひねった。幸一の両肩は私が強くロックしているが、前には逃げられないだけで上下には動かせる。上半身がぺしゃっとつぶれたり、また戻って腕をぴんと伸ばし背中を反らせたり。強過ぎる刺激に幸一は身を捩らずにいられない。「ああ、ああ!」高い叫びのような声を漏らす。私は小刻みな動きから大きな強い動きに切り替えた。亀頭がこぼれる寸前まで腰を引き、腰を幸一の臀部に叩きつけるように押し込む。根本まで入らないはずのペニスをねじ込む。その時の締めつけ、熱さ、震え。私は快楽のピークの訪れを感じた。幸一は掠れた高い大きな声で何か意味不明の言葉を叫んだ。誰かの名だったかもしれない。その時の強い締めつけで私は達した。どくどくと精が幸一の直腸を満たした。幸一は脱力し、私の腰の押す力にそのままベッドにべしゃっと崩れ、私のからだの下になった。私が荒い息を吐き、彼のからだを解放しても彼はうつぶせのままで、ちょっとドキッとしたがゆっくりと寝息のような呼吸をしていたので私は安堵した。幸一は失神してしまったのだ。

 私は性器を抜き取り、うつぶせの幸一をしっかり抱いて、少年の体温を楽しんだ。「ん……」と声を漏らし幸一が頭を少し上げた。意識は戻ったらしい。
「幸一、幸一?」少し彼の肩を揺さぶってやる。「……おじさん」気怠げな、まさに寝起きみたいな調子の言葉が返ってきた。私は幸一を仰向けにさせ、間近に幸一の眠たげな顔を見た。幸一は私の首に腕を回し、ぶら下がるみたいにすがりついた。おそらくこんなことは、幸一にとって初めてのことなのだろうと思う。
「気持ちよかった?」
 幸一ははにかみながらも、私の胸の中で、「うん」と答えた。
「そうか、よかったな幸一」
 と私は幸一の頭を抱え、撫でる。幸一は顔を私の胸にすりつけてきた。望外の反応といってよかった。幸一は私になついているというレベルではない。虜になっている。一時的な性の嵩ぶりを割り引いても。そうなると私も、ただ玩具にするとか、金と引き換えにもらえるものをもらうといような乾いた計算のみでは、彼との関係を保てない。私が「普通」の人間ならば、もしかしたら彼と二人「幸福」とやらを追い求めることができたかもしれないのに。私は揺れていた。

  †

「さあ、今度はおじさんの上に乗って」
 私は幸一に腕を離させ、仰向けになり、幸一に上に乗らせた。足側を向かせてだ。気怠く眠そうだったが、やることは命じなくても彼にはわかっていた。性器の後始末。幸一はすでに萎えた私のペニスを、隅々なめてきれいにした。懸命にだ。私は私にまたがる幸一の股間に手を伸ばし、軽く性器を揉んでやり、また臀部の肉を拡げてまだてらてらと光るアナルの襞を指で刺激したりした。私の「二回分」の精液の一部が、とろり、と流れ出てきた。淫らだ。
「おじさんの精液が、いっぱい入っているよ。ほら、流れてきた」
 私は指ですいくいとった精液を、「掃除」を中断させて見せてやる。いくぶん、さらさらした精液だ。ローションや幸一の直腸内の水分と、混ざっているのだろう。私はそれも幸一になめさせた。幸一は何とも言えないしぶい顔をしたが、必ずしも嫌悪感からではなく、味による表情だ。なめること自体には、全くためらいがなかったからな。

