君がため  浅茅生の  みちのくの  逢い見ての  人はいさ
もろともに  いにしえの  春すぎて  今はただ  有明の
あらざらむ  吹くからに  月見れば  わびぬれば  由良の門を
たち別れ  風をいたみ  嘆きつつ  夜をこめて  あしひきの
なげけとて  このたびは  心にも  小倉山  わが庵は
わすれじの  夏の夜は  忘らるる  みかの原  君がため
住の江の  難波潟  有馬山  めぐりあひて  大江山
かくとだに  朝ぼらけ  滝の音は  やすらはで  忍ぶれど
恋すてふ  嵐吹く  心あてに  かささぎの  きりぎりす
来ぬ人を  人もをし  世の中よ  玉の緒よ  契りおきし
憂かりける  夕されば  夜もすがら  いま来むと  天つ風
花の色は  洋の原  瀬をはやみ  わたの原  筑波嶺の
ちはやぶる  山川に  逢うことの  名にし負はば  恨みわび
契りきな  音に聞く  見せばやな  わが袖は  世の中は
花さそふ  山里は  むらさめの  秋風に  さびしさに
八重むぐら  しらつゆに  秋の田の  奥山に  天の原
み吉野の  田子の浦に  朝ぼらけ  高砂の  春の夜の
久方の  難波江の  みかきもり  淡路島  思ひわび
明けぬれば  長からむ  あはれとも  ほととぎす  おほけなく
風そよぐ  これやこの  たれをかも  ももしきや  ながらへば

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