 幸一が私のペニスを引っぱり、裏側を掃除していた時、急に動くのをやめ、彼はじっと何かを見ているようだった。
「どうした幸一?」
「おじさんのこれ……傷? 火傷?」
 幸一は私の陰嚢の付け根あたりを指で触れた。ああ、と私は思った。確かに気になるだろうな。
 私のその場所には、数字の6にも9にも見えるような傷がある。
「ああ、ケガだよ」
「こんな所を……?」
「興味あるのかい?」
 幸一はしばらく迷ったようだったが、小さな声で「うん……」と言った。
「まあ実はおじさんもよく覚えていないのさ」
 これは誤魔化しではなく事実だった。時々は、思い出しそうな気がするんだが、夢に出てきたりした気がする朝もあるんだが。
「幸一よりずっと小さな頃にね、まだ歩けるか歩けないか……って言っても、幸一も知っている通り、当時は左足が今よりずっとだめだったし、たぶん左腕も不自由だったはずだから、どっちみちハイハイか歩行器使ってどうかだったはずだけどね。傷は今は小さく見えるだろうけど、大ケガだった。その頃もちろん、うんとからだが小さかっただろうからね。ちんちんがちぎれてしまうか、血が出すぎて死んじゃうんじゃないかってすごく心配したんだって、お母さんが言っていたよ。自分じゃ覚えていない」
「事故?」
 私は首を振った。
「お母さんからは原因は何も聞いていないんだよね」
 幼い頃の記憶が混濁しており、ある程度しっかりと記憶の残る頃、私が本当にそれを訊きたいと思った頃には、私の母はもう私のそばにはいなかったのだ。幸一は私の方をちらっと見た。私の言葉の妙な「含み」が気になったのかもしれない。私は柔らかな微笑みを返す。
 幸一はそれ以上何も訊かず私の性器の「掃除」を続けた。私の指示なく納得するまでそれをすると、口を拭った。ころんとからだを転がし、私の横に逆さまに仰向けで寝る。そして彼は、
「うらやましいな……」
 と呟いた
「ケガかかい?」
 珍しく幸一の意図を全くはかりかねた私は、不思議そうにそう呟いてしまった。もちろんそんなわけはない。
「おじさんのお母さんは優しい人だったんだなあ、って思って……」
 母というものをそんな一言では片づけられまい。だが幸一は生まれてこのかた母性というものから見放されて成長してきたのだ。語彙が貧困でも、何の実感もなくても、やむを得まい。私の母は……ただ、今もし生きていれば私を憎むだろう。そうとしか言えない。
「おじさんのお母さん、どこにいるの?」
 と幸一はさらに訊いた。
「死んだよ。私が中学に上がる前で、幸一と同じか、もうちょい上の歳だったかな……こんなことはっきりおぼえていないのは変だね。ケガのことは小さすぎるから当たり前だけど」
これも事実だ。私は母の死の明確な記憶がない。調べればわかる話かもしれないが、それをする意味もあまり感じない。
「お父さんは」
 幸一は母のことをこれ以上私に訊くのは、よくないと判断したらしかった。
「そっちは全く覚えてない。すごく小さな時に死んだってお母さんは言ってたが、ケガの前なんだか後だか、そもそも本当に死んだのかもわからないね。離婚したのを、死んだって説明するのは、そういうのがわからない子供には、大人はよくすることだから」
 つまりは実際に死んでいなくても死んだようなものだ。私は天涯孤独の身の上だ。だからこそ様々な場面で思い切った行動が取れるし、外的規範にとらわれず生きることができる。そうなってしまうという表現も可能だが、実際には天涯孤独だから無法者になるなどと言えば差別という他なく、事実はそんなことはない。幸一は、どうか。愛し愛され、庇護され依存し、規範の根源となるべき大人を、彼は誰一人持たなかった。そして現れたのが、よりにもよって私。これは運命というものだろうか。
私は幸一の手を握り、彼の目を見た。
「幸一、特に子供のうちは、親とか保護者を選ぶことはできない。でも友達は選べる。友達っていうか、つながる他人はね。私は結婚していないが、多くの人は親よりも長い時を結婚相手とかパートナーと過ごす」
「僕は……」
 幸一は、伏し目になり何か思いを巡らせているようだったが急にはっとしたように頭を上げた。
「おじさん、奥さん死んだって……」
 私は笑みを浮かべて首を振った。それは俗世間への嘲笑の笑みでもあった。
「あれは嘘だ。世の中にはね、一定の歳になり仕事もして、結婚していないと変だと思う人がいるんだ。ちょうど幸一の今のお父さんやお母さんのように」
 幸一は驚いたらしくまじまじと私を見ている。
「だから適当に嘘をついている。だいたい私は本当に『変な人』なわけだから、ばれちゃ困るんだよ」
 と言って私は声を上げて笑った。
「私は昔から幸一みたいな男の子が好きだ。前に幸一を子供にしたいと言ったことがあるけど、もし法律が許すなら、結婚するなら幸一みたいな男の子かもね。でも現実的じゃない。女と結婚する気はないし、だいたいもし子供ができて、男の子だったら、その子ともセックスして平気な奥さんがこの世にいると思えないね」
幸一は自分と結婚などという言葉に混乱したようで、しばらく考え込んでいた。私はニヤニヤしながら、そんな彼を見つめていた。

「僕のお父さんとお母さんは、どうして僕を子供にしたのかな」
 幸一はふとそんなことを呟いた。私は口元を引きしめ笑みを消した。
 もちろん確信はないが、大人である私には、あの二人を観察し、幸一と話し、おおむねこうでないかという想像はできる。
「本当のところは、二人に訊いてみないとわからないが、想像はつくよ。大人は、最初からお金持ちじゃない限り、仕事してお金を稼がないと生きていけない。会社っていう組織で仕事する人が、日本では働く大人の八割くらいだろうね。それで会社によってはね、それなりの歳になったら、結婚し、子供を作って、『家庭』っていうものを守って育ててこそ仕事もしっかりできる、みたいな空気があるんだよ。特に男の人にはそういう要求があるんだ。バカバカしいし、だいぶ変わってはきたけどね。だからたぶん、幸一のお父さんとお母さんは、互いに好きでもないのに結婚し、形だけの夫婦になった。本音では結婚なんかしたくない人同士が、時々そういうことをするんだ。片方だけだと、片方をだますことになってしまうから」
 幸一は私の説明を丸ごと信じているように見えた。だがこれは一つの仮説に過ぎない。
「好きでもない同士でもちろんセックスもしないし、子供ができるはずがない。だから子供も必要になった場合、養子を探すかもしれない」
「ようし?」
「他人の子を、自分達の子にすることだ。育てる人のいない子は幸一だけじゃなく世の中にたくさんいる。それ以外にもいろいろな事情で、他人の養子になる人がいるよ」
「何で僕だったんだろう……」
「一人きりだったら、跡継ぎ男の子っていうのも、古い考え方だがある。後は、言いにくいけどね、幸一。ただ外見がかわいくて気にいったからだけじゃないかな」
 これは幸一には非常に残酷な言葉だったが、真実に近いと私は思っていた。それに小学校に上がる直前の子、というのも養子にするには遅すぎる。見てくれがよく、赤ん坊みたいに手がかからないというのが、今の幸一の父母が幸一を選んだ基準じゃなかったのだろうか。
 幸一は唇を震わせた。
「でも、でもお母さんは僕に意地悪ばかりしたよ。最近は減ったけど……」
「幸一は人間だ。おもちゃや人形とは違う。いざ子供にしてみたら、気にいらないってこともある。幸一が二人を好きじゃないみたいにね。どっちが先にそう思ったのかはわからないけど、相手を嫌いだと思う時は、だいたい相手にも嫌われている。嫌いになっても、おもちゃや人形なら捨てればいい。でも幸一は人間だから、そうはいかない。だからって勝手に子供にしておいて、意地悪していいわけじゃない。子供の方が立場が弱いんだから。幸一のお母さんは間違ったことをしているし、幸一はもっと憎んだり怒ったりしてもいい。ただそんなことをしても、幸一は得をすることは一つもないけどね」
 私は話しながら、身勝手にも憤りと興奮を抑えきれなくなっていた。幸一の両親の「身勝手」への腹立ちは間違っているとは思わない。幸一はうなずく。
「繰り返すが、間違っているのはお母さんだ。幸一のせいで意地悪されているわけではない。幸一が悪いわけではないんだよ」

 私の言葉は、幸一に強く響いたらしかった。幸一は唇をわななかせ、そして笑顔を作って私を見つめた。


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